華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Rubber Biscuit もしくはブルースブラザーズ特集#21 (1958. The Chips)


  • 孤児院の納税期限まであと2日。ジェイクは古馴染みの興行師モーリー・スラインにかけあい、収容観客数5千人のライブ会場を確保する。

SCENE 255
Location: INT. STEAM ROOM - DAY
In the steam room sit three men, Jake and Elwood Blues and MAURY SLINE, the booking agent. Maury is a man in his fifties. He is nude, but for the towel across his lap and the cigar in his mouth. Jake and Elwood are also nude, but for the towels in their laps, their hats, sunglasses, and watches.
スチームサウナの部屋に3人の男が座っている。ジェイクとエルウッド、それに興行師のモーリー・スラインだ。モーリーは50代。膝に広げたタオルと口にくわえた葉巻を除けば、全裸である。ジェイクとエルウッドも、膝のタオルと帽子、サングラス、時計を除けば、全裸である。(絶対、火傷すると思うのだが)


JAKE: Maury, you owe me. we'll play anytime, anywhere, for anybody.
ジェイク:モーリー、おれはお前に貸しがある。おれたちはいつでもどこでも誰のためにでも、演奏する準備ができてるぜ。

ELWOOD: Put us in the Double-Up Lounge or the Morgan Park Theatre or the Crystal. We always knocked 'em dead in those joints.
エルウッド:ダブルアップ・ラウンジでも、モーガンパーク・シアターでも、クリスタルでもどこでもいいぜ。いつだって観客全員を卒倒させてやるよ。



MAURY: Discos ... they're all discos ... singles ...mixed singles ... gay singles...these people like to dance with each other.
モーリー:ディスコだ…独身のやつらはみんなディスコに行ってる…ハーフのやつらもゲイのやつらも…今のやつらはお互い同士で踊るのが好きなんだ…

JAKE: But we are a dance band.
ジェイク:でも、おれたちはダンスバンドだぜ。

MAURY: ... Discos...they want string sections ... look-how many pieces you guys?
モーリー:ディスコだ…今はストリングスの時代なんだ…お前らのバンドは何人編成なんだ?

JAKE: Seven...
ジェイク:7…

ELWOOD: Eight....
エルウッド:8…

JAKE: Nine...nine pieces.
ジェイク:9…9人編成だ。

MAURY: How far do you want to drive?
モーリー:どれくらい遠くまでドライブできる?

ELWOOD: Anywhere within a two-thousand mile radius.
エルウッド:半径2千マイル(3200キロ)以内なら、どこでも…

JAKE: Relax, I can't go into Ohio, Kentucky, Florida, or Canada.
ジェイク:おい、落ち着けよ。オハイオやケンタッキーやフロリダや、カナダなんかまでは行けないぞ。

MAURY: Gee fellas, I don't know. Times have changed. What are you guys gonna do? The same act in those same suits? You'll scare people away! Don't you guys even wear blue jeans or jump suits, like Wayne Cochran and the C.C. Riders?
モーリー:なあお前たち。おれにはよく分からねえが、時代は変わったんだ。お前ら、何がやりてえんだ?昔と同じ格好で同じことをやるのか?客が怖がっちまうよ。ウェイン・コクランとCCライダーズみたいに、ジーパンやツナギの服に着替えろよ。

JAKE: Maury, you've gotta come through. We need five thousand bucks fast.
ジェイク:モーリー、力になってもらいたい。おれたちはすぐに、5千ドル必要なんだ?

MAURY: Five thousand bucks! Who do you guys think you are, the Beatles? You know the size of the hall you gotta play to take in that kind of money?
モーリー:5千ドルだ?お前ら、自分たちを何様だと思ってるんだ。ビートルズか?そんなに稼ぐにはどれくらい広い会場じゃなきゃいけないか、お前ら分かってるのか?

JAKE: We can kill any hall in the country, except Ohio, Kentucky, Florida, or Canada.
ジェイク:どこのホールだっていっぱいにしてみせるぜ。オハイオやケンタッキーやフロリダや、カナダ以外ならな。

MAURY: (considers) You guys familiar with the Palace Hotel Ballroom?
モーリー:(考える)お前ら、パレスホテルのダンスホールを知ってるか?

