華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Kilkelly もしくは案山子 3300マイル (1988. Moloney, O'Connell & Keane)

アメリカ・メリーランド州在住のピーター・ジョーンズの曽祖父が、アイルランドのメイヨー州キルケリーという小さな村を後にしたのは、130年前のことだった。ある日ジョーンズは、曽祖父の父親がキルケリーから息子に宛てた手紙の束を発見した。手紙はアイルランドに残された家族が息子を気づかい、愛し続けていることを繰り返し述べていた。最後の一通は、30年の間ついに再会できなかった父の死を伝えるものだった。息子と故郷を結ぶ最後の絆は、ここで断ち切られる。この手紙の束を素材としてピーター・ジョーンズは「キルケリー」を書き、伝統に深く根ざした音楽活動を続けている「グリーンフィールズ・オブ・アメリカ」の3人のメンバーに託した。この曲は知られている限り「移民の手紙の言葉そのものから」書かれた唯一の曲である。

ーイギリスBBC放送がアイルランドの音楽を特集した番組のサントラCD “Bringing It All Back Home” 日本語版ライナーノーツよりー


Robbie O'Connell & Finbar Clancy - Kilkelly Ireland Song (1995)

Kilkelly

Kilkelly Ireland 1860, my dear and loving son John
You good friend the schoolmaster Pat McNamara
So kind to write these words down
And your brothers have all gone to find work in England
The house is so lonely and sad
The crop of potatoes is sorely effected
The third to a half of them bad
And your sister Bridget and Patrick O'Donald
Are going to be married in June
Mother says not to work on the railroad
Be sure to come on home soon

アイルランド、キルケリーにて。
1860年。
親愛なるわが息子、ジョンへ。
おまえの友だちで学校の先生をやっている
パット・マクナマラが、私の言うことを
こうやって書きとってくれている。
おまえの兄弟はみんな仕事を探して
イングランドに行った。
うちはがらんとして、さびしい。
今年のジャガイモは病気にやられて
3分の1か半分ぐらいはだめだ。
そうそう。おまえの妹のブリジットと
パトリック・オドンネルが
6月に結婚することになった。
母さんは鉄道の現場では働かないでほしいと言っている。それと、早く帰ってくるようにってね。



Kilkelly Ireland 1870, my dear and loving son John
Hello to your missus and to your four children
And may they grow healthy and strong
And Michael has got in a wee bit of trouble
I suppose that he never will learn
Because of the dampness, there's no turf to speak of
And so we have nothing to burn
And Bridget she's happy to name the child for them
Although she has six of her own
You say you've found work but you don't say what kind
When will you come on home

アイルランド、キルケリーにて。
1870年。
親愛なるわが息子、ジョンへ。
おまえの連れ合いと
4人の子どもたちによろしく。
みんなが元気にたくましく育ちますように。
マイケルはちょっとした面倒に巻き込まれているが
あいつはまったく懲りないようだ。
湿っぽい天気のせいで
ピート【泥炭】は話にならず
私たちにはもう燃やすものもない。
ああ、ブリジットはお前が子どもに
名前をつけてくれたからと言って喜んでいる。
彼女にはもう6人も子どもがいるのだよ。
仕事を見つけたと言うが、
どんな仕事か書いてないな。
それにいつごろ帰ってこれるのかも。



Kilkelly Ireland 1880, Dear Michael and John my sons
I'm Sorry to give you the very sad news
That your dear old mother passed on
And we buried her down at the church in Kilkelly
Your brothers and Bridget were there
You don't have to worry, she died very peaceful
Remember her in your prayers
And it's good to hear that Michael's returning
With money he's sure to buy land
The crops have all failed and people are selling
For any price that they can

アイルランド、キルケリーにて。
1880年
親愛なるわが息子、ジョンへ。
悲しいことを知らせなければならない。
母さんが死んだ。
キルケリーのあの教会に母さんを埋めた。
ブリジットとお前の弟たちも見送った。
気に病むことはない。
母さんは苦しまずに逝ったから。
お祈りの時には、母さんのことを思い出すように。
それから、土地を買えるだけの金を持って
マイケルが帰って来るというのはとてもいいことだ。
収穫はもうずっと悪く、
みんな捨て値で自分の土地を売ろうとしてるから。



Kilkelly Ireland 1890 my dear and loving son John
I suppose that I must be close on to eighty
It's thirty years since you've gone
And Because of all the money you sent me
I'm still living out on my own
Michael has built himself a fine house
And Bridget daughters have grown
And thank you for sending the family picture
Such lovely young women and men
They say that you might even come for a visit
What a joy to see you again

アイルランド、キルケリーにて。
1890年。
親愛なるわが息子、ジョンへ。
80になったら私もおしまいだと思う。
お前が行ってから30年がたった。
お前が送ってくれた金のおかげで
私はまだ自分のことは何とかできている。
マイケルは自分で立派な家を建てたし
ブリジットの娘たちも大きくなった。
お前の家族の写真を送ってくれてありがとう。
みんな素敵な娘さんと若者になったな。
遊びに行くかもしれない、
と書いてくれたが
お前に会えたらどんなにうれしいことだろうか。



Kilkelly Ireland 1892, my dear brother John
I'm sorry I didn't write sooner to tell you
The dear old father has gone
He was living with Bridget, they say he was cheerful
And happy right up to the end
I wish you had seen him play with the grandchildren
Of Pat McNamara your friend
And we buried him down alongside of mother
Down at Kilkelly churchyard
He was a strong and a feisty old man
Considering his life was so hard
And it's funny the way he kept asking about you
He called for you at the end
Why don't you think about coming to visit?
We'd all love to see you again

アイルランド、キルケリーにて。
1892年。
親愛なるジョン兄さんへ。
すぐに手紙が書けなくてごめんなさい。
父さんが亡くなりました。
父さんはブリジットと一緒に住んでいましたが
最後まで明るく元気だったそうです。
ああ、父さんが
パット・マクナマラさんの孫たちと
一緒に遊んでいる姿を兄さんが見てくれていたなら。
僕らは父さんを母さんの横に埋めました。
あのキルケリーの教会の墓地に。
父さんは強くて、怒りっぽい人でした。
自分の人生はとてもつらかった、
と思っていました。
いつでもおかしいぐらいに
兄さんのことばかり話し、
息を引き取るときにも兄さんを呼んでいました。
一度遊びに来ませんか。
みんなまた兄さんと会えるのを楽しみにしています。

私からの追伸:ポーグスの "Thousands Are Sailing" の訳詞と一緒に読んでもらえたら、うれしいです。

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BRINGING IT ALL BACK HOME-アイリッシュ・ソウルを求めて-

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