華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

She Loves You もしくは ひゅーひゅーひゅー (1963. The Beatles)


She Loves You

She Loves You

英語原詞はこちら


She loves you, yeah, yeah, yeah
She loves you, yeah, yeah, yeah
She loves you, yeah, yeah, yeah, yeah

あの子じぶんのこと好きやねんて。
ひゅーひゅーひゅー。
あの子じぶんのこと好きやねんて。
ひゅーひゅーひゅー。
あの子じぶんのこと好きやねんて。
ひゅーひゅーひゅーひゅー。


You think you lost your love
Well, I saw her yesterday
It's you she's thinking of
And she told me what to say

じぶん、ふられた思てんねやろ。
おれ昨日あの子に会うてんやんか。
あの子が思てる相手は
じぶんやちゅーてたで。
ほんでじぶんに
ゆーてほしいちゅわれてんわあ。


She says she loves you
And you know that can't be bad
Yes, she loves you
And you know you should be glad

あの子じぶんのこと好きやっちゅーてたで?
どないよ。
悪い気せえへんのんちゃんう?
そそそ。
じぶんのこと好きやっちゅーてたで?
どないよ。
うれしーんとちゃんう?ん?


She said you hurt her so
She almost lost her mind
But now she says she knows
You're not the hurting kind

あの子むっちゃ傷ついた言うてたで。
キレるとこやったちゅーてたで。
せやけど今はもうわかったあんねんて。
じぶんはそんなエグいやっちゃ
ないはずやって。


She says she loves you
And you know that can't be bad
Yes, she loves you
And you know you should be glad, ooh

あの子じぶんのこと好きやっちゅーてたで?
どないよ。
悪い気せえへんのんちゃんう?
そそそ。
じぶんのこと好きやっちゅーてたで?
どないよ。
うれしーんとちゃんう?ん?


She loves you, yeah, yeah, yeah
She loves you, yeah, yeah, yeah
And with a love like that
You know you should be glad

あの子じぶんのこと好きやねんて。
ひゅーひゅーひゅー。
あの子じぶんのこと好きやねんて。
ひゅーひゅーひゅー。
そない好きやちゅーてもらえてなー。
じぶん絶対うれしーよなー。


You know it's up to you
I think it's only fair
Pride can hurt you too
Apologize to her

あとはじぶんしだいや思うで。
それがスジちゅーもんやで。
プライドが高いのって、どーなん?
じぶんかて傷つくだけやで。
あの子に謝ったりーさ。


Because she loves you
And you know that can't be bad
Yes, she loves you
And you know you should be glad, ooh

あの子はじぶんのこと
好きやっちゅーてんねんで。
どないよ。
悪い気せえへんのんちゃんう?
そそそ。
じぶんのこと好きやっちゅーてんねんで?
どないよ。
うれしーんとちゃんう?ん?


She loves you, yeah, yeah, yeah
She loves you, yeah, yeah, yeah
With a love like that
You know you should be glad

あの子じぶんのこと好きやねんて。
ひゅーひゅーひゅー。
あの子じぶんのこと好きやねんて。
ひゅーひゅーひゅー。
そない好きやちゅーてもらえてなー。
じぶん絶対うれしーよなー。


With a love like that
You know you should be glad
With a love like that
You know you should be glad
Yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah

そない好きやちゅーてもらえてなー。
じぶん絶対うれしーよなー。
ひゅーひゅーひゅー。
ひゅーひゅーひゅーひゅー。



…まちがえてしまいました。下の写真が正しいこの曲のレコードジャケットです。それにつけても、ださださっ!

=翻訳をめぐって=

前々回から唐突に始まったこの翻訳スタイル、やめられない止まらないことになってしまってきている。何なのだろう。こういう「友だちからの忠告」スタイルの楽曲って、関西弁と相性がいいのだろうか。この際、初期ビートルズの楽曲は全部関西弁もしくは七五調で翻訳することに決めてしまおうかしらという気持ちになりつつある。このブログでしか誰も取りあげないようなアーティストの楽曲ならともかく、ビートルズの翻訳なら他所でもやっている人がゴマンといるわけなのだ。「ちゃんとしたやつ」が読みたい人は、そちらへ行ってもらえればよろしい。ただし、一応言っとくのだけど、私は私なりに「ちゃんと」翻訳しようとした結果としてこういうことになってしまっているのであって、決してふざけているわけではないのだよ。半世紀前にビートルズというグループが世に登場した時、何が新しかったと言って、フツーの若者がフツーの話し言葉で歌うというスタイルを正面からぶつけて行ったからこそ、世界中の若者たちはかれらの姿に等身大の「自分自身」を見出し、夢中になることができたわけなのだ。そう聞いている。そしてその頃には生まれていなかった私みたいな人間が聞いても、それはやっぱりそう思う。そう思うということはつまり、私が聞いてもやっぱりかれらの歌詞は「フツーの話し言葉」てあるように感じられるということである。そして私という人間にとっての「フツーの話し言葉」は、「こういう言葉」以外には存在しない。だからこうなりこうなった。言い訳がましいことを長々と書いてしまったけれど、今回もこのかん同様、「関西弁への翻訳」に重点を置いた考察スタイルで、行かせて頂きます。