JAKE: Never heard of it.
ジェイク:聞いたことねえな。

MAURY: Nice place up north… built in the forties up in Lake Wazapamani. Seats 'five thousand. If you guys can fill that place, you could make five thousand bucks easy.
モーリー:いいとこだ。北にある…ワザパマニ湖の岸辺に40年代に建てられた。そこをいっぱいにできるなら、5千ドルだって楽に稼げるぜ。

JAKE: Book us for tomorrow night!
ジェイク:明日の晩にそこを押さえてくれ!

MAURY: Hold it. A gig like that, you gotta prepare the proper exploitation.
モーリー:待てよ。それだけのギグをやろうと思ったら、それなりの宣伝が必要になるだろうが。

ELWOOD: I know all about that stuff. I've been exploited all my life.
エルウッド:やり方は心得てる。おれは宣伝で生きてきたんだ。

MAURY: Forget it. There's no way.
モーリー:あきらめろ。どうしようもねえよ。

JAKE: How's Mrs. Sline? I got some information she might like to know.
ジェイク:ところで、カミさんは元気かい?ちょっと知らせてあげたいことがあるんだが…

MAURY: Are you blackmailing me, Jake?
モーリー:…お前、おれをゆすろうってのか?ジェイク。

JAKE: If you want to put it that way. Maury, we need this gig.
ジェイク:黙っててほしけりゃ、モーリー。おれたちはギグをしなくちゃならないんだ。

ELWOOD: We're on a mission from God.
エルウッド:我々は神の使命を遂行中なのだ。

Maury looks at the two of them.
モーリー、2人を見る。


MAURY: You boys are gonna feel awfully sorry playing to twenty-five people in a hall that seats five thousand.
モーリー:お前ら、5千人入るハコに25人しか客がいない光景を見て泣くことになるぞ。

JAKE: You get us the hall, Maury. We'll pack 'em in from miles around. Come on boys.
ジェイク:そのホールを押さえといてくれ。モーリー。何マイル先からでも客を集めてみせる。行くぜ。お前たち。

The camera widens to reveal the entire band has been with them in the steam room all wearing nothing save towels and sunglasses. They all get up and exit.Camera: CUT TO
カメラの視野が広がると、サウナルームにタオルとサングラス姿のバンドメンバーが全員座っていたことが分かる。全員立ちあがり、部屋を出て行く。




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...今回のシーンにも歌は登場しないので、「Briefcase Full of Blues」の収録ナンバーから。大好きな曲です。もともとはニューヨーク出身のThe Chipsというボーカルグループが50年代にヒットさせた曲なのだそうで、そういうことは調べてみるまで全然知らなかった。ローハイドのテーマと並んで、エルウッドがボーカルをとっている数少ない曲のひとつ。「Rubber Biscuit」を、今回は翻訳しておきたいと思います。

Blues Brothers - 'Rubber Biscuit'

Rubber Biscuit

A bow bow
あ、ばおばお

Heere odda hilldidda hildhiruhah
Juuuyr adda hilldadida jigguwah
Hieere odda hittomamma jizzowazzah
Hoow bawlda hiwowiwa hiwiwah
Heere odda hilldeninne hilldennine
Hiiire odda hillimoney hilluwowahwah
Dwiire odda higgunama shuppobup
Deare odda hildumama hithuivha
Puurr onna hillimona hillduwiva

ひーれおだ ひるでぃだひでぃるは
じゅーいらだ ひだでぃだじぐわー
ひーれおだ ひとままじぞわざ
はーうばだ ひをうぃわひうぃわー
ひーれおだ ひでにねひでにね
はいれおだ ひりまねひるぉわわ
どわいれおだ ひぐなましゅっぽば
でいれおだ ひどぅままひついゔぁ
ぷーろーな ひりもなひどぅうぃゔぁ


...Mmmm? Do that again!
Bow bow bow?

…うーん?もう一回!
ばおばおばお?


