華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Stand By Your Man もしくはブルースブラザーズ特集#19 (1968. Tammy Wynette)


  • ブルースブラザーズバンド、「ボブのカントリーバンカー」での演奏を大成功のうちに終えるが、ギャラをもらえるどころか莫大なビール代を請求される事態におちいる。


OMITTED: 239
SCENE 240
Location: INT. BOB'S COUNTRY BUNKER
Elwood and the band finish the "Theme From Rawhide" and are greeted with righteous applause and a barrage of glasses and ashtrays.
エルウッドとバンド、「ローハイドのテーマ」の演奏を終える。明るい拍手が起こり、グラスと灰皿が集中砲火のように飛んでくる。


ELWOOD: Theme From TV show, ‘Rawhide.'. Thank you.
エルウッド:テレビショーから「ローハイドのテーマ」でした。ありがとうございます。

Jake takes the microphone.
ジェイク、マイクを握る。


JAKE: Now we’d like to do a horn section. We hope it’s one of yours.
ジェイク:次はホーンセクションに活躍してもらいましょう。みなさんお気に入りのこの曲です。

MURPHY: One... two... three....
マーフィー:ワン、ツー、スリー…
Murph and the band members sing backup on "Stand By Your Man."
マーフとバンドメンバー、"Stand By Your Man."の演奏を始める。



Stand By Your Man -Blues Brothers

Camera: DISSOLVE TO
OMITTED: 241 thru 246-A
SCENE 247
Location: INT. BOB'S COUNTRY BUNKER - NIGHT
It is the end of the night. Many persons are drunken casualties. The band vamps on "Rawhide".
ボブのカントリーバンカー、今や真夜中。大勢が酔っ払ってぶっ倒れている。バンド、「ローハイド」の即興演奏を始める。


JAKE: Well, folks, the time has come to call it a night. So do what you feel and keep both feet on the wheel. You don’t have to go home, but you can’t stay here. Until next time....
ジェイク:みなさま、今宵はそろそろ時間となりました。心は自由に、両足はお車に。家に帰らなくてもいいけれど、こちらはこれでおしまいです。それではまた次回…

Jake sings.
JAKE: 'Just head 'em up and brand 'em. Don't try to understand 'em. Soon we'll be ridin' far and wide, Raaawhiiide'.
They finish. The stage lights go out.
バンド、ローハイドの演奏を終え、ステージの灯りが消える。


SCENE 248
Location: STAGE

JAKE: (to band) Okay, let's get the hell out of here fast.
ジェイク:(バンドに)オッケー。さっさとこんな所はずらかろうぜ。

The band immediately begins to break down the equipment Bob Comes up on stage as the place begins to clear out.
バンド、直ちに機材の片付けにかかる。ステージにボブが上がってくる。


BOB: Shit, I'm gonna tell you boys that s some of the best goddamn music we've had in the Country Bunker in a long time.
ボブ:よお。お前らの演奏はこのカントリー・バンカーが始まってから最高だったぜ。

ELWOOD: Sorry we couldn't remember the 'Wreck of the Old 97'.
エルウッド:「Old97の事故」を演奏できなくて、申し訳ありませんでした。
...Old 97の事故 - Wikipedia

BOB: 'S okay, just make sure you learn it for next' time.
ボブ:なあに、次までにおぼえといてくれや。

JAKE: Bob, about, uh, our money for tonight....
ジェイク:ボブ、ところで、今夜のギャラのことなんだが…

BOB: That's right... That's right uh $200 and you boys drank $300 worth of beer
ボブ:ああ、200ドルだが…お前ら、300ドル分のビールを飲んじまったからな。

ELWOOD: Oh, well, when first came in, the bar lady never charged us for the first round. We figured beer was like complimentary-like for the band, you know.
エルウッド:えっ?最初におれたちが入ってきた時、バーのおかみさんは何も請求しなかったぜ。ビール代はギャラとコミだと思ってたんだが…

The camera takes in the hundreds of empty beer bottles on the stage. Bob laughs quietly.
カメラ、ステージの上に散らばった無数の空き瓶を映し出す。ボブ、静かに笑う。


BOB: Uh, hu hu, Uh-Uh.
ボブ:あーはん?ふっふっふ。

JAKE: Oh, okay, well I'll just go out and take a collection from the boys.
ジェイク:ああ、オッケー。じゃあ、表に行ってバンドのメンバーから集めてくるよ。

BOB: Well, I tell ya, I sure would appreciate it.
ボブ:ああ、ありがたいこった。

Jake and Elwood go out....Camera: CUT TO
ジェイクとエルウッド、出て行く。カメラ、切り替わる。


SCENE 248-A
Location: EXT. BOB'S COUNTRY BUNKER PARKING LOT - NIGHT
... to the Caddy and the Bluesmobile where the band is assembled ready to go.
キャデラックとブルースモービルのところでは、バンドメンバーが出発の準備をしている。


PAUL: Did you get the money?
ポール:カネはもらってきたか?

