華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Caldonia もしくは てじなーにゃ (1945. Louis Jordan)


Caldonia (Louis Jordan)

Caldonia

英語原詞はこちら


Walkin' with my baby she's got great big feet
She's long, lean, and lanky and ain't had nothing to eat
She's my baby and I love her just the same
Crazy 'bout that woman 'cause Caldonia is her name

彼女と一緒に歩いてる。
そいつの足はすごくでかい。
ひょろ長くてやせててガリガリで
何も食べやしない。
そいつがおれの彼女で
おれもそいつが大好きさ。
あの女に夢中なんだ。
何てったってそいつの名前は
カレドニアって言うんだぜ。


Caldonia, Caldonia
What makes your big head so hard?
I love her, I love her just the same
Crazy 'bout that woman 'cause Caldonia is her name

カレドニア!カレドニア!
おまえのでっかい頭は
何だってそうカタいんだ?
おれも彼女が大好きさ。
あの女に夢中なんだ。
何てったってそいつの名前は
カレドニアって言うんだぜ。


You know what mama told me? Mama said
"Son keep away from that woman, she's gonna take all your money"
Hey, hey, hey boy, don't laugh about my mama, you hear that?
Hey man I told you man, you don't know what you doin' boy
Don't laugh about my mama

おれのおふくろがおまえ
おれに何て言ったと思う?
「あの女に近づくんじゃないよ。
あいつはおまえを一文無しにするよ」
って言うんだ。
おいおいおいおれのおふくろのことを
笑うんじゃねえよボーイ。
言っとくけどなおまえ。
自分が今やってることが
どういうことなのか
わかってないだろおまえ。
おれのおふくろのことを笑うな。


Caldonia, Caldonia
What makes your big head so hard?
I love her, I love her just the same
Crazy 'bout that woman 'cause Caldonia is her name

カレドニア!カレドニア!
おまえのでっかい頭は
何だってそうカタいんだ?
おれも彼女が大好きさ。
あの女に夢中なんだ。
何てったってそいつの名前は
カレドニアって言うんだぜ。


「crazy」という言葉は「精神病者」に対する差別語です。ここでは原文をそのまま転載しました。



1940年代に流行したという「ジャンプ·ブルース」と呼ばれるスタイルの、超有名曲。最初に歌ったのはブルースブラザーズ特集の時に何回か名前が出てきたルイ·ジョーダンという人らしいのだけど、その後、本当に数えきれないくらいのミュージシャンにカバーされている。前回とりあげたザ·バンドの「カレドニア·ミッション」という曲のタイトルが何を意味しているかは結局よく分からずじまいだったわけだが、ことによるとザ·バンドの面々がこの曲を好きで仕方ないものだから、それだけの理由で名前を借りたとかいうのが、案外いちばん真相に近かったりするのかもしれない。ラストワルツの映画やLPには収録されていないのだけど、あのコンサートにマディ·ウォーターズがゲストで登場した時、最初にザ·バンドと共演したのが、正にこの曲だったのだ。


Caldonia (Lastwaltz)

この歌における「カレドニア」は、女性の名前である。「ミュージック·フロム·ビッグ·ピンク」で「カレドニア·ミッション」の次に収録されているA面最後の曲が、以前にとりあげたザ·バンドの最有名曲「ザ·ウェイト」なのだが、あの歌に出てくる「ミス·ファニー」という女性について、リヴォン·ヘルムは自伝の中で「カレドニアみたいな女だったかもしれない」という感想を述べている。「カレドニアみたいな女」と言っても、この歌の中で与えられているカレドニアさんに関する情報は ①足が大きい ②やせている ③少食である ④頭がカタい(←英語でも「頑固である」という意味)といったぐらいなもので、それだけではどんな人なのか全然わからない。何か「カレドニア」という響きにくっついた特別なイメージみたいなものが、英語圏の人たちにはあるのだろうか。


Caldonia (The Band 1983)