  • あの子じぶんのこと好きやねんて…「彼女じぶんのこと好きやねんて」とはまあ言わないから「She loves you」の「she」はとりあえず「あの子」で訳してみたわけだが、実際には「あの子」もまず、言わないだろうな。「桐島じぶんのこと好きやねんて」みたいに名前で言うのが、関西にとどまらず日本語世界における「フツー」のあり方だろうな。これには理由があって、日本語の場合、名前でなく代名詞で彼女(たとえば桐島さん)のことを表現しようとすると、どういう代名詞を選ぶかによって「自分が桐島さんのことをどう思っているか」ということまでが相手に「バレて」しまうからである。「あいつ」と言うか「あの子」と言うか「あの人」と言うかといったことのひとつひとつに、話し手が相手に対して抱いている感情は好意なのか反発なのか、感じている距離感は近いのか遠いのかといったようなことが、日本語では全部「表現されて」しまうことになる。英語の「she」はそういう相手への「評価」を全く含まないニュートラルな言葉だけど、日本語でそのニュートラルさを実現しようと思ったら結局名前で呼ぶのが一番「無難」であるということで、みんな「だれだれ(さん)」という言い方を選択するという傾向が、言語構造そのものの中に横たわっているわけなのである。とはいえこの歌は英語の歌で、使われている言葉は「she」だけであり、その人の名前を窺い知ることのできる材料は我々に与えられていない。「あいつ」や「あの人」にしたら「違う歌」になってしまう感じが私はするから、完全に納得しているわけではないのだけれど、ここでは「あの子」を使っている。…一行目からえらいことになってしまった。
  • ひゅーひゅーひゅー…東京の男の子は「ヒューヒュー」と言う時に声を裏返すけど、関西の男は野太い地声のまま相手を見下すように「ひゅーひゅー」と言う傾向がある。これは私がずいぶん昔に発見した、興味深い違いである。東京の「ヒューヒュー」はあくまで「冷やかし」だが、関西の「ひゅーひゅー」は場合によっては「恫喝」にもなりうるぐらい、戦闘的な「ひゅーひゅー」なのだ。具体的には、全然関西人じゃないけれど、「タッチ」に出てきたボクシング部の原田くんみたいな人を想像して頂きたい。ああいうガタイをしたああいう人が、面白くも何ともなさそうな顔をしたまま、しかししっかりとした腹式呼吸で、相手の虚勢にまっすぐ斬り込むがごとくに「ひゅーひゅー」と言う。そういう「ひゅーひゅー」ばかりだというわけでもないけれど、そういう「ひゅーひゅー」もありうるのが関西という空間なのである。この歌に出てくる「ひゅーひゅー」は、そういう「ひゅーひゅー」だと思って聞いて頂けたら間違いない。などと言うと私は何様だビートルズかという話になってしまうので、とりあえずこの訳詞における「ひゅーひゅー」はそういう「ひゅーひゅー」なのだと思って頂きたい。…それにつけても「ひゅーひゅー」という「言葉」自体、今の若い人は、使うのだろうか。ことによると華原朋美の桃の天然水のCMを覚えているぐらいの世代に限定された、極めて局地的にしか通用しない「コミュニケーションの形」であるのかもしれない。だとするとここまで私が書いてきたことは、大半の人には意味不明のことにしか、ならないのだろうな。

  • おれ昨日あの子に会うてんやんか…発音は「おーてんやんか」。なお、原文は「I saw her」なので、二人は約束して会ったわけではなく、偶然バッタリ会ったというのが歌の風景である。
  • It's you she's thinking of…直訳は「それは君だ。彼女が考えているのは」。倒置法が使われている。こういうブログである以上、フツーに英語の話も、しておく。
  • she told me what to say…直訳は「彼女は私に、私が言うべきことを伝えた」。桐島さんは原田くんに伝言を託したのである。それを関西的に意訳すると↓
  • じぶんにゆーてほしいちゅわれてんわあ…「ちゅわれてんわあ」は「て·言われてん·わあ」の短縮形。最後の「わ」を中国語の四声、あるいは「あしたのジョー」の「ジョー」の発音のごとく高いところから急速に落として「わあ」と言うのがポイントである。「わ」で止めたら相手の心には、入れない。「わあ」まで言うことでズズッと相手のフトコロに入り込むのである。この時まばたきをしてはならない。あくまで「原田くんの顔」で相手の目をまっすぐ見据えて言うのが望ましい。しかし一体何の話をしてるのだろう私は。
  • you know that can't be bad…この「you know」は、「なあ」とか「どうだい」といった感じの間投詞的なフレーズ。初期ビートルズの歌詞にはこの「you know」が本当にしょっちゅう出てくる。
  • 悪い気せえへんのんちゃんう?…「ちゃんう?」に関しては前回の記事で詳述。
  • わかったあんねんて…「わかっているんだってよ」に相当。
  • hurting kind…「人を傷つけるタイプ」みたいな意味で間違いないと思う。学校で最初に「kind」という言葉を習った時には「親切な」という意味で習ったもので、昔の私にはこのフレーズが意味不明だった。
  • You know it's up to you…この連の歌詞は直訳するとえらく固い表現になる。「いいか。それは君にかかっている。それが唯一のフェアなやり方というものだ。プライドは君のことをも傷つけることがありうる。彼女に謝りたまえ」…英国紳士かよお前は、と言いたくなるが、英国紳士なのか。かれらは。
  • じぶん絶対うれしーよなー…最後まで、目は笑わない感じで言うのが望ましい。あと、ゆっくり言った方が効果的である。

…感想?はい。私自身、この歌がこんな歌だったなんて今まで全然知りませんでした。ではまたいずれ。



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=楽曲データ=
Released 23 August 1963 (UK)
Recorded 1 July 1963
John Lennon: vocals, rhythm guitar
Paul McCartney: vocals, bass
George Harrison: lead guitar, vocals
Ringo Starr: drums
Key: G

She Loves You

She Loves You

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