華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Rawhide もしくはブルースブラザーズ特集#18 (1958. Frankie Reine)


  • ブーイングを浴びてステージライトを消されたブルースブラザーズバンド、客の心をつかむために「ローハイドのテーマ」を歌う。

SCENE 237
Location: STAGE - THE BAND
is in darkness and confused.
ステージは闇に包まれ、混乱する。


MURPHY: Why did they turn out the lights?
マーフィー:何であいつら、ライトを消したんだ?

WILLIE: Maybe they blew a fuse.
ウィリー:ヒューズが飛んだんじゃねえか?

BLUE LOU: I don't think so, man. We're in the dark on purpose.
ルー:違うと思うぞ。わざと電気が消されたんだ

JAKE: What?
ジェイク:何だって?

DUCK: Jake, this isn't the Tick-Tock Lounge or the Paradise Ballroom.
ダック:ジェイク、ここはチクタク・ラウンジでもなけりゃ、パラダイス・ボールルームとも違うだろ。(どちらもインディアナ州にある有名なライブハウスのことだと思われる)。

JAKE: What do you mean?
ジェイク:どういうことだ?

COLONEL: The owner wrote down the songs he wanted us to play on a piece of paper. We are not playing them.
カーネル:オーナーが演奏してほしい曲のリストをよこしてきたけど、おれたちはそれを演奏してないわけだ。

Camera: CUT TO
SCENE 238
Location: JAKE
begins to understand. He turns towards the audience. They hurl bottles, ashtrays...Jake moves towards the audience clenching his fists.
ジェイク、納得しはじめる。観客を振り向くと、投げつけられる瓶に灰皿…ジェイク、観客に向かって拳を握りしめる。


MATT: Tranquilize yourself, boy. We are performers. We're here to perform, not to fight.
マット:落ち着けよ、ボーイ。おれたちはパフォーマーだろ。演奏しにきたんであって、ケンカしに来たんじゃない。

Elwood approaches Murphy.
エルウッド、マーフィーに歩み寄る。


ELWOOD: Let's figure out something these people like...fast.
エルウッド:ここの連中はどういう曲が好きなのか、当てなくちゃ…早く。

MURPHY: I've got it. Do you remember the 'Theme From Rawhide"?
マーフィー:大体わかる。「ローハイドのテーマ」を覚えてるか?

ELWOOD: The old favourite. Rowdy Yates.
エルウッド:子どもの頃、好きだった。ローディ・イェイツだろ。

MURPHY: what key?
マーフィー:キーは何で行く?

DUCK: A. Blues country key.
ダック:Aで。ブルース・カントリーのキーで行こう。

The band, with Murphy leading at the Piano, begins to play the "Theme From Rawhide'. Elwood starts to sing.
バンド、マーフィーのピアノのリードで「ローハイドのテーマ」を演奏しはじめる。エルウッド、歌い出す。


Blues Brothers - Rawhide

Theme From Rawhide

Rollin' Rollin' Rollin'
Rollin' Rollin' Rollin'
Rollin' Rollin' Rollin'
Rollin' Rollin' Rollin'
Rawhide!

順調、順調、順調
風はホコリを巻き上げ
雷がゴロゴロ言ってる
道は続いて行く
生皮のムチを鳴らせ!


Rollin' Rollin' Rollin'
Though the streams are swollen
Keep them doggies rollin',
Rawhide

順調、順調、順調
川は増水してるけど
かわいい牛どもを歩かせ続けろ
ムチを鳴らせ


Rain and wind and weather
Hell bent for leather
Wishin' my gal was by my side

雨や風が一緒くたになって
猛スピードでやってくる。
彼女がそばにいたらなあ。


All the things I'm missin'
Good vittles, love and kissin'
Are waiting at the end of my ride

いとしいもののすべて
うまい食べ物に甘いキスが
旅の終わりに待っている。


Move 'em on
(Head em' up!)
Head em' up
(Move 'em on!)
Move 'em on
(Head em' up!)
Rawhide!

牛を歩かせろ
前を向かせろ
ムチを鳴らせ!


Cut 'em out
(Ride 'em in!)
Ride 'em in
(Cut em' out!)
Cut 'em out
Ride 'em in,
Rawhide!

1匹ずつ歩かせろ
馬で乗り込んで追い立てろ
ムチを鳴らせ!


