華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

I Don't Know もしくはブルースブラザーズ特集#27 (1952. Willie Mabon)


  • パレスホテルを脱出したジェイクとエルウッドの前に「謎の女」が立ちふさがる。

SCENE 303
Location: INT. CONCRETE TUNNEL
Jake and Elwood are hustling down a long concrete tunnel.
ジェイクとエルウッド、長いコンクリートのトンネルの中を急ぐ。


ELWOOD: I hope this thing leads someplace.
エルウッド:どっかに抜けられりゃいいんだけどな。

JAKE: Elwood, we're gone, man.
ジェイク:エルウッド、もう大丈夫だよ。

Suddenly machine gun fire blasts out. Jake and Elwood hit the ground as bullets chew up the concrete around them.
突然、マシンガンが火を噴く。ジェイクとエルウッド、銃弾がコンクリートをなめつくす中で、地面に伏せる。


Camera: CUT TO
SCENE 304
Location: THE MYSTERY WOMAN
brandishing an AR-15. She stands fifteen feet from Jake and Elwood, blocking their way out.
AR-15マシンガンを振りかざして、ジェイクとエルウッドから15フィート(4.5m)のところに「謎の女」が立ちふさがっている。




Camera: CUT TO
SCENE 305
Location: JAKE AND ELWOOD
on the ground.
ジェイクとエルウッド、地面にへばりついている。


ELWOOD: (to Jake) Who is that girl?
エルウッド:(ジェイクに) 誰だ?あれ。

MYSTERY WOMAN: (voice full of bitterness) Well Jake. You like just fine down there, slithering in the mud like vermin.
謎の女:(憎しみに満ちた声で) ジェイク、はいつくばって、いいざまね。泥の中でのたうち回る害虫みたいよ。

She opens fire, the bullets ripping up the cement all around Jake and Elwood.
彼女、銃を発射。弾丸がジェイクとエルウッドの周りのセメントを削り取る。


JAKE: (to Elwood) No problem.
ジェイク:(エルウッドに) 大丈夫だ。

MYSTERY WOMAN: You won't get away from me this time.
謎の女:今度は、逃げられないわよ。

Jake stands, his hands palms up, outstretched in front of him.
ジェイク、手を上げて立ち上がり、その手を前に差し伸べる。


JAKE: (sweetly) It's good to see you, sweetheart.
ジェイク:(甘い声で) やあ、会えて良かったよ。スイートハート。

MYSTERY WOMAN: (full of hate) You contemptible pig. I remained celibate for you. I stood at the back of a cathedral, waiting in celibacy for you, with 300 friends and relatives in attendance. My uncle hired the best Romanian caterer in th state. To obtain the seven limousines for the wedding party my father used up his last favours with Mad Pete Trollo. So for me, for my mother, my grand mother, my father, my uncle and for the common good, I must now kill you and your brother.
謎の女:(憎悪に満ちて) あんたは卑劣な豚よ。私はあんたのために独身でい続けたわ。教会の大聖堂の裏で、300人の友だちと親戚が詰めかけてる中で、私はあんたを待ち続けたわ。おじさんは州で最高のルーマニア料理店に仕出しを頼んだ。披露宴用の7台のリムジンを手に入れるために、父さんは財産を使い果たした。だから私は自分のために、お母さんのために、おばあちゃんのために、お父さんのために、おじさんのために、そして世の中のために、あんたとあんたの弟分を今、殺さなくちゃいけないの。
…Mad Pete Trollという言葉の意味は、いくら調べても分かりませんでした。

Jake walks slowly forward to the Mystery Woman. She trains the gun right at his gut.
ジェイク、ゆっくりと謎の女に歩み寄る。彼女は彼の腹に銃口を向ける。


SCENE 306
Location: CLOSEUP
Her fingers slowly wrap around the trigger.
彼女の指がゆっくりと引き金にかかる。


SCENE 307
Location: BACK TO SCENE
Jake continues to walk forward until they stand face to face. There is a pregnant pause, the showdown. Jake, stern and forbidding, considers a moment and then makes his move. He falls to his knees screaming and crying.
ジェイク、2人が顔を向き合わせるところまで歩き続ける。最終段階の意味深長な沈黙が流れる。ジェイク、いかめしく厳しい顔でしばらく考え、行動に移る。彼はひざまづいて泣き出し、叫び声をあげる。


JAKE: Oh, please don't kill us! You know I love you, baby! I didn't mean to leave you! It wasn't my fault! Oh please don't kill us! Please! Please, don't kill us!
ジェイク:ああ、お願いだから殺さないでくれ!今でも愛してるんだ!お前から離れるつもりなんてなかった!おれのせいじゃない!頼む!お願いだ!殺さないでください!

