華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Song for John Belushi もしくはベルーシに捧げる歌 (2000. Spider Harris)


Song for John Belushi

YouTubeでこの歌に出会ったのは、全くの偶然だった。もっとも、あれだけ来る日も来る日もブルースブラザーズについていろいろ調べていたら、出会うことになるのもあるいは必然だったのかもしれない。

聞いてみて、「作った歌」というあざとさが全く感じられない素朴な響きに、まず引き込まれた。素朴な声。素朴なメロディ。素朴な繰り返し。本当に「自然に生まれてきた」感じの歌だ。誰の名前で有名になったとかそういうのではなく、たとえば長距離トラックの運転手さんみたいな人が鼻歌で口ずさんでいたその歌が、行く先々でいろんな人の耳に残って、同じように口ずさまれて行く。そういう広がり方を経た上で、最後には私の耳にまで飛びこんでくることになった。といったような感じのする歌だ。

こういうのを「歌」というのかもしれないな、と私は思った。ロックとかポップスとかナニナニ系とか何十年代とかではないただの「歌」、そして本当の「歌」だ。ただひとつそこに「ジャンル」を持ち込むことができるとしたら、この歌は「ジョン・ベルーシの歌」だということだろう。

「私は日本人です。この歌にとても感動しました。よかったら歌詞を教えてもらえませんか」と、YouTubeのコメント欄に書き込んでみた。動画をアップした人は、親切に快く返信してくれた。こんな歌詞だった。

Song for John Belushi

Oh Johnny, I don't know how you died.
All I know is that I sat down and cried.
You were the master of comedy.
I love you John Balushi.

ああジョニー。
あんたがどんなふうに死んだのかおれは知らない。
おれが知ってるのは
自分が座り込んで涙を流したってことだけ。
あんたはコメディの王様だった。
今でもあんたが好きだよ。
ジョン・ベルーシ


Oh Johnny you lived till 33
oh john you made millions happy.
Saturday night live on my TV.
I love you John Balushi.

ああジョニー。
あんたが生きたのは33歳までだった。
ああジョン。
あんたは100万人をハッピーにしたよ。
テレビでおれがいつも見てた
サタデーナイトライブで。
今でもあんたが好きだよ。
ジョン・ベルーシ


There was Chevy and Dan and Bill and Jane.
You'll be missed by Morris and all the gang.
You're up in heaven where you'll be free.
We love you John Balushi.
We love you John Balushi.

シェビーがいてダンがいて
ビルがいてジェーンがいた。
モリスとほかの悪ガキ連中も
きっと寂しがってるよ。
あんたは今じゃ天国で
自由にやってるんだろうね。
おれたちは今でも
あんたが好きだよ。
ジョン・ベルーシ


Oh John the broad that you were with,
she got scared she took your car and split.
One week later on my TV
they told me it was a drug OD.

ああジョン。
あんたと一緒にいた姉ちゃんがおびえてたよ。
別れる時、あんたの車に乗ってったんだってね。
1週間後にテレビで見たんだ。
ドラッグのオーバードーズだったんだってね。


Oh John just another drug OD
according to the coroner Tom Noguchi.
Gone another hero of our culture history.
We love you John Baluchi.
We love you John Balushi.

ああジョン。
たかがドラッグのオーバードーズじゃないか。
検視官のトム・野口さんによればの話だけど。
そんなことでまたおれたちの歴史の
ヒーローがひとり行っちまったんだ。
おれたちは今でもあんたが大好きなんだよ。
ジョン・ベルーシ


Oh John you didn't feel the pain
mixing up the cheva with the sweet cocain.
There was Jimmi and Janis and Tim Buckley.
Hey we love you John Baluchi.
We love you John Balushi.

ああジョン。
きっと痛みは感じなかったんだろうね。
ヘロインとスイートコカインのカクテルじゃあね。
ジミヘンやジャニスやティム・バックリーも
きっと同じだったんだろうな。
なあ、おれたちは今でも
あんたが大好きなんだぜ。
ジョン・ベルーシ


There was Chevy and Dan and Bill and Jane.
You'll be missed by Morris and all the gang.
You're up in heaven where you'll be free.
We love you John Balushi.
Hey we love you John Baluchi.
Yeah we love you John Baluchi.

