華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

She もしくはヨシュアの木の下に (1973. Gram Persons)

f:id:Nagi1995:20170515130634j:image

グラム・パーソンズの遺体は柩におさめられて、次の朝の飛行機でただ一人の妹のいる故郷の南部に送られるはずだった。だが、送られなかった。柩が夜のうちに飛行場から盗まれたためだ。盗んだのは、グラム・パーソンズがもっともこころをゆるしていた友人の一人だった。柩を車にのせ、途中で大量のガソリンを買い求めて、遠くジョシュア・ツリー国定自然記念物公園まで突っ走って、友人は砂漠の岩のうえで、柩を焼いた。

(長田弘「アメリカの心の歌ーヒッコリー・ウインド」)

 


【Gram Parsons】 She 1973

She

英語原詞はこちら


彼女、彼女は
綿の花を育てているくにの生まれ
そこはみんなからほとんど忘れられてしまったところ
そして彼女
彼女は働いたし はげしくこき使われた
ミシシッピデルタの太陽に照らされた
広くて大きな土地が彼女の世界だった


ああ でも彼女は歌うことができた
ああ 彼女が歌うことができたそのとき


彼氏は見ていた そしてこころが小さく痛んだ
彼氏は何か彼女の彼女の助けになれたらって
そう決めたんだと町中の人々が口をそろえた
そして彼氏は
彼女がそれほどかわいくなくても気にはしなかった
彼女は自分にとってたった1人のひとなんだということを
心のいちばん深いところで彼氏は知っていた


そう 彼女には歌うことができた
彼氏の彼女には 歌うことができた


彼女はなにが正しいことかを知っていたし
信じるべきものもわかっていた
彼女が歌えばみんなが歌い出した
そして彼女は毎晩お祈りをした
ハレルヤ
ハレルヤって歌いながら


ふたりはいつも歌いながら川沿いを歩いた
自分がもう行ってしまわなくちゃいけないことが
彼女にわかったその時にも
そして自分の人生が何のために与えられたものなのか
彼女が知ることはなかったし
彼女は一日だって くよくよしたりはしなかった


そう 彼女には歌うことができた
そうだよ 彼女には歌うことができた

 

 f:id:Nagi1995:20170515134939j:image

Joshua Tree: ユッカ - Wikipedia

ジョシュアの木は、巨大で奇妙な砂漠の木だ。時間があれば、グラム・パーソンズは、荒涼とした風景の中にジョシュアの木が林立する広大なジョシュア・ツリー国定自然記念物公園にやってきて、巨大で奇妙な砂漠の木の下で過ごすことをなにより好んだ。ジョシュアの木は、グラム・パーソンズの記憶の印となった。(同上)


Emmylou Harris *She*

仲間のギタリストが交通事故で死んだとき、葬儀につらなったグラム・パーソンズは、死者の顔に聖水がふりかけられるのを見て、言った。まちがっている。もしもぼくが死ぬようなことがあったら、ぼくを砂漠に連れていって、焼いて、灰はジョシュアの木の下に撒いてくれ。忘れないでくれ。それがぼくの希望だ。ーグラム・パーソンズの希望をかなえるには、ほかの方法はなかった。逮捕されたときに友人はそう言った。(同上)

==============================

はじめての方へ(総目次)
曲名索引(ABC順)
邦題索引(あいうえお順)
アーティスト名索引(ABC順)
アーティスト名索引(あいうえお順)

She

She