JAKE: He wants us to pay for the beer we drank.
ジェイク:あいつ、ビール代を請求するって言いやがるんだ。

There is a gasp from the band members.
バンドメンバーからため息がもれる。


COLONEL: I'd say we poured down at least a couple hundred dollars worth of hops.
カーネル:ホップ代だけで200ドル分くらい飲んじまったぜ。

MR. FABULOUS: I should have known.
ファビュラス:最初からわかってりゃなあ。

BLUE LOU: What do we do now, Jake?
ルー:どうするんだ、ジェイク?

JAKE: You guys go on ahead. We'll meet north of Lafayette in Battle Ground Park at the fork of the Tippecanoe and Wabash Rivers. Elwood and me, we'll stall 'em
ジェイク:お前たち、先に行ってくれ。ラ・ファイエットの北の戦場公園の三叉路で待ち合わせしよう。ティッペカヌーとワバシャ川に向かう道に分かれてるあそこだ。エルウッドとおれは、やつらを何とかごまかす。

The band members all crowd in the Cadillac with Murphy driving.
バンドメンバー、キャデラックに乗り込み、マーフィーがハンドルを握る。


WILLIE: One more chance, Jake. As far as I personally am concerned, you got one more chance.
ウィリー:もう一回だけチャンスをやるよ。ジェイク。少なくともおれはな。あと一回だけだぞ。

The Cadillac pulls out onto the highway. Elwood puts his arm around Jake comfortingly.
キャデラック、ハイウェイに向かう。エルウッド、なぐさめるようにジェイクの肩に手を回す。


ELWOOD: Don't worry, Jake. We got almost two days before the deadline. We'll get the five thousand bucks for the Penguin. God won't let us down.
エルウッド:落ち込むなよ。ジェイク。おれたちの締め切りまでにはまだ2日ある。ペンギンさんのために5千ドル手に入れるんだ。神さまはおれたちを見捨てたりしないさ。

JAKE: (muttering) Yeah, yeah. Sure.
ジェイク:(つぶやく)ああ、そうだな。

SCENE 248-B
Location: INT. CADILLAC - MOVING - HIGHWAY NEAR BOB'S - NIGHT
Paul is driving with Matt, Bones, and Blue Lou in front. Willie, The Colonel, Duck, and Al are in the back wedged among pieces of equipment.
ハイウェイを移動するキャデラック。ポールとマットがドライバー。助手席にはルーが座り、後部座席ではウィリーとカーネルとダック、アルが、機材にはさまれて座っている。


MURPHY: Good set guys. We slayed 'em. Real nice job on "Stand By Your Man."
マーフィー:いいステージだったな。客を圧倒してやったぜ。"Stand By Your Man."は完璧だった。

WILLIE: Real nice club, too.
ウィリー:まったく、いいクラブだったよな。

AL: Oh, yeah ... beautiful, beautiful spot.
アル:ああ、ステキなステキなところだ。

MATT: Hey...I thought we were supposed to be the Blues Brothers again...but that sure wasn't the blues we, were playing.
マット:でもよ…おれたちブルースブラザーズを再開したんだろ?おれたちがあそこで演奏したあれは、全然ブルースじゃなかった。

LOU: Yeah. When are we gonna play some blues?
ルー:ああ、いつになったらブルースをやれるんだろうな。

BONES: Do any of you cats even know where the next gig is?
ボーンズ:こん中で次のギグの場所、知ってるやつ、いるか?

AL: Wait a minute ... seriously now. What do you think? Can we expect to get paid for this tour or what?
アル:なあ、待てよ。マジな話、どう思う?このツアー、まともにギャラが出るんだろうか。

COLONEL: Or are we just making a free contribution to Joliet Jake's rehabilitation?
カーネル:そうでなきゃ、おれたちはジェイクのリハビリにタダで付き合ってやってるって話になるな。

WILLIE: I say this trip is nowhere. I say we gotta quit.
ウィリー:このツアーは行き止まりだよ。もうやめた方がいいんじゃないか?

