華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Know Your Enemy もしくはアメリカンドリームな人たちにはみんな死んでほしいねって昔そういえば宮本浩次が言ってたっけ (1992. Rage Against the Machine)


いちおう言っとくならエレファントカシマシのボーカルのあの宮本ヒロジのことね。「タイトでキュートなヒップがシュールなジョークとムードでテレフォンナンバー」歌ってたのは宮本コージさんですからね。20年前に宮本浩次について語る時にはそういう注釈が必ず必要だったのだけど、今コージさん何やってるんでせうかね。ちなみにエレカシなんて今では名前を聞くのもイヤである。あんなもん、本当に単なる右翼でしかない。ああいう、自分自身のこと以外には何も関心を持たないような人間にどうして当時は共感したりアコガれたりすることができていたのか今では皆目わからない。もっとも、「わからない」などというのは無責任な態度であって、ちゃんと反省しないといけないと思う。そうしないと、「日本の神を中心にして立派な国を作りたい」などという曲で飛んだり跳ねたりしていた過去を持つ人間として、アジアのみなさんの前に申し訳が立たない。

そのでんで行くなら、氣志團なんか好きだったことについても、真剣な反省が必要なことを自覚している。私の過去は、恥まみれなのである。

7月1日が香港返還20ヶ年だったなら、明日7月4日は241回目のアメリカ独立記念日だ。だとしたらやっぱり、取りあげなければいけないのはこの曲なのだろうなと思った。


Rage Against the Machine - Know Your Enemy - 7/24/1999 - Woodstock 99 East Stage (Official)

Know Your Enemy

Huh!
Yeah, we're comin' back in with another "Bombtrack"
Think ya know it's all of that, HUH!
Hey yo, so check this out...
Yeah...
Know your enemy!
Come on!

おーし
新しい爆弾曲を抱えて戻ってきてやったぜ。
おまえらには全部、わかってると思う。
おいよぉ しっかり聞けよ。
ああぁ…
敵は誰だか覚えとけ!
行くぞ!



Born with insight and a raised fist
A witness to the slit wrist
As we, move into '92
Still in a room without a view
Ya got to know, ya got to know
That when I say go, go, go!
Amp up and amplify
Defy, I'm a brother with a furious mind
Action must be taken
We don't need the key, we'll break in

だまされない心と
振り上げた拳を持って生まれた者よ。
リストカットの目撃者よ。
おれたちは1992年にもなって
まだ何も見えない部屋に閉じ込められてる。
覚えとけよ。忘れんなよ。
おれがGOって言ったら合図だ。
テンション上げろ。ボリューム上げろ。
関係ないって言ってやれ。
おれは暴れる心のともだちだ。
行動が必要だぞ。
カギなんか要るもんか。
ぶち破って入るんだよ。



Something must be done
About vengeance, a badge and a gun
Cause I'll rip the mike, rip the stage, rip the system
I was born to Rage Against 'em!
Fist in ya face in the place and I'll drop the style clearly...
Know your enemy!

何かやらなくちゃいけないんだ。
議員バッジや銃をぶらさげたやつらに
やり返してやりたいって思わないかよ。
だからおれはマイクを引きちぎり
ステージを切り裂き
システムをズタズタにする。
おれはやつらに怒りをぶつけるために生まれてきた!
おまえの顔面にだろうとどこにだろうと
拳はただしく振り下ろされる。
そしておれは
自分のやり方をハッキリさせてやる。
敵が誰だか覚えとけ!



Know your enemy!
敵を間違えるんじゃねえぞ!


Yeah!
Hey yo, and get with this... uggh!

ああ
おいよぉ しっかり受けとめてくれよ…があ!



Word, is, born!
Fight the war, FUCK the norm!
Now I got no patience
So sick of complacence
With the D, the E, the F, the I, the A, the N, the C, the E
Mind of a revolutionary, so clear the lane
The finger to the land of the chains
WHAT?! The "land of the free?"
Whoever told you that is your enemy!
Now something must be done
About vengeance, a badge and a gun
Cause I'll rip the mic, rip the stage, rip the system
I was born to Rage Against 'em!
Now action must be taken
We don't need the key, we'll BREAK IN!!

