華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Gloria もしくはヴァンモリソンとジムモリソンとニューヨークのクイーンと (1964. Them)


まさか「サマータイム・ブルース」でパティ・スミスの名前に出会うことになるとは、思わなかった。

この曲について、触れないわけには行かなくなってしまった。

この曲は、誰かのバージョンをひとつだけ取りあげて紹介すればそれでいいという曲ではない。どうしても、この曲を最初に作って発表したゼムのバージョン、それをいち早くカバーしたドアーズのバージョン、そして75年にこの歌を完全に新しく「生み直した」パティ・スミスのバージョンのそれぞれの歌詞を、別々に翻訳して全部紹介するしかない。

今回に関しては、翻訳に徹することにしたいと思う。とてもカンタンに「語る」ことができるような曲だとは思えないからである。


Van Morrison & Them Gloria 1964 Stereo

Gloria

Wanna tell about my baby
Lord, you know she comes around
About five feet four
From her head to the ground

あの子の話をしたいんだ。
ああかみさま、あの子がやってくる。
だいたい5フィート4インチ。
地面から頭のてっぺんまで。


Well, she comes around here
Just about midnight, hu!
Make me feel so good
Make me feel all right.

んん、あの子がやってくる。
真夜中ぐらいに。
いい気持ちにさせてくれるんだ。
完璧な気持ちにしてくれるんだ。


And her name is
G. (G) L. (L) O. (O) R, (R) I. (I). yi-yi-yi-yi
G.L.O.R.I.A. (Gloria)
G.L.O.R.I.A. (Gloria)
I'm wanna shout it ev'ry night (Gloria)
I'm wanna shout it ev'ry day (Gloria)
Yeah, yeah, yeah, yeah, all right

そしてその子の名前は
G、L、O、R、I…
神に栄光あれ!
(その子の名前はグロリア)
神に栄光あれ!
(その子の名前はグロリア)
一晩中さけびたい!(グロリア!)
一日中さけびたい!(グロリア!)
いぇーいぇーいぇー、オーライ!


She comes around here, hu!
Til about midnight
Makin' me feel so good, hu!
Make me feel all right, hu!

あの子がやってくる。
真夜中ごろまでには。
いい気持ちにさせてくれる。
完璧な気持ちにしてくれる。


Walkin' down my street, hu!
Comes in my room, hu!
Knocks upon my door
Then she comes in my room

おれの通りを歩いてくる。
おれの部屋に来る。
おれのドアを叩く。
そしておれの部屋に入ってくる。


And her name is
G. (G) L. (L) O. (O) R, (R) I. (I). yi-yi-yi-yi
G.L.O.R.I.A. (Gloria)
G.L.O.R.I.A. (Gloria)
I'm wanna shout it ev'ry night (Gloria)
I'm wanna shout it ev'ry day (Gloria)
Yeah, yeah, yeah, yeah, all right

そしてその子の名前は
G、L、O、R、I…
神に栄光あれ!
(その子の名前はグロリア)
神に栄光あれ!
(その子の名前はグロリア)
一晩中さけびたい!(グロリア!)
一日中さけびたい!(グロリア!)
いぇーいぇーいぇー、オーライ!

=翻訳をめぐって=

  • Gloriaというのは女性の名前であると同時にラテン語で「栄光」を意味していて、賛美歌の中などに神を讃える言葉としてしょっちゅう出てくる。ただしわれわれ日本語話者にこういうダブルミーニングがいまいちピンと来ないのは、文化の違いと言うより言語感覚の違いなのではないかと言う気がする。(ということを以前「ルビー・チューズデイ」の時にも、書いたことがある)。あかりさんという人がいたとして、その名前を呼んだだけで世界が明るくなってくるようには、あんまり思えないもんな。

…まず、見てもらったように、「詩」と言うよりは「実況中継」であるというのがこの歌の最大の特徴であると思う。このスタイルというのは、最初に出てきた時にはものすごく新鮮に感じられたに違いない。この「実況中継」を、えげつないくらいリアルなものにしてみせたのがドアーズのバージョンである。


The Doors - Gloria (best live version)

Gloria (the doors)

Yeah, right.
Did you hear about my baby? she come around,
She come round here, the head to the ground?
Come round here just about midnight,
She makes me feel so good, make me feel all right.

