華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Boots Of Spanish Leather もしくは木綿のハンカチーフ (1993. Nanci Griffith)

恋人よ 僕は旅立つ
東へと向かう列車で
華やいだ街で
君への贈り物
探す 探すつもりだ

いいえ あなた
私は ほしいものはないのよ
ただ都会の絵の具に
染まらないで帰って
染まらないで帰って

太田裕美木綿のハンカチーフ」1975年=


Nanci Griffith

Boots Of Spanish Leather

英語原詞はこちら


Oh I'm sailin' away my own true love
I'm sailin' away in the morning
Is there something I can send you from across the sea
From the place that I'll be landing ?

恋人よ。
ぼくは旅立つ。
朝には船出することになっている。
たどりついた港から
海を越えてきみに
何か贈れるものがあるだろうか?


No, there's nothin' you can send me, my own true love
There's nothin' I wish to be ownin'
Just carry yourself back to me unspoiled
From across that lonesome ocean.

いいえ。
恋人よ。
あなたに贈ってほしいものは何もない。
私がほしいものは何もない。
ただ、変わらないまま帰ってきてください。
孤独の海を越えて。


Oh, but I just thought you might want something fine
Made of silver or of golden
Either from the mountains of Madrid
Or from the coast of Barcelona ?

ああけれども
何かいいものがほしいとは思わないかな。
金か銀でできた何か。
マドリードの山々や
バルセロナの浦々からの
贈り物がほしいとは思わないかな。


Oh, but if I had the stars from the darkest night
And the diamonds from the deepest ocean
I'd forsake them all for your sweet kiss
For that's all I'm wishin' to be ownin'.

ああだけど
夜空に輝く星が私のものだったとしても
いちばん深い海の底のダイヤモンドが
私のものだったとしても
あなたのキスのためならば
いつでも捨ててかまわない。
それが私の
ほんとうにほしいすべてだから。


That I might be gone a long time
And it's only that I'm askin'
Is there something I can send you to remember me by
To make your time more easy passin' ?

ぼくの旅は長くなりそうだ。
聞きたいことはひとつだけ。
贈ってほしいものはあるかな。
ぼくを思い出すよすがになって
きみの時間が早く流れるように
してあげることのできる
そんなものが。


Oh, how can, how can you ask me again
It only brings me sorrow
The same thing I want from you today
I would want again tomorrow.

ああどうして
どうしてそんなことを私に聞くの
私は悲しくなるだけ。
今日あなたに願ったのと同じことを
明日からも私は願い続けます。


I got a letter on a lonesome day
It was from his ship a-sailin'
Saying I don't know when I'll be comin' back again
It depends on how I'm a-feelin'.

あるさびしい日
手紙を受け取った。
彼氏の乗った
船からだった。
「いつ帰るかはわからない」
「それはぼくの気分しだい」
そう書いてあった。


Well, if you, my love, must think that-a-way
I'm sure your mind is roamin'
I'm sure your thoughts are not with me
But with the country to where you're goin'.

恋人よ。
あなたがそんな風に思うんだとしたら
あなたの心はさまよっているんだと思う。
そしてあなたの心は私のもとにでなく
あなたが目指しているその場所に
行ってしまっているのだと思う。


So take heed, take heed of the western wind
Take heed of the stormy weather
And yes, there's something you can send back to me
Spanish boots of Spanish leather.

だから体に気をつけてください。
西風に気をつけてください。
嵐に気をつけてください。
そして、ええ。
あなたから贈ってもらいたいものがあります。
スペインの革でつくった
スペイン風のブーツです。

=翻訳をめぐって=

原曲はボブ・ディランが1964年、23歳の時に作った歌。もっともこれにもさらに「原曲」があるらしく、歌詞のモチーフは「Blackjack Davey」というトラディショナルのフォークソングを下敷きにしているのだとのこと。少し前に翻訳したドアーズのSpanish Caravanの歌詞が、この歌からイメージを受け取っているのも見てとることができる気がする。(Silver and gold in the mountains of Spain というところですね)

ディランのバージョンでは船に乗って旅立つのが女性で、それを待っているのが男性という内容になっている。(だから7番の歌詞が It was from her ship a-sailin' となっている)。これに対しナンシー·グリフィスは去ってゆく女性の立場から歌っているのかと思いきや、そのherの部分をhisに変えて歌っている。やっぱり待つ方の立場から歌うのでなければ、この歌は歌として成立しないのだと思う。それにしてもherhisに変えるだけで男の歌が女の歌に変わるのだとすれば、男のやることなすことと女のやることなすことというのは、実は全然違っていないのだろうなという感じがする。そしてそういう歌は、割と世の中にいくらでもある。


木綿のハンカチーフ

松本隆氏はこの歌を書く時、一番最初はやっぱり「革のブーツください」という歌詞にしていたのではないかと思う。その名残りが、「ハンカチーフ」の「チーフ」に感じ取れるような気がする。いずれにしても、「身体に気をつけてください」みたいなことしか言えなくなってしまったら、その時点で恋は終わっているのである。せつない歌です。ではまたいずれ。

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Boots of Spanish Leather

Boots of Spanish Leather

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木綿のハンカチーフ

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