華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

My Irish Molly O もしくはモリーに首ったけ (1978. De Dannan)



Whiskey in the Jar に出てくるのは悪っるい悪っるいモリーさんだったけど、こちらはステキなステキなモリーさんのことを歌ったアイリッシュ・トラッドである。こちらも古い歌で、アイルランド移民のあいだで歌われていたのが、19世紀半ばにはすでにアメリカの至るところで歌われるようになっていたという。

トラッド ( 伝承曲/「民謡」)の常として、歌詞にはさまざまなバリエーションが存在するが、ここではトラッド・バンドの草分けと言われるデ・ダナンのバージョンを紹介したい。74年に結成されたこのバンドはなぜか綴りが一定していなくて、dannanと書かれたりdanannと書かれたりする。それぞれの綴りで検索すると違ったアルバムが出てくるから、ともすれば別のバンドなのかと思ってしまうが、デ・ダナンはデ・ダナンである。真似したりパクったりできるような勇気を持ったミュージシャンは、どこの世界にも存在しない。

このバンドはさらに何人ものボーカリストを輩出していることでも有名で、ドロレス・ケーンだとかメアリ・ブラックだとか錚々たる人たちが在籍しているのだが、私がこの曲を初めて聞いたのはモーラ・オコンネルという人が歌っているバージョンを通じてだった。すでに私は、喋りすぎていると思う。まずは、聞いてみてほしい。


Irish Molly - De Dannan

My Irish Molly-O

Molly dear now did you hear
The news that's going round
Down in a corner of my heart
A love is what you've found
And every time I gaze into
Your Irish eyes so blue
They seem to whisper
"Darling boy, my love is all for you"

いとしのモリー
とっておきのニュースがあるんだけど 知ってるかい
ぼくの心の片隅に
きみが見つけるのは愛なのさ
きみのとても青いアイリッシュの瞳を見つめるたびに
こうささやいてるのが聞こえるようだ
「ダーリン 私の心はあなたのものよ」



Oh, Molly, my Irish Molly,
my sweet achusla dear
I'm fairly off my trolley,
my Irish Molly when you are near
Springtime you know is ring time,
come dear now don't be slow
Change your name, go out with game,
Begorrah wouldn't I do the same
My Irish Molly O

ああ モリー アイルランドモリー
ぼくの素敵なアクシュラ
ぼくは胸がどきどきしてとんでもないことを考えてしまう
アイリッシュモリー きみがそばにいるたびに
春は結婚指輪の季節 遅れるわけにはいかないよ
ぼくのために名前を変えておくれ
ふざけながら街に出よう
神に誓って ぼくは変わるよ
ぼくのアイリッシュモリー・オー!



Molly dear now did you hear
I furnished up the flat
Three little cozy rooms with bath
and "welcome" on the mat
It's five pounds down and two a week,
we'll soon be out of debt
It's all complete except
they haven't brought the cradle yet

いとしのモリー 知ってるかい
部屋に家具をそろえたんだよ
居心地のいい部屋が3つにお風呂もついてて
玄関マットには「ようこそ」って書いてあるんだよ
5ポンドもかかったけど
1週間か2週間もすれば借金も帳消しさ
もう完璧だよ
あとは赤ちゃん用のゆりかごが届くのを待つだけ



Oh, Molly, my Irish Molly,
my sweet achusla dear
I'm fairly off my trolley,
my Irish Molly when you are near
Springtime you know is ring time,
come dear now don't be slow
Change your name, go out with game,
Begorrah wouldn't I do the same
my Irish Molly O
ああ モリー アイルランドモリー
ぼくの素敵なアクシュラ
ぼくは胸がどきどきしてとんでもないことを考えてしまう
アイリッシュモリー きみがそばにいるたびに
春は結婚指輪の季節 遅れるわけにはいかないよ
ぼくのために名前を変えておくれ
ふざけながら街に出よう
神に誓って ぼくは変わるよ
ぼくのアイリッシュモリー・オー!



Molly dear and did you hear
what all the neighbors say
About the hundred sovereigns
you have safely stowed away
They say that's why I love you,
Ah but Molly that's a shame
If you had only ninety-nine,
I'd love you just the same

いとしのモリー
近所がみんな何て言ってるか知ってるかい
きみがしっかりためこんだ
100枚ものソブリン金貨のこと
ぼくがきみを愛してるのは
それが理由だなんて言われてるんだよ
そんなひどい話ってあるだろうか
もしきみが99枚しか持ってなくても
ぼくは同じようにきみのことを愛し続けるよ



Oh, Molly, my Irish Molly,
my sweet achusla dear
I'm fairly off my trolley,
my Irish Molly when you are near
Springtime you know is ring time,
come dear now don't be slow
Change your name, go out with game,
Begorrah wouldn't I do the same
My Irish Molly O

ああ モリー アイルランドモリー
ぼくの素敵なアクシュラ
ぼくは胸がどきどきしてとんでもないことを考えてしまう
アイリッシュモリー きみがそばにいるたびに
春は結婚指輪の季節 遅れるわけにはいかないよ
ぼくのために名前を変えておくれ
ふざけながら街に出よう
神に誓って ぼくは変わるよ
ぼくのアイリッシュモリー・オー!


=翻訳をめぐって=

  • achusla(アクシュラ) : ゲール語で「ダーリン」という意味


  • fairly off my trolley : off one's trolleyは「取り乱してデタラメなことをやってしまう」みたいな意味だと英英辞典にはあった。「胸がどきどきしてとんでもないことを考えてしまう」という訳語は町田康の「先生の印象」という詩からパクった形になっているので一応書いておく。fairlyは「まったく」ぐらいの意味。


  • Change your name: わたし的にこういうせまり方はありえないと思ったが、3番の歌詞を読むとこの男はそもそもどうしようもないやつみたいなので、説教しても仕方がない。思い込みが強いけど純情そうな青年だというイメージでこの歌を訳しはじめたことで、結果的に訳詞はむしろ味わい深いものになってしまった気がする。


  • go out with game : わかりにくい歌詞。gameには「冗談」という意味があるのでその意味で訳したが、誤訳の可能性が高い。



  • wouldn't I do the same: 私はこういう would とか should の使われている表現が一番苦手である。完全に意訳になっているが、誰か文法的に説明してほしい。




平沢進「ハルディン・ホテル」ハングル字幕版


アイリッシュ」という言葉と「アイリス」という言葉は私の頭の中でずっとごっちゃになっていたのだけれど、全然違う意味だったみたいですね。アイリスの似合う季節となりました。ではまたいずれ。