華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Seventeen もしくは やさしいから好きなんだ (1977. Sex Pistols)

ぼく パンクロックが好きだ
中途半端な気持ちじゃなくて
ああ やさしいから好きなんだ
ぼく パンクロックが好きだ


ーザ・ブルーハーツ「パンクロック」1987年ー

心がささくれだった時には、やさしい歌を聞きたくなる。

バラッドという言葉とバラードという言葉は違う言葉らしくて、さらに何がバラッドで何がバラードであるかを定義できる人は世の中に1人もいないらしいのだけど、悲しい歌やせつない歌のことをバラードと呼ぶのであれば、私がいちばん好きなバラードは、ずっと昔から一度も変わったことがない。

セックス・ピストルズの「セブンティーン」という曲である。


Sex Pistols - Seventeen (Live in Stockholm 1977)

Seventeen

You're only 29
Got a lot to learn
But when your mummy dies
She will not return

おまえはまだ29歳で
勉強しなくちゃいけないことがたくさんある。
でも もしおまえの母ちゃんが死んじゃったら
もう戻ってきてくれないんだぜ。


We like noise, it's our choice
It's what we wanna do
We don't care about long hairs
I don't wear flares

おれたち ノイズが好きだ。
自分で選んだことだ。
それがやりたいことなんだ。
おれたち 長髪に興味はない。
らっぱズボンなんか はかないよ。


See my face not a trace
No reality
I don't work, I just speed
That's all I need

追っかけたり
つけ回すんじゃなくて
顔を正面から見てくれよ。
現実なんて見なくていいからさ。
仕事はしない。
ただ突っ走りたい。
他には何もいらないよ。


I'm a lazy sod, I'm lazy sod
I'm a lazy sod, I'm so lazy
I'm a lazy sod, I'm lazy sod
I'm a lazy sod, I'm so lazy
I can't even be bothered
Lazy Lazy

おれはなまけもののくずだよ。
おれはなまけもののくずだよ。
おれはなまけもののくずだよ。
だりーんだ。
おれはなまけもののくずだよ。
おれはなまけもののくずだよ。
おれはなまけもののくずだよ。
だりーんだ。
むかつくのもめんどくせえ。
だりー。だりーよ。

…この歌をどうして「バラード」であると感じてしまうのか、私自身にも長いこと、分からなかった。ただ、歌詞の意味も分からずに聞いていた中学生の頃から、この歌を聞くと無性にせつなくなった。

歌詞とまともに向き合ったのは、ある意味で今回が初めてかもしれないのだけど、自分で訳してみてやっぱり、この歌はバラードなのだと思った。そして、こんなに「やさしい歌」が他のどこにあるだろうと思った。

だって、29歳になった人間に「お前ももう29歳なんだから」的な説教をする人間というのはいくらでもいるけれど、29歳になった人間にまるで17歳の人間に語りかけるかのように「おまえはまだ29歳で勉強することがいっぱいある」なんて言葉をかけてくれる人って、いるだろうか。29歳という数字があまりにリアルで、思わずじわっと来てしまう。この感覚は年をとればとるほど、強くなる。

そしてまた「母さん死んだら帰ってこない」という歌詞も、「雨が降る日は天気が悪い」なみに当たり前のことしか言っていないのに、じわっと来る。これがまた29歳というリアルな数字と重なると、いっそうリアルに響く。人間は有限な存在なのに無限を求めずにいられないようにできていてそれで悲しくなるのだろうかとかいろんなことを考えてみるのだけどそんな風に考えてしまうこと自体の悲しさに気づかされてしまうようなこれは歌詞なのである。別にいいですマトモに読んでくれなくても。

この曲はピストルズのギタリストのスティーヴ・ジョーンズという人が書いた曲なのだそうで、ジョニー・ロットンは「Kiss This」のライナーノーツでこんなことを言っている。

スティーブのオリジナルの歌詞には笑っちまったのを覚えているぜ。
あいつの書いた歌詞が俺には読めなかった上に、スティーヴも覚えていなかったんだ。何から何までスペリングが間違っていた。
”オレは独りぼっち。犬に骨をやってくれよ”
もともと歌詞にはそんなラインがあった。

やめてくれよお。犬の話なんてしないでくれよお。ホントにナミダが出てきてしまうではないかあ。て言っか何でその歌詞、削るんだよう。ジョニーロットンあんただろ「ただ突っ走る」とかそういう歌詞を勝手にくっつけたのはあ。そういうの、この歌には、いらないんだよう。あんた、この歌のこと何もわかっちゃいないよお。

…そんな風にこの歌のことになると私はすぐに半泣きになってムキになってしまうのだけど、そういう感覚って、ひょっとして私だけのものなのだろうか。今までこの歌がどんなに素晴らしいバラードであるかをいくら力説しても、「自分もそう思う」と言ってくれた人は1人もいなかった。ブログを読んでくれているみなさんも、そうなのだろうか。私は割と真剣に書いているつもりなのだけど、私が半泣きになればなるほど、読んでいる皆さんには滑稽にしか思えなくなったり、してるのだろうか。

私の気持ちがわかるという人だけ、今回は、星をつけて下さい。

そうでない人は、読み飛ばしてもらえればそれで結構です。ではまた。