The Mystery Woman looks at Jake with complete disgust.
謎の女、完璧な嫌悪感をむき出しにしてジェイクを見る。


MYSTERY WOMAN: You miserable slug. You think you can talk your way out of this now? You betrayed me!
謎の女:あんたって悲劇的なナメクジね。今になってまだそんな口がきけると思ってるの?私を裏切ったくせに!

JAKE: (pleading) No I didn't, honest! I ran out of gas! I had a flat tire!., I didn't have enough money for cab fare! My tux didn't come back from the cleaners! An old friend came in from out of town! Someone stole my car! There was an earthquake! A terrible flood! Locusts! It wasn't my fault! I swear to God!
ジェイク:(懇願する) 裏切ってなんかいない!本当だ!ガス欠になったんだ!タイヤもパンクした…タクシー代も持ってなかった!タキシードはクリーニング屋から戻ってこなかった!古い友だちが遠くから訪ねてきた!誰かが車を盗んだ!地震もあった!洪水も来た!イナゴの大群も押し寄せた!おれのせいじゃない!神に誓います!

Jake looks up at her and for the first time in the movie, takes off his dark glasses, revealing big, soulful, brown eyes. The Mystery Woman begins to soften as Jake looks up at her like a puppy begging for some food. Finally she lowers the gun.
ジェイク、彼女を見上げ、この映画が始まってから初めてサングラスを外し、その大きくソウルフルな茶色の目を見せる。ジェイクが食べ物をねだる仔犬のような表情で彼女を見上げるのを見て、謎の女の態度がやわらぐ。彼女は銃を下げる。




MYSTERY WOMAN: Oh, Jake...Jake ....
謎の女:おお、ジェイク、ジェイク…

Jake, in a flash, is up, his glasses back on, grabs the Mystery Woman in a passionate embrace, giving her a fabulous Clark Gable type kiss. The Mystery Woman is overcome, Jake turns quickly to Elwood.
ジェイク、瞬間的にサングラスを戻し、謎の女を情熱的に抱きしめて、クラーク・ゲーブルのようにキスをする。謎の女の負けだ。ジェイク、ただちにエルウッドの方を振り向く。


JAKE: Let's go.
ジェイク:行くぞ。

He drops the Mystery Woman on her ass and he and Elwood tear out of the concrete tunnel.
ジェイク、謎の女を投げ捨てて尻餅をつかせ、2人は簡単にコンクリートのトンネルから出て行く。


ELWOOD: Take it easy.
エルウッド:怒らないでくださいね。

==============================

…初めて見た時から子ども心にひどいシーンだと思ってきたけれど、いま見直して改めて思う。最低のシーンだ。さっさと歌詞の翻訳に移りたい。と言ってもこのシーンには歌が出てこないので、例によってアルバム「Briefcase Full of Blues」からのナンバーをお届けします。


The Blues Brothers - I Don't Know

I Don't Know

Sick and tired by the way you do
Good time papa gonna poison you
Sprinkle goofer dust all around your bed
Wake up one of these days, find your own self dead
She said you shouldn't say that

おまえのやり方にはうんざりだ。
麻薬の売人に毒殺されちまうぞ。
ベッドの周りはコナだらけ。
そのうち起きたら死んでたってことになるぞ。
「そんな風に言わないで」と彼女は言った。


I said What did I say to make you mad this time baby?
She said Umm...
I don't know
My oh my oh my
She said I don't know but my baby's holding down

おれは言った。
今度は何がお前をmadにしたんだ。
ベイ……ビィ?
彼女は「んー…」
「わかんない」だとさ。
何てこった。「わかんない」だとさ。
でもとりあえず今のところ
彼女は何とか生きている。


The woman I love has got devil in her jaw
Clothes she's wearing made out of the best of cloth
She can take 'em and wash 'em, put 'em upside a wall
She can throw 'em out a window, pick 'em up a little before the fall
Sometimes I think you got your habits on
She said You shouldn't say that

おれの愛する女は
アゴに悪魔を飼ってるんじゃないかと思うくらい
よくしゃべる。
彼女の着る服は最高級の生地でできている。
彼女はそれを着ては洗っては壁に干す。
その服を窓から放り投げて
落ちる直前に拾うのが得意だ。
時々おれは、うまくやるもんだなって思う。
そしたら「そんな風に言わないで」と彼女は言った。


I said What did I say to piss you off this time baby?
She said Umm...
I don't know, my oh my, I don't know
But my baby's holding down

おれは言った。
今度は何をイライラしてるんだ。
ベイ……ビィ?
彼女は「んー…」
「わかんない」だとさ。
何てこった。「わかんない」だとさ。
でもとりあえず今のところ
彼女は何とか生きている。


