華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Dig A Pony もしくは あれをなにする歌 (1969. The Beatles)



3回前に"With a Little help from my friends"をやった時に一緒にとりあげたついでと言っては語弊があるのだけれど、"Dig A Pony"に関してもこの際、訳しておこうと思う。ずっと前から「ちゃんと」訳してみたいと思っていた曲では、あったのだ。

先日"All You Need Is Love"の翻訳をさせてもらった時には、リクエストを頂いたことにかこつけて思い切り好き勝手な翻訳をしてしまったのだけど、それ以来なんだかある意味「タガが外れた」ような感じになって、この曲に対しても以下のような「翻訳」ができあがってしまった。これからはもう、その筋の人からどういうことを言われようとも、ジョン・レノンの歌詞の翻訳に関してはこのスタイルで行くことに私は決めたいと思う。て言っか他のやり方では私には、この人の歌詞を日本語化できる方法をどうしても思いつけない。こんな風に「翻訳」するしかないのである。


Dig a Pony (ROOFTOP SHOW), Them Beatles

Dig A Pony

英語原詞はこちら

I dig a pony
ぼくは ぼくは ぼくは
ポニーをディグする。

ポニーを知らない?
ちっちゃい馬のことだけど
そこは好きなように考えたらいい。
ディグするってのは
「掘る」とか「突っつく」とか「突き立てる」とか
それに「愛する」とか「楽しむ」とか
「よさを味わう」とかいう意味もある。
きれいな言葉じゃないけど
日本語でもそういう意味で「掘る」って言葉は使うから
そこは「掘る」でもかまわないんだけどただディグには
「探求する」とか「理解する」とか
「気に入ってる」とかいう意味もあるから
やっぱりディグするとしか言いようがない気がする。
掘って
楽しんで
味わって
探求して
理解を深めて
気に入るわけだ。
ポニーを。
そういう意味をこめてもう一度言うけど

ぼくはポニーをディグする。

Well you can celebrate anything you want
Yes, you can celebrate anything you want

きみは好きなものを好きなだけ
セレブレイトするといい。

祝うとかほめたたえるとかそういうことだ。
そうだとも。
きみは好きなものを好きなだけ
セレブレイトすればいい。


I do a road hog
ぼくは ぼくは ぼくは
ロード·ホッグする。

ロード·ホッグも知らない?
道路のブタって意味だよ。
ピッグはかわいいブタだけど
ホッグはかわいさのかけらもないブタだ。
だから道路でめちゃくちゃな運転をするやつのことを
イギリスでは憎しみを込めてロード·ホッグって言うんだ。
そのことの上であえて

ぼくはロード·ホッグする。

Well you can penetrate any place you go
Yes you can penetrate any place you go

きみはきみの行くところを
どこでもペネトレイトしていい。

突き進むこと。
突きぬけること。
見通すこと見透かすこと見抜くこと
侵入すること浸透すること
全部ペネトレイトだ。

そうさ。
きみはきみの行くところを
どこでもペネトレイトしていい。


I told you so, all I want is you
Everything has got to be just like you want it to
Because...

言っただろう。
ぼくがほしいのはきみだけだ。
すべてはきみがそうなってほしいと思うようになるべきなんだ。
なぜって…


I pick a moon dog
ぼくは ぼくは ぼくは
ムーン·ドッグをピックする。

ムーンドッグは月の犬。
わかんないだろうね。
うすぐもりの日だとかに
月に「かさ」がかかって見えることがあるよね。
その「かさ」の両脇に
ぼんやりした光のかたまりみたいなのが
ふたつ見えることがあるんだけど
それを英語では「ムーンドッグ」と言う。
そういう美しい言葉は日本語にはないか。
ないみたいだね。
それとは別にムーンドッグという名前で
1940年代から70年代にかけて
ニューヨークで路上アーティストとして
活動していた有名な人もいるけど
この人の場合は自分の名前を
月に向かって吠えてる犬を見て
それに感動してそこからつけたらしい。
何にしたって
印象的な言葉だろ。
だからビートルズも一時期は
ジョニー&ムーンドッグスという名前の
バンドだったこともあった。
そういう特別な響きを持つ
ムーンドッグという名前を背負ったそれを
ピックするんだ。
突っつくんだほじくるんだ
毛をむしるんだ肉をついばむんだ。
何しろムーンドッグだ月の犬だ黄色い犬だ。
毛皮をはいだら中身はきっと
Yellow matter custardでいっぱいだ。
そいつをとにかくピックする。
選びとる盗みとる
摘みとるあら探しをする
カギを使わずに巧みに開ける。
それをあえて一言で言えば
て言っか一言でしか言えないんだけど

ぼくはムーン·ドッグをピックする。

Well you can radiate everything you are
Yes you can radiate everything you are

きみはきみであるところのすべてを
ラジエートすればいい。

これでも日本語的に表現してるつもりだよ。
本当ならレイディエイトと言ってほしい。
発すること放射すること発散させること。

そうさきみは
きみをきみとして存在させているすべてのものを
ラジエートすればいい。


Oh now
オーノーと言うと見せかけて
オーナウって言ったんだ。

いまや/いまだ/さあ!