よし。行くぞ。
おれのあの子のこと、聞いたかい?
あの子が来るって、ここに来るって、ここに向かってるってことを?
夜中ぐらいにここに来るんだ。
いい気持ちにさせてくれる。完璧な気持ちにしてくれる。


She come round my street, now
She come to my house and
Knock upon my door
Climbing up my stairs, one, two
Come on baby
Here she is in my room, oh boy

今ちょうどおれの通りに来た頃だ。
おれんちに来て
おれのドアをノックする。
階段を登ってくる。一段、二段…
彼女はおれの部屋の中だ。まいったね。
>

Hey what’s your name?
How old are you?
Where’d you go to school?
Aha, yeah
Aha, yeah
Ah, ah yeah, ah yeah
Oh haa, mmm

ねえ、何て名前?
いくつ?
どこの学校行ってるの?
ん?ん?ん?


Well, now that we know each other a little bit better,
Why don’t you come over here
Make me feel all right!

ん。じゃあもうちょっと
お互いよく知り合うことにしよう。
こっち来ないの?
きもちよくしてくれよ!


Gloria, gloria
Gloria, gloria
Gloria, gloria
All night, all day
All right, okey, yey!
(gloria, gloria)

グロリア! グロリア!
毎、晩!毎、日!
オー、ライ!オー、ケイ!


You were my queen and I was your fool,
Riding home after school.
You took me home
To your house.
Your father’s at work,
Your mama’s out shopping around.
Check me into your room.
Show me your thing.
Why’d you do it baby?

おまえはおれの女王でおれはおまえの道化で
学校が終わると一緒に帰った。
おまえはおれを家に連れていった。
おまえの家に。
おまえのパパは仕事中で
ママは買い物に出てた。
おれをおまえの部屋に
チェックインさせてくれて
おまえのを
見せてくれた。
どうしてそんなことするわけ?


Getting softer, slow it down
Softer, get it down

だんだんやわらかくなって
ゆっくりしていって
やわらかくなって
いい感じになって


Now you show me your thing.
Wrap your legs around my neck,
Wrap your arms around my feet, yeah
Wrap your hair around my skin.
I’m gonna huh, right, ok, yeah.

そしておまえはおまえのを見せてくれて
おまえの脚をおれの首に巻きつけて
おまえの腕をおれの足に巻きつけて
おまえの髪でおれの肌を包み込んで
おれは、ああ、いい。OK。そう。


It’s getting harder,
it’s getting too darn fast
It’s getting harder

だんだん激しくなって
めちゃめちゃに早くなって
どんどん激しくなって


All right!
Come on, now, let’s get it on.
Too late, too late, too late,
Too late, too late, too late,
Can’t stop, wow!
Make me feel all right!

そうだ!
来いよ。楽しもうぜ。
もう遅い。もう遅い。もう遅い。
止まらないぜ。
きもちよくしてくれよ!
>

Gloria, gloria
Gloria, gloria
All night, all day
All right, okey, yey!
Gloria, gloria

グロリア! グロリア!
毎、晩!毎、日!
オー、ライ!オー、ケイ!


Keep the whole thing going, baby!
All right!
All right!
Aaaaah!

世界は止まらないぜ!
オー、ライッ!オー、ライッ!
があああ!

=翻訳をめぐって=

…めぐってもへったくれもあるかという気がしてくるのだが、何点かはある。

  • 彼女が部屋に入ってきたところでジムモリソンがどうして "oh boy" と言っているのかが昔の私には全然わからず、実は少年だったのだろうかとかむしろそういうのもアリなのではないだろうかとかいろいろ考えたものだったが、このboyは間投詞で「わあ、いやはや、おや、へえー、全く、やあ、しめしめ」などの意味を持っているのだとのこと。「まいったね」がいい訳語だとは全然思わなかったが、「しめしめ」だけにはしたくなかった。
  • Riding home after school:直訳は「家まで乗って行く」。「何にだ」と思う。まあ、ドラマのグリーとか見てたらアメリカの高校生はフツーにクルマに乗ってるみたいだから、クルマのことなのかもしれない。
  • darn fast=damn fast. 直訳は「呪われたように早い」で、darnはdamnより呪いの度合いが少し薄いらしい。
  • get it on…辞書には「大いに楽しくやる」とあった。決して悪い辞書だとは思わないのだけど、この辞書を編集した人ってどうも「本当に楽しいこと」を知らずに大きくなった人なのではないかという気がする。

…私がこのブログにいろんな歌の拙い試訳を公開し続けているのは、私自身の勉強のためであると同時にそれが世のため人のためにもなると固く信じてのことであるのだが、できればこういう歌の翻訳は岡村靖幸とかそういう人に任せたいと言うか代わってもらいたい気がする。こういう歌詞を自分の言葉で書けるぐらい「恥知らず」になりきることは、なかなか凡人に真似のできることではない。