BabyNamesPedia」というアメリカの赤ちゃん命名辞典みたいなサイトによれば、「カレドニア」は「スコットランド出身」という意味を持つ名前なのだという。とはいえこの歌に出てくるカレドニアさんは明らかにアフリカ系なので、おそらくはどこにルーツを持つ人であろうと関係なく、「響きだけで」使われている名前なのだと思う。前回も触れたように「カレドニア」はスコットランドのことを指す古地名で、現代では「詩的かつロマンティックなイメージ」をたたえた言葉として使われることが多いらしい。ただし「カレドニア」それ自体はスコットランドを侵略した側のローマ人たちによるその地域の呼び名なので、スコットランドの人たちの「自称」ではない。あと、この歌のタイトルの綴りは「Caledonia」ではなく「Caldonia」だけど、人名として使われる場合にはどちらの綴りも使われるとのことで、意味的な違いはないようである。YouTubeにも「Caledonia」という見出しでこの曲が紹介されている動画が、けっこうある。




Caldonia (B.B.King)

私自身、音楽をやっていた頃は、演奏していてとても楽しい曲だったという思い出もあり、いろんな人たちがカバーしているこの歌の動画は、見ていて全然飽きない。(歌詞に「crazy」という差別語が入っているから、今ではもう自分で歌うことはないのだが)。YouTubeにはB.B.キングが台湾のテレビでこの歌を歌った時の動画まで上がっているのだけれど、「B.B.キング」の音訳が「比比金」であるというのが何だかとても面白い。見ていて「ほお!」と思ったのは、「Baby」という言葉に「宝貝(バオベイ)」という訳語が宛てられていたことだった。「宝貝」は「大切なもの/人」のことを指す言葉として、今まで翻訳してきた中国語の歌の中にも結構よく使われている単語なのだが、「貝」が「宝物」にされていたような時代は大昔のことなので、私はこれをとても古い言葉なのだと思っていたのである。だが、ことによると「バオベイ」の由来は英語の「Baby」だったのかもしれない。偶然だったとしたならば、とてもうらやましい偶然ではある。日本語世界に「Baby」代わりに使えるような言葉は、ないからね。


Caldonia (Muddy Waters)

ところで、私は今回ルイ·ジョーダンさんのオリジナル演奏を初めて見たのだが、「へえ!」と思ったのは「カレドニア」を「カレドーニャ」と発音していたことである。「かーれドニアっ!」と、ひとつの音符の中に3つの音をたくし込むのが私の習い覚えてきたこの歌の歌い方であり、人によっては「カレ」を省略して「ドニア!」としか歌わないこともある。だがもともとは「カレドーニャ」であり、その最後の「ニャ!」に全ての力を込めるというのがこの歌の本来の姿であったのだ。何だか、山上兄弟のことを思い出してしまった。


マギー審司&山上兄弟

ここまで、動画リンクをスルーして文字だけを読んできた皆さんにおかれましても、下に紹介する最後の動画だけは、見て帰って頂きたいものだと思う。この人は1938年に生まれ、シュガー·チャイル·ロビンソンという名前で一斉を風靡した天才少年だったのだけど、驚くなかれ2018年現在においても、いまだに現役らしい。世界は広いもので、私はこの曲について調べてみることがなければ、こんなスゴい人がいたことを全然知らずに終わるところだった。声変わりしてオトナになった山上兄弟の皆さんにおかれましても、願わくは末長く頑張って頂きたいものだと思う。


Caldonia (Sugar Chile Robinson)

上の動画を最後の動画だと言った端から何なのだが、山上兄弟という名前に触れると白木みのるという人のことまで思い出してしまい、そこからまたいろんな動画をめぐり歩いて、止まらないことになってしまった。この方もまた、21世紀に入ってなお、ご健在であるそうです。わめこびげそはぁ!ではまたいずれ。


銭$ソング 白木みのる

Caldonia

Caldonia