Keep movin', movin', movin'
Though they're disapprovin'
Keep them doggies movin',
Rawhide

歩かせ続けろ 続けろ
牛どもは嫌がってるけど
とにかく連中を歩かせ続けろ
ムチを鳴らせ


Don't try to understand 'em
Just rope, throw, and brand 'em
Soon we'll be livin' high and wide

やつらを理解してやる必要はない。
投げ縄で縛りあげて焼印を押せ。
おいしい暮らしは目の前さ。


My heart's calculatin'
My true love will be waitin'
Be waitin' at the end of my ride

おれの心は感じている。
本当の愛がきっと待っている。
この旅の終わりに待っている。


Move 'em on
(Head em' up!)
Head em' up
(Move 'em on!)
Move 'em on
(Head em' up!)
Rawhide!


Cut em' out
(Ride 'em in!)
Ride 'em in
(Cut em' out!)
Cut em' out
Ride 'em in,
Rawhide!


Yah! (whip crack)
Rawhide!

ヤー!
ムチを鳴らせ!

=翻訳をめぐって=

  • 「ローハイド」は、むかし日本のテレビでも放映していた西部劇なのだそうで、そういえば正月に親戚が集まった時など、誰かが「しゅっぱーつ!」と言えばみんなが「ろーれんろーれんろーれん」と歌いだすような文化と言うかノリが、私の親くらいの世代の人たちにはあった。(「じゃりン子チエ」というマンガにも、全く同じシーンが出てくる)。他に娯楽がなかったこともあるのだろうが、あの世代の人たちの外国映画や俳優に関する記憶の細かさや豊かさには、本当にビックリさせられることが多い。Wikipediaによれば「南北戦争後の1870年代のアメリカ西部を舞台に、テキサス州サンアントニオからミズーリ州のセデリアまで約3000頭の牛を運ぶカウボーイ達の長い道中ロングドライブで起こる様々な出来事や事件を描く」ドラマだったとのこと。
  • 「ろーれんろーれん」が「知ってるメロディ」だったということもあり、このシーンは子どもの頃の私にとって、この映画の中で一番のお気に入りだった。客がどんな歌を求めているかを瞬時につかみ、即興の演奏でたちまちハートをつかんでしまうなんて、まさに「本物のミュージシャン」という感じでつくづくカッコいいと思った。同時期に長渕剛という人が、始まったばかりのヘイヘイヘイという番組で、「博多で歌っていた頃、ヤクザから演歌を歌えとどんなにスゴまれても、オレは自分の歌いたい歌しか歌わなかった」とか言ってイキっているのを見たのだけれど、そうまでして彼が「歌いたかった」のが「順子」とかそういう歌だったのだと思ってみれば、笑けてくるではないか。ミュージシャンとしての「勝利」があるとすれば、そのヤクザをも泣かせるような歌を歌ってみせて初めてハウマッチなのではないかと、その頃は思ったものだった。今は思わないけど。
  • rollin' rollin' rollin' の訳し方について。rollという動詞には、辞書に載っているだけで31通りの意味があり、そのうち「進む、走る」「取り掛かる、始める」「ほこり・煙などが巻き上がる」「~を回して前へ進める」「事が順調に運ぶ」「雷がゴロゴロ鳴る」などは全部この歌の訳詞に使える内容で、どれかひとつだけが正解というものではないと思う。日本語の詩だとこういう場面では「どっどど どどうど どどうど どどう」的な擬音語や擬態語を使うことでいろいろなイメージを喚起させることが多いが、多分ここではrollという動詞を使って「同じようなこと」をやっているのである。だから上記のような訳詞にしてみた。
  • rawhide…直訳は「生皮のムチ」。さらに「生皮のムチで打つ」という動詞としての意味もある。水分を含んでて、痛そうである。
  • doggie…「親からはぐれた子牛」と辞書にはあったが、三千頭の牛の群れ全体のことを言っているのだろう。「自分の支配下にあるもの」全般を子ども扱いして表現する傾向が、白人文化にはある。
  • Hell bent for leather…「猛スピードで」という意味の副詞句だと辞書にはあった。「hell-bent と hell-for-leather が一緒になったものと考えられている」とのことだけど、どっちも知らねえよ。
  • Cut 'em out/ Ride 'em in!…牛たちが「集団ストライキ」的に動こうとしない場合、馬で群れの中に分け入って(ride in)1匹1匹を切り離し(cut out)歩くように追い立てるという、カウボーイの牛群管理技術(造語です)なのだそうだ。
  • …2番の歌詞の内容は、しかしかなりえぐいのではないかと思う。いくら牛が相手だとはいえ「嫌がっても関係ない」「気持ちを理解する必要はない」「無慈悲に縛りあげて焼印を押せ」だなんて、白人が「自分たち以外の人種」に対してやってきたことそのものなのではないかという気がする。こんな意味だったのだと分かってみると、もう無邪気に「ろーれんろーれん」とは歌えないな。「好きな歌ではありません」リストに入れておくことにしよう。

…というわけでまたいずれ。続きます。