I roll a stoney
ぼくは ぼくは ぼくは
ストー二ーをロールする。

辞書には載ってないけど大体わかるだろ。
ストー二ーって言えば「石っぽいもの」だよ。
頭の固い人間だとか
石化して硬直した社会だとか
酒だかクスリだかでストーン状態のやつとか
そういうのをロールするわけだ。
回転させて転がして
平べったくしてぐるぐる巻きにすれば
ローリング・ストーンズのできあがりだ。
そういう風にして

ぼくはストー二ーをロールする。

Well you can imitate everyone you know
Yes you can imitate everyone you know

きみはきみの知ってるものを
何でもイミテイトすればいい。

まねしてパクって模倣すればいいんだ。
ローリングストーンズの諸君。
きみらがやってることだよ。

そうさきみらはきみらの知ってるものを
何でもイミテイトすればいい。


I told you so, all I want is you
Everything has got to be just like you want it to
Because...

言っただろう。
ぼくがほしいのはきみだけだ。
すべてはきみがそうなってほしいと思うようになるべきなんだ。
なぜって…


Ooh now
オーノーと見せかけて
またしてもオーナウだ。

あああ いま

I feel the wind blow
ぼくは ぼくは ぼくは
風が吹くのを感じている。

答えは風に吹かれているとか
そういうのはボブ・ディランにまかせておけばいいのであって
ぼくに関して言えば風に吹かれて
なすがままになってるわけでは決してなく
この場合あくまでも主体的に

ぼくは風が吹くのを感じている。

Well you can indicate everything you see
Yes you can indicate everything you see

きみにはきみが見ているものすべてを
インディケイトすることができるはずだ。

暗示することが表示することが
指し示すことが「あらわす」ことが

そうさきみにはきみが見ているものすべてを
インディケイトすることができるはずなんだ。


Oh now
ああ いま
と言ってるように見せかけて
実はやっぱりオーノーって言ってるかもしれないんだけど


I dug a pony
ぼくは ぼくは ぼくは
ポニーをディグした。

過去形として改めて言わせてもらう。
ぼくはポニーをダグした。

Well you can syndicate any boat you row
Yeah you can syndicate any boat you row

きみはきみが漕いでるどんなボートでも
シンジケートしてかまわない。

悪どいやり方で合併して連携させて
法人組織にすればいい。
ビートルズがやってたアップルだって
似たようなものだったんだ。

ああまったく
きみはきみが漕いでるどんなボートでも
シンジケートしてかまわない。


I told you so, all I want is you
Everything has got to be just like you want it to
Because...

言っただろう。
ぼくがほしいのはきみだけだ。
すべてはきみがそうなってほしいと思うようになるべきなんだ。
なぜって…

=翻訳をめぐって=

「めぐって」も何も必要なことは全部「訳詞」の中に書いてしまったので、ここには何も書くことがない。青い文字の言葉は誰の言葉かって?少なくともジョンの言葉では、絶対ないな。でも私の言葉でもない。ジョン・レノンの音楽を聞いたり歌詞を読んだりその中の言葉を辞書で調べたりとかするたびに、私の内側から私に向かって語りかけてくる「ジョンみたいな感じのする誰か」の声だとでも言うべきか。その誰かが信頼に値する誰かであるという保障はどこにもないのだけれど、信頼できようができまいが私にはその誰かから逃げることも隠れることもできないことがあらかじめ分かっているので、結局その誰かとの「対話」を通じてここでの「訳詞」は完成されている。このことは翻訳に対する私自身の責任を回避するためとかそういうセコい目的を持って書いているわけではない。翻訳が間違っていた場合に怒られるのは私であるということを知りぬいた上で、その誰かは私に対して本当かウソか判断もつかないようないろんな言葉を吹き込んでくるのである。その取捨選択だけは私が自分の責任で真面目に行なっていることを、書き添えておく。

ジョン・レノン自身は後年のインタビューでこの歌を「単なる言葉遊び。ゴミクズみたいな歌」と評しているそうである。無責任なことを。この人のそういうところ、私は本当に大キライである。

そういえば「訳詞」の中で触れていない重要なことが、ひとつだけあった。この歌のタイトルは「Dig A Pony」だから、「ポニーをディグしろ」という「命令形」になっているのである。ディグしろと言われてもこの歌の内容がさっぱり分からなかったものだから、私には今までそのジョンの命令もしくはアドバイスに対し、答えようがなかった。けれども自分の内側から語りかけてくるわけのわからない誰かの力も借りて、この歌に対する自分なりの「解釈」を曲がりなりにも確定させることができた今、私はようやくジョン・レノンに対し、自分の言葉でこう答えることができる。

やなこった。

…月の両脇にぼんやり見える光の塊が、いわゆる「ムーンドッグ」。でもこんな写真のイメージが心に焼き付いても、混乱はいっそう深まるばかりかもしれない。

abbeyroad0310.hatenadiary.jp…この歌が人前で演奏される最初で最後の機会となった、1969年1月30日の「ルーフトップ・コンサート」について。

ではまたいずれ。