華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Buckets of Rain もしくはアイデン&ティティ24歳 (1975. Bob Dylan)

 

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前回は「乞うご期待」で終わったのだけど、何ですって?"お題「雨の日に聴きたい曲」"?「今週のお題」の他にそういうのもあったとは知らなかった。いつもはお題に合わせるためにかなり無理をしながら翻訳する曲を選んでいるのだけど、これだけストレートにブログのテーマに合わせたお題をぶつけられてもそれはそれで困ってしまう。まだ翻訳していない「雨の曲」だけで、いったい世の中には何曲あるというのだろう。

…と、とりあえず言ってはみたものの、日本語以外の曲で私自身が本当に「雨の日に聞きたい曲」といえば、実は一曲しかない。上のジャケットの人の上のアルバムに入っている「雨のバケツ」という曲である。ディランの曲はこのブログでは取りあげないと以前に明言したことがあるけれど、聞かれた以上は正直に答える他ない。とはいえ、やっぱり自分の言葉で翻訳する気にはなれないので、訳詞は今回も片桐ユズルさんである。また動画は、案の定と言うか何と言うか上のアルバム「血の轍」に入っている本人歌唱のものはyoutubeに上がっていなかったので、いろいろ聞いた中で一番ギターのカバーが上手かった人の演奏を貼り付けることにしました。


Buckets Of Rain - Bob Dylan cover performed by Jason Herr

Buckets Of Rain

日本語詞:片桐ユズル

Buckets of rain
Buckets of tears
Got all them buckets comin’ out of my ears
Buckets of moonbeams in my hand
I got all the love, honey baby
You can stand

雨のバケツ
なみだのバケツ
いろんなバケツが耳からあふれている
月のバケツが手でひかる
愛はみんな君のもの
ほら、おれはできるぜ


I been meek
And hard like an oak
I seen pretty people disappear like smoke
Friends will arrive, friends will disappear
If you want me, honey baby
I’ll be here

おれはやさしくカシノキのようにかたかった
きれいなひとたちが煙のように消えるのを見た
友だちは来て、
友だちは去る
おれがほしいなら、
ほら、ここにいるよ

 

Like your smile
And your fingertips
Like the way that you move your lips
I like the cool way you look at me
Everything about you is bringing me
Misery

きみのわらいと指先がすきだよ
きみのおしりのうごかしかたがすきだ
おれを見るときの冷たさがすきだ
きみのすべてがおれをみじめにする

 

Little red wagon
Little red bike
I ain’t no monkey but I know what I like
I like the way you love me strong and slow
I’m takin’ you with me, honey baby
When I go

ちいさな赤い車
ちいさな赤いバイク
おれはサルじゃないけれど
自分のすきなものは知っている
おれを愛するときの力強さとゆるやかさがすきだよ
いっしょにいくんだよ
ほら、いくんだよ

 

Life is sad
Life is a bust
All ya can do is do what you must
You do what you must do and ya do it well
I’ll do it for you, honey baby
Can’t you tell?

生きることはかなしいよ、
生きることはさわぎだよ
できることは
しなきゃならないことなのさ
しなきゃならないことを
するんだよ
だからうまくできるのさ
きみのためにするよ
ほら、わかるかい

=翻訳をめぐって=

  • Got all them buckets comin’ out of my ears/ Buckets of moonbeams in my hand…my ears(私の耳)、my hand(私の手)の"my"にあたる部分を、なぜか片桐さんは訳していない。
  • I got all the love, honey baby/ You can stand…現在確認できる公式歌詞は"You can stand" になっている。「きみはできるぜ/ きみなら大丈夫」と訳さなければおかしい。
  • meekという言葉は「やさしい」と言うよりはむしろ「臆病な/気が弱い」という意味で訳すべき言葉だと思う。
  • Like the way that you move your lips…ここも現在の公式歌詞はhipではなくlipなので、「おしり」ではなく「くちびるの動かし方」。片桐さんの時代に確認できた歌詞は誤植だらけだったのかもしれないが、しかしディランという人自身、自分の歌の歌詞をしょっちゅう変える人なので、その都度こうやって確認するしかないのだと思う。
  • 前後するけど fingertips は「指先の動き」と訳すべきだと思う。
  • Life is sad/ Life is a bust...いろいろ意見はあるけど、やっぱりこの最後の部分をこういう日本語で訳したのは片桐さんだったわけで、その訳詞に私が手を加えることはできないし、自分で別の訳詞を作ろうという気にもなれない。見解を述べるにとどめさせてもらいます。

ではまたいずれ。改めて次回に乞うご期待。

 

アイデン&ティティ 24歳/27歳 (角川文庫)

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