華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Ob-La-Di, Ob-La-Da もしくは明るい南の街のモリー(1968. The Beatles)

私のつぶらな瞳
何んにも映らない
キラキラ輝くガラス
そしてしまいに砕け散る


ーアンジーの三戸華之助さんが昔うたっていた「オブラディ・オブラダ」の日本語詞。続きを知っている方がいたら教えてください。

モリーという名前には、いったい何があるのだろう。「ウイスキー・イン・ザ・ジャー」について調べていると、ビートルズは「オブラディ・オブラダ」に出てくるモリーという人の名前をあの歌からとったのだ、という根拠不明の情報が、いくつもいくつも出てきた。「オブラディ・オブラダ」自体が、そう言われてみると何となく「むっしゃりんだまどぅだまだ」を連想させる。もっとも後述するように、「オブラディ・オブラダ」の「出典」は別のところにあるらしい。とはいえポール自身も「りんだまどぅだまだ」を子守唄がわりに聞いて育ったであろうアイリッシュ系の1人だったことを思えば、やはりどこかでつながっていると考えた方が自然に思える気がする。

そういえばハリー・ポッターの親友のロンのお母さんが、確かモリーという名前だった。好きか嫌いかに関わらず、ハリー・ポッターに関してはネット上に膨大な情報が蓄積されているので、英語で何か分からないことがあった時にはハリー・ポッターに引っかけて調べると手がかりが見つかることが割と多い。このページで調べてみると、モリーという名前はメアリー(=マリア) の指小辞 (日本で名前の後ろに「〜っち」をつける感覚に近い言い方なのだと思う。しかし最近「〜っち」って全然聞かないな) で、英語圏では「憎しみの海」「反逆性」「子どもがほしいという気持ち」「愛されていること」などのイメージと結びつけられることの多い語感を伴っているのだという。んなこと言われたって全然わからないけど、そんな風に言われてしまうとこれからモリーという名前を聞くたびに「憎しみの海」を連想しないわけに行かなくなってしまうではないか。偏見というのはこんな風にして人の心に刷り込まれていくものなのかもしれない。そしてその偏見にもとづいた名前がさらに新しく生まれる子どもにつけられることが繰り返されていくわけだから、こういうのを「壊す」のは大変なことだと思う。もちろん、必要があればいつだってそれは「やるしかないこと」なのだけど。

ちなみにロンのお母さんのモリーは「mollycoddle (ひとを過保護に扱う)」という言葉からの連想で決まった名前だろうという推測がなされていた。「ウイスキー・イン・ザ・ジャー」のモリーや「オブラディ・オブラダ」のモリーに、たぶんその要素はないと思うな。
「過保護」といえば最近よんだこの方のブログが面白かったので、リンクを貼っときます。またこの記事とシンクロするかのように「オブラディ・オブラダ」におけるポールのボーカルについて書いておられた方がいたので、そちらへのリンクも貼っときます。ブログはアイミタガイ(方言?)です。

こんな映像があったのは知らなかったけど、歌詞のテロップはかなりいいかげんです

Ob-La-Di, Ob-La-Da

Desmond has a barrow in the market place
Molly is the singer in a band
Desmond says to Molly "girl I like your face"
And Molly says this as she takes him by the hand

デズモンドは市場に屋台を持ってて
モリーはバンドのシンガーだ
「きみの顔が気に入った」とデズモンドが言えば
モリーはその手をとってこう返す



Ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on
Ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on

「オブラディ オブラダ 人生は続く」ね
どんな風に人生は続くのかしらね



Desmond takes a trolley to the jeweller's stores
Buys a twenty carat golden ring (Golden ring?)
Takes it back to Molly waiting at the door
And as he gives it to her she begins to sing (Sing)

デズモンドは屋台を引っ張って宝石屋の店に行き
20カラットの金の指輪を買う
玄関で待ってるモリーのところに戻って
指輪を渡すとモリーが歌い出す



Ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on
Ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on, yeah (No)

「オブラディ オブラダ 人生は続く」ね
どんな風に人生は続くのかしらね



In a couple of years they have built
A home sweet home
With a couple of kids running in the yard
Of Desmond and Molly Jones
(Ah ha ha ha ha ha)

