華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

King Horse もしくは うまなみなのね (1980. Elvis Costello & The Attractions)


King Horse

King Horse

英語原詞はこちら


Cheap cut satin and bad perfume
Showtime is almost here
Teased up by a strip cartoon
Laughing up your sleeve
Sniggering in your beer
He'd seen the bottom of a lot of glasses
But he'd never seen love so near
He'd seen love get so expensive
But he'd never seen love so dear

安っぽくカットされたサテンの衣装に
ひどい匂いの香水。
ショータイムが始まろうとしている。
あんたの袖の上で声をあげて笑い
あんたのビールの中で忍び笑いしている
マンガ雑誌になぶりものにされて。
いくつものグラスの底を
彼氏はのぞき込んできたけれど
愛がこんなに目の前にあるのを
今までに見たことはなかった。
愛はどんどん高価なものになると
彼氏は感じてはいたけれど
愛をそんなにも
大切なものだと感じたことは
彼氏には一度もなかった。


Now I know that you're all King Horse
Between tenderness and brute force
Now I know that you're all King Horse
Between tenderness and brute force

私にはわかる。
いまやあんたは完全に種馬の王者だ。
やさしさと凶暴な腕力と
そのあいだに立っている
種馬の王者だ。


She can turn upon a sixpence in the mouth and trousers set
Hit the till, ring the bell, never spill a sip
And still she knows the kind of tip that she is gonna get
A lot of loose exchanges, precious little respect
When it's someone else's weekend
That's the best you can expect

一連の口先だけの言葉から彼女は本物の6ペンス硬貨を見つけ出してみせる。
レジを叩け。ベルを鳴らせ。
ひと口分もこぼしちゃいけない。
そして自分が手に入れようとしている
その種の情報が
誰かの週末には
だらだらといろんな人の口にのぼり
ちょっとした貴重な尊敬を
かちえる材料になることを
彼女は今でも心得ている。
一番マシでも
そんなところだろうね。


Now I know that you're all King Horse
Between tenderness and brute force
Now I know that you're all King Horse
Between tenderness and brute force

私にはわかる。
いまやあんたは完全に種馬の王者だ。
やさしさと凶暴な腕力と
そのあいだに立っている
種馬の王者だ。


So fond of the fabric
So fond of fabrication
From comic books to tragic
Through the heart of complications

ファブリック(織物)が大好きで
ファブリケーション(でっちあげ/うそ)も大好きだ。
コミック雑誌から悲劇まで
ややこしいことだらけの
心をくぐり抜けて。


Meanwhile back in some secluded spot
He says, "Will you please?" and she says, "Stop"
If I ever lose this good thing that I've got
I never want to hear the song you dedicated tonight
'Cause you see I knew that song so long before we met
That it means much more than it might

一方とある隔離された場所で
彼氏が「あのう」と声をかけると
彼女は「ストップ!」と叫ぶ。
もし私が
せっかく手にしたこの素敵なものを
失うようなことになったとしたら
あんたがこの夜に捧げる歌なんて
絶対聞きたいとは思わない。
だってわかるかな。
私はその歌を私たちが
出会うずっと前から知っていた。
あんたが思うよりずっと大きな意味が
私にとっては含まれている。


Now I know that you're all King Horse
Between tenderness and brute force
Now I know that you're all King Horse
Between tenderness and brute force

私にはわかる。
いまやあんたは完全に種馬の王者だ。
やさしさと凶暴な腕力と
そのあいだに立っている
種馬の王者だ。

=翻訳をめぐって=

全っ然、わからない曲である。

まず、使われている人称が複雑に入り乱れていて、わけがわからない。その上でよく読んでみると、歌詞中では「I」=「she」で、「you」=「he」という対応関係が成立しているようである。「I」で始まる部分はエルビスコステロの言葉というわけではなく、歌詞中の女性キャラクターの目を通して語られている言葉であるらしい。感じがする。

どういうことかというと

私はドアを開けた。
彼女は彼氏が死んでいるのを見つけた。
あなたは冷たくなって横たわっていた。

という文章を読まされて、その上で文中の「私」が「彼女」であり「彼」が「あなた」であることは想像力で補って理解しろと言われているような、そういう乱暴な書かれ方をしている歌詞なのである。どうしてそんなことをするのか、さっぱりわからない。演劇的あるいは絵画的な効果が意識されているのかもしれない。

さらに言うなら「I」「she」「you」「he」という4人の登場人物が出てくる歌詞なのだという読み方も、できないわけではない。でもそう考えると、ただでさえわからない歌詞の内容が、いっそう分からなくなってくる。

「king horse」という曲名およびキーワードについては、キザで威張った男に対する何か効果的な悪口を考えて、それを歌詞にできないものかとコステロが飛行機の中であれこれ思案してていたところ、CAの人をからかっている悪ガキの姿が目に入り、それで思いついた言葉なのだというエピソードが、公式サイトに書かれていた。

それがこの歌詞とどう結びつくというのか。

辛うじてそこから分かるのは、「king horse」というのは「男性を揶揄する表現」らしいということだけである。だから「you're all king horse」のyouは、男性でなければならないことになる。私は20年間、コステロが自分の彼女に向けたような言葉として聞いてきたから、それが違っていたということが分かっただけでも、調べた甲斐はあったのかもしれない。

でも、内容は本当にわからない。風景も、全然浮かんでこない。

イギリスでは「all mouth and trousers」で「口先だけの」「薄っぺらい」という意味の熟語になるのだということも、調べてみて分かったが、そんなことが分かったところで、焼け石に水でしかない。

とにかくこの歌詞の翻訳は「一応トライしてみました」という以上のものにはなっていないと思う。内容の正しさについては全く保証できない。誰か分かる人がいたら教えてください。海外サイトでもこの歌の解釈をめぐる情報はほとんど皆無でした。

そして一番わからないのは、コステロとアトラクションズはどうしてこんなわけのわからない曲をあんなに情熱的にアグレッシブに演奏できるのかということである。

本当に、その頭ん中、のぞいてみたいと思う。

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