華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

(I Got Everything I Need) Almost もしくはブルースブラザーズ特集#20 (1974. Downchild Blues Band)



  • ボブから法外なビール代を請求され、窮地に陥ったジェイクとエルウッドの前に、本物の「グッド・オール・ボーイズ」が登場。二重のピンチを迎える。

SCENE 248-C
Location: EXT. BOB'S COUNTRY BUNKER PARKING LOT - NIGHT
Jake is leaning with one hand on the side of the building peeing on the wall when he sees a deluxe, white Winnebago pull into the parking lot. Emblazoned on the side is a beautiful painting of a rearing Palomino and written in script painted like a rope in large gold letters, THE GOOD OLE BOYS. Underneath in smaller letters, DIRECT FROM NASHVILLE. Jake quickly finishes and runs over to the Winnebago just as the six members of The Good Ole Boys are getting out. They are dressed in resplendent rhinestone cowboy clothing. All wear snow-white cowboy hats and loads of diamond rings. These guys are clearly shitkickers.
ジェイク、壁越しにのぞいていると、白いウィネベーゴ(車種)が駐車場に入ってくる。月毛の馬に乗った男の絵がサイドに描かれ、ロープのような書体の大きな文字で「ザ・グッド・オール・ボーイズ」下に小さな文字で「ナッシュビルからの直送便」と書かれている。ジェイク、ただちにウィネベーゴから降りてくる6人のところに向かう。全員、キラキラのライン石をつけたカウボーイスタイル。スノーホワイトのカウボーイハットをかぶり、ダイヤの指輪をいくつもつけている。明らかに、南部の田舎者である。
…shitkickersの直訳は「クソを蹴るやつら」。南部人に向けられる蔑称であると辞書にはありましたが、明らかに差別表現だと思います。ここでは原文をそのまま転載しました。


JAKE: (officiously) Excuse me, gentlemen. Are you The Good Ole Boys?
ジェイク:(おせっかいな口調で)失礼ですが、ジェントルメン、グッド・オール・ボーイズの皆さんですか?

TUCKER: Why yes, we are.
タッカー:そうだが、何だ?

Jake flashes his wallet quickly.
ジェイク、素早く彼の財布に目をやる。


JAKE: I'm Jake Stein from the American Federation of Musicians, Local 200. I've been sent here to see if you gentlemen are carrying your permits.
ジェイク:私はアメリカミュージシャン連盟ローカル200のジェイク・スタインです。皆さんが演奏許可証を携行しているかチェックするために派遣されました。
…Local 200は実在の労働組合の名称からの引用で、出まかせをそれらしく見せる以上の意味はないと思う。

TUCKER: Our what?
タッカー:おれたちの、何だって?

JAKE: Your union cards. May I see your cards, please?
ジェイク:組合員証です。カードを見せて頂けますかな?

TUCKER: Sheeit. We're very late, son. Step out of the way.
タッカー:クソが。おれたちはえらく遅れちまったんだ。さっさとそこをどけ。

JAKE: Gentlemen, I don't want to have to get rough with you. May I see your cards, please?
ジェイク:ジェントルメン、私は事を荒立てたくないのです。カードを見せてもらえませんかな?

Tucker puts his hand on Jake's shoulder threateningly. Jake stands firm.
タッカー、威嚇するようにジェイクの肩に手を置く。ジェイク、びくともしない。




JAKE: I don't think that would be wise, sir. I've got a number of law enforcement officers at my disposal for just that kind of behavior. Something we've come to expect from country western musicians.
ジェイク:賢明なやり方とは思えませんな。私へのこうした扱いに対しては、法律を執行するための多くの行政官が派遣されることになっています。カントリーウエスタンのミュージシャンにはありがちなことですな。

TUCKER: You're gonna look mighty funny, Stein, trying to eat corn on the cob with no teeth.
タッカー:おまえ、どうしようもなくオロカなやつみたいだな。スタイン。歯がなくなったらトウモロコシが食えなくなるぜ?

