華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Save the Last Dance for Me もしくはラストダンスは私に (1960. The Drifters)

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片桐ユズルさんの訳詞を取りあげてしまった以上、岩谷時子さんの訳詞も取りあげないことには、私の中のバランス感覚が落ち着かない。訳詞者という「職業」があるのかどうかは知らないけれど、そういう仕事をしてきた人たちの中でやっぱり双璧だと思えるのが、私にとってはこの2人だからである。

岩谷時子さんが本当にスゴいと思えるのは、ちゃんと「日本語で歌える」訳詞を作ってしまうことだ。洋楽に日本語の歌詞をつけて歌えるようにしようとする試みは昔から無数にあるが、ほとんどは聞いている方が恥ずかしくなってしまうような代物だし、たまにいいと思えるのがあっても、調べたら原詞と全く関係のない歌詞になっていたりする。ところが岩谷さんは原詞の意味を絶対に外さない。ものすごく大胆な省略や、意訳の手法を用いつつも、ちゃんと原詞の持っている情報量を保持しつつ、しかもそれを鑑賞にたえうる日本語の歌詞にしている。絶対に、誰にでもできることではない。

当ブログが心がけているのは、「原詞の意味を正確に伝える翻訳」である。岩谷さんのマネをして自分も「歌える訳詞」を作りたいとかいう風に欲を出したらたちまち破産することが目に見えているので、私はここに自分の「作品」を掲載しようとは思わない。しかし時にはやっぱり私も自分の訳詞をそんな風に「作品」にしてみたいなと思わせてくれるのが、片桐ユズルさんや岩谷時子さんの存在であるわけだ。何事にも目標があるのはいいことだし、また幸せなことでもあると思う。

そんなわけで今回は岩谷時子さんが訳した方の「ラストダンスは私に」を先に紹介し、その後で原曲の試訳を紹介する形をとることにしたい。ちなみにベン・E・キングって最初はドリフターズの一員だったんですね。私は今日まで知らなかった。


ラストダンスは私に  越路吹雪  S38

ラストダンスは私に

(訳詞: 岩谷時子)


貴方の好きな人と踊ってらしていいわ
やさしい微笑みも
その方に おあげなさい
けれども 私がここにいることだけ
どうぞ 忘れないで

 

ダンスはお酒みたいに心を酔わせるわ
だけど お願いね
ハートだけは とられないで
そして私の為 残して置いてね
最後の踊りだけは


貴方に夢中なの いつか二人で
誰も来ない処へ 旅に出るのよ

 

どうぞ踊ってらっしゃい
私ここで待ってるわ
だけど送って欲しいと頼まれたら
断ってね
いつでも 私がここに居ることだけ
どうぞ 忘れないで

 

きっと私の為 残して置いてね
最後の踊りだけは
胸に抱かれて踊る
ラストダンス 忘れないで

 


The Drifters - Save The Last Dance For Me

Save the Last Dance for Me

You can dance-every dance with the guy
Who gives you the eye, let him hold you tight
You can smile-every smile for the man
Who held your hand neath the pale moon light
踊っていいよ
きみに熱い目を向けてるそいつと
好きなだけ踊っていいよ
抱きしめさせてやればいいよ
笑ってもいいよ
蒼ざめた月の光の下で
きみの手を握ったあの男に
好きなだけ微笑んでやればいいよ

 

But don't forget who's takin' you home
And in whose arms you're gonna be
So darlin' save the last dance for me
でもきみを家に連れて帰るのが誰で
誰の胸がきみの帰るところなのかは
忘れないでよね
だから最後のダンスだけは
ぼくのためにとっておいてよね

 

Oh I know that the music's fine
Like sparklin' wine, go and have your fun
Laugh and sing, but while we're apart
Don't give your heart to anyone
ああ たしかにその曲は
スパークリングワインみたいに素敵だよ
行って楽しんできたらいい
笑えばいいし歌えばいい
でも離れてるあいだに
心を誰かに渡したりはしないでよね

 

And don't forget who's takin' you home
And in whose arms you're gonna be
So darlin' save the last dance for me
そしてきみを家に連れて帰るのが誰で
誰の胸がきみの帰るところなのかは
忘れないでよね
だから最後のダンスだけは
ぼくのためにとっておいてよね

 

Baby don't you know I love you so
Can't you feel it when we touch
I will never never let you go
I love you oh so much
わかんないかな すきなんだ
ふれあったときに 感じるだろう
いつまでも はなしたくない
すきなんだ ああ すごく

 

You can dance, go and carry on
Till the night is gone
And it's time to go
If he asks if you're all alone
Can he walk you home, you must tell him no
踊っていいよ 行って続けなよ
夜がふけるまで
さあ 時間だよ
ひとりなのかってそいつに聞かれて
家まで送ろうかとか言われても
そこは断らなくちゃダメだよ

 

'Cause don't forget who's taking you home
And in whose arms you're gonna be
So darling, save the last dance for me
きみを家に連れて帰るのが誰で
誰の胸がきみの帰るところなのかは
忘れないでほしいんだ
だから最後のダンスだけは
ぼくのためにとっておいてよね

 

Oh I know that the musics fine
Like sparklin' wine, go and have your fun
Laugh and sing, but while we're apart
Don't give your heart to anyone

 

So don't forget who's taking you home
Or in who's arms you're gonna be
So darling save the last dance for me

 

So don't forget who's taking you home
Or in who's arms you're gonna be
So darling save the last dance for me

 

Oh baby, won't you save the last dance for me
Ooh, you make a promise
That you'll save the last dance for me
Save the last dance
The very last dance
For me

ああ いとしいひと
最後のダンスだけは
ぼくのためにとっておいてくれないかな
約束してくれるよね
最後のダンスはとっておいてくれるって
最後のダンスはとっておいて
最後のダンスだけは
ぼくのために

=翻訳をめぐって=

歌詞の英語について特に難しいところはなかったが、この歌が作られた背景について初めて知ったことがあったので、紹介しておきたい。

作詞者のドク・ポーマスは本楽曲を作詞した当時、小児麻痺の影響で脚に金具を付け両手で松葉杖をついて歩くという状態にあったため片手を女性の手に添え、もう片方の手は相手の肩か腰に当てて、ダンスを踊るということができなかった。でも、女性に手を取ってもらい肩に手を当ててもらいながら、自分は松葉杖をついてでも動くから、ラストダンスだけは私のために残して置いてくれ、そして一緒に踊ろう、というドク・ポーマスの思いが詞にこめられているという。

ラストダンスは私に - Wikipedia


萩原健一/ラストダンスは私に

…最後に、この人が歌ってる動画も紹介しておかなければやはり私の中のバランス感覚が落ち着かなかったので、 貼っておきます。ではまたいずれ。

 

*岩谷時子「人生はすぎゆく」

*岩谷時子「人生はすぎゆく」