華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

I Can't Turn You Loose もしくはブルースブラザーズ特集#6 (1965. Otis Redding)

…今回のシーンは文字で読んでも全く面白くないので、最初に動画を貼りつけておきます。


Blues Brothers Mall Chase Scene High Quality

OMITTED: 81 thru 86
SCENE 87
Location: INT. BLUESMOBILE - MOVING - RESIDENTIAL STREET - NIGHT ブルースモービル 住宅街を走る 夜
They're speeding down a dark, quiet street. The police are right behind them.
暗く静かな通りでスピードを上げる。パトカーがすぐ後ろについている。
…「スピードダウン」は和製英語であり、そう言いたい時は「slow down」と言うとのこと。ここではあくまで speeding(スピードを上げること)しながら down(突っ走る)している。


ELWOOD: We'll be all right if I can just get back on the expressway.
エルウッド:高速道路に戻れさえすれば、何とかなる。

SCENE 87-A
Location: EXT. SHOPPING MALL PARKING LOT - NIGHT
Elwood turns in the parking lot of a large shopping mall, the police cars in pursuit.
エルウッド、大きなショッピングモールの駐車場に入り込む。パトカーが何台も後を追う。


SCENE 87-B
Location: INT. BLUESMOBILE - MOVING - NIGHT
The speedometer shows he's doing 90 miles an hour. Pan up to Elwood.
スピードメーターは時速90マイル(145キロ)を示している。カメラ、パンしてエルウッドを移す。


SCENE 87-C
Location: INT. BLUESMOBILE MOVING - SHOPPING MALL PARKING LOT - NIGHT

JAKE: This don't look like no expressway to me!
ジェイク:おれには全然高速道路に見えないんだけどな。

ELWOOD: Don't yell at me.
エルウッド:どなるな。

JAKE: What the hell do you want me to do, motorhead?
ジェイク:おれにどうしてほしいんだ、このモーターヘッド
…「走り屋」という訳語がふさわしい気がするが、イギリスの同名のバンドとかかっている可能性もあると思う。

ELWOOD: Try not to be so negative all the time. Why don't you offer some constructive criticism?
エルウッド:いつもそんな風にネガティヴになるのは良くない。もっと建設的な批判を心がけるようにできないものかね。

JAKE: You got me into this parking lot, pal. Now you get me out.
ジェイク:駐車場に入ったのはお前じゃないか。さっさと何とかしろ。

SCENE 87-D
Location: EXT. SHOPPING MALL PARKING LOT - NIGHT
They are rapidly approaching the main entrance of the shopping center. The police car is gaining.
ブルースモービル、どんどんショッピングモールの正面入口に近づいてゆく。パトカーも一緒。


SCENE 87-E
Location: INT. BLUESMOBILE - MOVING - SHOPPING MALL PARKING LOT - NIGHT

JAKE: What do you suggest?
ジェイク:どうするつもりだ?

ELWOOD: I suggest we go shopping.
エルウッド:買い物をすることにしよう。

Jake and Elwood regard each other for a beat and then Jake nods.Camera: CUT TO
ジェイクとエルウッド、一瞬みつめあう。ジェイク、うなづく。


SCENE 88
Location: INT. TOY STORE おもちゃ屋
A MAN at a cash register asks the SALES GIRL politely.
1人の男がレジのところで女性の店員に丁寧に話しかけている。


MAN: Three D batteries, please
男:単1電池を3つ下さい。

Elwood's car crashes through the wall, crosses the store, and crashes through the other wall, followed by the two police cars.
エルウッドの車が壁を突き破り、店を横切って、反対側の壁をさらに突き抜ける。二台のパトカーが続く。


SCENE 89
Location: INT. SHOPPING MALL PLAZA - NIGHT ショッピングモールの広場 夜
The Bluesmobile smashes out the front of the store followed closely by the two police vehicles. All three cars roar down the center of the shopping mall causing pedestrians to scatter wildly. They smash through displays and store fronts as Elwood tries to elude his pursuers. A series of screaming 180's and the second police car smashes sideways into a store front coming to a halt. Elwood makes his move and heads toward the rear of the mall, the other car maneuvering zooms after him. The entire shopping mall is a screaming mess.
ブルースモービル、二台のパトカーを引き連れて店の正面に突っ込む。3台はショッピングモールの真ん中に突入し、買い物客は逃げまどう。エルウッドが追跡をかわそうとするのにつれて、店先やショーウィンドウが次々に破壊される。スクリーミング180(ドリフトターンのことだろう)が連続し、2台目のパトカーが店に突っ込んで止まる。もう一台は巧みにエルウッドを追い続ける。ショッピングモールは大騒ぎ。