Heere odda hilldunonne Hiduwippa
Tearrr outta numbanumba numbadaba
Luurre odna hithumama chigowazzah
Hiirre udda hithooupee hithuippa
Feure udda Heyynonne hithuipha
Daarr onna hilloonumme hithuomma
Feure ofthe Heyynomme hinuimma
Du-ur udda hauathuama hithua
Hiiire odda hithoomumme hithuim

ひーれおだ ひどぅのなひどぅうぃぱ
てぁーらうた ぬばぬばぬばだば
るーれおな ひつままちごわざ
はいれうだ ひつぉうぺひついぱ
ふぇうれうだ へいのねひついふぁ
だあーろんな ひろぬめひつおま
ふぁうれおざ へいなまひぬいま
どぅーるーだ はうあつぁまひつあ
はいれおだ ひつぉむめひついむ


Have you ever heard of a wish sandwich? A wish sandwich is the kind of a sandwich where you have two slices of bread and you, hee hee hee, wish you had some meat...
Bow bow bow...

希望のサンドイッチというものを
聞いたことがありますか?
サンドイッチの種類なんですけど
あなたはパンを二枚だけ持っていてそれで
んふふふふ。
もしここに肉があればという希望をですね…
ばおばおばお


Heere odda hithunomme hithuipha
Eaarr odda hithunahmah himoowah
Baare odda nummanumma numballama
Daahr udda hilunomme hidoyohwah
Dooyr udda Heyynomme hithuipha
Sheer udda hidunomme hithua
Tiire udda hidanumme hithuwahwah
Huoy momma hommamomma shubowuppa
Bayy momma boyit momma bubbowah

ひーれおだ ひつのめひついふぁ
えあーろーだ ひつなまひもーわ
ばーれおだ ぬまぬまぬばらま
だあーるーだ ひるのめひどよわ
どぅーるーだ へいなまひついふぁ
しぇーるーだ ひどぅのまひつーあ
たいれうだ ひだぬまひつわわ
ふぉいもんま ほまもましゅぼをぱ
ばいーもんま ぼいままぶっぼわ


Hmmm... the other day I had a ricochet biscuit. a ricochet biscuit is the kind of a biscuit thats supposed to bounce back off the wall into your mouth. if it dont bounce back... heeheehee you go hungry!
Bow bow bow...

ええ…こないだ私は
跳ね返りビスケットというものを
手に入れましてですね。
ビスケットの種類なんですが、
壁に跳ね返ってあなたの口に入るという
そういうタイプのビスケット。
もし跳ね返らなかったら…
むふふふふ。
あなたはお腹をすかせることになりますですね。
ばおばおばお


Hearr odda henunomme hithuipha
Huoy momma hommamomma shupabobba
Baerr odda Heyynomma kithuopha
Daire odda himmonomma shipowubba
Kool odda Heyynomma jiggowazzah
Hiire odda henunomma jiggowah
Haar odda hinunimme hithuipha
Bayr odda henunomme hithuiph
Shove bubba bom bubbashuppa bom

ひえーろーだ へぬのめひついふぁ
ふぉいもんま ほまもましゅぱぼば
べあーろーだ へいなまきつおふぁ
だいれおだ ひものましぽをば
くーろーだ へいなまじごわざ
はいれおだ へぬのまじごわー
はあーろーだ ひぬにめひついふぁ
ばいーろーだ へぬのまひついふ
しょうゔぼば ぼんぶばしゅぱぼむ


Hmmmm... the other day I had a cool water sandwich and a sunday-go-to-meetin bun...
Bow bow bow...

んふふふふ。
こないだ私は
冷水サンドイッチというものを手に入れまして
それからよそ行き用のロールパンを…
ばおばおばお


Heere udda hidunonne githuwatha
Diire odda Heyynomme hithuwah
Huoy momma hummamomma shipobobba
Duoy dada Heyydaddadadda dang
Bayy bobba boyit bobbabobba booah
Huoy rodda hittomomma hittobobba
Daree odda Heyynonna hithuitha
Hiire odda henunonna hidduah
Hiire olda hildumomma hidduawah

ひーれおだ ひどぅのねぎつわつぁ
だいれおだ へいなまひつわー
ふぉいもんま ふまもましぽぼば
どぅおいだーだ へいだだだだだん
ばいーぼっだ ぼいぼばぼばぼあ
ふぉいろっだ ひともまひとぼば
だれーおーだ へいのなひついつぁ
はいれおだ へぬのなひどぅあー
はいろるだ ひどぅままひどぅあわ


