華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Boom Boom もしくはブルースブラザーズ特集#13 (1961. John Lee Hooker)

  • ジェイクとエルウッド、ソウルフードレストランのコックになったマット"ギター"マーフィーをバンドに連れ戻すため、音楽のあふれる街、マックスウェル・ストリートにやってくる。



SCENE 182
Location: EXT. MAXWELL STREET - DAY
Music: Boom, boom.The Bluesmobile cruises down the famous street, We see the open-air market places of automobile parts; crazy merchandise -- a real street festival. The Bluesmobile pulls up and parks where two old black men are playing guitars hooked up to small amps right on the sidewalk. Jake and Elwood exit the Bluesmobile and stand with the crowd listening.
マックスウェル・ストリート。昼間。流れている音楽は「Boom, boom」。ブルースモービルはこの有名な通りをゆっくりと進む。車の部品を売っている露店が見える。crazyな商品…通りはまさにフェスティバルだ。ブルースモービルは、歩道に小さなアンプを置いてギターを演奏している2人の黒人男性の脇に止まる。ジェイクとエルウッドは車を降りて、群衆と一緒に演奏に聞き入っている。
…crazy は「精神病者」に対する差別語です。ここでは台本の原文をそのまま転載しました。




SCENE 182-A
Location: EXT. MAXWELL STREET

JAKE: Street Slim and Baby Boy Red; still playing Maxwell Street.
ジェイク:ストリート・スリムにベイビーボーイ・レッドだ。まだマックスウェルストリートで演奏してたんだな。
…実際にこのシーンで"Boom Boom"を演奏しているのは、ジョン・リー・フッカー本人が率いる4人組のバンド。

The two black men finish the tune.
2人の黒人男性、演奏を終える。


OLD BLACK MAN #1: Thank you, that was the 'boogie' which I wrote.
老人1:サンキュー。今のはわしが書いた、ブギーって音楽だ。

OLD BLACK MAN #2: You're lying if you say that 'cause the first boogie I ever heard come offa my mother's church organ and after that offa Pinetop Perkins' piano and offa Tampa Red's guitar. You're lyin'.
老人2:ウソ言うな。おれが初めて聞いたブギーって音楽は、母親の教会でオルガンで演奏してたんだぞ。それからパイントップ・パーキンスがピアノを弾いて、タンパ・レッドがギターを弾くああいう音楽をブギーって言うようになったんだぞ。ウソ言うな。

OLD BLACK MAN #1: You callin' me a liar?
老人1:お前、わしをウソつき呼ばわりするのか?

OLD BLACK MAN #2: Yes sir.
老人2:そうですけど何か?

The two men begin to argue in earnest as Jake and Elwood walk past them to....
2人は本気で口論を始める。その横をジェイクとエルウッドは通り過ぎてゆく…
…上の「老人の口論シーン」は、映画では観客同士の口論に切り替わっている。撮影当時60歳だったジョン・リー・フッカーは「キング・オブ・ブギ」として有名だった人だが、台本段階では誰か偉大なブルースマンをもう1人キャスティングしてジョン・リーとの「喧嘩セッション」を描く構想があったのかもしれない。



John Lee Hooker - Boom Boom (from "The Blues Brothers")

Boom Boom

Boom boom boom boom
I'm gonna shoot you right down,
Right offa your feet
Take you home with me,
Put you in my house
Boom boom boom boom
A-haw haw haw haw
Hmmm hmmm hmmm hmmm

ぶんぶんぶんぶん
おまえを狙い撃ち。
足をつかんで
引きずって帰って
おれんちに放り込んでやる。
ぶんぶんぶんぶん
あ、はおはおはおはお
ふんふんふんふん


I love to see you strut,
Up and down the floor
When you talking to me,
That's baby talk
I like it like that
Whoa, yeah!
Talk that talk, walk that walk

おまえの気取った歩き方が好きだ。
ダンスフロアを行ったり来たり
おれとしゃべる時には
おまえは赤ちゃん言葉。
いいじゃんいいじゃん。
ほわ!いぇあー!
言うべきことを言い
やるべきことをやる。


When she walk that walk,
And talk that talk,
And whisper in my ear,
Tell me that you love me
I love that talk
When you talk like that,
You knocks me out,
Right off of my feet
Hoo hoo hoo
Talk that talk, and walk that walk

やるべきことをやり
言うべきことを言う。
おれの耳にささやいて
愛してるって言ってくれる
それも有言実行。
好きだな。
そんな風に言われたら
おれは完全にノックアウトされて
ぶっ倒れちゃうな。
ほうほうほう。
有言実行。

