華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Soul Man もしくはブルースブラザーズ特集 開始 (1967. Sam & Dave)


最初は「ピアノマンの後はソウルマン」ぐらいにしか考えていなかったのである。でもサム&デイヴのことについていろいろ調べているうちに、リズム&ブルースの世界に深々とはまり込んでいくうちに、そして私が子どもの頃からずっと大好きだったブルース・ブラザーズのモデルはそもそもサム&デイヴだったことが改めて分かっておもむろに映画を見直したりなどしているうちに、とんでもない想念が頭をもたげてくるのを、抑えられなくなってしまった。

唐突だけど、マンガというものの面白さを一番徹底的にナメるように味わいつくす方法を、みなさんはご存知だろうか。本当にマンガが好きな人は、きっと知っているはずだと思う。

模写することである。

模写をしてみると、あれほど好きだったはずのマンガを自分はどれだけ「わかっていなかったか」ということが、ビックリするほどよくわかる。主人公の表情や、服の模様や、影のつけ方なんかを自分で改めてなぞってみることで、そういう細かいことをいちいち発見しては、改めて感動する。できあがった模写がヘタだったら作者の上手さに感動を新たにするし、上手く描けたなら上手くなった自分にこれまた感動する。こういうのは、誰かに見せるという目的があろうとなかろうと、それ自体が至福で快楽な行為だから、その楽しみを知ってしまった人を止めることは誰にもできない。

やがては元の絵を見なくてもその絵を描けるようになるぐらいにその作品のことを「愛し」つくして、それでも愛し足りない人がやがては二次創作を始めたり、あるいは本物の新しい作品を作り出したりしてゆくことになるのだと思うのだけど、私の場合は愛に技術が伴っていなかったから、「描いてみたい」という欲望もそんなレベルにまで膨れあがった経験は今のところないし、「こんな風に描けるようになりたいな」という「愛の対象」を自分自身が凌駕してしまって愛が行き場を無くしてしまうような壮絶な体験も、幸か不幸かしたことがない。それでも本当にマンガを好きな人が、筆記用具とキャンバスさえ与えられればとにかく描かずにいられないというその気持ちだけは、自分のことのようによくわかる。私も何かを好きになったら完全にそうなってしまうタイプだし、愛というのは常に具体的なものなのだ。

音楽だって同じである。

一番徹底的にナメるようにその作品を味わいつくす方法は、何よりも自分自身が声に出して歌ってみることだし、また楽器を手に持って演奏してみることだ。好きな歌手がその喉から高音を絞り出す時の苦しみと達成感を追体験し、右手でかき鳴らしたギターの弦の振動を左手で感じるあの感触を自分の指で感じとってみれば、自分が「耳だけで」音楽を楽しんでいるつもりになれていた時代など、まるで原始時代の出来事のように思えてくる。この楽しみもいったん覚えてみると、マンガの模写と同様に、人に見せる目的などはあろうとなかろうと関係なくなる。「自分の身体を使って音を出すこと」それ自体が無上の至福となり快楽に変わるのである。

だが、こと音楽に関しては。それも海外の音楽に関しては「別の楽しみ方」もあったのだということを、この歳になって、私は、知ってしまった。

翻訳することである。

もともと私が自分で歌の翻訳を始めたのは、レコード会社の出している歌詞カードが誤訳だらけであることも知らず、分かりもしない歌を分かったような気持ちになって歌っていたことが恥ずかしかったからだし、ブログを始めた理由もそもそもはそのことだった。第1回目に書いたように、このブログの目的は私が自分自身の青春に「決着をつけること」であって、そのことは100曲めをこえた現在になっても何も変わっていない。そしていまだに「決着がついた感じ」もしていない。

しかし回を重ねてゆくうちに、歌を翻訳するという行為にはマンガを模写したりギターをコピーしたりするのと「同じ」楽しさがあるのだということが、だんだんと自覚されるようになってきた。このブログがこうした形で「続いて」いるのは、何よりも翻訳している私自身が「楽しい」からである。そしてこの楽しさ自体は言うなれば官能的なもので、読んでくれる人がいるかいないかは、あえて言うなら二番め以降の問題にすぎないのである。もちろん、ライブと同じで、見に来る人が多くなれば多くなるほど楽しくなる要素というのは、やっぱりあるわけなのだけど。

それでそういう楽しさに目覚めてしまった昨今の私が今回サム&デイヴの歌を通じて子どもの頃から一番好きだったブルースブラザーズの映画と再会し、どんなことを思いついてしまったのかという本題に戻りますとですね。

曲だけでなく、映画そのものを丸ごと翻訳してみたくなってしまった

のです。

…何という向こう見ずな欲望を自分は抱いてしまったのだろうと、実は内心恐れおののいております。別のどんな映画でもいいからそういうことを他でやってるブログなりウェブサイトなりはあるのだろうかと思ってちょっと調べてみたけれど、ひとつも見つからない。見つからないには見つからないだけの理由があるのではないかと思うのです。著作権に引っかかるとか。凍結されちゃうとか。しかし私の性分として、一回やりたくなってしまったことは、徹底的にやりつくして挫折するまでは、どうしてもやめることができないのです。はてなブログの運営的な人がもし読んでいて問題があると判断されるようであれば、今の内に通告してください。もっとも映画の「ネタバレ感想」や映画そのもののシーンを切り取った動画がこれだけ氾濫している世の中で、セリフを全部翻訳して公開することに何の問題があるのかと私の良心は叫んでおります。サスペンス映画ならともかく音楽映画なのです。それを読んで「自分も見てみよう」と思う人はいても、「読んだからもう見なくてもいい」と思う人などは皆無であると私は信じてやみません。

