華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

An Phailistín もしくはアイルランドからパレスチナへ (2003. Sharon Shannon feat. Róisín Elsafty)


An Phailistín

An Phailistín


ゲール語原詞はこちら


れひぁー ぶりぁーん ふぃ りあーる イスラエリ
Leathchéad bliain faoi riail Iosraelaigh,
すかぺ す ふぁーん な な みりゅん せーり
Scaipeadh 's fann ar na milliúin teaghlaigh,
ぶろーねす ぶりちゃー くりー
Brón 's briseadh croí,
も ぶろーん も ファリスティーン
Mo bhrón mo Phailistín.
50年にわたるイスラエルの支配
ばらばらにされた100万の家族
悲しく傷ついた心
私の悲しみよ 私のパレスチナよ


パーリスティーン あ ファリスティーン も ファリスティーン
An Phailistín, an Phailistín, mo Phailistín,
ほずに あらいくむ や ファラスティーン
Hosni alaikum ya Falastin,
ほずに あらいき や ファラスティーン
Hosni alaiki ya Falastin.
パレスチナよ パレスチナよ
私のパレスチナよ
ほずに あらいくむ や ファラスティーン
ほずに あらいき や ファラスティーン


らぁ あぐ しぃひぇーえ まぁら ひぇら
Lá agus oíche mar a cheile,
ゔろーく ひんふーず ぽぉしゅて すくらあり
Mná ag caoineadh 's paistí ag scréachaíl,
しよ のん ねふシクスティーン
Síon ón F16,
まーる える がっ てぃー
Marú ar gach taobh.
昼も夜もなく
女たちは泣き子どもたちは叫ぶ
F16の降らせる雷雨が
至る所で殺戮を続けている。


ほー みお なーふぁだ インティファーダ
Dhá bhliain fhada de Intifada,
かーは くろふ ムロア フィルす ん ガザ
Caitheadh cloch sa Bhruach Thiar 's i nGaza,
しゃーすた ふぉる か のー
Seasta ar pháirc an áir,
がん ぶらーと な ぱーす ら ふぉーる
Gan brat ná pas le fáil.
2年にわたるインティファーダ(民衆蜂起)
西岸にガザに飛び交う石
逃げることも隠れることもできない
瓦礫の戦場のなかで


An Phailistín, an Phailistín, mo Phailistín,
Hosni alaikum ya Falastin,
Hosni alaiki ya Falastin.

パレスチナよ パレスチナよ
私のパレスチナよ
ほずに あらいくむ や ファラスティーン
ほずに あらいき や ファラスティーン


たーら にーふ ひゅら りゃぁな イーサ
An talamh naofa shiúil an leanbh Íosa,
ふぉーいー エイブラハムす ムイシャ
Fáithe Abrahám 's Maoise,
マハーマードー も ぶろーん
Mahamad ó mo bhrón,
しゅくりーすた えーぐ シャロン
Scriosta ag Sharon.
幼いイエスの歩いた聖なる地
預言者アブラハムの地
モーゼの地 ムハンマドの地
私の悲しみよ
シャロンの手で破壊されてしまった


ルーザラーム どると イーサ クリースト
Iarúsailéim, dúirt Íosa Críost,
な ふぁーふぃー くろ ふぁー くろふす ふぃーあ
Nach bhfágfaidh cloch ar chloch, is fíor,
たりぎゃ く てぃや ふん きーん
Tairngreacht ag teacht chun cinn,
も ぶろーん も ファリスティーン
Mo bhrón mo Phailistín.
イエス·キリストは
エルサレムで言った
「ここでは、石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してないだろう」
予言は現実になりつつある
私の悲しみよ 私のパレスチナよ


An Phailistín, an Phailistín, mo Phailistín,
Hosni alaikum ya Falastin,
Hosni alaiki ya Falastin.

パレスチナよ パレスチナよ
私のパレスチナよ
ほずに あらいくむ や ファラスティーン
ほずに あらいき や ファラスティーン




=翻訳をめぐって=

アイルランド一、と言うより世界一のボタンアコーディオン奏者であると私が信じてやまないシャロン·シャノンさんが、2004年に友人たちとのコラボレーション作品を集めて発表したアルバム「Libertango」の収録曲。ゲール語で歌われており、歌詞カードもついていなかったため、長年どういうことが歌われているのか想像することしかできずにいたのだが、2018年5月14日、トランプによるアメリカ大使館のエルサレム移転に抗議し、占領地への帰還を掲げてデモに立ちあがったガザの人々に対して実弾射撃が加えられ、60名以上が犠牲となった事態を受けて、世界中の反戦歌を集めたイタリア語のサイトにこの歌の歌詞が英訳つきで掲載され、初めてその内容を知ることができた。同サイトによるこの歌の紹介文は、以下の通り。

www.antiwarsongs.org
Sharon Shannon e Róisín Elsafty sono rispettivamente una musicista e polistrumentista ed una cantante irlandesi. In particolare Róisín Elsafty è da sempre dedita alla musica tradizionale interpretata in gaelico irlandese. Questa canzone sulla Seconda Intifada palestinese contiene anche delle parti in arabo egiziano che non ho trovate trascritte. Il patrigno di Róisín è egiziano.
シャロン·シャノンとローシーン·エルサフティは、アイルランドのミュージシャンであり、前者はマルチ楽器奏者、後者はシンガーである。とりわけローシーン·エルサフティは、アイルランドのゲール語歌詞によるトラディショナル曲を一貫して歌ってきた。パレスチナの第2次インティファーダを歌ったこの歌には、エジプトのアラビア語による歌詞も含まれており、私(紹介者)には文字起こしができなかった。ローシーンの義父はエジプト人だとのことである。

  • シャロンの手で破壊されてしまった」...アリエル·シャロンは2003年当時のイスラエル首相。1982年のイスラエルによるレバノン侵攻時の国防相であり、パレスチナの人々に対する大規模な虐殺行為に何度となく手を染めてきた人物。
  • ここでは、石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してないだろう」...新約聖書マタイ24-2からの引用。エルサレムにそびえていたヘロデ王の神殿の豪華さに目を見張る弟子たちに対し、イエスがその崩壊を予言した言葉とされる。歌い手はその故事を、シオニストの占領下で「繁栄」を謳歌している現在のエルサレムに重ねている。
  • 「Hosni alaikum ya Falastin」...正確な綴りはおそらく「حسن عليكم يا فلسطين」。アラビア語辞書サイト「アラジン」でいろいろな音の組み合わせを調べてみた結果、この文字列で「ああパレスチナよ、あなたの上に美しさを(あるいは『善を』)」的な意味になることが分かった。(「Hosni alaiki ya Falastin」も、ほぼ同じ意味)。「ヤー·ファラスティーン」は「ああパレスチナよ」という呼びかけであり、「アライクム」は「あなたの上に平和を」を意味するアラビア語の最も有名な挨拶「アッサラーム·アライクム」の一部になっている言葉なので、上の歌詞の中で本当に分からないのは、実質的には「hosni」という単語だけなのである。ただし、「حسن عليكم (Hosni alaikum)」という文字列で検索をかけてみても、まともにヒットするアラビア語のウェブサイトは見つからない。ということは、「アラブでは実際にはそんな言葉は使われていない」ということになるのだが、よく分からない。私の調べ方が悪いだけなのかもしれない。なお、上記サイトではこのアラビア語部分が「I am sad for you (あなたのことを思うと悲しい)」と英訳されていた。



=楽曲データ=
Released: 2003.
Key: A

Libertango

Libertango