華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

(Just Like) Starting Over もしくは12月 (1980. John Lennon)


(Just Like) Starting Over





ちーん





ちーん





ちーん




(Just Like) Starting Over

英語原詞はこちら


Our life together is so precious together,
We have grown - we have grown,
Although our love is still special,
Let's take our chance and fly away somewhere alone,

ぼくらの人生
ふたりの人生は
かけがえがない。
きみにとってもぼくにとっても。
ぼくらはおとなになった。
おとなになったもんだね。
ぼくらの愛が今でも
特別なものであることに
変わりはないけれど
改めてなりゆきまかせで
飛んで行くのもいいんじゃないか。
どこか遠くへ
ふたりきりで。


It's been so long since we took the time,
No-one's to blame,
I know time flies so quickly,
But when I see you darling,
It's like we both are falling in love again,
It'll be just like starting over - starting over,

一緒に過ごすようになってから
ずいぶんたったよね。
誰のせいでもない。
時間が飛ぶように流れるもんだってことは
ぼくも知ってる。
でもダーリンきみの姿を見ると
ぼくらはまたイチから
恋に落ちるようなそんな感じがする。
また最初から始まる。
そんな感じだ。
あらたなる
再出発ってやつだ。


Everyday we used to make it love,
Why can't we be making love nice and easy,
It's time to spread our wings and fly,
Don't let another day go by my love,
It'll be just like starting over - starting over,

毎日ぼくらは
愛をはぐくんできた、
今この瞬間だって素敵で気楽に
愛しあえないわけはないじゃないか。
ぼくらは翼を広げて
飛び立つ時を迎えている。
新しい日々が
ただ過ぎてゆくのを
むだに眺めていることはない。
いとしいひと。
また最初から
始め直すんだよ。
あらたなる
再出発ってやつだ。


Why don't we take off alone,
Take a trip somewhere far, far away,
We'll be together all alone again,
Like we used to in the early days,
Well, well, darling,

ふたりきりで
飛び立とうよ。
どこか遠くへ
遠いところへ旅をしよう。
ぼくらはまた
ふたりきりだ。
いちばんはじめの頃に
そうだったように。
ほら
ほら
ダーリン


It's been so long since we took the time,
No-one's to blame,
I know time flies so quickly,
But when I see you darling,
It's like we both are falling in love again,
It'll be just like starting over - starting over,

一緒に過ごすようになってから
ずいぶんたったもんだね。
誰のせいでもない。
時間が飛ぶように流れるもんだってことは
ぼくも知ってる。
でもダーリンきみの姿を見ると
ぼくらはまたイチから
恋に落ちるようなそんな感じがする。
また最初から始まる。
そんな感じだ。
あらたなる
再出発ってやつだ。


Our life together is so precious together,
We have grown - we have grown,
Although our love is still special,
Let's take a chance and fly away somewhere alone.

ぼくらの人生は
きみにとってもぼくにとっても
かけがえがない。
ぼくにとってもきみにとっても。
ぼくらはおとなになった。
おとなになったもんだね。
ぼくらの愛が今でも
特別なものであることに
変わりはないけれど
改めてなりゆきまかせで
飛んで行くのもいいんじゃないか。
どこか遠くへ
ふたりきりで。

=翻訳をめぐって=

Let's take our chance

take one's chanceで「いちかばちか賭けてみる、出たとこ勝負で行く、当たってみる、運に任せてやってみる、運試しにやってみる、リスクはあるがやってみる、成り行きに任せる、チャンスをつかむ」等々の意味になるのだとのこと。「当たって砕けろ」と言いたい時は「Take your chance」と言えばいいのだと、今回は辞書に教えてもらいました。

fly away somewhere alone

alone」という言葉が最後についていることから、私はこの歌を「それぞれ一人になって再出発しよう」という歌だと思っていたのだが、主語がWeの場合、aloneという言葉は「我々だけで/二人きりで」という意味に「変わる」らしい。(英語話者の人たちにとっては、aloneというのは「もともとそういう言葉」で、何も「変わって」いないわけなのだけど)。

未訳の有名な曲でボズ・スキャッグスの「We're all alone」という歌があり、こちらも「みんなひとりぼっち」という意味だと私は思っていたのだが、(ちなみに「みんなひとりぼっち/海の底にいるみたい」というのは中島みゆきの「孤独の肖像」という歌の一節なのだが)、これに関しても「ぼくらはふたりきり」と訳すのが正しいのだという話を以前に聞いた。「ひとりぼっち」と「ふたりきり」では正反対と言ってもいいくらいのことだと思うので、ここの「誤訳」は日本語話者にとっては、致命的なことだと思う。

ところが最近になって「We're all alone」について改めて調べ直してみると、英語圏でもこの歌は「解釈が分かれている」らしいのである。日本の歌詞サイトには、「みんなひとりぼっち」という意味なら「We all are alone」になるはずだ、と文法的な説明をしてくれているところもあり、てっきり私も「二人きり」が「正しい」のだと思っていたのだが、当の英語話者の間で「解釈が分かれている」というのは、どういうことなのだろう。ことによると日本語話者の感覚では「正反対」に思える「ひとりぼっち」と「ふたりきり」は、英語話者の感覚だと「それほど変わらない」ことになっているようなところが、あるのかもしれない。

この「alone問題」については、いずれ回を改めて徹底的に考察しなければならないと思っているが、とりあえずこのジョンレノンの遺作となった曲に関しては、「ふたりきり」という以外の意味で受け取っている人は、ネットで見る限り、英語話者の中にもほとんどいないようである。だからここでは「ふたりきり」で訳した。

It's been so long since we took the time

「take the time」という熟語を見出しに掲げている英和辞典は見つからなかったのだが、「時を過ごす」という意味で使われている言葉らしい。ただし「take=取る/着手する」という言葉が使われていることから考えて、ここは「一緒に時を過ごしはじめた時から」so longになったと訳すのが正しいのではないかと思う。ここにこだわるのは、「ぼくらが一緒に過ごした時間はずいぶん昔になった」という翻訳を別の場所で見たことがあり、それは誤訳なのではないかと感じたことによっている。

Everyday we used to make it love

make it loveを直訳すると「それを愛にする」。きわめて英語的な表現で、ピンと来にくいが、太陽とシスコムーンという人たちの歌に昔「ガタメキラ」というのがあり、これは「gotta make it love」で「愛を育てなければ」という意味だったのだと、今になって調べみたら、書いてあった。「今はまだ何ものでもないそれ=it」を、二人の力で「愛にする=愛を育てる」というニュアンスなのだと思う。それを「毎日やってきたものだ」と、言うてはるのである。ジョンとヨーコさんは。

It's time to spread our wings and fly,
Don't let another day go by my love

Wikipediaの記事によれば、この部分の歌詞には「Wings」「another day」「my love」と、「ポール・マッカートニー関連の言葉」が3つも使われている。ただし海外サイトの説明では、生前のジョンは「ポールとの関連を否定していた」という。「ポールとの関連を否定していた」。何か、他でもいろんなところで見たことのあるような気がする言葉である。

starting over

  • やり直し
  • 再出発
  • 新たなる旅立ち

…という意味なのだとのこと。正直に言うとね。初めて聞いた時の私はこのタイトルを「はじめすぎ」という意味なのだと思っておりました。そんな人間がやっている翻訳ブログです。


SION 12月

悪い予感のカケラもない曲。
でも、ジョン・レノンはわざとそんな風に作ったのではないかという気が、ちょっとだけしている。
ではまたいずれ。

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