華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Loving You Is Sweeter Than Ever もしくはそうですそうなんです (1966. Four Tops)



リーヴァイ・スタッブスの名前が出てきたことだし、せっかくなのでフォー・トップスの曲も久しぶりに取りあげておくことにしようと思う。R&Bのコーラスグループの曲の翻訳はブルース・ブラザーズ特集以来なので、訳していて妙になつかしい感じがした。あれからまだ2ヶ月も経っていないんだけどな。


Loving You Is Sweeter Than Ever

この曲が私にとって特別なのは、「Rock of Ages」というライブアルバムの中でザ·バンドがカバーしている曲でもあるからだ。偏屈なロビー・ロバートソンが作った偏屈な曲を偏屈に演奏しているザ·バンドも私は偏屈だから好きなのだけど、こういう情熱的な曲を思い切りストレートに演奏するこの人たちの姿というのも、普段が偏屈だからまた格別なのである。

レコードの音源はYouTubeには見つからなかったが、代わりに見つけた下の映像は大変なお宝だと思う。ロビロバ氏が本気でシャウトしてる姿なんて、滅多に見られるものではない。(ラストワルツのあれは、聞くところによると口パクらしい)。それにつけてもこういう演奏に触れると、リック·ダンコはあのバンドの「ソウル担当」だったのだなと、つくづく思う。だとすればリチャード·マニュエルは、さしずめ「ハート担当」だったのだろうか。いずれにしても、消されてしまわないことを祈りたい。


The Band 1970

他にもこの曲名で検索してみると、ローリングストーンズやディオンヌ・ワーウィックビリー・ジョエルなど、驚くほど多くのアーティストによってこの曲がカバーされていることに、驚く。(悪文だ…)。思うにこれだけ多幸感にあふれた曲というのは他にあまりないから、誰もが一度は歌ってみたいという気持ちにさせられるのかもしれない。隠れた名曲と言うべきだろうか。ちなみに作曲はスティービー・ワンダーだとのことである。

Loving You Is Sweeter Than Ever

英語原詞はこちら
I remember yet before we met
When every night and day I had to live the life of a lonely one
(Lonely one)
I remember meeting you, discovering love could be so true
When shared by two instead of only one
(Only one)

あなたに出会う前は
毎日毎晩ぼくは
ずっと孤独なひとりの人間として
人生を送らなきゃいけませんでした。
(孤独なひとりの人間として!)
たったひとりじゃなく
ふたりの人間によって分かち合われたとき
愛はこんなにも真実になるものなのかと知った。
それはあなたに出会えた時でした。
(たったひとりじゃなく!)


When you said you loved me
(When you said you loved me)
And we could not be parted
(We could not be parted)

あなたが愛してるって言ってくれた時
(愛してるって言ってくれた時!)
そしてもう離れないって言ってくれた時
(離れないって言ってくれた時!)


I said, I built my world around you
(Built my world around you)
I'm so thankful that I found you

ぼくは
ぼくの世界はあなたを中心に
築きあげられてるんだって
そう言いましたよね。
(ぼくの世界の真ん中にあなたが!)
あなたを見つけることができたことを
ぼくはどれだけ感謝していることか。


Because loving you has made my life sweeter than ever
I've never felt like this before
Loving you has made my life so much sweeter than ever

なぜって
あなたを愛することは
ぼくの人生を最高に素敵にしてくれたんです。
こんな気持ちになったことは一度もありませんでした。
あなたを愛することはぼくの人生を
今までになかったぐらい
素敵にしてくれたんです。


Each night I pray we never part
For the love within my heart grows stronger from day to day
As best I can, how I try to reassure you, satisfy
'Cause I'd be lost if you went away
(Went away)

毎晩ぼくは
2人が決して離れ離れにならないことを祈ります。
ぼくの心の中で日ごとに強く大きくなる
愛のために祈ります。
限界まで頑張ってます。
どれだけぼくがあなたを
安心させたいと思ってるか。
満足させたいと思ってるか。
なぜってあなたが行ってしまったら
ぼくはもうおしまいだから。
(行ってしまったら!)


'Cause I really need you
(Really really need you)
And I need for you to need me too
(Need for you to need me too)

なぜってぼくは
ほんとにあなたが必要なんです。
(ほんとにほんとに必要なんです)
そしてあなたもおんなじように
ぼくを必要としてくれることが
ぼくには必要なんです。
(おんなじように必要としてくれることが!)


I have built my world around you
(Built my world around you)
I'm so thankful that I found you

ぼくの世界は
あなたを中心にできあがってるんです。
(ぼくの世界の真ん中にあなたが!)
あなたを見つけることができたことを
ぼくはどれだけ感謝していることか。


Because loving you has made my life sweeter than ever, yes it has
Since I'm loving you, my life is so much sweeter than ever

なぜって
あなたを愛することは
ぼくの人生を最高に素敵にしてくれたんです。
あなたを好きになったから
ぼくの人生は
今までになかったぐらい素敵になったんです。


'Cause I really love you
(Really really love you)
Girl, I'm thankful that you love me too
(Thankful that you love me too)

だってぼくは
あなたのことをほんとに愛してるから
(ほんとにほんとに愛してるから)
あなたも同じように
ぼくのことを愛してくれていることを
ねえぼくは
どれだけ感謝していることか。


I have built my world around you
(Built my world around you)
And I'm truly glad I found you

ぼくの世界は
あなたを中心にできあがってるんです。
(ぼくの世界の真ん中にあなたが!)
そしてぼくは
あなたを見つけることができて
ほんとにうれしいと思ってるんです。