JAKE: All right! That's it! You stand right here, mister. I'll be right back. I don't want you to move from this spot.
ジェイク:オーケー!それがあなたの答えですね!そこで待っていて下さい。ミスター。動いてはいけませんよ。

Jake turns and strides back to Bob's Country Bunker as Bob comes out of the bar with a handful of chits. The Good Ole Boys' Winnebago, Bob's pickup, and the Bluesmobile are the only vehicles left in the lot. Tucker McElroy and The Good Ole Boys stand by the Winnebago eyeing Jake suspiciously as Elwood joins him with Bob.
ジェイク、大股でボブのカントリーバンカーへ引き返す。そこへ勘定書を両手いっぱいに抱えたボブが出てくる。駐車場にあるのはグッド・オール・ボーイズのウィネベーゴと、ボブの軽トラ、それにブルースモービルだけ。タッカー・マッケロイとグッド・オール・ボーイズは、ジェイクのことを疑わしげに見ている。ボブとジェイクのところに、エルウッドも出てくる。


BOB: Boys, that beer total is two hundred and thirty-eight dollars.
ボブ:ビール代はトータルで238ドルになるよ。

JAKE: (under his breath) Get in the car and start it up.
ジェイク:(小声で)車に戻ってエンジンをかけろ。

Jake aggressively approaches Bob who is looking through his chits. He smiles and offers his hand to Bob.
ジェイク、勘定書を確認しているボブのところに元気よく近づく。微笑んでその手をボブに差し出す。


JAKE: Bob, we loved playing here. My brother is writing out an American Express Travellers Cheque to cover our extensive bar tab.
BOB: I'd appreciate it.
ジェイク:ボブ、ここで演奏できてうれしかったよ。兄弟分が今、おたくのビール代のために、アメリカンエキスプレスのトラベラーズチェックを書いてる。

Jake walks to the car.
ジェイク、車の方に歩いて行く。


JAKE: Ah, let me see if he's ready. I have to sign it too. I usually sit down in the car and use the glove compartment lid.
ジェイク:ああ、書けたかどうか見てくるよ。おれもサインしなくちゃならない。おれはいつも車の中で座って、小物入れのフタを机代わりにして書くようにしてるんだ。

Jake gets into the car and shuts the door.
ジェイク、車に乗り込み、ドアを閉める。


SCENE 249
Location: JAKE'S P.O.V.
Tucker and the rest of The Good Ole Boys stand watching Jake confused.
タッカーとそのバンドのメンバー、混乱しながらジェイクを見ている。


JAKE: Hit it, Elwood.
ジェイク:行け、エルウッド。

The Bluesmobile roars out of the lot. Bob runs after but stops out of breath among The Good Ole Boys.
ブルースモービル、猛然と駐車場から出て行く。ボブ、追いかけようとするが、グッド・オール・ボーイズに囲まれて立ち止まる。


TUCKER: Was that guy from the union?
タッカー:あいつ、組合から派遣されてきたのか?

BOB: Union?! What union? Those boys ran out on me. They owe me two hundred and thirty-eight dollars!
ボブ:組合?何の組合だ?あいつら、食い逃げだよ!238ドルも踏み倒しやがった!

Bob looks over The Good Ole Boys.
ボブ、グッド・オール・ボーイズを見る。


BOB: What are you boys dressed up for?
ボブ:ボーイズ、その格好は何だ?

TUCKER: We're The Good Ole Boys.
タッカー:おれたちはグッド・オール・ボーイズだ。

BOB: You're The Good Ole Boys?!
ボブ:お前らがグッド・オール・ボーイズ?

Camera: CUT TO
SCENE 250
Location: INT. THE BLUESMOBILE - MOVING - NIGHT
tooling down the highway. The window is open, Jake is sleeping, not a care in the world. Elwood looks in the rear-view mirror.
ハイウェイを疾走するブルースモービル。窓は開いており、ジェイクは眠っている。何も警戒していない。エルウッド、ルームミラーを見る。


SCENE 251
Location: INT. BLUESMOBILE - MOVING - HIGH WAY - NIGHT
Elwood's P.O.V. in the mirrors, side and windshield, show Bob's pickup is rapidly gaining on them. In the cab with Bob is Tucker. The rest of The Good Ole Boys, armed with axe handles and shotguns, are in a 6-pak camper ton mounted on the pickup.
車のミラーに、猛然とブルースモービルを追ってくるボブのトラックが映る。助手席にはタッカーが乗っている。グッド・オール・ボーイズの残りのメンバーは、斧の柄とショットガンで武装して、トラックの荷台に設置されたキャンピングカーのユニットに乗り込んでいる。