SCENE 90
Location: EXT. SHOPPING MALL - NIGHT
The Bluesmobile roars through a window, scattering pedestrians and merchandise in its wake.
ブルースモービルがショーウィンドウに突っ込む。買い物客と店員が逃げまどう。


SCENE 91
Location: INT. BLUESMOBILE - MOVING - SHOPPING MALL - NIGHT

ELWOOD: (brightening) The expressway, the slab, man.
エルウッド:( ほがらかに)高速道路だ。しっかりした舗装だぜ。
…slabとは「コンクリートを地面に流して作った土台」を意味するらしい。

SCENE 91-A
Location: EXT. SHOPPING MALL - NIGHT
He steps on the gas and does a complete 360 turn into an aisle of the parking lot to what he thinks will be the freeway on-ramp.As he bears down he sees that it is a dead end and slams on the brakes causing the Bluesmobile to flip up and over the pursuing police car which crashes into the restraining wall. The Bluesmobile lands and safely gets away.Camera: CUT TO
エルウッド、車のスピードを上げ、高速道路に抜けるために、360度ターンを決めながら駐車場に出てくる。行き止まりが目に入り、追跡のパトカーがそれに突っ込むのを横目に、急ブレーキを踏んでそれをかわす。ブルースモービル、逃亡に成功する。


SCENE 92
Location: INT. BLUESM0BILE - MOVING - HIGHWAY - NIGHT

ELWOOD: (extremely satisfied) The Bluesmobile.
エルウッド:(この上なく満足して)これがブルースモービルだ。

Camera: CUT TO
SCENE 93
Location: INT. SMASHED POLICE CAR #1 - NIGHT つぶれたパトカー 夜
The two white, young, clean-cut cops look at each other slowly.
2人の若い小ぎれいな白人警官、ゆっくりとお互いを見る。


OFFICER #1: (calmly) I'm gonna nail that sucker, if it's the last thing I ever do.
警官1:(静かに) おれは絶対にあの野郎をとっ捕まえてやる。たとえそれが人生最後の仕事になったとしても。

Officer #2 nods in solemn agreement.Camera: DISSOLVE TO
警官2、厳粛にうなづいてそれに同意する。カメラ、溶暗。





…以上はあくまで台本。シーン87-Dから92までの展開は、実際には以下の通り。

ELWOOD: You want outta this parking lot? Okay.
エルウッド:駐車場から出たいんだな?オッケー!

…画面がトイザらスの店内に切り替わる

SALES LADY: Will there be anything else?
店員:他にご注文は?

Customer:Yes, do you have a miss Piggy?
:(セサミストリートの人形を手に持ち)ピギーちゃんもありますか?

…そこへブルースモービルが突っ込んでくる。”I can’t turn you loose” が流れ出す。車はトイザらスの店内を破壊し、向かいの花屋を破壊。クラクションを鳴らしながらショッピングモールのメインストリートを疾走する。

JAKE: Hanson Burgers.
ジェイク:ハンソンバーガーだ。

ELWOOD: Yeah, lot of space in this mall.
エルウッド:ああ。ここは広くていいな。

…紳士服店を破壊。婦人服店を破壊。

JAKE: Disco dancing haircuts.
ジェイク:ディスコ・ダンシング・ヘアカットだ。
…ディスコ用の髪型にしてくれる店?ディスコを踊る散髪屋?

ELWOOD: Yeah.
エルウッド:ああ。

…エルウッド、ドリフトターン。パトカーがドーナツ屋を破壊。楽器店を破壊。

ELWOOD: baby clothes.
エルウッド:こっちはベビー服だ。

JAKE: This place has got everything.
ジェイク:何でもあるな。

…エルウッド、180度ターン。中古車店を破壊。

ELWOOD: New oldmobiles are in early this year.
エルウッド:今年は新古車が出るのが早いな。

…ショッピングモールのメインストリートを逆戻り。

ELWOOD: Pier1 imports.
エルウッド:ピアーワンインポート(店名)だ。

…最初のパトカーがバランスを崩す。

OFFICER #1: Oh, shit!

警官1:くそっ!

…車が裏返しにひっくり返り、それを後続のパトカーが弾き飛ばしてグルグル回転する。

OFFICER #2: They broke my watch!
警官2:時計が壊れちゃった!

