華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Beyond the Century もしくは人工の言語 (1999. Adiemus)

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前回の「神々の詩」の「縄文語」は「捏造された言語」としか言いようのないものだったけど、このAdiemusというグループが歌の中で使っている言葉は「アディエマス語 (Adiemus Language)」と呼ばれる完全に「架空の言語」である。ボーカルのミリアム・ストックリーが生まれた南アフリカ共和国で使われている言葉の響きを参考に、「音楽的な聞こえ方」だけを考えて作られた歌詞だとのことで、「意味は全くない」ということが初めから宣言されている。南アフリカ、と言われると当然にもアパルトヘイトが頭に浮かび、たとえ「響き」だけでも白人グループであるかれらがそこで使われてきた黒人の人たちの言葉を「利用」の対象にするのはいかがなものか、それについてかれら自身はどう考えているのか、ということがやはり気になるが、「歌詞に意味はない」とハッキリ言われてみると、そのこと自体にはむしろホッとする。「意味がない」ということは、逆に言うなら「どう解釈してもいい」ということでもある。ちなみに欧米では、この歌の歌詞が日本語であると思い込んでいる人たちがけっこういるらしい。


Adiemus-Beyond the Century

Ah tu
あーとぅ
Pa la su
パラーすぅ
Ra ma lu
ルラマーるぅ
Sa la ma
サラーまー
Isa la koo
いさラーくー
Sa la ra ma sa
サラルラーまーさー
(Repeat)

Ah koos
あーくーす
Sa va loos
サヴァーるーす
Sa ka la ma sa loos
サカーラーまーさーるーす
Sa pa la ma
サパーらーまー
Pa la sa ma
パーラーさーまー
(Repeat)

Oo la ma sa
うーラマーさー
Oo la ma sa
うーラマーさー
Oo ma sa la ma sa
うーまーサーラーまーさー
Oo ma sa va
うーまーさーばー
(Repeat)

(Instrumental break)

Ah koos
あーくーす
Sa va loos
サヴァーるーす
Sa ka la ma sa loos
サカーラーまーさーるーす
Sa pa la ma
サパーらーまー
Pa la sa ma
パーラーさーまー
(Repeat)


Ra ta
るらー たー

Eh ra ka ra ma ra ka
エールラかるらまるらかー
Ra weh ah
ルラーウィあー
Ba keh ah
バーケィあー
Ma na
マーナー
(Repeat)

(Instrumental fanfare)

Eh ra ka ra ma ra ka
エールラかるらまるらかー
Ra weh ah
ルラーウィあー
Ba keh ah
バーケィあー
Ma na
マーナー

(Instrumental fanfare)

Ma na ka reh
マーナかるれー
Ma ka
まっかー
(Repeat)

…日本人として聞いてみると、これはやはり日本語の歌ではない。極めてシンプルな繰り返しの歌詞であるにも関わらず、Lの音とRの音が厳密に区別されている。従って「日本語詞」を表記するにあたっても、ra を「るら」と表現するなどの小細工を弄せざるを得ず、結果として原詞より読みにくいことになってしまっている。難しいものである。

しかし、ほとんどの子音に母音がくっついているあたり、やはり日本語的な響きに似ている感じも、しないではない。Sa ka la ma sa loos という部分など、何も考えずに聞いていると「魚が去る」という普通の日本語として耳に入ってくるし、Oo ma sa va も「うまい鯖」といったん聞こえてしまうとずっとそう聞こえる。たぶん同じ音を聞いていても、聞く人がどんな言葉を喋っているかによって全く違った聞こえ方をするのが、この人たちの歌の特徴なのだろう。

うん。

…それにしても「意味はない」と断言されてみると、やっぱり書くことも少なくなってくるもんですね。

日本語詞でひらがなとカタカナを「使い分けて」みたことにも、これといって意味はない。使い分けてみたら、何かそこから独自の意味が生まれてくるのではないかと思ったのである。でも、生まれなかった。

英語が「世界言語」としての地位を独占している現状を打破すべく、エスペラントのような「人工言語」の可能性について、これを機会に改めて考えてみることも考えたが (何という回りくどい文章だ) やはり場違いな気がする。そういうことはそれこそ世界が1つになってからその後に考えればいいことで、そのためになされるべき努力はたぶんそっちではなく、もっと別の方向に向けられるべきものだと思う。

したがって。

やはり書くことがない。

ああ、そういえば、一番上のイルカのジャケットは、Adiemus というバンドがアルファベット順だとどうしても先頭に来てしまうため、私のパソコンの音楽プレイヤーの画面のトップに、ずーっと貼りついている。もう10年以上にわたって、貼りついている。大して好きなアルバムでもないのに、貼りつき続けている。

…今回はそれだけです。

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