My momma told me, my momma sat down and cried
She said you're too young to have as many woman as you got
I looked at my mother dear, didn't even crack a smile
Said If woman don't kill me I don't mind dying

母親はおれに言ったもんだ。
座り込んで涙を流して
そんな風に女を取っかえ引っかえするには
あんたはまだ若すぎるって。
おれはまっすぐ母親を見て
にこりともせずに言ったさ。
女に殺されるなら
死んだってかまわないって。


The woman I love, I want to wait for last
The woman I love, I have all class
Thought I warned you baby, a long time ago
Better watch your step or I'm going to have to let you go
She said you shouldn't say that

おれの愛した女。
終わりを待ちたい心境だ。
おれの愛した女。
おれは気品と教養を兼ね備えた男だぜ。
昔々おれは言ったはずだ。
自分のやることに気をつけろって。
さもなきゃおれは行っちまうぜって。
そしたら「そんな風に言わないで」と彼女は言った。


I said Baby
You know when you bend over I see every bit of Christmas
And when you bend back I'm looking right into the new year

おれは言った。ベイ……ビィ?
お前がちょっとでもちゃんとやる様子を見せたら
クリスマスまでは続くだろう。
そしてお前がおれの言うことを聞くなら
年が明けてもおれたちは一緒にいるだろう。


She said Honey, you know I gave up cigarettes for my new year's resolution
But I didn't give up smoking
I said Woman, you going to walk a mile for a Camel
Or are you going to make like Mr Chesterfield and satisfy?

彼女は言った。
「いい?私は新年の誓いでタバコをやめることに決めたのよ。まだやめられてないけど」
おれは言った。
じゃあお前てくてく歩いてキャメルさんのところにでも行ってこいよ。
それともチェスターフィールドさんみたいな男なら満足なのかい?


She said That all depends on what your packing
Regular or kingsize
Then she pulled out my Jim Beam, and to her surprise
It was every bit as hard as my Canadian Club
I said What now you got to say baby?
She said Umm...

彼女は言った。
「タバコにはレギュラーとキングサイズとあるけれど、あんたのはどうなのかしらね。まあ、それ次第ね」
そんでもって彼女はおれのジムビームを開けて
彼女が驚いたことには
それはおれのカナディアンクラブに負けないくらいの強さだった。
おれは言った。「感想は?」
彼女「んー…」


I don't know
My oh my oh my
I don't know
But my baby's holding down

「わかんない」だとさ。
何てこった。「わかんない」だとさ。
でもとりあえず今のところ
彼女は何とか生きている。


Willie Mabon - I DON'T KNOW

=翻訳をめぐって=

  • オリジナルはかなり古くて、ウィリー・マボーンという人が1952年にヒットさせた曲なのだとのこと。レコードジャケットの写真にも書かれているように、ウィリーさんはこの曲のおかげで「Mr. I don't know」と呼ばれていたらしいのだけど、こんな有難くないニックネームがあるだろうか。呼ぶ方も呼ぶ方だが呼ばせる方も呼ばせる方だと思う。
  • Good time papa…辞書にない言葉だったけど、good time manは麻薬の売人という意味なので、たぶん同じである。
  • madは「精神病者」に対する差別表現です。ここでは原文をそのまま転載しました。
  • My oh my oh my…「いやはや」とか「まったく」という意味だと思う。
  • my baby's holding down…hold downには「抑制する」という意味と「職に就いている」「仕事が続いている」という意味がある。ここでは「命が続いている」=「何とか生きている」という訳し方をしたけれど、単に麻薬やタバコをいやいや控えているだけ、という表現かもしれない。
  • The woman I love has got devil in her jaw…直訳は「私の愛する女性はそのアゴに悪魔を持っている」。jawには「お喋り」という意味もあるので上のように訳したけど、正直よく分かりません。
  • The woman I love, I want to wait for last」「The woman I love, I have all class」…正直、全然わかりません。試訳の日本語は意訳と言うより想像訳です。
  • キャメル、チェスターフィールド、いずれもタバコの銘柄。キャメルの場合は「ラクダのところへ」と訳した方が的確かもしれない。
  • ジムビームとカナディアンクラブはウイスキーの名前。このくだりは絶対なにか、えろい話をしているのだが、具体的にどういうことを言ってるのかは全然想像できない。て言っか、それを具体的に想像しようと必死にいろいろ考えている自分の姿というものを客観的に見つめ直してみるとこんなに情けない気持ちになることは他にないのであって、翻訳というのはつくづく難儀な作業だと思う。最低のシーンに最低の歌。何をやってるんだろうという気持ちになってくる。今回の記事に関しては、できれば見なかったことにしてほしいぐらいです。ではまたいずれ。