華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

With God On Our Side もしくは神が味方についている (1963. Bob Dylan)

With God On Our Side

英語原詞はこちら


Oh my name it is nothin'
My age it means less
The country I come from
Is called the Midwest
I's taught and brought up there
The laws to abide
And the land that I live in
Has God on its side.

ぼくの名前なんて意味を持たない。
年なんてなおさら関係ない。
ぼくが生まれたのは
中西部と呼ばれるところ。
ぼくはそこで育てられ教育を受け
守るべき律法というものを仕込まれた。
そしてぼくが暮らすその土地には
神が味方についている。


Oh the history books tell it
They tell it so well
The cavalries charged
The Indians fell
The cavalries charged
The Indians died
Oh the country was young
With God on its side.

歴史の本は教えてくれる。
きわめて上手に教えてくれる。
騎兵隊が突撃しては
Indianが倒れ
騎兵隊が突撃しては
Indianが死んだ。
若かったその国家には
神が味方についていた。


The Spanish-American
War had its day
And the Civil War too
Was soon laid away
And the names of the heroes
I's made to memorize
With guns on their hands
And God on their side.

そして米西戦争というものが
時代のトレンドみたいになった。
南北戦争というのもそうなって
すぐにかたづいた。
その英雄たちの名前を
ぼくは覚えさせられた。
かれらの手には銃が握られ
神が味方についていた。


The First World War, boys
It came and it went
The reason for fighting
I never did get
But I learned to accept it
Accept it with pride
For you don't count the dead
When God's on your side.

第一次世界大戦だよ諸君。
戦いの理由というものは
ぼくには全然わからなかった。
でもぼくはそれを受け入れることを学んだ。
誇りをもって受け入れることを。
神が味方についている時に
死者の数なんて数えるもんじゃない。


When the Second World War
Came to an end
We forgave the Germans
And then we were friends
Though they murdered six million
In the ovens they fried
The Germans now too
Have God on their side.

第二次世界大戦
始まって終わったとき
われわれはドイツ人を許し
そして友だちになった。
かれらはその焼却炉で
600万人もの人を殺したわけだけど。
ドイツ人たちにも今では
神が味方についている。


I've learned to hate Russians
All through my whole life
If another war comes
It's them we must fight
To hate them and fear them
To run and to hide
And accept it all bravely
With God on my side.

ぼくはロシア人たちを憎むことを学んだ。
生ある限り憎まねばならない。
次の戦争がやってきたら
戦うべき相手はかれらなのだ。
かれらを憎むこと恐れること。
逃げること隠れること。
それらをすべて勇敢に
受け入れなければならない。
神をこちらの味方につけて。


But now we got weapons
Of the chemical dust
If fire them we're forced to
Then fire them we must
One push of the button
And a shot the world wide
And you never ask questions
When God's on your side.

しかしわれわれには今や
死の灰の武器がある。
それを発射することをわれわれが強いられたなら
われわれは発射しなければならない。
ボタンの一押し。
全世界への一撃。
神が味方についている時には
疑問なんて口にするもんじゃない。


In a many dark hour
I've been thinkin' about this
That Jesus Christ
Was betrayed by a kiss
But I can't think for you
You'll have to decide
Whether Judas Iscariot
Had God on his side.

いくつもの暗い時間の中で
こんなことを考えていた。
エス·キリストは
キスによって裏切られたわけだ。
だけどぼくには答えが出せない。
きみが自分で考えてほしい。
イスカリオテのユダにも
神は味方してたんだろうか。


So now as I'm leavin'
I'm weary as Hell
The confusion I'm feelin'
Ain't no tongue can tell
The words fill my head
And fall to the floor
If God's on our side
He'll stop the next war.

というわけでぼくは行くよ。
地獄のように疲れてしまった。
ぼくの感じてるモヤモヤは
口で言えるようなもんじゃない。
ある言葉が頭にあふれだし
床にまでこぼれ出す。
もし神がぼくらの味方なら
次の戦争は止めてくれるんだろうってこと。


With God On Our Side (Live 1963)

=翻訳をめぐって=

ボブ・ディランという歌手に関しては「愛憎」の「憎」の部分ばかりが膨れあがっている昨今なので、本人の名前で出されている歌に関しては正直とりあげる気がしないというのがこのブログの基本姿勢なのだが、「ジェリコの戦い」をめぐる私見を悪戦苦闘しながら書きあげる中で、そういえばこういう「まともな歌」も歌っていたではないかということを、唐突に思い出した。もっともこの曲を出した15年後には彼はボーンアゲイン·クリスチャンの洗礼を受け、「神を讃える歌」ばっかり歌い出すようになる。うっかり信頼すると確実に裏切られることになるし、本人は絶対にそのことを「楽しんで」いる。よく読むとこの歌の時点で既に「So now as I'm leavin'」などという「逃げ道」が、ちゃっかりと用意されている。みんななあ。どこにも逃げ道のない世界であんたの歌を聞いてるんだぞ。つくづくjesterな歌手だと思う。

The laws to abide…この「law」には「法律」という意味と同時に宗教的な「戒律」「律法」という意味も含まれている。ディランが生まれたのはユダヤ教の家で、そういうのはとりわけ、厳しかったらしい。

The Indians fell…Indiansはアメリカ先住民に対する差別語であり、かつあの大陸は「インド」ではない。(「アメリカ」だって、本当はおかしいはずだと思う。本州、四国、九州のそれぞれに「大航海時代のイタリア人」の名前がつけられたら、我々はどんな気持ちがするだろうか)。先住民の「味方」をしているような顔をしながらこの言葉を使い続けているような例がいまだに散見されるが、だったらその人たちのことを本人たちも拒否している差別語で呼ぶことをやめるところから始めるべきだと私は思う。同様の理由からブルーハーツの「青空」という歌も、私は認めていない。あんなのは「差別に反対する歌」ですらない。ただ「ため息」をついてみせるだけの、jesterな歌である。

The Spanish-American War had its day…had its dayというのは「それがいっとき流行ってた」といった感じの、ものすごく醒めた言い方。そういえばブルーハーツにも

どっかの坊主が親のスネかじりながら
どっかの坊主が原発はいらねえってよ
どうやらそれが新しい流行りなんだな
明日はいったい何が流行るんだろう

という歌詞があったが、この3行目を英訳するならさだめし「seems like having its day」ということになるのだろう。しかしその「流行りすたり」に「現実の戦争」の名前を押し込むというのは、ものすごい感覚だと思う。(ホメてない)。ちなみにブルーハーツの作詞者の人に関しては、こんな歌を作ったことを心から恥じているはずだと思うし、恥じていてほしいと思う。まっすぐ反対すれば何とかなったかもしれない時代にこんなことを言ってたから、本当に何か言わなければならない時代になって何も言えなくなってしまうのである。もうあなたには「言葉で何かをやれる」生き方は、残されていないと私は思いますよ。

というわけでまたいずれ。

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