華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Love Me Do もしくは私を愛しなさいしなさい (1962. The Beatles)


Love Me Do

Love Me Do

英語原詞はこちら


Love, love me do
You know I love you
I'll always be true
So please, love me do
Whoa, love me do

愛してくださいお願いです。
聞いてください好きなんです。
わたしはいつでも誠実です。
だからお願い愛してください。
愛してください頼みます。


Love, love me do
You know I love you
I'll always be true
So please, love me do
Whoa, love me do

愛してくださいお願いです。
聞いてください好きなんです。
わたしはいつでも誠実です。
だからお願い愛してください。
愛してください頼みます。


Someone to love
Somebody new
Someone to love
Someone like you

愛する誰かがほしいんです。
新しい人がほしいんです。
愛する誰かがほしいんです。
あなたみたいな人なんです。


Love, love me do
You know I love you
I'll always be true
So please, love me do
Whoa, love me do

愛してくださいお願いです。
聞いてください好きなんです。
わたしはいつでも誠実です。
だからお願い愛してください。
愛してください頼みます。


Love, love me do
You know I love you
I'll always be true
So please, love me do
Whoa, love me do
Yeah, love me do
Whoa, oh, love me do

愛してくださいお願いです。
聞いてください好きなんです。
わたしはいつでも誠実です。
だからお願い愛してください。
愛してください頼みます。
愛してくださいくれぐれも。

=翻訳をめぐって=

301曲目の「ムーンストラック」以来、ビートルズの楽曲を「聞こえるままに」関西弁で翻訳する実験的な試みを続けてきたわけだけど、「逆立ちしたって関西弁には翻訳できない曲」というのも、やっぱりある。シンプルと言うにはあまりにシンプルなビートルズのデビュー曲、「Love Me Do」の歌詞を読み返してみて、改めてそう思った。そりゃ、無理やり関西弁にしようと思えば、何だってできるのだけどね。でもこの曲の場合、「自然な関西弁」の訳詞には、絶対ならない。そしてわざわざ「ありえない関西弁」を使って他人の曲を翻訳するようなことには、それこそ何の意味もない。

以前に「Let it be」を翻訳した時なんかにも折に触れて書いてきたことだけど、中学生ぐらいの頃の私が「単語の意味は全部わかるのにフレーズの意味が全然わからない」と感じていた英語の楽曲の多くには、今にして思えば共通した特徴があった。そういう曲には、ほとんどのケースで「日本語の感覚からするとありえないような命令形の言葉」が使われていたのである。

「Love Me Do」というこの曲のタイトルも、命令形の構文である。「Love me」は「私を愛しなさい」という意味。そして「do」は「する」という意味の動詞がこれまた命令形になったもので、つまり「しなさい」ということ。この2回目の「しなさい」は、「愛しなさい」という「最初の命令」の後に続けて言われることで、その命令を強調する役割を果たしている。(ただしこの「do」は、文法的には厳密には「動詞」ではなく「助動詞」と見なされているらしい。私はネイティブではないので、英語話者の人たちがこの「do」にどういう気持ちや感情を込めて口にしているのかということは、完全に想像でしか分からない。こちらのリンクにはその「do」のニュアンスがかなり詳しく書かれていて、参考にさせて頂きました)。いずれにしてもそうするとつまり、「Love Me Do」の直訳は、「私を愛しなさいしなさい」ということになるわけなのだ。

前半部分の「愛しなさい」だけでもいい。こんな言葉を日常生活の中で日本語話者が実際に口にすることって、ありうるだろうか。絶対に、ありえないと思う。

百歩譲って「愛してください」という風に幾分言い方を工夫してみたとしても、やはりこれはハードルの高い言葉である。日本の歌謡曲に使われているいろいろなフレーズを考えあわせてみても、出てくる言葉は「愛してほしい」かせいぜい「愛ください」止まりであって、「愛してください」という言い方はまず出てこない。歌謡曲の歌詞に「愛してください」が出てこないのは、「それでは歌にならない」ということが、日本語話者の感覚からすれば自明のことだからだと言えるだろう。つまり日本語というのは、そういうストレートな言い方で愛を求めるには「不向き」な形で成立している言語なのだ。このことについても、以前に触れたことがある。

そういう風に「日本語世界の感覚では日常生活の中で語られることがおよそありえないような言葉」で書かれた歌を、むりやり日常的な日本語に置き換えようとすると、絶対「不自然」なことになると私は思う。まして関西弁の日常会話の言葉になど、置き換えられるわけがない。それをあえて翻訳しようとするからには、それこそ「非日常的な言葉」、たとえば文語定型詩みたいな形で翻訳するといったような「工夫」が、必要になってくると思う。

今回の試訳の文体は、そうした問題意識にもとづいて採用したものであり、決してふざけているわけではないのです。

「関西弁の日常会話に置き換えられない歌」にぶち当たってしまったということをもって、ここまで数回にわたってお送りしてきた「関西弁で鑑賞するビートルズ特集」は、ひとまず締めくくらせてもらうことにしたいと思います。また形を変えて再開することは、あるかもしれません。

今回の特集を通じ、より深く関西方言について知ってみたいという気持ちになって下さった皆さんのために、関西弁学習者のための朗読資料も、今回新しく公開しておきました。「尋羊冒險記」に引き続く試みです。興味のある方はぜひそちらも、聞いて行って頂けたらと思います。

ではまたいずれ。



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=楽曲データ=
Released 5 October 1962 (UK)
Recorded 6 June 1962 (Pete Best version), 4 September 1962 (Ringo Starr version), 11 September 1962 (Andy White version)
EMI Studios, London
Paul McCartney: vocals, bass
John Lennon: vocals, harmonica, acoustic rhythm guitar
George Harrison: acoustic rhythm guitar
Ringo Starr: drums, tambourine
Pete Best: drums
Andy White: drums
Key: C

Love Me Do

Love Me Do

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  • ロック
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