後続のパトカーもドラッグストアに突っ込んで停止。2人は逃走に成功する。


Can't Turn You Loose - Otis Redding

I Can't Turn You Loose

Huh, I can't turn you loose now
If I do, I'm gonna lose my life
Ah, I can't ever turn you loose now
If I do, I'm gonna lose my life
I can't turn you loose to nobody, ha
'Cause I love you baby, yes I do now
Ooh, baby hip-shaking mama, I told ya
Honey, I'm in love with only you
Honey, baby, do it baby why don't ya?
I'm gonna give ya everything that you wanna

おまえを離せない。
離したら人生が終わっちゃいそうだ。
ああ おまえを離せない。
離したら全てが終わっちゃいそうだ。
おまえを誰にも渡したくない。
好きなんだベイビー。そうなんだ。
ヒップをシェイクするイカしたベイビー
愛してるのはハニー、おまえだけだ。
愛してくれよハニー、いいだろう?
おまえの欲しいものは何でもやるぜ。


I gotta, gotta, gotta, gotta
Keep on, honey baby
Never, never gonna turn you loose
Keep on, keep on holding on
Gotta gotta

このまま続けなくちゃ。
なくちゃなくちゃなくちゃ。
絶対に絶対に離さない。
続けるぞ。続けるぞ。
がんばれ。がんばらなくちゃ。


I can't turn you loose now
I'm in love, now, with the prettiest thing, ooh
I never, never turn you loose now
Because the sweet love she bring me
I said I can't turn you loose to nobody, baby
I love you baby, yes I do
Ooh, hip-shaking mama, I love ya
Huh, I'm in love with only you
Honey, baby, do it baby why don't ya
And I'm gonna give ya everything you want

おまえを離せない。
愛してるんだ。かわいすぎるぜ。
絶対に絶対に離さない。
素敵な愛をくれる人だから。
おまえを誰にも渡したくない
と言ったんだ。
愛してるんだ。そうなんだ。
おまえだけを愛してる。
愛してくれよハニー、いいだろう?
おまえの欲しいものは何でもやるぜ。


Gotta, gotta ha
Keep, keep on holding on ha
Never gonna turn you loose now
Never gonna lose you, babe

がんばらなくちゃ。
なくちゃなくちゃ。
おまえを離さない。
絶対に失いたくない。ベイブ。


I can't turn you loose
Never, I'm never gonna turn to you loose
I'm gonna keep holding on, turn you loose
Gonna keep a grip on ya
I can't turn you loose
Early in the morning, gonna hold ya
Early in the evening, and I'm gonna hold ya
Never turn you loose
Never gonna turn ya
Gotta keep a hold on
Hold on to my baby
Got to, got to, got to
Got to, got to, got to
Keep-a, keep on grooving

おまえを離さない
おまえを離せない
がんばるぞ。
抱きしめ続けてるぞ。
おまえを離せない。
朝になっても抱きしめてる。
夜になっても抱きしめてる。
おまえを離さない。
逃がさない。
がんばらなくちゃ。
しがみついてなくちゃ。
グルーヴし続けなくちゃ。
なくちゃなくちゃ。
なくちゃなくちゃ。

=翻訳をめぐって=

  • 曲名は"Can't Turn You Loose"とクレジットされる場合もある。高校野球の応援歌にも使われたりしているので、誰でも聞いたことのある曲だと思うけど、ちゃんと歌詞のついた「歌」なのだということは、ソウルミュージックが好きな人以外には意外と知られていないのではないかと思う。
  • タイトルを直訳すると「私はあなたを解放された状態にすることができない」。他の男に取られるのが怖いから自由にさせておくわけには行かない、という暴力的な束縛のイメージも伴う言葉なのだが、実際に抱きしめている相手に向かって言う言葉として解釈するなら自然だし、言われている方もイヤイヤ抱きしめられているのでない限り、悪い気はしないに違いない。「お前を離さない」というのは、よくできた邦題だと思う。
  • 昨日おぼえたばかりの「Hold on」という言葉がこの歌でも何回も出てきて、これまた味わい深い。オーティス・レディングという人は実際に誰かを抱きしめる時にもこの歌と同じテンションで叫んでて、そのテンションのままステージに出てきて先ほどのやりとりをいっそう芸術的に再現して、それで膨れあがったイメージを解放するためにステージを引っ込むが早いかさらに誰かのことを抱きしめてグルーヴし続けながら同じ内容を叫びまくっていたんだろうな、といったようなことが、何となく手に取るように想像できるような気がしてしまう。飛行機事故で死ななくても、どのみち長くは生きられない人だったのかもしれない。(尊敬と哀悼を込めて言っています)。

