華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Martha もしくは出てくれてよかったね本当によかったね (1973. Tom Waits)


Martha

Martha

英語原詞はこちら


Operator, number please, it's been so many years
Will she remember my old voice while I fight the tears
Hello, hello there, is this Martha, this is old Tom Frost
And I am calling long distance, don't worry about the cost
'Cause it's been forty years or more, now Martha please recall
Meet me out for coffee, where we'll talk about it all

交換手さん
番号お願いできますか。
何年ぶりになるんだろうな。
あいつおれの声
思い出してくれるかな。
おれが涙をこらえてるあいだに
思い出してくれるといいんだけどな。
もしもし。
マーサかい。
おれだよ。
昔なつかしのトム·フロストだよ。
長距離でかけてるんだ。
いや、カネのことは心配しなくていい。
もう、40何年もたっちゃっただろ。
だからマーサ
思い出してほしいんだ。
コーヒーでも飲みに出てきてくれないか。
全部を話し合えるようなところでさ。


And those were the days of roses, of poetry and prose
And Martha all I had was you and all you had was me
There was no tomorrows, we packed away our sorrows
And we saved them for a rainy day

バラ色の日々だったよな。
歌の文句みたいな毎日だったよな。
そしてマーサ
おれにはおまえがすべてだったし
おまえにはおれがすべてだった。
明日なんて日は
あの頃にはなかった。
おれたちは悲しみなんて全部しまい込んで
雨の日のためにとっといたもんだったよな。


And I feel so much older now, and you're much older too
How's your husband, and how's your kids, you know that I got married too
Lucky that you found someone to make you feel secure
'Cause we were all so young and foolish, now we are mature

おれ
ずいぶん老けちゃったような気がするよ。
でもおまえも
ずいぶん年をとったみたいだな。
だんなさんは元気かい。
子どもたちはどうしてるんだい。
なあ
おれも結婚したんだぜ。
安心できる誰かを見つけられたってのは
すごくラッキーなことだよな。
あの頃おれたちは
本当に若くてfoolishだったから。
今ではおれたち
おとなになったもんだよな。


And those were the days of roses, of poetry and prose
And Martha all I had was you and all you had was me
There was no tomorrows, we packed away our sorrows
And we saved them for a rainy day

バラ色の日々だったよな。
歌の文句みたいな毎日だったよな。
そしてマーサ
おれにはおまえがすべてだったし
おまえにはおれがすべてだった。
明日なんて日は
あの頃にはなかった。
おれたちは悲しみなんて全部しまい込んで
雨の日のためにとっといたもんだったよな。


And I was always so impulsive, I guess that I still am
And all that really mattered then was that I was a man
I guess that our being together was never meant to be
And Martha, Martha, I love you, can't you see

おれっていつも
感情的だっただろ。
今でもそうかもしれないんだけどさ。
あのころ本当に問題だったのはおれが
オトコだったってことなんだろうな。
一緒になろうなんてお互い
思ってもいなかったはずだと思う。
それでさマーサ
マーサ
おれ今でもおまえのこと好きなんだよ。
わかってくれるよな。


And those were the days of roses, of poetry and prose
And Martha all I had was you and all you had was me
There was no tomorrows, we packed away our sorrows
And we saved them for a rainy day

バラ色の日々だったよな。
歌の文句みたいな毎日だったよな。
そしてマーサ
おれにはおまえがすべてだったし
おまえにはおれがすべてだった。
明日なんて日は
あの頃にはなかった。
おれたちは悲しみなんて全部しまい込んで
雨の日のためにとっといたもんだったよな。


And I remember quiet evenings, trembling close to you
それでさ。
おれは覚えてるよ。
震えながらおまえのそばにいた
音のしない夜がいくつもあったことを
おれは覚えてるよ。

=翻訳をめぐって=

  • 「Martha」について書かれた記事では必ずと言っていいほど言及されていることだが、この歌を書いた時、トム·ウェイツはまだ20代前半だったらしい。
  • 交換手さん」という私を含めた今時世代の人には不可知の職業のイメージについては、リンク先の記事を参照のこと。
  • Hello, hello there, is this Martha...「Are you Martha」にならないのは「電話の時の喋り方」だからなのだな。地味に、勉強になる。
  • this is old Tom Frost...ここで「自分の名前」を使えるのが、すごいよなあ。「Frost」が誰の苗字なのかは、知らないけど。
  • poetry and prose...「poetry」は「韻を踏んだ詩」で「prose」は「散文詩」。「歌の文句のような」という訳詞の言葉は、RCサクセションの「ありふれた出来事PART2」という歌からペチらせてもらっている。
  • 「foolish」という言葉は「精神病者」に対する差別表現です。ここでは原文をそのまま転載しました。
  • all that really mattered then was that I was a man...「あの頃の私にとっては、自分が男らしくあろうとすることだけが問題だった(のがいけなかった)」という解釈の仕方もありうるかもしれない。
  • Martha, I love you, can't you see...「can't you see」は否定疑問文なので「わからないかな」と訳すのが「正しい」のだろうが、ここはどうしても「わかってくれるよな」だと思ったのだったった。


=楽曲データ=
Released: 1973.3.6.
Key: E♭

クロージング・タイム

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