華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

The Fat Man もしくは頑張れよなんて言うんじゃないよ =追悼ファッツ·ドミノ①= (1949. Fats Domino)



今日、いつも読ませて頂いているid:lynyrdburittoさんのブログで、2人のミュージシャンの方の訃報に触れた。ついこのあいだトム・ペティ氏の追悼記事を書いたばかりだというのに、どうして亡くなって行く人がこんなに多いのだろう。

lynyrdburitto.hatenablog.com

2人のうちの1人は、遠藤賢司さんだった。
「不滅の男」じゃなかったのかよ。


遠藤賢司 不滅の男

そしてもう1人が、ファッツ・ドミノさんだった。正直に言って、名前はよく知っていたけれど、今まであまりちゃんと聞いたことのあった人ではなかった。ビートルズによるカバーで知っていたのと、ブルース・ブラザーズの映画の「コンサート直前の大宣伝」の場面で、バックに流れていたのが印象に残っていた程度である。

nagi1995.hatenablog.com

けれどもこの人とチャック・ベリーは、「死なない人」なのだと思っていた。かれらの「子どもたち」が迷ったり苦しんだりしながら何かと言っては27歳で死んだり自ら命を絶ったりダコタハウスの前で銃弾に倒れたりしても、「ロックンロールの父親」であるあの人たちはいつまでも変わらずに同じ場所にいて、人懐っこい微笑を浮かべながら「変わらない歌」を永遠に歌い続けているものだとばかり思っていた。変な言い方になるけれど、だからこそ死んで行ったミュージシャンたちも「安心して」死んで行くことができたのではないだろうか。そんな感じさえ、していたぐらいだった。

その「死なないはずの1人」だったチャック・ベリー氏が亡くなったのは、私がこのブログを始める2ヶ月前にあたる、今年の3月のことだった。そして今度はファッツ・ドミノ氏の訃報である。このブログを始めたのは何度も書いてきたように私自身が「自分の青春に決着をつけるため」という理由からでしかないのだけれど、何かそういう個人的な枠組みを越えて、「今ならまだギリギリで間に合うこと」「いま書いておかなければ永遠に手遅れになってしまうこと」を、得体の知れない大きな力によって「書かされている」ような気持ちになることが、最近は時々ある。

このブログで扱っているのは英語の曲ばかりではないし、アイルランドやジャマイカ、ロシアに中国といろんな所の歌を取りあげてきてはいるわけなのだけど、そういうのも全部ひっくるめた上で「このブログが最後に行き着く場所」があるとすれば、それはニューオーリンズという街なのではないか。翻訳してきた曲数が増えるにつれ、私は日増しにそう感じるようになっている。節目節目で私が取りあげてきた曲たちは、決して私が意識してそうしたわけではないのに、気がつけばいつもニューオーリンズの方を向いていた。ジェイクを亡くして40代で刑務所から出てきたエルウッド·ブルースも、「ブルースブラザーズ2000」の映画では、やはりニューオーリンズに向かう旅に出るのである。

nagi1995.hatenablog.com
nagi1995.hatenablog.com
nagi1995.hatenablog.com

ファッツ・ドミノはそのニューオーリンズの街で「待ってくれている」はずの人だった。だから、焦って聞くことはない。聞くべき時が来た時にゆったりした気持ちで聞けばいい。そんな風に私は構えていた気がする。それなのに、その時が訪れるのを待たずに、ファッツ・ドミノは死んでしまった。ハリケーンカトリーナ」の来襲でいったん行方不明にまでなりながらも奇跡の生還をとげたあの人が、ようやく私が「ニューオーリンズへの道」を歩き始めようとした正にそのタイミングで、本当にあっけなく、いなくなってしまった。

私は、途方に暮れている。

人が死んだ時ぐらい、少しでもその人(たち)のために「自分の時間」を使うべきだと思いませんか。ファッツ・ドミノさんにまつわる思い出を持っている方が読んでいらっしゃったら、コメント欄を開けておきますので、聞かせて頂ければ幸いです。また翻訳のリクエストがあれば、応じます。私はファッツ・ドミノという人についてのことを、最後までほとんど何も知らないままでした。だから今からでも、少しは「ちゃんと」知っておきたいと思うのです。

とりあえず私自身としては、自分がうろ覚えであれ知っていたあの人の曲をこれから3曲とりあげることで、追悼に代えたいと思います。多くの方の参加をお待ちしております。


The Fat Man

The Fat Man

英語原詞はこちら


They call, they call me the fat man
'Cause I weight two hundred pounds
All the girls they love me
'Cause I know my way around

みんなはおれを
みんなはおれを
「ザ·ファットマン」と呼ぶぜ。
200ポンドもあるからね。
女の子はみんな
おれのことが大好きさ。
なぜっておれはこの辺のことには
ちょっと詳しいからね。


I was standin', I was standin' on the corner
Of Rampart and Canal
I was watchin', watchin'
Watchin' all these creole gals

おれは立ってた。
ランパート·ストリートと
キャナル·ストリートの交差点の角に
おれは立ってた。
そんでもって見てた。
行き交うクレオールのギャルたちを
ずっと見てた。


Wah wah wah, wah wah
Wah wah waah, wah wah wah
Wah wah waah, wah wah wah
Wah wah wah

わーわーわーわーわー

Wah waaa-ah wah
Wah wah wah, wah wah wah
Wah wah wah, wah wah wah
Wah wah wah

わーわあああーわー

I'm goin', I'm goin' goin' away
And I'm goin', goin' to stay
'Cause women and a bad life
They're carrying this soul away.

おれは行っちゃうぜ。
遠くに行っちゃうぜ。
おれは行っちゃうぜ。
と見せかけてここにいるぜ。
なぜっておれの魂は
ここの悪い悪い暮らしと
姉ちゃんたちに
持ってかれちゃってるからね。

=翻訳をめぐって=

  • 200ポンド=90.7キロ。大したことないじゃん。
  • I know my way around…know one's way aroundで「その土地に詳しい」「事情通である」といった意味の熟語になる。
  • I'm goin', goin' to stay…"I'm goin'"だけだと「私は行こうとしている」という意味だが、"I'm goin' to stay"だと「私はとどまろうとしている」という、反対の意味になる。日本語世界の子どもが「痛い」「の反対」「の反対」とかいうのを延々と繰り返して、人を混乱させて喜ぶのと同じ効果を持った、一種の言葉遊びなのだと思われる。

みなさん一緒に追悼しましょう。ではまたいずれ。

==============================
はじめての方へ(総目次)
曲名索引(ABC順)
邦題索引(あいうえお順)
アーティスト名索引(ABC順)
アーティスト名索引(あいうえお順)

The Fat Man

The Fat Man