今回、集中的に考えてみたいのは、「Gotta」という言葉をいかに翻訳するか、ということである。

RCサクセション忌野清志郎が自分の歌い方の中に取り入れ、エレカシウルフルズといったフォロアーたちが我も我もと模倣することを通し、今やすっかり日本のポピュラーミュージックの中でも定着した感のある「ガッタガッタ」というフレーズは、元はといえばこのオーティスレディングという人が「発明」したものに他ならない。しかしオーティスが発明したのはあくまで「歌い方」であり、「gotta」自体はちゃんと意味のある、しかも極めて使用頻度の高い英語なのである。それにも関わらず、学校の英語でその使い方を教えてもらえることはまずない。だから私自身、オーティスや清志郎をマネして長年ガッタガッタ言い続けてはきたものの、それがどういう気持ちや感情の込められたフレーズなのかということは、ずっと分からずにきた。

最近の子どもは小学校から英語を習うらしいけど、私の時代は中学校からだった。そして一ヶ月もしない間に、日本語と英語の「構造」があまりに違っていることを思い知らされ、たちまちわけがわからなくなった。

たとえば日本語の「ある/ない」に相当するような便利かつ簡単な動詞が、なぜか英語には存在しない。だから「ライターある?」「喫茶店ある?」「行ったことある?」みたいな極めて単純な表現を、いちいち違う言い方で覚えなければならない。そして学校教育の順序に従うなら、「行ったことある?」を教えてもらえるのは「ライターある?」を教わった二年後ぐらいになるという、とんでもない話になる。そんな単純なことさえ自由に話せない状態におかれて英語を好きになどなれるわけがないわけで、じじつ私の場合、「There is〜」という言い方が出てきたあたりから英語の授業には完全について行けなくなっていた記憶がある。

(ちなみに私は「ある/ない」を「動詞」だと書いたけど、これにも簡単にそうとは言い切れない側面があり、特に「なくなる」みたいな表現を考えた場合、「ない」は限りなく形容詞に近い言葉なのではないかと思う。こういうことの1つ1つが、逆に日本語を学ぼうとしている外国人の人たちにとっては、とてつもなくややこしいことになるのだ。本当はとても簡単なことなのに)。

「Gotta」というのはこの日本語の「ある/ない」の「ある」に相当するニュアンスを持った言葉だと理解すればいいのではないのか、というのが、このブログを始めた効果もあって、最近ようやく分かってきた私の実感である。ただし単純に「ある」と翻訳するわけにも行かない。その対象が「私のもとにある」という事実を強調した言い方としての「ある」なのである。(正確には「主語のもとに」と書くべきなのだろうが、ここでは一人称の用法に限定する)。

I gotta blues
ブルースが私のもとにある。
I gotta woman
1人の女性が私のもとにいる。
I gotta feeling
ある感情が私のもとに存在する…

そしてこれを「持っている」と翻訳すると、微妙に間違いになる気がする。なぜならgottaの対象は、その人の意思ではなくむしろ対象自身の意思でその人のもとに「ある」感じを伴っているからである。だから上の英文で「目的語」になっている3つの言葉は、日本語に直すと全て「が」のついた「主語」になっている。ただし「gotta」を「手に入れた」と訳しうるケースは、あるように思われ、それがややこしいところである。相手の気持ちまで含めて「手に入れる」ことが成功した場合に、この「gotta」は最も好んで使われているような感じがする。

こういう風に考えてみると、忌野清志郎が「上を向いて歩こう」を歌う時に「ガタガタガタガタガタガタガタあうっ!ひとりぼっちの夜!」と言っていたのは、意味も何もあるものかと思っていたけれど、実は極めて「gotta」の用法に忠実な表現だったのだということに、改めて感心させられる。文字通り日本語と英語を両方使うことによってしか表現できない、あれは、感情だったのだ。

そしてこの「gotta」の後に動詞が来た場合には、「やらなければならないことが私のもとにある」というニュアンスが生じる。

I gotta go
私は行かなければならない。
I gotta do
私はやらなければならない。
( I ) gotta get away
(私は) 逃亡しなければならない…

そんなわけで私の翻訳では、ガッタガッタの後に動詞が来た場合の訳詞は「なくちゃなくちゃ」になっている。ただしこれはあくまで暫定的な理解であり、「gotta」をめぐる私の探求は今なお途上である。これだけのことが言いたかっただけなのに、結局えらく長ったらしい話になってしまった。ではまたいずれ。