おれに二言はない!
戦争と戦え!空気なんか読むな!
おれはもうガマンできない。
自己満足なやつらにはうんざりだ。
叛、逆と、抵、抗の、名の、もと、に、だ。
革命家の心を持て。そうやって道を切り開け。
鎖でおまえをがんじがらめにする
国家に中指を立ててやれ。
あんだって?
「自由の国」だって?
おまえにそんなことを教えたやつらは
みんなおまえの敵だ!
何かやらなくちゃいけないんだ。
議員バッジや銃をぶらさげたやつらに
やり返してやりたいって思わないかよ。
だからおれはマイクを引きちぎり
ステージを切り裂き
システムをズタズタにする。
おれはやつらに怒りをぶつけるために生まれてきた!
行動が必要なんだ。
カギなんか要るもんか。
ぶち破って入るんだよ。



I've got no patience now...
So sick of complacence, now...
I've got no patience, now...
So sick of complacence now..
Sick of, sick of, sick of, sick of...you..
Time...has...come...to...PAY!!!
Know your enemy!

おれはもーおガマンできねえ…
自己満足にはもーおうんざりだ…
おれはもーおガマンできねえ…
自己満足にはもーおうんざりだ…
うんざりうんざりおまえらにうんざり…
ツケを…払ってもらう…時が…来たぜえ!
敵が誰だか覚えとけ!



Come on!
Yes, I know my enemies!
They're the teachers who taught me to fight me!
Compromise! Conformity! Assimilation! Submission!
Ignorance! Hypocrisy! Brutality! The elite!
All of which are American dreams!
All of which are American dreams!
All of which are American dreams!
All of which are American dreams!

行くぞ!
そうだおれは敵が誰だか知ってるぞ!
自分と戦えっておれに説教してたやつらこそ
おれの敵なんだ!
敵は妥協だ! 画一性だ! 同化主義だ! 服従だ!
無知だ! 偽善だ! 残虐さだ!エリートの連中だ!
アメリカンドリームってやつこそが敵だ!
アメリカンドリームなやつらはみんな敵だ!
アメリカンドリームに群がるやつら!
アメリカンドリームをばらまくやつら!



All of which are American dreams!
All of which are American dreams!
All of which are American dreams!
All of which are American dreams!

アメリカンドリームを教えるやつら!
アメリカンドリームを信じるやつら!
アメリカンドリームにまつわるすべて!
アメリカンドリームなやつらこそ敵なんだってことをよぉーく覚えとけ!


Rage Against The Machine: Know Your Enemy

=翻訳をめぐって=

Rage Against the Machine に関しては、私なんかよりよっぽど深い思い入れを持った先輩たちがネット上にたくさん存在している。その人たちの書いた記事や翻訳を読んだ上でなければ、私自身の上記の試訳もとても完成させることはできなかった。感謝と敬意を込めて、参考にさせていただいたサイトへのリンクを貼っておきたい。

ロックで社会問題を考える会
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」の魅力
Know Your Enemy : Rage Against The Machine - 工場日記
弱い文明
Rage Against the Machine – Know Your Enemy Lyrics | Genius Lyrics

