華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

吙伊去 もしくは ほいき -Let it be- (1992. 鄭智化)



Let It Be」を取りあげた以上、この歌も取りあげておきたい気持ちになった。私が知っていて歌うことのできる、今のところ唯一の閩南語(みんなんご)の歌である。


鄭智化 吙伊去

吙伊去

閩南語原詞はこちら

なしーぐゎん しんちん
喃係阮 心情
うつーで しすん
鬱足耶 時陣
ぺにゅひゃーでぃ らいしょくん
朋友兄弟 來相勸
まんす てぃえあい くぉぱ
萬事 丟愛 看破
ほいきー
吙伊去

気持ちが塞いでいる時には
友達やきょうだいが
みんな来て励ましてくれる
何ごとも、心を広く持てばいい
自然の流れに身を任せよう


むくぁんうぃ しゃみん
嘸管霧 邪物
ぴしょんいぇ たいち
悲傷耶 代誌
いんしんはいはい ごぉりゃうし
人生海海 牟了時
やぼーりーべあんすぁ
壓牟你眉安抓
ほいきー
吙伊去

悲しいことが
あろうとあるまいと
なるようにしかならないのが
人生だ
そうでなければ
そう思うしかない
自然の流れに身を任せよう


ほいきー ほいきー ほいきー ほいきー
吙伊去 吙伊去 吙伊去 吙伊去
まんす てぃえあい くぉぱ ほいきー
萬事丟愛看破 吙伊去
ほいきー ほいきー ほいきー ほいきー
吙伊去 吙伊去 吙伊去 吙伊去
やぼーりーべあんすぁ ほいきー
壓牟你眉安抓 吙伊去

自然の流れに身を任せよう
自然の流れに身を任せよう
何ごとも、心を広く持てばいい
そうでなければ
そう思うしかない
自然の流れに身を任せよう


すぃしょんれい わんたん
時雄累 怨嘆
うしゃんみ ろよん
霧邪物路用
はぅうんたぃうん ちゃおぼきゃあ
好運歹運 照步行
まんす てぃえあい くぉぱ
萬事 丟愛 看破
ほいきー
吙伊去

いつも文句ばかり言ってて
何の役に立つんだい
運も不運も
代わりばんこにやって来る
何ごともそんなものだと
見抜くことが大切だ
自然の流れに身を任せよう


せがんね ぺんぐぁ
世間耶 變化
しんしゅんふぁん でぃやん
親像搬 電影
しぎばいばい まー てぃおぴゃん
時機邁邁 馬丟拼
やぼーりーべあんすぁ
壓牟你眉安抓
ほいきー
吙伊去

世間の変化は
映画が連れて来るみたいだ
時間はどんどん過ぎて行くけど
ついて行けなくてもいい
そうでなければ
そう思うしかない
自然の流れに身を任せよう


うらん たんじーし
有人 賺錢是
いぅでいぴゃおか
飲茶翹腳
しゅぐゎ ぴゃかー
像阮 拼加
くぃーしんくゎ
歸身汗
まんす てぃえあい くぉぱ
萬事 丟愛 看破
ほいきー
吙伊去

金持ちになって脚を投げ出して
お茶を飲んでる人がいる一方で
僕は毎日 あせだくになって
ただ生きてるだけ
何ごともそんなものだと
見抜くことが大切だ
自然の流れに身を任せよう


しやうし くぇいでゅう
只要是 過得
ぴんあんで しぇんふぁ
平安耶 生活
らてや かんかん まくぃわぁ
落袋仔 空空 馬虧瓦
やぼーりーべあんすぁ
壓牟你眉安抓
ほいきー
吙伊去

毎日が平和に
過ぎて行きさえすれば
財布にカネがなくたって
落ち込む必要はない
そうでなければ
そう思うしかない

自然の流れに身を任せよう

ほいきー ほいきー ほいきー ほいきー
吙伊去 吙伊去 吙伊去 吙伊去
まんす てぃえあい くぉぱ ほいきー
萬事丟愛看破 吙伊去
ほいきー ほいきー ほいきー ほいきー
吙伊去 吙伊去 吙伊去 吙伊去
やぼーりーべあんすぁ ほいきー
壓牟你眉安抓 吙伊去

自然の流れに身を任せよう
自然の流れに身を任せよう
何ごとも、心を広く持てばいい
そうでなければ
そう思うしかない
自然の流れに身を任せよう

閩南語は福建省の南部と台湾で主に使われている中国語の「方言」のひとつで、台湾では人口の73%にあたる人がこの言葉を使っていることから、「台湾語」もしくは「台語」とも呼ばれている。日本語における漢字の「音読み」と一番近い発音で話されている言葉だとも言われるが、「普通話」と呼ばれる北京方言とは単語の使い方も漢字の使い方もかなり違うので、本気で話せるようになろうと思ったら「別の言語」をイチから勉強するつもりで、がんばるしかない。

私の中国語は「普通話」が辛うじて読解できる程度なので、閩南語になるとさっぱり分からないし、漢字を見ても意味が想像できない。今回の訳詞は閩南語歌詞を普通話に翻訳したものをネットから探してきてそれを日本語に直すという二重の翻訳を経ているのだけど、もしも台湾の方が読んでいて誤訳に気づくようなことがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。ちなみに「吙伊去」の北京語訳は「譲他去簡体字表記は「让他去」)」となっていた。「譲=let,他=it,去=go」なので、ほぼ原曲の「Let it be」に即した歌詞になっていることが伺える。

歌っている鄭智化(zhèng zhì huā =チョン·チーホァ)さんは90年代の台湾を代表する有名な歌手だった人で、今は一線を退いてIT関連の会社を経営したりしているらしいのだけど、「大陸」でも根強い人気を誇っているビッグネームの1人である。中国語圏の全体で愛される歌手になるというのは、ものすごいことなのだ。「日本人なら誰でも知ってる歌手」がいたとしても、1歩この島国を離れたならその知名度など、タカが知れたものにすぎない。しかし「中国語圏の人なら誰でも知ってる歌手」の場合、好かれていようが嫌われていようがその人はその時点で「世界の7分の1」から存在を認知されているのである。音楽を聞く人の層もやる人の層も、当然それだけ分厚い。私自身がいろんなきっかけから積極的に中国の音楽を聞き始めるようになったのはここ数年のことに過ぎないのだけど、知れば知るほどその奥深さとスケールの大きさに圧倒されるばかりである。中国語の歌は今後このブログでも、もっともっといろいろ取りあげて行きたいと考えている。

私にこの歌を紹介してくれた人を含め、中国語圏の読者の皆さんに対しては、日本にもこんな「Let it be」のカバー曲があるのだということを紹介して「お返し」に代えたいと思います。台湾と香港からなら問題なく視聴できると思うけど、youtubeが視聴できない「大陸」の皆さんにおかれましては、「上々颱風 Let it be」という言葉で検索してもらえれば、逆に最近日本からは見ることができなくなってしまった酷狗や虾米でいろいろ見つけることができると思います。まったく、早く国境のなくなる日が来ればいいと思うんですけどね。というわけでまたいずれ。いーほゎーるちぇん!(一会儿见!)


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