華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Sun City もしくはマイルス・デイヴィスの7分03秒 (1985. Artists United Against Apartheid)


"We are the world" が発売されたのと同じ1985年に、南アフリカ政府による人種差別政策に反対するアメリカのアーティストたちによってこうした曲が発表されていたのだということを、私はずっと知らなかった。知ったのはインターネットの時代になってようやくのことである。

"Sun city" とは南アフリカに当時存在した(今でも、名前を変えて存在しているらしい)「白人専用」の巨大なリゾート地の名前で、Wikipediaには以下のような記述がある。

サンシティは、南アフリカのホテル界の大立者で、ホテル・不動産グループの「サン・インターナショナル」を一代で築いたソル・カーズナー(Sol Kerzner、1935年生まれ、ロシアからのユダヤ人移民の二世)の手によるものである。彼はサバンナの中にリゾートホテル・遊園地・ゴルフ場などからなる白人専用の一大娯楽地域を建設し、1979年12月7日にオープンさせた。


当時この地域は、南アフリカ政府のアパルトヘイト政策の過程で誕生したバントゥースタン(黒人居住国家)のひとつ、ボプタツワナに属していた。ボプタツワナは南アフリカ政府によって「独立」させられていたため(もっとも南アフリカ以外、どこの国家もこの独立を承認しなかったが)、サンシティでは南アフリカ国内で禁じられていた「モラルに反した」娯楽、たとえば賭博やトップレス・レビューなどが合法的に営業できた。これらの要素、およびプレトリアヨハネスブルグなどの南アフリカ最大の大都市圏から近距離にあることから、サンシティはたちまち白人たちの休日や週末のための行楽地となった。カジノは多くの人々をサバンナのただ中のリゾートに招き寄せ、6,230席の大コンサートホール・「サンシティスーパーボウル(Sun City Super Bowl)」ではクイーンやエルトン・ジョンといった大スターを高額の出演料で呼び寄せて連日公演を行った。

この曲"Sun city"は、大金につられてそんな場所で演奏していたミュージシャンたちを同じミュージシャンの立場から批判し、「自分たちはサンシティでは演奏しない」と宣言する多数の"rockers and rappers"によって録音されている。当初はサンシティに出演していたミュージシャン達のことを曲中で名指しで糾弾することも予定されていたらしいが、諸般の事情でその部分はカットされたらしい。ちなみに下に紹介するのはそのとき名前を挙げられるはずだったミュージシャンのリストである。

 クイーン
 エルトン=ジョン
 アイザック=ヘイズ
 フランク=シナトラ
 ビーチ・ボーイズ
 リンダ=ロンシュタット
 フリオ=イグレシアス
 ジ・オージェイズ
 シカゴ
 レイ=チャールズ
 ジ・オズモンズ
 ポール=アンカ
 ボニー=M
 ブラック・サバス
 ロッド=スチュワート
 ティナ=ターナー
 ディオンヌ=ワーウィック
 サラ=ブライトマン
 オリヴィア=ニュートン=ジョン
 ローラ=ブラニガン
 ミリー=ジャクソン
 カーティス=メイフィールド
 シェール
 ライザ=ミネリ

…不覚にもこのブログでは既にエルトン・ジョンの曲とロッド・スチュワートの曲を取りあげてしまっているが、確かにそんな場所で演奏していたミュージシャンは名指しで批判されるのが当然だと思う。そして「そんなやつらの音楽など二度と聞くものか」と全世界から思われるのが当然だと思う。"We are the world"のことは知っていてもこの"Sun City"という曲については何も知らずにいたこと、また知らずにいられたことを、私はとても恥ずかしいと感じた。

この曲についての詳しいことを私が初めて教えられたのは、以下のリンク先の方の熱い文章を通してである。
『僕たちの国境』~『Sun City』: Mersey Paradise
曲に関してはこの方の記事を読んでもらうのが一番いいと思うので、このブログでは歌詞と対訳だけを掲載したい。


Artists United Against Apartheid - Sun City (Official Video)

Sun City

Ah, Sun City
Na na na na na, Sun City
A way to South Africa

ああ サンシティ
なーななななな サンシティ
南アフリカへの道



We're rockers and rappers
United and strong
We're here to talk about South Africa
We don't like what's going on