MURPHY: What?! Quit?! You'd better make up your minds! I'll have to call the Ramada Inn ... talk to Mr. Rozzini ... see if we can get our old gig back.
マーフィー:何?やめる?それならみんな腹をくくろうぜ。ラマダ・インに電話してロッツィー二さんと話さなきゃ…もう一度あそこで演奏できるかどうか。

LOU: (heavily) Back at the Armada Room.
ルー: (重苦しく)あのアルマダ・ルームに戻るのか。

There is a low moan from the former Plushtones.
former Plushtones(前部座席?)から低いうなり声が聞こえてくる。


COLONEL: Well I can't go back to the Armada Room. When I'm there I feel about as comfortable as a boll weevil in a baby's crib.
カーネルアルマダルームには戻れねえよ。あそこにいた時は平和すぎて、ベビーベッドの中の綿食い虫になったような気がしたもんだ。

WILLIE: Okay, one more chance I say we give the Blues Brothers one more chance.
ウィリー:オッケー、ブルースブラザーズにもう一回だけチャンスをやろうじゃないか。

DUCK: Why not? Hell if the shit fits, wear it.
ダック:ああ、クソがくっついたら着ちまえって言うからな。

…このあたりの台詞は、映画では駐車場で2人を待っているシーンにはさまれています。

=============================


tammy wynette stand by your man

Stand By Your Man

Sometimes it's hard to be a woman
Giving all your love to just one man.
You'll have bad times
And he'll have good times,
Doin' things that you don't understand

女であることは時として辛い。
自分の愛をたった1人の男に捧げることは。
女がいやな思いをしている時に
男は女に理解できないようなことで
楽しい思いをしていたりする。


But if you love him you'll forgive him,
Even though he's hard to understand
And if you love him oh be proud of him,
'Cause after all he's just a man

でもその男のことを愛しているのなら
あなたはきっと許すはず。
そして彼のことを愛しているのなら
ああ、彼を誇りに思うべき。
だって結局
彼は男であるだけなんだから。


Stand by your man,
Give him two arms to cling to,
And something warm to come to
When nights are cold and lonely

あなたの男性の
味方でいてあげること。
彼に両腕を差し伸べてあげよう。
しがみつくことができるように。
そして温かい気持ちにさせてあげよう。
冷たくて寂しい夜のために。


Stand by your man,
And show the world you love him
Keep giving all the love you can
Stand by your man

あなたの男性の
味方でいてあげること。
あなたが彼を愛していることを
世界に見せつけてあげること。
あなたが持っている愛の
すべてを与え続けること。


Stand by your man,
And show the world you love him
Keep giving all the love you can
Stand by your man

あなたの男性の
味方でいてあげること。
あなたが彼を愛していることを
世界に見せつけてあげること。
あなたが持っている愛の
すべてを与え続けること。
あなたの男性の
味方でいてあげること。

=翻訳をめぐって=

1998年に亡くなったタミー・ワイネットという人は「カントリーミュージックのファーストレディ」と呼ばれていた女性で、この曲はあらゆるカントリーミュージックの中でも最も有名な曲のひとつなのだそうだけど、こうまで「男性にサービスする言葉」がズラズラと並んでいるのを見ると、フェミニストの人たちから長年にわたって批判の的にされてきたというのも当然のような気がする。ヒラリー・クリントンは1992年に「私はタミー・ワイネットのように男性のそばに大人しく立っていたり、クッキーを焼いたりする女性とは違う」という発言をしていろんなところから攻撃を受け、最終的にタミー・ワイネットに「謝罪」したらしいのだけど、何と言ったものか。私にはコメントのしようがない。

私自身は男性であり、フェミニストの人たちがするようにこうした曲を「批判」できる立場にはない。と思っている。こういう歌を歌う女性がいるのはこういう歌を喜ぶ男性がいるからなわけで、関係としては「男が歌わせている歌」なのである。だから女性の解放のためにたたかっている人たちから私が問われているのは「自分が変わること」であり、かつ自分の周りの男社会の男たちを「変えること」なのだと思う。そして私は自分が問われているそのことを、ぜんぜん果たせていると思えない。だから「私にはコメントのしようがない」などという情けない言葉しか出てこないのだけど、しかしこうまで「男に都合のいい歌」を、しかも男である自分が女性であるタミー・ワイネットに成り代わって「翻訳」するという行為には、ものすごく罪深い気持ちが伴う。