そしてこの作品を「一周まわって」ひとつの「詩」として完成させたのが、パティ・スミスだったと私は思っている。「詩」という表現がふさわしいかどうかは人によって意見が違うかもしれないけれど、少なくともただの実況中継ではない。「実況中継よりもっと実況中継」なのである。いろいろ言っても仕方がないので、聞いたことのない人はまずとにかく聞いてみてほしいと思う。今まで聞いたことがなかったのなら、その人は絶対に人生を損している。


Patti Smith Gloria

Gloria (patti smith group)

Jesus died for somebody's sins but not mine
Meltin' in a pot of thieves
Wild card up my sleeve
Thick heart of stone
My sins my own
They belong to me, me

エスは誰かの罪のために死んだけど
私の罪のためじゃなかった。
どろぼうたちの鍋の中で溶けてゆく罪。
私の袖の中のワイルドカード
毛の生えた石の心臓。
私の罪は私のもの。
私が引き受けなくちゃいけないこと。
私が。


People say "beware!"
But I don't care
The words are just
Rules and regulations to me, me

ひとは言う。「気をつけろ!」
でも私は気にしない。
言葉というのは単に
規則であり法律。
私にとっては。
私にとっては。


I-I walk in a room, you know I look so proud
I'm movin' in this here atmosphere, well, anything's allowed
And I go to this here party and I just get bored
Until I look out the window, see a sweet young thing
Humpin' on the parking meter, leanin' on the parking meter
Oh, she looks so good, oh, she looks so fine
And I got this crazy feeling and then I'm gonna ah-ah make her mine
Ooh I'll put my spell on her

私、私は部屋の中に歩いてゆく。
誇らしげに見えるでしょ。
ここの空気の中を動いてゆく。
うん。すべてが許されている。
そして私はここで開かれている
このパーティに向かう。
そして飽きてしまう。
窓の外に素敵な若い誰かが見える頃には。
パーキングメーターの上にうずくまって。
パーキングメーターにもたれかかって。
ああ、彼女は素敵。ああ、彼女はきれい。
そして私はだんだんおかしな気持ちになって
彼女を、ああ、私のものにする。
おお、私は彼女に魔法をかける。


Here she comes
Walkin' down the street
Here she comes
Comin' through my door
Here she comes
Crawlin' up my stair
Here she comes
Waltzin' through the hall
In a pretty red dress
And oh, she looks so good, oh, she looks so fine
And I got this crazy feeling that I'm gonna ah-ah make her mine

彼女がやってくる。
通りを歩いてくる。
彼女がやってくる。
私のドアをくぐる。
彼女がやってくる。
階段を這い登ってくる。
彼女がやってくる。
広間でワルツを踊りながら。
赤いドレスに身を包み。
そしてああ、彼女は素敵。ああ、彼女はきれい。
そして私はこんなにおかしな気持ちになって
彼女を、ああ、私のものにする。


And then I hear this knockin' on my door
Hear this knockin' on my door
And I look up into the big tower clock
And say, "oh my God here's midnight!"
And my baby is walkin' through the door
Leanin' on my couch she whispers to me and I take the big plunge
And oh, she was so good and oh, she was so fine
And I'm gonna tell the world that I just ah-ah made her mine

すると私にいま聞こえているこのノックの音が聞こえる。
私のドアを叩くこのノックの音が聞こえる。
私は巨大な時計塔を見上げるそして言う。
「ああかみさま、ここは真夜中!」
そしてあの子はドアを入ってくる。
私のカウチに寝そべって私にささやいて
私は思い切りダイブする。
そして、ああ、彼女はとてもよくて、
ああ、彼女はとても素敵で
私は世界に向かって言う、私は、ああ
彼女を私のものにした!


And I said darling, tell me your name, she told me her name
She whispered to me, she told me her name
And her name is, and her name is, and her name is, and her name is G-L-O-R-I-A
G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria
G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria

それで私はダーリンって言った。
名前を教えてよって。
教えてくれた。
ささやいてくれた。名前を。
彼女の名前は、彼女の名前は、彼女の名前は
彼女の名前は G-L-O-R-I-A
神に栄光あれ!グロリア!