SCENE 251-A
Location: EXT. HIGHWAY- BOB'S PICKUP - NIGHT
Tucker, leaning out the side of the cab, opens fire with the shotgun, both barrels blazing.
タッカー、車の窓からショットガンを発射する。


SCENE 251-B
Location: EXT. HIGHWAY - BLUESMOBILE REAR WINDOW - NIGHT
A giant, spectacular explosion as glass shatters and flies out and back.
ブルースモービルのリアウィンドウ、破壊されて砕け散る。


SCENE 251-C
Location: EXT. HIGHWAY - NIGHT
The Bluesmobile speeds away and the pickup roars in pursuit.
ブルースモービル、スピードを上げる。トラック、猛然と追い上げる。


SCENE 252
Location: INT. BLUESMOBILE - MOVING - HIGHWAY - NIGHT

ELWOOD: Our Lady of Blessed Acceleration, don't fail me now.
エルウッド:ああ、アクセルの女神さま、私を見捨てないで下さい!

Camera: CUT TO
SCENE 253
Location: EXT. SIDE OF THE ROAD - NIGHT
Behind a billboard is parked a police car, a speed trap.Camera: CUT TO
道の脇、映画の看板の陰に、スピード違反の取り締まりのパトカーが隠れている。


SCENE 254
Location: INT. POLICE CAR - NIGHT
Inside are the same two clean-cut Officers we have met before. Both have small bandages on their faces. The Bluesmobile roars past.
中にいるのは、前に出てきた小ざっぱりした警官2名。2人とも顔に小さな絆創膏を貼っている。そこを、ブルースモービルが通りすぎる。


OFFICER: (breaking into a big grin) I don't believe it!
警官:(歯をむき出して)信じられん!

OFFICER #2: Those bastards are ours now.
警官2:あのろくでなしども、逃がすか!

SCENE 254-A
Location: EXT. HIGHWAY - NIGHT
Its lights flashing siren blaring, the police car roars onto the highway just in time to be hit broadside by Bob's pickup. Both cars go rolling and crashing across the expressway, and the 6-pak camper comes flying off Bob's pickup as they land upside down in a ditch. The two officers crawl out of their car, pull out their guns, and walk over to Bob and Tucker who are struggling to get out of the mangled pickup, and The Good Ole Boys who are crawling out of the dislodged 6-pak camper. #1 points his gun at the dazed country western contingent.
パトカー、赤灯をつけサイレンを鳴らし、ハイウェイに出たところで、ちょうどボブのトラックが突っ込んでくる。二台は高速道路の真ん中で衝突し、キャンピングカーのユニットは吹っ飛んで道路脇の溝に逆さに落ち込む。警官2名は車から這い出し、拳銃を抜いて、トラックから抜け出そうとしているボブとタッカーのところに向かう。グッド・オール・ボーイズのメンバーも、ユニットから這い出してくる。警官1、茫然としているカントリーウエスタンの代表選手に銃を向ける。


OFFICER #1: Fellas, you are in big trouble.
警官1:えらいことしてくれたな。お前たち。


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ブルースモービルのリアウィンドウがいきなり破壊され、ショットガンを手にしたタッカーとボブが高笑いをあげるこのシーンは、1969年の映画「イージー・ライダー」と重なって映る。南部の田舎道をバイクで走っていたデニス・ホッパーが、「髪が長いこと」だけを理由にして通りがかりのトラックからいきなり射殺され、連れのピーター・フォンダも「ついでに」殺されてそこで映画が終わってしまう、不条理とも思えるようなあのラストシーンである。むかし読んだ本多勝一の「アメリカ合州国」という本では、彼が黒人青年と一緒に南部を取材している最中に同じように突然銃撃を受けた経験が語られていて、あの映画のラストシーンは「前衛的な演出」でも何でもなく、「アメリカの日常的な現実」が描かれているだけなのだということが強調されていた。だから私には、ジェイクとエルウッドが九死に一生を得るこのシーンがとても「ギャグ」には思えない。この映画は彼らのように「古き良き (good ole) アメリカ社会」から日常的な暴力にさらされ続けている「もうひとつのアメリカ社会」の人たちのために作られた映画なのであって、そうした人たちにとっては警察や極右団体、保守的な南部人といった「暴力をふるう側」の人間たちが派手にやっつけられるシーンが「本当の夢物語」に映るからこそ、この映画には時代を越えて輝きを放ち続けている側面があるのだと思う。