…実は私自身、少々迷った。完全な自己満足と言われればそれまでだし、読者の数も減るかもしれない。1週間や2週間で終わらないことは明らかだし、今日も明日もブルースブラザーズでは、よっぽど好きな人以外は見に来なくなるのが当然である。それでしばらくサム・クックなんか聞いてみて、そのあと同時期に自分が好きだった曲を2曲ほど思い出迷子してみたのだけど、やっぱり思いついたからにはやらなきゃ気が済まないという結論は、変わらなかった。そんなわけで1980年公開の映画「ブルース・ブラザーズ」に使われている全ての楽曲と、登場人物の全てのセリフ、そして可能ならば映画に出てくる看板や広告の文字に至るまでの全ての言葉をシーンを追って翻訳してゆく作業に、今回をもって、突入させていただきます。

幸いに、と言うべきか、今回紹介するサム&デイヴの「ソウル・マン」は、映画の中には出てこないけど、ジェイクこと故ジョン・ベルーシと、エルウッドことダン・エイクロイドが、「ブルース・ブラザーズ」として最初に録音した記念すべき楽曲である。大企画の序章にふさわしい曲として、ぜひ一緒に聞いて気持ちを盛り上げて頂ければと思います。同時に今日のこの日に至るまで、幸運にも(というのはこれからこの2人のことを知る幸せは、既に知っている私たちには二度と味わえないものだから)ブルースブラザーズのことを知らずに生きてきたみなさんにおかれましては、最低限の基礎知識として、とりあえずallcinemaさんから転載してきた以下のレビューに目を通して頂ければ幸いです。

それではみなさん。

頭の中で "I Can't Turn You Loose" を鳴らしてしばし開演をお待ちくださいませ。

黒い帽子に黒のサングラス、黒いネクタイに黒のスーツという、全身黒づくめのジェイク・ブルースとエルウッド・ブルースは、ちぎりを交わした兄弟分。そのブルース兄弟が昔世話になった孤児院が、窮地に陥った!彼らは孤児院を救おうと、かつての仲間を集めて“ブルース・ブラザース・バンド”を再結成し、そのコンサートの利益を孤児院に寄付しようとするが... 1977年に、アメリカのTV番組「サタデー・ナイト・ライブ」で大人気だった、ベルーシ&エイクロイドの同キャラクターの映画化。彼らが起こすてんやわんやの大騒動を、歌と踊り、スリルとスピード、笑いとアクションで描いたコメディ映画。まさに息ピッタリのベルーシ&エイクロイドの、ハイセンスな笑いが最大限に昇華されている。
(allcinema)


Sam & Dave - Soul Man

Soul Man

Comin' to you on a dusty road
Good lovin', I've got a truck load
And when you get it you got some
So don't worry 'cause I'm comin'

会いに行くぜ
でこぼこ道の上を。
愛でいっぱいだぜ
おれのトラックの上は。
受け取ってくれたら
後はお楽しみだぜ。
だから心配すんなよ
今から行くからよ。


I'm a soul man, I'm a soul man
I'm a soul man, I'm a soul man

おれはソウル・マン
たましいの男
おれはソウル・マン
たましいの男


And that ain't all
Got what I got the hard way
And I'll make it better
Each and every day
So honey, don't you fret
'Cause you ain't seen nothin' yet

それだけじゃないぜ。
こんだけの愛を持ってくるのは
大変だったんだぜ。
これから毎日
はぐくんでいくんだぜ。
だからハニー、あせんなよ。
これからだぜ。
おまえにそれがわかるのは。


I'm a soul man, oh Load
I'm a soul man, play it, Steve
I'm a soul man, I'm a soul man

おれはソウル・マン
神よごらんあれ
おれはソウル・マン
やってくれスティーブ・クロッパー1941年ミズーリ生まれ
おれはソウル・マン
たましいの男


I was brought up on a side street
Listen now
I learned how to love
Before I could eat
I was educated at Woodstock
When I start loving, oh I can't stop

おれは裏通りで育った。
でも聞いてくれ。
飯の食い方を覚えるより早く
おれは愛し方を覚えたんだ。
ウッドストック
おれの学校だった。
愛し始めたら
止まらないんだぜ。


I'm a soul man, yes I am
I'm a soul man
I'm a soul man, yeah
I'm a soul man

おれはソウル・マン
そうさ たましいの男
おれはソウル・マン
たましいの男


Grab the rope and I'll pull you in
Give you hope
And be your only boyfriend
Yeah, yeah, yeah, yeah

ロープを握れ。
引っ張りあげてやる。
おまえの希望になりたい。
だからおまえのたった1人の
ボーイフレンドにしておく
れ、れ、れ、れ


I'm talkin' about a soul man
I'm soul man

ソウル・マンの話をしてるんだ。
おれがそのソウル・マンさ。


And you're a soul man
そんでもってここにいるやつは
みーんなソウル・マン


Soul man
ソウル・マン

=翻訳をめぐって=

  • And when you get it you got some…get some には、スラングとして「性的な欲望を実現させる」という意味があるのだとのこと。また軍人が使うときには、イヤな言葉だが、「敵の命を奪う」という意味でも使われるとのことである。
  • Got what I got the hard way…ここは正直、難しかった。「私が得たものを得るのは大変な道のりだった」…?よくわからなかったので、意訳になっている。
  • play it, Steve…サム&デイヴのバックもつとめていたスティーブ・クロッパーは、ブルースブラザーズバンドの一員で、世界一のテレキャスター使い。これから、イヤになるほど出てきます。ではまたいずれ。


The Blues Brothers - Soul Man - 12/31/1978 - Winterland (Official)

Soul Men

Soul Men

  • サム&デイヴ
  • R&B/ソウル
  • ¥1600