われわれロッカーとラッパーは
団結して強く訴える
南アフリカの話だ
あそこで起こっていることが気に入らない



It's time for some justice
It's time for the truth
We've realized there's
Only one thing we can do

正義のための時
真実のための時
われわれにできることはたったひとつだということを
われわれは知っている



We got to say I, I, I
Ain't gonna play Sun City
I, I, I ain't gonna play Sun City
Everybody say I, I, I
Ain't gonna play Sun City
I, I, I, I, I ain't gonna play Sun City

行くぞ おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
みんなで言おう おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない



Relocation to phony homelands
Separation of families
I can't understand

ホームランド」への移住の強制
バラバラにされる家族
とても理解できない



23 million can't vote
'Cause they're black
We're stabbing our brothers
And sisters in the back

2300万人が投票できない
黒人だというだけで
われわれは自分の兄弟姉妹を
裏切っているんだ



I wanna say I, I, I
Ain't gonna play Sun City
I, I, I ain't gonna play Sun City

だから言いたい おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
おれは 私は ぼくは サンシティでは演奏しない



Our government tells us
We're doing all we can
Constructive engagement is
Ronald Reagan's plan
Meanwhile people are dying
And giving up hope
Well, this quiet diplomacy
Ain't nothing but a joke

われわれの政府は
できることはやっていると言う
かれらの言う建設的な関与とは
ロナルド・レーガンの政策に従うこと
人が死んでるのに
希望が断たれているのに
外交のこの静けさは
ジョークでしかない



I, I, I ain't gonna play Sun City
I, I, I ain't gonna play Sun City

おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない



It's time to accept our responsibility
Freedom is a privilege
Nobody rides for free
Look around the world, baby
It cannot be denied
Somebody tell me why
We're always on the wrong side

われわれの責任を直視しよう
自由は責任のともなう権利であって
タダ乗りしていい権利ではない
世界を見渡してみろよ
誰にもそれは否定できない
どうしてわれわれはいつも間違った側にいるのかって
誰かが言ってたよ



I, I, I ain't gonna play Sun City
I, I, I ain't gonna play Sun City

おれは 私は ぼくは サンシティでは演奏しない
おれは 私は ぼくは サンシティでは演奏しない


Boputhuswana is far away
But we know it's in South Africa
No matter what they say
You can't buy me
I don't care what you pay
Don't ask me Sun City
Because I ain't gonna play

ボプタツワナは遠いところだ
でもそれが南アフリカにあることぐらい知っている
誰が何と言おうと
われわれは買収されない
いくら出されても知ったことじゃない
頼んでもムダだ
サンシティでは演奏しないから



I, I, I ain't gonna play Sun City
Lemme hear you say
I, I, I, I, I, I
Ain't gonna play Sun City
I don't wanna play Sun City

おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
聞かせてくれ
おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない



Relocation to phony homelands
Separation of families
I can't understand

ホームランド」への移住の強制
バラバラにされる家族
とても理解できない



23 million can't vote
'Cause they're black
We're stabbing our brothers
And sisters in the back

2300万人が投票できない
黒人だというだけで
われわれは自分の兄弟姉妹を
裏切っているんだ



I, I, I ain't gonna play Sun City
I, I, I ain't gonna play Sun City...

おれは 私は ぼくは
サンシティでは演奏しない
おれは 私は ぼくは サンシティでは
演奏しない

ホームランドバントゥースタン - Wikipedia

Wikipediaのこの曲についての記事では、以下のような印象的なエピソードも紹介されていた。

ヴァン・ザントはイントロにマイルス・デイヴィスの演奏を数秒間入れようとしたところ、マイルスはなんと7分間も演奏し、「マイルスの演奏を6分も捨てることはできない」という思いからハービー・ハンコックトニー・ウィリアムスロン・カーターと共にジャズ・ヴァージョンをまとめ上げて、アルバム『サン・シティ』に「The Struggle Continues」という曲名で収録した。



この「The Struggle Continues (闘いは続く)」という7分03秒の曲もyoutubeで見つけることができたので、貼りつけておきたい。


Artists United Against Apartheid - The Struggle Continues
ではまたいずれ。

サン・シティ

サン・シティ

  • U2
  • ロック
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