  • マックスウェル・ストリートは「シカゴ・ブルース発祥の地」と呼ばれた、シカゴ西部の伝説的な野外マーケット。この映画の撮影から15年後の1994年に閉鎖され、2000年には取り壊されてしまったとのこと。こちらのサイトの方が、詳しい説明を書いてくださっていました。
  • ジョン・リー・フッカーはブルースという音楽にエレキギターを導入した最初の世代の人たちの1人で、デトロイトを拠点に活躍。同じコードでひたすら演奏を続ける「ワンコード・スタイル」と、足踏みの音を演奏に取り入れた「ストンピング奏法」でつとに有名。ウルフルズのベーシストのジョンBチョッパーという人がこの人から名前をもらっているのは間違いのないところだけど、関係やいきさつについては私は知らない。ちなみにジョンBチョッパーという人の昔のステージ名は「ブラック田ヨンピル」だったのだけど、ウルフルズがブレイクする直前に改名した理由は、「ブラック田」という名前が当時大坂で活躍していたメッセンジャーの黒田という人に取られてしまったからなのではないかと、当時の私は推測していた。が、本当のところは20年以上たった今でも分からない。て言っか今ではどうでもいい。なお、チョー・ヨンピルさんは70近くなった現在でも元気でご活躍だそうです。何なのだこの項目は。
  • ボ・ガンボスの2枚目のアルバム「JUNGLE GUMBO」に収録されている「ちんちろりん」という曲は、ほぼこの曲の日本語カバーである。動画を探したけど、見つからなかった。
  • Right offa your feet…offaは「〜から」を意味する口語表現の「off of」が、さらに縮まった言い方なのだとのこと。つまり歌詞の言葉は相当に「訛って」いることになるが、「訛らせ方」まで想像で再現しようとすると不正確な翻訳になりそうな気がするので、聞く人それぞれのイメージで補うしかないところだと思う。
  • I love to see you strut…strutは「気取って歩く」もしくは「いばって歩く」という意味の動詞。そういえば私がこの言葉を覚えたのも、思えばウルフルズの「大阪ストラット」という歌を通じてのことだったが、あの歌の元ネタは伊藤銀次という人の「福生ストラット」という曲だったらしく、それはまだ聞いたことがなかったのを思い出した。聞いてみよう。
  • Talk that talk, walk that walk(もしくはTalk the talk, walk the walk)は、「言うべきことを言い、やるべきことをやる」「有言実行」という意味の熟語だそうです。
  • 3番の歌詞はWhen she walk that walkで始まるが、このsheが後段ではいつの間にかyouに変わっている。だが、ジョンリーが想いを寄せている同一人物の女性のことを指しているのは、文脈から考えて間違いないと思う。荒削りな英語の歌には、こんな風に歌詞の主語が途中で変わってしまうものが割と少なくない。現実の「彼女」との関係と、頭の中での「おまえ」との関係がだんだん区別できなくなってしまう感覚の、割と忠実な表現であるのかもしれない。

…8月に入り、明らかに、ダラダラしてます。文体に如実に現れてしまうので途方に暮れています。続く。

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今週のお題は「ちょっとコワい話」ですか。世の中、戦争だとか原発だとか「本当に怖いこと」で溢れているので、ちょっとぐらい怖い個人的な経験を語ったところで何になるのだろうという気はするのだけど、言われて思い出したことがあった。

私には幼い頃

昆虫に話しかけられた

という妙にハッキリした記憶がある。

何歳の時のことだったかは、思い出せない。ただ、4歳の時に引越しをしたその前の家にいた頃の出来事だったことは間違いない。

夏の暑い日のことだった。というのは下着姿で昼寝をしていた母親の姿が記憶にあるからである。

母親が寝てしまったものだから、私はつまらなくて、キョロキョロしていた。

と、部屋の反対側の隅に、青や緑にビカビカ光る「変な虫」がいるのが目に入った。そいつがいきなり、私に向かって人間の言葉で叫んだのである。

「オマエ、ソコデナニヲシテイル!」

…ビックリしたなんてものではなかった。完全にパニくって、泣きわめきながら必死で母親を起こした。

「お母ちゃん、虫が喋った!虫が喋った!」

「…何やのんな、気色わるいこと言わんといてよ…」

言いながら母親はもぞもぞと起き上がった。そして私が指さす先を見て悲鳴をあげた。

「いやっ!気色わるっ!あんな虫、見たことない!」

…言いながらも母親はホウキを持って果敢にその虫に歩み寄り、「いやっ!いやっ!」と言いながら玄関先に掃き出してしまった。その点、本当に頼り甲斐のある母親だったのだが、私は怖くてたまらなかった。そんな目にあわされて黙って家から出て行くような虫だとは思えなかった。それから数日、ひょっとしたらそれ以上だったかもしれない。私は「虫の復讐」におびえてずっと眠れなかった記憶がある。

後日、だったと思う。私は絵本の昆虫図鑑の中に、その虫が載っているのを見つけた。「ハンミョウ」という虫だった。



いらい私は「ハンミョウ」が怖くて仕方ない。もっともその時いらい、ハンミョウという虫に出会った経験はない。しかしそれだけに、もしもう一度「ハンミョウ」に出会ってしまったらその時は必ず何かが起こるのではないかという気がする。それを想像するのが怖い。

今でもやっぱり怖い。ではまたいずれ。