Huuy ronna Hommumma shuppa bom
Duuy romma Hommbuppa chiggowah
Hiire rodda hinununa Hiduiwithah
Saare odda Laymumma huhmumumah
Heere odda hinunomma Hiduwdth
Heere odda Hullnunna Hiduwabbah
Huere momma hummabubba shuppabobbah
Gaare odda Heyynumma chiggowah
Hiiire odda Heyynumma chickoowuthah
Heere odda hillunumme hithuwah
Zuuyl momma Homm momma chippahooah

ふーいろな ほむんましゅぱぼむ
どぅーいろま ほんぶぱちごわー
はいれろだ ひぬぬなひどぅいつぁ
さーれおだ れいむまふむむま
ひーれおだ ひぬのまひどぅうつ
ひーれおだ ふるぬなひどぅわば
ふえれもま ふまぶばしゅぱぼば
がーれおだ へいぬまちごわー
はいれおだ へいぬまちこうた
ひーれおだ ひるぬめひつわー
ずーいるもま ほんもまちぱほあ


HmHmHmhm(heeeeh)?.
Whaddayou want fuh nothin?.
A rrrrrubber biscuit?

んーーふふふひーい?
タダでもらえるとしたら
何がいいですか?
ごごごごごごゴムのビスケット?


Bow Bow OoOooo
ばおばお んんんー んー


The Chips, ''Rubber Biscuit'' (1956).wmv

=翻訳をめぐって=

  • bow bow bowは、英語話者の耳には「おじぎ、おじぎ、おじぎ」という風に聞こえている可能性もある。スキャットの一部として聞いたら意味は消えてしまうけど、何と言うか「腰の低い感じ」の歌なので、意味を持った歌詞として解釈した方がいいのかもしれない。
  • 「歌詞の意味」にこだわるとしたら、「Tearrr outta numbanumba numbadaba」および「Feure ofthe Heyynomme hinuimma」という部分に関してだけは「 ぬばぬばぬばだばからてぁーる」「あのへいのねひついふぁふぇうれ」と訳した方が「正確」ではある。それが大事なことかそうでないかなんてことは、誰にも決められないことだ。
  • cool water sandwichとはスイカのことであるという解釈もあるらしい。またsunday-go-to-meetin bunのbunはここでは「ロールパン」ではなく「おだんごにした髪の毛」のことであり、おしゃれした女の子を教会に連れて行く様子の描写なのだという説明が、エルウッド自身のライブでなされたこともあるらしい。それにつけてもそうした情報から我々は何を「学ぶ」べきなのだろうか。
  • Whaddayou want fuh nothin?は"What do you want for nothing?"の、音声の再現に重点をおいた表記である。そして「you want for nothing」だけだと「あなたは生活に不自由していない」という意味になるので、それに「What do」がつくとどういう意味になるのか、一瞬考えこんでしまったのだが、for nothing には「無料で」という意味もあるので、たぶん上の訳で間違っていない。はずだと思う。

…昔、シルクロードという言葉に何となく憧れを感じていた時分には、この歌のスキャット部分が私の耳には「フェルガナ、フェルガナ」と聴こえた。二千年前には大宛国という名で呼ばれていた、ウズベキスタンの小都市である。


喜多郎 (シルクロード) 絲綢之路

また、いっとき落語にはまっていた時分には、この歌のスキャット部分が「昼まま、昼まま」と聴こえていた。桂枝雀師匠の出囃子の名前である。


桂枝雀 「いたりきたり」

…その他、居酒屋的なところに行って「ヘイ生!ヘイ生!」という声が飛び交っているのを聞いていると自然とこの歌が頭を回り出したり、ひどい時には「静かな静かな里の秋」という子どもたちの合唱を聞いている時にこの歌のイメージが頭の中へ横入りしてきたりと、この歌のおかげでろくにものが考えられない状態におちいってしまった経験が今までの人生で私には割と何回もある。こうした事態を防ぐための最もいい方法は、おそらく「正しい歌詞」を覚えることなのだろう。そう思って、かなり力を入れて翻訳してみたのだったが、壮大な時間のムダ使いをしてしまったような気も、一方ではしている。ではまたいずれ。続きます。