華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

License To Kill もしくは追悼トム·ペティ① (1992. Tom Petty & Heartbreakers)



このブログの一回目で触れた1992年のボブ・ディランの30周年コンサートのNHKによる放送を通じて、私はザ・バンドの他にも、いろいろなアーティストと初めて出会った。ニール・ヤングを初めて見たのも、リッチー・ヘブンスを初めて見たのも、あの映像が初めてだった。そしてそこで見た忘れられない人たちの中に、トム・ペティ&ハートブレイカーズがいた。

そのトム・ペティが10月1日に亡くなっていたことを、いつも読ませてもらっているid:lynyrdburittoさんのブログで知り、いろいろな思いが胸に迫った。

彼(ら)のアルバムはNHKの放送を見た後、中古屋で300円で売られていたものを1枚だけ買った。けれどもそれは輸入盤で歌詞カードもついておらず、何曲かのイメージは心に残ったものの、中学生だった私には難しく感じられた。それきり、改めて聞いてみようという気持ちが起こらないまま今に至ってしまったのだが、あのコンサートでトム・ペティが歌ったディランの「License To Kill」は、あの日マディソン·スクエア·ガーデンに詰めかけた全ての人たちと同じように、私の心も奪って行かずにおかなかったぐらい、感動的なものだった。

今、自分の手で翻訳してみると、あまりいい歌詞ではないと思う。「答えは風に吹かれている」で聞く人をケムに巻いてしまう「風に吹かれて」と同じように、この歌は「誰が彼から殺しのライセンスを取りあげるんだろう」とだけ嘆いてみせて、自らは決して行動を起こさないディラン的な無責任さに貫かれている。「man」という言葉が英語では「人間」と同義で使われていることを批判なく受け入れ、それに「対抗する概念」みたいな形で「woman」という言葉を持ち出してみせるのも、いけすかない。何よりその「woman」という「他者」に自分の無責任さを「代弁」させているのが、気に入らない。

けれど追悼なのだから、ここであまり悪口は言わないことにしようと思う。そしてこれを機会にトム・ペティの曲を改めて聞き直してみたいと、今は思っている。


License to kill

License To Kill

英語原詞はこちら


Man thinks 'cause he rules the earth he can do with it as he please
And if things don't change soon, he will
Oh, man has invented his doom
First step was touching the moon.

人間はもしくは男性は
地球を支配しているから
何でも自分のしたいようにしていいと
思い込んでいる。
そしてものごとが
思ったように変わらないと
すぐに変えようとする。
ああ人間はもしくは男性は
自分の手で破滅を作り出してしまった。
その最初の1歩が
月にタッチすることだった。


Now there's a woman on my block
She just sit there as the night grows still
She say who gonna take away his license to kill ?

今ぼくの町内には
ひとりの女性がいて
夜が静けさを増す中
ただそこに座っている。
彼女は言う。
誰が彼から
殺しのライセンスを取りあげるんだろうかと。


Now, they take him and they teach him and they groom him for life
And they set him on a path where he's bound to get ill
Then they bury him with stars
Sell his body like they do used cars.

ごらん世の中は
彼をつかまえ彼を教育し
一生にわたって
彼に生き方を仕込む。
そして世の中は彼を
病気にいざなう道の上に放り出す。
そして世の中は彼を
星で飾り立てて埋葬し
使い古した車のように
彼の死体を売りに出す。


Now, there's a woman on my block
She just sit there facing the hill
She say who gonna take away his license to kill ?

今ぼくの町内には
ひとりの女性がいて
丘の方を向き
ただそこに座っている。
彼女は言う。
誰が彼から
殺しのライセンスを取りあげるんだろうかと。


Now, he's hell-bent for destruction, he's afraid and confused
And his brain has been mismanaged with great skill
All he believe are his eyes
And his eyes, they just tell him lies.

いまや彼は
破壊にわれを忘れていて
恐怖と混乱に包まれている。
そして彼の脳みそは
巨大な技術によって
間違った使い方をされている。
彼の信じるものは
すべて彼の瞳の中にあって
そして彼の瞳は
いつも彼に嘘ばかりを教える。


But there's a woman on my block
Sitting there in a cold chill
She say who gonna take away his license to kill ?

けれどぼくの町内には
ひとりの女性がいて
凍てつく寒さの中に
座っている。
彼女は言う。
誰が彼から
殺しのライセンスを取りあげるんだろうかと。


Ya may be a noisemaker, spirit maker
Heartbreaker, backbreaker
Leave no stone unturned
May be an actor in a plot
That might be all that you got
'Til your error you clearly learn.

あんたはノイズメーカー(騒音を出す人)
スピリットメーカー(蒸留酒を作る人もしくは霊魂を作り出す人)
ハートブレイカー(人に悲しみを与える人)
バックブレイカー(人の背骨を折る人もしくは骨の折れる仕事そのもの)
石という石をひっくり返して
調べつくさずにはいない人かもしれない。
自分の間違いにハッキリ気づくまで
あなたが身につけてきたすべてであるところの
筋書きに従って演技を続ける
一人の役者なのかもしれない。


Now he worships at an altar of a stagnant pool
And when he sees his reflection, he's fulfilled
Oh, man is opposed to fair play
He wants it all and he wants it his way.

いま彼は淀んだ水たまりにしつらえられた
祭壇を崇拝している。
そして水鏡の上に自分の姿を見て
彼は満たされる。
ああ、人間というやつはもしくは男性というやつは
フェアプレーの反対側にいる。
彼はすべてを望み
すべてを自分のしたいようにやりたがる。


Now, there's a woman on my blocks
She just sit there as the night grows still
She say who gonna take away his license to kill ?

今ぼくの町内には
ひとりの女性がいて
夜が静けさを増す中
ただそこに座っている。
彼女は言う。
誰が彼から
殺しのライセンスを取りあげるんだろうかと。

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