華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Englishman in New York もしくは25歳と364日 (1987. Sting)

大阪人でくくらんといてや
生まれは奈良やから
こっちやとわからへんけど
アクセントちょっとちゃう
オレ関西人inトーキョー

阪神ファンでくくらんといてや
オレ巨人ファンやから
せやけど六甲おろし
歌える カンペキ フルコーラス

おーお ほんまエイリアン
何かちょっとちゃうエイリアン
オレ関西人inトーキョー

コンパに呼ばれて
突っ込みまかされて
中途半端なボケかまされて
「おもしろい人ね」って
「大阪の人は」って
だから違うんだオレは奈良生まれだ…



種浦マサオ「関西人inトーキョー」2007年ー


Sting - Englishman In New York

Englishman In New York

I don't drink coffee I take tea my dear
I like my toast done on one side
And you can hear it in my accent when I talk
I'm an Englishman in New York

コーヒーは飲まないんだ。
紅茶にしてくれたまえ。
それからトーストは片面焼きが好きなんだ。
私の話し方で分からないかな。
ぼくはニューヨークの英国人男性。


See me walking down Fifth Avenue
A walking cane here at my side
I take it everywhere I walk
I'm an Englishman in New York

五番街を歩く私の姿を見てくれたまえ。
かたわらにはちゃんとステッキ。
いつも持ち歩いてるんだよ!
ぼくはニューヨークの英国人男性。


I'm an alien, I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York
I'm an alien, I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York

ぼくはエイリアン。
合法滞在外国人。
ぼくはニューヨークの英国人男性。


If "Manners maketh man" as someone said
Then he's the hero of the day
It takes a man to suffer ignorance and smile
Be yourself no matter what they say

誰かが言ったように
「礼儀作法が人をつくる」ものだとすれば
それをやってのけた人は時代の英雄だね。
無知な人間の相手をする時にも
ほほえみを絶やさず
誰が何と言おうと自分のやり方を
つらぬかなくちゃいけないわけだからね。


I'm an alien, I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York
I'm an alien, I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York

ぼくはエイリアン。
合法滞在外国人。
ぼくはニューヨークの英国人男性。


Modesty, propriety can lead to notoriety
You could end up as the only one
Gentleness, sobriety are rare in this society
At night a candle's brighter than the sun

つつしみ深さや上品さというものは
時として人の悪口のネタにされるものだ。
いずれきみはひとりぼっちに
なってしまうかもしれないが
オンリーな人であることは
別にロンリーなことではない。
おだやかさや冷静さというものは
この社会では稀なものだが
夜のろうそくの灯りは時として太陽よりも
明るいものだとは思わないかね?


Takes more than combat gear to make a man
Takes more than a license for a gun
Confront your enemies, avoid them when you can
A gentleman will walk but never run

オトコらしくなりたいのなら
戦闘服なんかじゃダメだよ。
銃のライセンスでもダメだね。
君子アヤウきにチカよらず。
紳士は走ったりしない。
いつも悠然と歩いているもの
さ。


If "Manners maketh man" as someone said
Then he's the hero of the day
It takes a man to suffer ignorance and smile
Be yourself no matter what they say [3x]

誰かが言ったように
「礼儀作法が人をつくる」ものだとすれば
それをやってのけた人は時代の英雄だね。
無知な人間の相手をする時にも
ほほえみを絶やさず
誰が何と言おうと自分のやり方を
つらぬかなくちゃいけないわけだからね。


I'm an alien, I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York
I'm an alien, I'm a legal alien
I'm an Englishman in New York