  • Born with insight and a raised fist…ヒップホップの歌詞というのは本当に「文法おかまいなし」なので、他の人の耳にどう聞こえているのかを参考にしなければとても正確に翻訳できない。この1行目からして、「振り上げた拳を持っておれは生まれた」と言っているのか「振り上げた拳を持って生まれた者よ」と呼びかけているのか、私にはどう聞き分ければいいのか分からない。後者で訳しているのは他の人の丸写しでしかない。なぜ後者だと確言できるのか、分かる人には教えてほしいです。
  • A witness to the slit wrist…他の人たちと同様、この部分が何を言っているのかは私にもよく分からない。自傷行為に「走ってしまう」人たちに対し「敵を間違えるな」と呼びかけているのではないかと海外のサイトには書かれていたが、自分の手首を傷つける人には傷つけずにいられない理由が必ずあるのであって、そういう人に対してそういう説教を簡単に投げつけるべきではないと思う。私がそう書くのは、私自身が同じような「説教」をして、人を傷つけてしまった経験を持っているからである。
  • As we, move into '92…アメリカのサイトでは、オーウェルの「1984年」からさらに8年も経って、という意味なのだということが言われていた。昨日の香港もディストピア、今日のアメリカもディストピア、である。評論するのではなく、我々としては自分らの住む日本もまた、と言うか日本こそディストピアであることをハッキリ示すことでこういう曲に「こたえて」行かなければならないと思うのだけど、それは別に必ずしも音楽でやらねばならないことではないし、ブログでやらねばならないことでもない。だから、黙っとく。
  • Hey yoを「おいよぉ」と翻訳するのは、Theピーズの「電車でおでかけ」という曲にちなんでいる。こんなにやさしくて暖かくて悲しくなるような間投詞を私は他に知らない。


電車でおでかけ


れっじあげいんすざまっしーんと言えば、思い出されるのはそれこそちょうど20年前。台風の中で無理やり開催されて惨憺たる大失敗に終わってしまった、第1回目のフジロック・フェスティバルのことである。あのとき、私もそこにいた。誰が見たいという目当てがあって、行ったわけではなかった。その年の春に学校を卒業してから、なぜか何も言わずに私の前からいなくなってしまった好きだった人に、そこに行けば会えるのではないかと思って、原チャリで県境を4つもまたいで、鳴沢村の天神山スキー場まで、行ったのだった。

フェスティバルは出だしから、あまり幸先のよくない感じが漂っていた。空はどんよりして既に小雨が降っていて、会場には雨宿りできるような設備もなくて、ステージに挨拶に出てきた主催者の人に大声で不満をぶちまけているような観客が、いっぱいいた。

その主催者の人は、日本で最初のロックフェスティバルを何としても成功させねばという責任感に押しつぶされそうになっていることが、割と早く着いてステージに近いところにいた私には、痛いほど伝わってきた。その人が「みんな仲間じゃないか!」と何度も叫んでいたのを、よく覚えている。ロックは民主的でなければならない、この場から民主主義が作り出されなければならない、そういうその人の信念と言うか思想性が、しかしあの場では、本当に悲しく空回りしていた。

「荷物ぐらい、濡れない場所に置けないのかよ!」と誰かが叫んだ。「ステージの下が空いてるじゃないか!」とまた誰かが叫んだ。民主主義的良心の権化のようなその主催者の人は、それに答えなければならないと思ったようだった。「わかった!」とその人は言った。「確かにそれは、いい意見だ。ステージの下を荷物置き場にしよう。じゃあ、後ろの方にいるみんなは、自分の持ってる荷物を、前のやつらに手渡しでここまで送り届けてやってくれ!」

…とんでもないことを、その人は言ってしまったのだった。

たちまち、傘やらカバンやらカッパやらの類が、ステージに向かってすごい勢いで「飛んで」きた。あんなにいろんな訳のわからないものが空を飛んでいる光景は、後にも先にも見たことがない。重たいものや硬いものや、危ないものもずいぶんと飛んでいた。誰も、主催者の人が願望したように、秩序正しく順ぐりに手渡しで自分の荷物を前に送ろうとはしていなかった。ただもう、放り投げていたのだ。まして、他人の荷物なんて、誰も丁寧に扱おうとはしていなかった。

民主主義への固い確信をこの上なく無残な形で打ち砕かれたその主催者の人の顔を、私はそれ以上正視していることができなかった。あのとき空を舞ってステージの前に積み上げられてガラクタの山と化してしまったいろんな人たちにとっての大切な荷物は、一体どうなってしまったのだろうと私は今でも時々思う。