1968年4月1日にマーティン・ルーサー・キング牧師の命を奪ったのも、そうした「古き良き」白人社会に価値を置く人間からいきなり発射された1発の銃弾だった。この映画の中でバンドメンバーとして登場するスティーブ・クロッパーやドナルドダック・ダンといった人たちは、黒人が白人のバスに乗ることさえ禁止されていた時代から黒人のバンドで演奏していた最初の世代の白人たちでもあるのだけど、その日を境に「黒人社会で演奏することはできなくなった」とダンが語っていたのを、あるインタビューで読んだことがある。殺されたのは黒人であるキング牧師であるにも関わらず、「黒人が白人に報復するかもしれない」という理由で、ダンやクロッパーの行く先々に白人の警察官がつきまとうようになったというのである。そして彼らに黒人の友人が近づこうとすると、警官たちは一斉に銃を向けた。そんな風にしてあの事件をきっかけに、黒人と白人は完全に「引き剥がされてしまった」ということを、多くの人が語っている。黒人と白人が「共に」未来を切り開いてゆくことができるという公民権運動の時代の理想は打ち砕かれ、黒人と白人は「別々の世界」で生きることを余儀なくされるようになり、それは今に至るまで変わってないのだと、最近読んだソウルミュージックの歴史に関する本には書かれていた。「古き良きアメリカ」はちっとも「こらしめられる」ことがないまま、トランプみたいな人間が新たに大統領となる時代を迎えている。それでも「この映画に示されるようなアメリカ」も、一方には存在し続けているのだ。

…長々とこんなことを書いてしまったのは、この映画に出てくる人たちには警察や保守的な人間に怒りを燃やすだけの「具体的な理由」があるのだということに触れておきたかったからである。子どもの頃に見た時には私自身、警察やイリノイナチスがあまりにひどい目にあわされるので、ともすれば彼らのことが「かわいそう」に思えてしまったこともある。しかしダンやクロッパーの立場になってみれば、あれでも全然「やられたりない」ぐらいに違いない。そしてジェイクもエルウッドも、きっと「いろいろな経験」をしているのである。

このシーンにも歌は出てこないので、アルバム「Briefcase Full of Blues」からのナンバーを翻訳します。Downchild Blues Band というカナダのブルースバンドのカバー曲だったとのこと。知らなかったな。歌詞はとてもシンプルなので、「翻訳をめぐって」のあれこれは特に付け加えません。ではまたいずれ。


Downchild Blues Band - I've Got Everything I Need (Almost)

(I Got Everything I Need) Almost

I got everything I need, almost
I got everything I need, almost
But I don't got you
And you're the thing I need the most

ほしいものは全部手に入れた。
ほとんど。
ほしいものは全部手に入れた。
ほとんど。
でもきみは手に入らない。
一番ほしいのはきみなのに。


I got a car that I bought
Won't get me far
I gotta wish on a star
Tell me mama
I got everything I need, almost
I got everything I need, almost
But I don't got you
And you're the thing I need the most

クルマを買ったけど
大して遠くには行けない。
おれが行きたいのは
星なのに。
教えてくれよママ。
ほしいものは全部手に入れた。
ほとんど。
ほしいものは全部手に入れた。
ほとんど。
でもきみは手に入らない。
一番ほしいのはきみなのに。


I got friends who like me
Cause I got lots of dough
The people recognize me
Wherever I go
I don't got trouble gettin' high
But if I don't get you I believe I will die

おれのことを好きな友だちは
いっぱいいる。
おれ、カネは持ってるからね。
どこに行ったって
みんながおれのことを知っている。
いい気分になることは
難しいことじゃない。
ももしも
きみを手に入れることができないなら
おれは死んじゃうだろうね。


I got everything I need, almost
I got everything I need, almost
But I don't got you
And you're the thing I need the most

ほしいものは全部手に入れた。
ほとんど。
ほしいものは全部手に入れた。
ほとんど。
でもきみは手に入らない。
一番ほしいのはきみなのに。


Blues Brothers - Almost