シェビーがいてダンがいて
ビルがいてジェーンがいた。
モリスとほかの悪ガキ連中も
きっと寂しがってるよ。
あんたは今じゃ天国で
自由にやってるんだろうね。
おれたちは今でも
あんたが好きだよ。
ジョン・ベルーシ

私が見つけた時の再生回数は、たったの30回だった。Spider Harrisという名前のミュージシャンはいくら検索しても見つからず、出てくるのは蜘蛛の画像ばかりだった。ひょっとしてこの歌は動画をアップした人が自分で作った歌なのかもしれないと思い、私は失礼を承知でもう一度コメント欄に質問を書き込んでみた。

私は自分のブログにこの歌を取りあげて、日本の友人たちに紹介したいと思います。この歌は、あなたが作ったんですか? それとも、お知り合いの方が作ったんですか? インターネットで「スパイダー・ハリス」という名前は、見つけられなかったんです…

するとほどなく、動画をアップしたリック・Dというその人 -写真で見る限り、老人と言っていいようなお年の男性だった- から、返事が来た。

スパイダーは、自分の音楽をあんたが気に入ってくれたことを知ったら喜ぶだろうよ。権利上の問題について正確なところは私にも分からないが、なに、問題ない。スパイダー・ハリスは気にしないさ。彼はカリフォルニアの南のどこかに住んでる。もし今でも生きていればの話だけどね。私は昔レコーディングスタジオをやっていて、スパイダーは2000年にこの曲を録音して行ったんだ。もっともスタジオも05年には畳んでしまった。この曲では、私もバックコーラスに参加したんだよ。

…まるで映画みたいな話だな、と私は思った。こういう映画みたいなやりとりをケータイの向こうのアメリカ人男性と交わしている私自身も、映画の中の人になったみたいだ。昔だったら夢みたいだったこういうことを、思いついただけで始められるような時代に生きているというのに、どうして差別や戦争はなくならないのだろう。そんなことを考えてしまった。

とまれ、私はそのカリフォルニアのスパイダー・ハリスさんが幸運にもまだご健在で、そして何かのきっかけでこのブログを見つけて下さることを祈りたい。そしてもし言葉を交わせることがあるなら、私とブログの読者の皆さんに対し、ブルースブラザーズ特集のエピローグにぴったりの曲を提供して下さったことに、心からお礼を言いたいと思う。

=翻訳をめぐって=

  • Oh Johnny…ジョニーはジョンの愛称。
  • シェビー、ダン、ビル、ジェーン、モリス。すべてサタデーナイトライブの第1期レギュラーメンバー
  • Tom Noguchiマリリン・モンロー司法解剖をしたことでめちゃめちゃ有名になったという、日本人医師。それ以来、有名人が不慮の死に方をした時の検死はなぜかほとんどこの人に任されるようになって、ジェイク、じゃなかったベルーシの検死も、やはりこの人が担当したのだという。そんな日本人がいたなんて、全然知らなかった。別に私はトム・野口という名前に反応したわけじゃないんですと、リック・Dさんに言い訳したいような気持ちになってきたな。
  • culture history…直訳は「文化の歴史」ですが、省略して訳しています。
  • chevaはヘロインをさす言葉だとのこと。「スイートコカイン」という種類のコカインがあるのかそれとも「スイートなコカイン」という形容詞なのかは判然としないが、とりあえず音訳でいいと思う。
  • There was Jimmi and Janis and Tim Buckley.…直訳は「ジミもジャニスもティム·バックリーもそこにいた」。ここでは「かれらも同じ思いを味わったんだろうな」という意味の意訳になっています。ちなみに説明不要かとは思いますが、3人ともドラッグのために命を落としたスーパースターの皆さんです。



To Mr, Spider Harris.
If you read this article, I'd like you to leave us some messages here. We also love John Belushi and Jake Blues in this pole east islands. So I felt very touched by your song. This song sounds to me as if not to be written by particular person. It's something like a naturally born song. Literally a folk song. I'd like to spread this song mouth-to-mouth in our country. I'm always singing this song in my car since I happened to encounter this on youtube. Hoping the world without war and discrimination. Nagi. 8.22.2017.JPN.