華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Yes, the River Knows もしくは「信じてほしい」とジムモリソンが言った (1968. The Doors)


大好きな曲なのである。それなのに、情報が少ない。

ドアーズの曲なのである。それにも関わらず、情報が少ない。

いろんな言葉を使って、グーグル翻訳とかの力も借りて、訳のわからない海外のサイトから迷惑メールが無数に送られてくるような地雷をいくつも踏んで、調べているのだけれど、情報が少ない。

そんな苦労をしてあれこれ探しても、見つかる情報はといえば「この曲ってドアーズの作品の中でも人気ないよね」というだけのコメントがほとんどである。んなこたあ、分かっている。分かっているけれど初めて聞いたその日から私はずーっとこの曲が好きなのである。

ブログを始めた当初はザ・バンド、ドアーズ、クラッシュの曲を中心に進めていこうという漠然とした構想があったのだけど、ザ・バンドばかりに偏ってしまう傾向が生まれてしまったのは、2つ目に取りあげる予定だったこの曲の翻訳が95曲目の現在に至るまでずーっと確定しなかったからである。おかげで "Who do you love" とか "Gloria" とか、オリジナルでない曲を先に取りあげる羽目になってしまった。ああいうエグい曲は本当ならもっと後になってからさりげなく取りあげたかったのだけど、その曲について書くべきタイミングというのはいつもこちらの思惑とは違う形でめぐってきてしまうものなので、どうにも致し方ない。

結局この曲に関してはいつまでたっても翻訳が確定しそうな見通しがつかないので、今までになかったやり方だけど、二通りの解釈を併記することにしたい。そして「正しい読み方」を知っている人が現れてくれるのを気長に待つことにしたい。いつもの台詞になるけれど、この曲を知らなかったみなさんに対しては、まずは聞いてみてもらえたらと思います。


The Doors - Yes, The River Knows (with the lyrics on the screen)

Yes, The River Knows

Please believe me
The river told me
Very softly
Want you to hold me, ooo

【解釈その1】
ぼくを信じてほしい。
川がぼくに言ったんだ。
とてもやさしく。
きみにぼくを
引き止めてほしいんだって。

【解釈その2】
「私を信じなさい」と
川がぼくに言った。
川よ とてもやさしく
ぼくのからだを受け止めてほしい。


Free fall flow, river flow
On and on it goes
Breath under water 'till the end
Free fall flow, river flow
On and on it goes
Breath under water 'till the end
Yes, the river knows

すごい勢いで川は流れる。
どこまでも流れ続ける。
最後の瞬間まで
水の中で続く呼吸。
すごい勢いで川は流れる。
どこまでも流れ続ける。
最後の瞬間まで
水の中で続く呼吸。
そう。川は知っている。


Please believe me
If you don't need me
I'm going, but I need a little time
I promised I would drown myself in mysticated wine

【解釈その1】
どうか信じてほしい。
もしきみがぼくを必要としていなくても
ぼくは行こうとしてる。
でも少しだけ時間がほしい。
神秘のワインの中にこの身を沈めてしまおうと
ぼくは決めたんだ。

【解釈その2】
「どうか信じてほしい」と川が言う。
「もしあなたが私を必要としていなくても」
ぼくは行こうとしてる。
でも少しだけ時間がほしい。
神秘のワインの中にこの身を沈めてしまおうと
ぼくは誓ったんだ。


Please believe me
The river told me
Very softly
Want you to hold me, ooo


I'm going, but I need a little time
I promised I would drown myself in mysticated wine

Free fall flow, river flow
On and on it goes
Breath under water 'till the end
Free fall flow, river flow
On and on it goes
Breath under water 'till the end

=翻訳をめぐって=

  • 解釈その1とその2を見れば分かってもらえると思うけど、この歌をめぐって私がずーっと分からないのは、歌詞に出てくるyouがレコードの聞き手と思われる誰かのことをさしているのか、それとも川そのものをさしているのか、ということである。"Please believe me" という風にクォーテーションマーク(日本で言うところのカギカッコ)でもついていたなら誤解の余地はないのだけれど、ジムモリソンが死んでから半世紀も経とうとしている今、ドアーズの歌詞をそんな風にいじくることは誰にも許されない。もっともこの曲を書いたのは今もご健在のロビー・クリーガーさんだそうなので、どうにかしてそこをハッキリさせてもらうわけには、行かないものなのだろうか。
  • ひとつの手がかりとして、youがもし「川」でなかったとした場合、Want you to hold meの主語が「川」だということになるから、このwantはwantsになるはずだ、ということがある。だが調べてみると、wantと書いてある歌詞とwantsと書いてある歌詞が両方見つかってしまうのである。どちらが「正解」であるかについては論争が続いている状態であり、「定説」はないらしい。wantwantsの違いは英語話者にさえ聞き取れないものなのだというのは何となく「安心材料」ではあるけれど、それにしてもそんな頼りないことでいいのだろうかと思ってしまう。
  • Breath under water 'till the end…むかし私が持っていたCDの歌詞カードには "Remember water 'till the end (水よ、最後まで覚えていてほしい)" と書いてあった。ネットで新しく見つけた歌詞を頼りに聞いてみると確かに "Breath" と聞こえた。完全に「溺れる歌」だったのだな。
  • mysticated wine…むかし私が持っていたCDの歌詞カードでは "mystic heated wine (温められた神秘的なワイン)" と書いた。現在でもそうなっている歌詞はネット上に散見される。mysticatedAppleミュージックの歌詞だけど、これは辞書にもない言葉で、「神秘化された」みたいな意味を持つ造語だということになる。ここについても「論争」が見られるが、youが誰を指しているかという大問題に比べれば、大した問題ではないと思う。温かくても冷たくても、ワインはワインなのだ。


忌野清志郎 ➖河を渡った➖

WATTATA。ではまた。

Yes, the River Knows

Yes, the River Knows

  • ドアーズ
  • ロック
  • ¥200
WATTATA (河を渡った)

WATTATA (河を渡った)