華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

The End of the World もしくは世界の終わり (1962. Skeeter Davis)

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「世界」が3つも続いたからそろそろ世界も終わりだなと思ってこの曲のことを改めて調べたら、邦題は「世界の終わり」ではなく「この世の果てまで」になっていたのだということを初めて知った。ワザと間違えたのかと疑いたくなるぐらいの誤訳である。

フツーにタイトルを見ればまず「世界の終わり」だと思うだろうし、曲を聞いてみればもっと「世界の終わり」だと思うだろう。何をどう勘違いして「この世の果てまで」にしたのか、本当に理解に苦しんでしまう。せめて「この世の果て」で終わらせてほしかった。なぜ「まで」をつける。世の中にはいろんな勘違いがあるけれど、人の言葉をわざとややこしく解釈して、しかもそれが間違っていた場合ほど恥ずかしいパターンはない。そのタイトルでこの曲を初めて聞かされたどれだけ多くの60年代の中学生が「自分たちは何も英語をわかってないんだろうか」と悩まなければならなかったのだろうと思うと、「キミたちは悪くないんだーっ!」と絶叫したくなってくる。

それにつけても「無情の世界」にも「無法の世界」にも「明日なき世界」にも原題に「世界」は入っていないのに、"World" が入っているこの曲であえて「世界」を使わないのは、どういうヒネくれた根性なのだろう。やっぱり歌というのは素直に聞かないといけないと私は思う。


Skeeter Davis - The end of the world (HQ)

The End Of The World

Why does the sun go on shining?
Why does the sea rush to shore?
Don't they know it's the end of the world
'Cause you don't love me anymore?
どうして太陽は 輝き続けているんだろう
どうして海は 岸辺に打ち寄せているんだろう
みんな知らないんだろうか 世界が終わってしまったことを
だってあなたはもう 私を愛してくれないのだから

 

Why do the birds go on singing?
Why do the stars glow above?
Don't they know it's the end of the world?
It ended when I lost your love
どうして鳥たちは 歌い続けているんだろう
どうして星たちは 高く輝いているんだろう
みんな知らないんだろうか 世界の終わりなのに
私があなたの愛をなくしたときに 世界は終わってしまったんだ

 

I wake up in the morning and I wonder
Why ev'rything is the same as it was
I can't understand, no, I can't understand
How life goes on the way it does
朝起きて わからなくなる
どうして何もかもが 今までと同じでいられるのか
私にはわからない 私にはわからない
どんな人生が これからありうるっていうんだろう

 

Why does my heart go on beating?
Why do these eyes of mine crying?
Don't they know it's the end of the world?
It ended when you said goodbye
どうして私の心臓は 動き続けているんだろう
どうして私の目は 涙をこぼしているんだろう
私のからだもわかってないんだろうか 世界の終わりなのに
あなたがさよならを告げたとき 世界は終わってしまったんだ

 

Don't they know it's the end of the world?
It ended when you said goodbye
みんな知らないんだろうか 世界の終わりなのに
あなたがさよならを告げたとき 世界は終わってしまった

 

=翻訳をめぐって=

この歌は本当にシンプルな英語で書かれていて、中学生でも辞書さえあれば必ず自分で訳せる。しかもだからと言って内容が薄いわけではない。一生心に残り続けるような、深いテーマが歌われている。それこそ、英語教材に打ってつけの曲だと思う。

「心臓」は三人称単数だから "Why does my heart" になるけど、「目」は複数だから "Why do my eyes" になるのだといったような、そういう基本的なこともこの歌からは学べる。ちなみに私は今でもそういうことをしょっちゅう間違える。とはいえ、そういう類のことは多少間違っていても通じなかったり誤解されたりということは滅多にないから、恐れる必要はないということの方をむしろここでは強調したいのだけど。

この歌で唯一中学生には難しいかなと感じられるのは、"How life goes on the way it does"の部分だと思う。How life goes で切るのではなく、How life goes on で切るのがポイントである。How life goes on (どうやって人生は続くのだろうか) the way it does (それがそうするやり方で)。つまり「人生が続く」というその「続き方」について、howという言葉を使って尋ねているのである。日本語ではそういう言い方をしないので、ここではかなり意訳した。しかしそういう意訳を見るたびに「なぜそうなるのか」「本当にそうなのか」ということでいちいち悩まされてきた経験が私にはあるので、そう訳した根拠についても、説明しておくことにした。こういうことを手抜きなしでやれるのも、シンプルな曲なればこそである。


世界の終わり / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

…私の世代にとって「世界の終わり」と言えば、この曲だったな。ではまたいずれ。