それから、実にいろいろなことが起こったが、「音楽」に関する記憶は、ほとんどない。

前の方で踊っている人たちの中に入って行けば死ぬほど暑くなって、そこから離れて人のいないところに行けば死ぬほど寒くなって、ただただそれの繰り返しだった。

好きだったその人の姿は、見つけられなかった。どこにいてどんな格好をしていたって見つけられると信じていたのに、見つけられなかった。「パナウェーブ」の事件って、あの頃だったっけ。みんな、あんな格好をしていた。白いカッパに一様に身を包んでいて、誰もかれもが同じように見えた。そのひとりひとりの顔をそれとなく覗きこみながら、私は会場をウロウロしていた。何人かの人があからさまに気持ち悪そうな顔をして、私の前から離れていった。


雨がいよいよ本降りになってきた中で出てきたれっじあげいんすざまっしーんのステージは、後々になって「熱気の水蒸気の中に神々しく浮かび上がる伝説の演奏」として語り継がれることになったらしいが、私の目に焼きついているのは、ひたすら悲壮な光景の記憶である。

「踊る空間」を作り出すために周りの観客に体当たりして場所を広げている男のことを、誰かが後ろから殴りつけていた。私も殴ってやりたかったが、目をつけられたらどこにも逃げ場がないことが明らかだったので、できなかった。例の「水蒸気」でほとんど窒息しそうになっている私たちの上を、ダイブした、と言うより人の肩を土足で踏んづけてよじ登ったのであろう何人かの男たちがゴロゴロと転がって行った。私の側にいたアメリカ人的な外人の人が「ふぁっきんあすほーる!」と叫んでそいつのことを遠くに放り投げた。アメリカの人って本当に「ふぁっきんあすほーる」って言うんだと、その男性がアメリカ人であるという確信もないままに、私は思った。

私の反対側では小柄な女性が悲鳴をあげながら、前の方で体をぶつけ合っている人間のうねりの中に、引きずり込まれていた。その背中に向かって必死で手を伸ばしながら、彼氏っぽい男性が「ユミーーーっ!」と絶叫していた。私もユミさんも、よく生きていたものだと思う。少なくとも翌日の新聞に、ユミさんの死亡記事は載っていなかった。

最後に出てきたレッドホットチリペッパーズの皆さんは、とても、頑張っていた。最後にふさわしい迫力のある演奏をしようと、半裸の上半身に力こぶをみなぎらせて、熱演していた。でもその両側で何十人ものスタッフが、照明塔が風で押し倒されないように必死で押さえつけている真ん中での熱演は、冗談のようにしか思えなかった。どう見てもスタッフの人たちの姿の方が、真剣な迫力にあふれていた。

そしてレッチリの人たちは、確か、途中で演奏をやめたのだったと思う。最後にギターやドラムセットをめちゃめちゃに破壊して、ステージを降りて行った。高価な楽器があんな風に叩き壊されるのを見たのはもちろん初めてだったし、そのサービス精神はとても有難いものだと思ったが、いかんせんそれは、「敗北宣言」にしか見えなかった。ロックも大自然には勝てないのだということを、私は思い知らされていた。誰もいなくなったステージが、人間の30倍ぐらいありそうな巨大なステージが、台風の風に振り回されて、ぐわんぐわんと揺れていた。

何かあの時で、一生分の「ロック」は、見尽くしてしまった気がする。私がそれと違う生き方を選ぶことにしたのも、大きくはそのせいだったのかもしれないと今では思う。少なくともあの日以来、それまで無邪気に信じていたようには音楽というものを「信じる」ことが、私にはできなくなった。そしてそれは間違いなく「いいこと」だったのだと、今では思う。

では、今の私は、何を信じているかって?


Rage Against the Machine - Yamanashi, Japan 1997



それはヒミツです。

ではまたいずれ。