Because loving you has made my life sweeter than ever
You know it has, yes it has
Loving you, since I've been loving you, my life's sweeter than ever
Since I'm loving you, my life is sweeter than ever, yes it has

なぜって
あなたを愛することは
ぼくの人生を最高に素敵にしてくれたんです。
わかります?そうなんです。
あなたを愛するいうこと
あなたを愛しはじめてから
ぼくの人生は
最高に素敵になったんです。
あなたを好きになったから
ぼくの人生は
今までになかったぐらい素敵になったんです。
そうなんです。

=翻訳をめぐって=

この手の曲というのは、直訳すると本当にグーグル翻訳みたいな文章になる。文法的には何もおかしくないのにすごく「不自然」な感じの日本語になるのは、やっぱり根本的には日本とアメリカでは「愛の伝え方」が異なるという、文化的な問題に行き着いてしまうのだと思う。

夏目漱石が「I love you」という言葉を翻訳するのに「月がきれいですね」という訳語を当てたという有名な話があるけれど、日本語には「自然」に愛を伝えることのできる直接的な表現というものが、もともとそれぐらい完璧に、存在していないのである。(その上で「月がきれいですね」という翻訳の仕方は、やたら感動したがる人もいるけれど、ちょっとデタラメなんではないかと私は思っている。さらにそれを踏まえて「月がきれいですね」の反対語を書きなさいという問題がどこかの学校の「国語」の試験で出たらしいのだけど、その「正解」というのが「月きれいですね」だったとかいう話で、それをネットで読んだ中国人の友達が「日本語ってすごいですね!」というメールを送ってきて返答に困ったことがあったのだが、どうなんだろう。「問題」も「正解」もおかしいのではないかとしか、私には思えない)

大体「愛」という言葉自体が、中国からの外来語である。「愛してます」というのは「ラブしてます」というのと、内容において何も変わらない。どっちも元々、「変な言葉」なのだ。すぐ隣の朝鮮語には「愛」を意味する「サラン」という固有の名詞があるのに、日本語世界ではそれを一貫して外来語でしか表現してこなかったというのは、考えてみればとても不思議なことである。

とはいえ「日本人はもともと『愛』という概念を持たない民族なのだ」みたいなメチャメチャなことを言い出すつもりは、私にもない。愛という言葉やloveという言葉を我々が「理解」できるのは、我々自身の心の中に「そういうもの」が存在しているからである。ただしそれを言葉にして伝えるということに、やっぱり日本語という言語は「不向き」なのだと、いろいろな面で思う。これは日本人の性格とか民族性とか言うよりはむしろ「日本語のせい」なのである。その証拠に日本語世界で暮らしている時には全然「自分の意見」を言わない人が、英語で暮らす環境に移るとバンバン「自分の意見」を言い出したり、「I love you」とかも平気で言い出したりするような事例は、枚挙にいとまがない。逆に外国の文化の中で育った人も、日本に来て日本語で生活するようになると、「日本語のせいで」自分の意見が言えなくなってしまうといったような話を、本当によく耳にする。

そういう「不便な」日本語という言葉に、外国語で書かれた歌を移し替えるという、どだいムリなことをやっているのがこのブログなのである。多少ぎこちなくなるのは、致し方ない。

ただしぎこちなさにも「自然なぎこちなさ」と「不自然なぎこちなさ」というものは、あると思う。「自然なぎこちなさ」というのは変な言い方だけど、「ぎこちなくなるのが自然な状態」として、例えば真面目でシャイな人が、顔を真っ赤にしながら誠実に自分の気持ちを言葉にしようと努力しているようなシチュエーションが思い浮かぶ。英語やイタリア語でなら、割とチャラチャラした人間が鼻でもほじりながら上記の歌詞のような内容のことを口にすることも、可能なのかもしれない。しかし「同じ内容」を日本語で表現しようと思ったら、する人間は暑苦しいくらい「真面目」になるしかないのである。

…えらく長い説明、と言うか言い訳になったが、今回の試訳の文体はそんな風にして選択したものである。フォー・トップスのメンバーのキャラクターを考えるなら、オレオレダゼダゼ口調の方がむしろこの歌にはふさわしいのかもしれない。しかし「内容」を考えたなら、やはりこういうことをオレオレダゼダゼ口調で言うのは日本語的にありえないような気がしてならなかったのだった。

そしてそうやって工夫した文体が、期せずしてひと頃のウルフルズの歌詞の雰囲気とすごく似通ったものになってしまったことに、「あの人たちもいろいろ考えていたのだな」と、今さらのように私は感心させられている。

I have built my world around youというのはすごく訳しにくい表現なのだけど、英語圏で愛を語る時にはかなりよく使われる言い回しなのかもしれない。クリスマス用にとってあるとあるとってもステキな曲にも、全く同じフレーズが登場する。と言っただけで何の曲かわかる人、いるかな?いたらコメント欄で伝えて下さい。正解した方にはグリーンスターをプレゼントします。

…は、いいのだけど、もっとうまい訳し方はないものだろうかとずっと考えている。ではまたいずれ。おやすみなさい。

==============================
はじめての方へ(総目次)
曲名索引(ABC順)
邦題索引(あいうえお順)
アーティスト名索引(ABC順)
アーティスト名索引(あいうえお順)

Loving You Is Sweeter Than Ever

Loving You Is Sweeter Than Ever

  • フォー・トップス
  • R&B/ソウル
  • ¥250