ぼくはエイリアン。
合法滞在外国人。
ぼくはニューヨークの英国人男性。

=翻訳をめぐって=

  • 以前にも書いたことがあるけれど、昔はともかく今の私はスティングという人のことを全然好きではない。だから翻訳にはどうしても悪意が混じってしまう。いったん悪意が混じってしまうと、ふだん意訳はいけないとか「さしづめ」で訳することには問題があるとか言ってる自分の原則的な態度も吹っ飛んで、全部が「悪」意訳になってしまう。だったら翻訳しなければいいと言われるかもしれないけれど、そういうわけにも行かない。「悪意をぶつけたい欲求」が私の中にあるからである。
  • 他の邦訳サイトを見ると、「『自分自身であること』を高らかに歌った歌」であるとか「誇りを持って自分を貫く大切さを再確認する一曲」だとかいった賛辞があふれているのだけど、私に言わせるならこの歌はどう見たってそんなカッコのいい歌ではない。「キング・オブ・ペイン」の時と同んなじように、スティングはここでも徹底的に「道化」を演じているにすぎないと思う。紅茶がどうとかトーストがどうとか言ってるけれど、ロンドンで暮らしてる時にスティングは果たして肌身離さずステッキを持っているのだろうか?絶対、持ってないと思うよ。東京に滞在中のある種の関西人が地元では絶対使わないようなデンガナマンガナ言葉をあえて使ってみせるのと同じ感覚で、スティングは「アメリカ人にウケそうなイギリス人像」をことさら大げさに演じてみせているだけなのだ。それのどこが「誇りを持って自分を貫いている人間」の態度だと言えるだろう。しかもそうした「自虐」の仮面の下に隠れて、実はスティングは徹底的にアメリカ人のことを見下しているのである。そのための「自虐」のポーズなのである。それがむかつくのだ。見下すなよ。人を。そういうのを日本語では「慇懃無礼」と言うのだ。スティングのおっさんよ。い・ん・ぎ・ん・ぶ・れ・い。Can you take in?
  • 「おんりぃいずのっとろんりぃ」というのは言わずと知れた糸井重里からの引用だけど、私は糸井重里という人のことも全然好きではない。ただただ「こおゆう歌詞を書く人たちというのはさぞかしこおゆう言葉が好きなのだろうなー」という想像から出てきた訳文でしかない。私は、まったくそういうのは好きになれない。「おんりぃいずのっとろんりぃ」で茶化せるようなロンリーを、人はロンリーとは言わないのである。あんたら、知らんだろ。本当のロンリーを。ロンリーはな。ロンリーなんだよ。
  • legal alien というのは、ニューヨークはもとより日本や世界のあちこちで "illegal alien (「不法滞在外国人」)としての生活を強いられている数えきれないくらいの人たちに対し、完全にケンカを売っている表現である。くそぉ見下しやがって。私は絶対に illegal の側で生きてやるぞ。
  • "Manners maketh man" は「オッカムの剃刀」という哲学用語で有名な13世紀の神学者ウィリアム・オブ・オッカムの言葉なのだそうで、だから"maketh" などという見慣れない古語の綴りが出てくる。いちいち鼻につくぜ高校教師。
  • It takes a man to suffer ignorance and smile/ Be yourself no matter what they say …文法的にかなりややこしい言い回しなので、いろいろ調べないと私もよく分からなかったのだけど、「it(そのこと=「礼儀作法が人をつくる」ということ)は、a man (1人の人間)に対し、to以下のことを要求する」という文である。(中学生が読んでたら、ごめんよ。私も分からないから、難しくしか書けないのだ)。そしてその「1人の人間」が要求されているのが、「to suffer ignorance and smile」と「(to) be yourself no matter what they say」という2つのことなのである。だから上記のような訳詞になった。ただし最後にこの"Be yourself no matter what they say"という歌詞が3回繰り返されることで、この文は"It takes a man to" という前の部分から切り離されて、聞き手にはあたかも命令形の文章であるかのように聞こえてくる。すなわち「人に何と言われたって、自分自身でいろ」というスティングからの呼びかけに、聞こえてくるのである。心憎いことしやがって。ホメてるんじゃないからなっ!


あそびのWA ベイブルース 1994年11月7日



ベイブルース 夫婦きどり


「関西人 in トーキョー」はフツーに好きな歌だったんだけど、ターネーさんって実は姫路生まれだったんですね。今日調べてみるまで、知らなかった。この歌と種浦マサオという人と、そして20年前にベイブルースという漫才師がいたこととは私の歴史の中では切っても切れない関係で結びついているのだけど、それについては、書かない。ではまたいずれ。お元気で。