2年がたってふたりは
ホーム・スイート・ホームを建てた
ふたりの子供が庭を走り回る
デズモンド・ジョーンズとモリージョーンズの家の



Happy ever after in the market place
Desmond lets the children lend a hand (Arm! Leg!)
Molly stays at home and does her pretty face
And in the evening she still sings it with the band

市場もこれでめでたしめでたし
デズモンドの腕には子どもたちがぶら下がってる
モリーは家できれいにお化粧をして
日が暮れると今でもバンドで歌ってる



Yes, ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on (Ha ha ha)
Hey, ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on

「オブラディ オブラダ 人生は続く」ね
どんな風に人生は続くのかしらね



In a couple of years they have built
A home sweet home
With a couple of kids running in the yard
Of Desmond and Molly Jones
(Ha ha ha ha ha ha ha ha ha ha)

2年がたってふたりは
ホーム・スイート・ホームを建てた
ふたりの子供が庭を走り回る
デズモンド・ジョーンズとモリージョーンズの庭



Yeah, happy ever after in the market place
Molly lets the children lend a hand (Foot!)
Desmond stays at home and does his pretty face
And in the evening she's a singer with the band

市場もこれでめでたしめでたし
モリーは子どもたちの手を引いている
デズモンドは家できれいにお化粧をしていて
モリーはといえば
日が暮れると今でもバンドで歌ってる



Yeah, ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on
Yeah, ob-la-di ob-la-da life goes on bra
La-la how the life goes on

2年がたってふたりは
ホーム・スイート・ホームを建てた
ふたりの子供が庭を走り回る
デズモンド・ジョーンズとモリージョーンズの庭



And if you want some fun
Take ob-la-di ob-la-da

なにか楽しいことがほしいなら
オブラディ・オブラダしてみよう


=翻訳をめぐって=


  • 「オブラディ・オブラダ」についてだけ。このフレーズは60年代当時ロンドンで活動していたジミー・スコットというナイジェリア人のコンガ奏者がキャッチフレーズみたいにしていた言葉で、彼がステージから「オブラディ!」と叫ぶと観客が「オブラダ!」と返し、それから彼が「ライフ・ゴーズ・オン!(人生は続く!)」と叫んで曲に入るのがお決まりのスタイルになっていたらしい。文字だけ読んでると筋肉少女帯のコンサートを見てるみたいである。そしてこの言葉の意味をジミー・スコットは「秘密」にしていたという。ナイジェリアで話されている言葉はヨルバ語なのでそれと結びつけた「研究」もあるらしいが、やはり「決まった意味はない」と受け止めた方がいいようだ。ちなみにヨルバ語は、ジャマイカで「ルーツ・ロック・レゲエ」を始めた人たちの直接の祖先の言葉のひとつでもある。


  • "bra"についても。「ビートルズ作品読解ガイド」という労作を書かれた秋山直樹という人は brother という呼びかけの言葉なのではないかと推測していたが、やはり英語圏では「ナンセンスなフレーズの一部」と受け止められているらしい。NHKの「みんなのうた」で使われて私が小学生の時には既に音楽の教科書にも載っていた日本語歌詞では、この部分が「パパパーヤ」という情けないフレーズになっている。訳詞を作った人は日本人の子どもに"bra"を発音するのは難しいと考えたのだと思うが、そういう小さな親切は本当に大きなお世話である。「パパパーヤ」でこの歌を覚えてしまい、今でも聞くたびにその歌詞が口をついてしまうことが、私はつくづく恥ずかしくてならない。


  • 「ホーム・スイート・ホーム」を訳さなかったのは、19世紀にビショップという人が作曲した同名の歌の名前に引っかけた歌詞だからである。邦題は「埴生の宿」。「ビルマの竪琴」という映画に出てくる。誰でも知ってる曲だと思う。


DEANNA DURBIN - "Home, Sweet Home"

シュガーというバンドのベーシストで、解散後に若くして亡くなられてしまった人が確かモーリさんという名前だったが、この人の名前から「憎しみの海」を連想することなんて、私にはできない。断じてできないと言っていい。「モリーをめぐる冒険」はもうちょっと続きます。ではまたいずれ。


Sugar - シュガー - アバンチュールはルックスしだい 夜のヒットスタジオ 720P