実際「その男のことを愛しているのなら/あなたはきっと許すはず」という歌詞に象徴されている現代社会、と言うか近代社会の価値観の圧力のために、男のDVに縛りつけられて逃げることもできなくされている人は確実に何万人を下らないのである。日本だけの話でだ。しかもそういう暴力は必ず密室で行われるから、その数字のケタは1つや2つぐらい平気で違っているかもしれない。そういう人の耳に届くこういう歌の言葉はそれこそ具体的な「圧力」そのものだと思う。その意味で、この歌はやっぱり「罪深い歌」だと思うし、この歌を歌ったり翻訳したり拡散したりする行為も「罪深い行為」であると私は思わずにいられない。

私が翻訳ということを死んでも自分の「職業」にしたいと思わないのは、こういう言葉を誰かに言いたい誰かやこういう言葉を誰かに言わせたい誰かのために「仕事」をさせられるのが、自分には耐えられないことを分かっているからである。他人の言葉を扱うことをあえて「仕事」にしようと思ったら、この社会がこういう社会である限りそういう役を回されるのは避けられないことだからだ。

しかし、自分の良心に従って「できない」と決めたその仕事を、プロ意識という言葉で裏付けられた差別意識のカタマリみたいな人間が「代わりに」サクサクとこなしてゆくのを指をくわえて見ていることしかできないようであれば、私のやっていることは「逃げている」のと何も変わらない。だから、沈黙しているわけには行かない。それをやることがどうして自分の良心に反するのかということぐらいは最低限明らかにして、同じことをやろうとしている人間に待ったをかけるぐらいの努力は、果たさなければならないと思う。このブログは、そのための場所でもある。

書いておけば、誰かの目に触れることもあるはずだ。

昨日のローハイドの記事で、「客がどんな歌を求めているかを瞬時につかみ、即興の演奏でたちまちハートをつかんでしまうなんて、まさに『本物のミュージシャン』という感じでつくづくカッコいいと思った」「でも今はそう思わない」と私は書いた。今ではそう思わないのは、それをやれば受けることが分かっているからといって、と言うか分かっているからこそ、こういう歌を演奏するのはなおさら罪深い行為だろうと感じずにいられないからである。

この映画の中で、ボブみたいな保守的な価値観を持った出演者は、基本的に「やっつけられる側」の人間として描かれている。カントリーに象徴される「古いアメリカの価値観」は風刺の対象になっているし、ジェイクもエルウッドも設定としてはカントリーなんか大嫌いなんだという形になっている。(ちなみに私はグラム・パーソンズとかエミルー・ハリスとか好きだし、カントリーにもいろいろあるとは思う)。その2人がカントリーを歌わされる羽目になって、仕方なく選んだのが「誰でも知ってる」この歌だったという、おそらくは、演出なのだろう。

しかし、その「古いアメリカの価値観」と本当に対決する気持ちを持っているならば、この歌はやっぱり「歌えない」はずの歌なのである。私がジュリーの「カサブランカ・ダンディ」を絶対に歌えないのと同じように、その歌詞の罪深さを意識しただけで口が動かなくなってしまうはずなのである。それを割りかし「気持ちよく」歌えてしまうのは、2人がそれを「罪深い」と感じていないからだろう。そしてその「古いアメリカの価値観」を「心地よく思う感性」を、ブルースブラザーズの二人自身が観客と「共有」しているからこそ、このステージは「成功」してしまうわけなのだろう。て言っか「Stand by you man」のところで自分を指さすあの「振り付け」は何なのだろうか。女性が歌っても罪深いこの歌を、ここで2人は完全に「男の歌」に変えてしまっているのである。それで、「受けて」いるのである。

子どもの頃の私は、この場面を「心あたたまるせつない場面」として見ていた。だが今の目で見ると、この上なくえぐい場面にしか思えない。

…特集を始めた頃は、こんなつもりじゃ全然なかったんだけどな。映画を丸ごと翻訳してみたいと思ったのは、そもそも私がこの映画を大好きだったからである。ところが翻訳が進めば進むほど、私は前ほどこの映画が好きでなくなりつつあることを、気付かされずにいられない。

そしておそらくそれは「いいこと」なのである。前ほど好きではなくなったにしても、依然私はこの映画のことをキライではない。そして前よりは確実にこの映画のことを「分かって」きている。それは私がこの映画との「正しいつきあい方」をようやく身につけ始めているということなのだと思うし、言い換えるならそれがオトナになるということで、青春に決着をつけるということなのだと思う。

この特集、意地でも最後まで終わらせます。ではまたいずれ。