I was at the stadium
There were twenty thousand girls called their names out to me
Marie and Ruth but to tell you the truth
I didn't hear them I didn't see
I let my eyes rise to the big tower clock
And I heard those bells chimin' in my heart
Going ding dong ding dong ding dong ding dong.
Ding dong ding dong ding dong ding dong
Counting the time, then you came to my room
And you whispered to me and we took the big plunge
And oh. you were so good, oh, you were so fine
And I gotta tell the world that I make her mine make her mine
Make her mine make her mine make her mine make her mine

私はスタジアムにいた。
2万人の女の子が私に向かって自分の名前を叫んでた。
マリーにルース、でも本当のこと言うっす。
私は全然みちゃいなかったし、聞いちゃいなかった。
私は巨大な時計塔に目をやって
その鐘が私の心の中で鳴り響く音に耳を澄ました。
りんごんりんごんりんごんりんごん
りんごんりんごんりんごんりんごん
数えて時間を測って、そしてあなたは部屋に入ってきて
私にささやいて2人は思い切りダイブして
そして、ああ、あなたはとてもよかった、
ああ、あなたはとても素敵だった、
私は世界に向かって言わなくちゃいけない、
私は彼女を私のものにした!
彼女を私のものにした!
彼女を私のものにした!


G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria,
G-L-O-R-I-A Gloria

神に栄光あれ!グロリア!

And the tower bells chime, "ding dong" they chime
They're singing, "Jesus died for somebody's sins but not mine."

そして時計塔の鐘が鳴る。りんごんと鳴る。
言ってるんだ。
「イエスは誰かの罪のために死んだ」
「でもそれは私の罪のためじゃない」
そう言ってるんだ。


Gloria G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A,
Gloria G-L-O-R-I-A, G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria
G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria,
G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria,
G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria G-L-O-R-I-A Gloria.

=翻訳をめぐって=

  • 何回も書いてきたことだけど、私自身は神を信じた経験というものを一度も持たない人間である。だから敬虔な「エホバの証人」の両親のもとで育てられたというパティ・スミスにとって「エスは誰かの罪のために死んだけど私の罪のためじゃなかった」という歌詞を書くことがどういう意味を持っていたのかということは、想像することしかできない。きっとものすごい「決意」が必要なことだったことなのだろうとは、想像できる。けれどその決意の「内容」については、私には分からないとしか言いようがない。「エスは誰かの罪のために死んだけど私の罪のためじゃなかった」とは、どういう意味を持った言葉なのだろう。「あんたが死んでくれたのは私のためじゃない」とイエスのことをなじっているのだろうか。それとも「あんたが誰のために死のうと私には関係ない」と、イエスとの決別を宣言しているのだろうか。それが分からないものだから、最初の部分の翻訳にはどうしても私自身、確信が持てない。
  • wild card:トランプで一番つよいカード。私らが子どもの頃は「オールマイティ」と呼んでいたけれど、それが一般的な名前かどうかよく分からないので、カタカナに直しただけにした。
  • 言葉というのは単に規則であり法律…「だから守る必要なんてない」という力強い歌詞である。こういう台詞を腰に手を当ててネクタイ姿で言われるとゾクゾクする。
  • Humpin' on the parking meter…humpという言葉は、俗語では直接「性交」の意味で使われることが多いらしい。
  • I got this crazy feeling…crazy というのは「精神病者」の人たちに対する明らかな差別語であり、使っていい言葉だとは思わない。しかし人から crazy と言われて苦しんできた人がその言葉を投げ返すために使うことを止める権利は、少なくともそれで苦しんだことのない人間には、ないと思う。そしてパティ・スミスという人は、きっと実際に「苦しんできた」ひとなのだと思うので、「好きな曲ではありません」という切り捨て方はこの曲に関する限り、私にはできない。
  • oh my godって言葉は、フツーに言うんだね。これはただの感想。
  • Marie and Ruth but to tell you the truth…私だって時にはライミングにつきあってみたくなることもある。

…今回の翻訳は、今まででいちばん疲れたかもしれない。3回は、さすがに、疲れる。


ZIGGY「GLORIA」

最後は疲れないGLORIAで。LPの時代にもこんな人たちがいたんですねえってしかしそんなまとめ方でいいのだろうか。そろそろ「100曲」が見えてきたので、それに向けてしばらくは選曲を絞ってゆきたい。ではまたいずれ。

The

The "Angry" Young Them!

  • ゼム
  • ロック
  • ¥1600
The Doors - In Concert

The Doors - In Concert

  • ドアーズ
  • ロック
  • ¥2100
GLORIA

GLORIA