華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

London's Burning もしくはキャッホー医者や警察やー (1977. The Clash)

あったまくるぜ まったくよ
ただめし食って のうのうと
いい家すんで のんびりと
なんにもしねえで スクスク育つ

なーにが日本の象徴だ
なんにもしねえでふざけんな
なーにが日本の象徴だ
なんにもしねえでふざけんな

苦労もしねえでウメボシ殿下
坊っちゃま育ちのモヤシ野郎
いい服まとってへなへなと
ただその家に生まれただけで

なーにが日本の象徴だ
なんにもしねえでふざけんな
なーにが日本の象徴だ
なんにもしねえでふざけんな

アナーキー「東京イズバーニング」1980年―


THE CLASH - London's Burning

London's Burning

London's burning!
London's burning!

ロンドンが燃えている!
ロンドンが燃えている!


All across the town, all across the night
Everybody's driving with full headlights
Black or white turn it on, face the new religion
Everybody's sitting 'round watching television!

街じゅうだ。夜じゅうだ。
みんなヘッドライトをビカビカにつけて走ってる。
黒人も白人もとにかくつける。
つけて新しい宗教をかまってみる。
どいつもこいつもブラブラしながらテレビをつけてる!


London's burning with boredom now
London's burning dial 99999

ダルさでロンドンが燃えている。
医者だ警察だ。ロンドンが燃えている。


I'm up and down the Westway, in an' out the lights
What a great traffic system - it's so bright
I can't think of a better way to spend the night
Then speeding around underneath the yellow lights

ウェストウェイ高速を行ったり来たり。
光の洪水を出たり入ったり。
なんという巨大な交通システムであることか。
明るいったらありゃしない。
他に夜を過ごす方法も思いつかないから
黄色い信号の下で思い切りスピードをあげる。


London's burning with boredom now
London's burning dial 99999

ダルさでロンドンが燃えている。
医者だ警察だ。 ロンドンが燃えている。


Now I'm in the subway and I'm looking for the flat
This one leads to this block, this one leads to that
The wind howls through the empty blocks looking for a home
I run through the empty stone because I'm all alone

地下道を歩いて 自分の部屋を探してる。
この道はあっちに続いていて
その道はそっちに続いていて…
自分の居場所を探してるみたいに
空っぽの区画で風がうなっている。
おれは空っぽの石の空間を走り抜ける。
おれはひとりぼっちなんだ。


London's burning with boredom now...
London's burning dial 99999

ダルさでロンドンが燃えている。
医者だ警察だ。ロンドンが燃えている。


Here we go rocking down the West London motorway
And on your left you'll see the tower blocks
Built in 1963
With hard cash payments from the GLC
And over there you'll see Westbourne Park
You don't wanna go there
When it gets dark
London's burning!

行くぞロンドン西部高速をグラグラさせてやれ。
左に見えますのは1963年に建設されました高層ビル群。
政府系企業の莫大な現金払いによって完成いたしました。
あちらに見えますのはウエストボーンの街。
暗くなったら行かない方がいいでしょう。
ロンドンは燃えております。

=翻訳をめぐって=

London is burning はもともとイギリスに伝わる童謡の名前。調べてみたらこんな曲だった。


London's Burning sung by Lizzy Morris

London's burning, London's burning.
Fetch the engines, fetch the engines.
Fire fire, Fire Fire!
Pour on water, pour on water.

ロンドンが燃えてるよ
ロンドンが燃えてるよ
消防車を呼んどいで
消防車を呼んどいで
火事だ火事だ 火事だ火事だ
水をかけろ 水をかけろ

…消防車が出てきたりして歌詞はアップデートされているけれど、実はとても古い歌で、1666年9月に4日間にわたって燃え続けた「ロンドン大火」の直後から歌い継がれてきた童謡なのだとのこと。「街が燃える」という出来事ほど、人の心に恐怖として焼きつけられる体験は他にないのではないかと思う。1940年9月7日にナチスドイツによるロンドン空襲が開始された時、一斉に新聞の見出しに躍った言葉も「London is Burning!」だったという話である。

だがクラッシュのこの歌に歌われているのはそれと対極の「何も起こらない淀みきったロンドン」であり、その「何も起こらなさ」こそ街が燃えるのと同じくらいに破壊的なことなのだ、という歌なのだと思う。

  • Black or white turn it on…この turn it onは「電気をつける」「テレビをつける」「スイッチをつける」の全部の「つける」に使える turn it on なのだと思う。だから歌詞の中では「ヘッドライト」と「テレビ」の両方にかかっている言葉だと思う。他に turn it on には「観客を魅了する」みたいな意味もあるらしいが、受動態になってないし、たぶんここには当てはまらない。
  • face the new religion…faceには「直面する」「向き合う」の他に俗語として「からかう」「侮辱する」という意味もある。「向き合う」と言うほど誰も真面目にテレビなんか見ていなかったと思うので、後者の意味の方が合っていると思う。「かまう」はしかし、方言的かな。「ひやかす」の方が良かったかな。でも「かまう」には微妙に「向き合う」の意味も含まれてるいるので、捨てがたかった。
  • London's burning dial 99999…日本では110番と119番が分かれているけど、イギリスでは全部まとめて「999」なのだそうである。ただし5回も9をダイヤルし(今だと「押し」)たところで、警察も消防車もやって来るわけはない。
  • Westwayはロンドン西部を走る高速道路の名前。ジョー・ストラマーの語りの部分に後で出てくる West London motorwayも、同じ道路をさしている。パディントンからノース・ケンジントンに抜ける5.6㎞…とか言われても全然イメージが浮かばなかったので、地図を見てみた。左上に「ウェストウェイ」と書いてあるけど、本当にロンドンのど真ん中なのだな。

  • Now I'm in the subway…アメリカだとサブウェイは地下鉄だけど、ロンドンでは「地下道」なのだそうである。だからジョーはカビ臭い石造りの洞穴を、カツーンカツーンと靴音を鳴らしながら1人で歩いているイメージになるわけだ。そのことを初めて知った時、私の脳裏に浮かんだのは、20年前には本当に真っ暗だった近鉄難波駅から四ツ橋線の難波駅に抜ける地下道のことだった。今ではちょっとは明るくなっているのだろうか。
  • I'm looking for the flatflatの直訳は「平らな場所」だが、「家族が一緒に住めるサイズのアパートやマンションの一部屋/階」という意味もある。またスティングの伝記などを読んでみると、この時代のロンドンのミュージシャンはみんな「アパートの地下の階」に住んでいたとのことである。家賃が安くて、音があまり漏れないからとのことなのだけど、日本にはあまりそういうアパートがないから、イメージが浮かんでこない。ジョーはそういう「自分の部屋」に、今から帰るところなのだろうか。それとも「いい部屋」を探しているところなのだろうか。どちらでもない気がする。たぶん「そういう場所がほしい」と思っているだけで、具体的にはどこにも行く当てがないのではないかという気がする。
  • GLC…government-linked companyで「政府系企業」
  • Westbourne Park…ロンドン西部の地名。「パーク」がついてるけど別に公園ではなく、街の名前だとのこと。クラッシュの面々にとっては「地元」にあたる街だったのだと思うのだけど、自分の街のことを「夜には行かない方がいい」と紹介するなんて、悲しくて何かイヤだ。


アナーキー 東京イズバーニング

ジュン・スカイ・ウォーカーズで「ロンドン行ってる場合じゃねえ」というタイトルのカバーもあったのだけど、見つからなかった。愛されてます。この曲。ではまたいずれ。

London's Burning

London's Burning