華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

You Make Me Real もしくは だららった (1970. The Doors)


You Make Me Real

You Make Me Real

英語原詞はこちら


I really want you, really do
Really need ya baby, God knows I do
'Cause I'm not real enough without you
Oh, what can I do?

めちゃめちゃにおまえがほしい。
めちゃめちゃにだ。
おまえがいないとめちゃめちゃ困る。
神にしかこの気持ちは分からないだろう。
なぜっておまえがいないと
おれはおれになりきれないんだ。
ああ。
どうしたらいいだろう。


You make me real
You make me feel like lovers feel
You make me throw away mistaken misery
Make me free, love, make me free

おまえはおれを
本当のおれにしてくれる。
恋人同士が感じるような
そんな気持ちにさせてくれる。
間違った不幸な気持ちなんて
ほっぽり出してもいいんだって
気持ちにさせてくれる。
おれのことを自由にしてくれ。
自由な人間にだ。


I really want you, really do
Really need ya baby, really do
Well I'm not real enough without yo
Oh, what can I do?

めちゃめちゃにおまえがほしい。
めちゃめちゃにだ。
おまえがいないとめちゃめちゃ困る。
めちゃめちゃにだ。
おまえがいないと
おれはおれになりきれないんだ。
ああ。
どうしたらいいだろう。


You make me real
Only you have that appeal
So let me slide into your tender sunken sea
Make me free, love, make me free

おまえはおれを
本当のおれにしてくれる。
そんな気持ちにさせてくれるのは
おまえだけだ。
だからおまえの柔らかく敏感な深く沈んだ海の中におれを滑りこませてくれ。
おれのことを自由にしてくれ。
自由な人間にだ。


You make me real
You make me feel like lovers feel
You make me throw away mistaken misery
Make me free, love, make me free
Make me free
You make me real

おまえはおれを
本当のおれにしてくれる。
恋人同士が感じるような
そんな気持ちにさせてくれる。
間違った不幸な気持ちなんて
ほっぽり出してもいいんだって
気持ちにさせてくれる。
おれのことを自由にしてくれ。
自由な人間にだ。

Roadhouse Blues」と「Waiting For The Sun」という2つの歴史的名曲に引き続く、「モリソン·ホテル」の三曲目。こんな風に書いたらまるで「You make me real」は名曲じゃないみたいだけど、わたしはこの歌ぐらい「ドアーズらしい曲」は他にないって思うんだ。

まず、曲の作りが本当にシンプル。シンプルっていうのは、歌詞も音もってコト。とかくドアーズってバンドは小難しい印象で語られがちだけど、わたしはこのバンドの本当の持ち味はそのシンプルさだって思ってるんだ。この曲の場合、歌詞の内容なんてホントに「おまえがほしい」ってことしか言ってない。それなのに「mistaken misery」とか「your tender sunken sea」とか、絶対にジムモリソンにしか思いつかないような言葉遣いが的確なトコロに散りばめられてて、誰の歌だかすぐ分かる。タイトルになってる「You make me real」ってフレーズだって、誰にでも言えそうでやっぱりジムにしか書けない歌詞だと思わない?

でもやっぱり、ドアーズってバンドの何がスゴいかって言えば、マラカスとタンバリン以外の楽器以外は何も使えなかった彼のコトバを本物の「音楽」に変えてみせたコトで、それはやっぱり後ろの三人の力なんだ。何しろコトバありきのバンドだから、同じ曲の中でテンポは変わるし一定のリフなんて刻めないし、下手したら他の三人は「効果音担当」みたいにしか見なされていないようなフシが、世の中にはある。でもそれっていうのは三人の音楽的な土台がしっかりしてるからこそ可能になってたんだって、わたしは思うわけ。

その「音楽的な土台」の部分を一番ゾクゾクするような感じで見せつけてくれるのが、この曲のイントロだと思ってるの。

まず、レイ·マンザレイクの音の選び方が、完ペキだよね。彼の一番有名なフレーズは「ハートに火をつけて」のイントロだと思うんだけど、あれだけ聞いてると夏祭りの夜店の情景が浮かんでくるようなひゃらひやらした感じがこの人の音なんだって思うじゃない。でもこの曲では打って変わって硬質な、アコースティックのピアノからあらゆる湿気を取り除いたみたいな音で攻めてきてる。当時のキーボードの性能とか、どんな風な音作りが可能だったのかとか、わたしは全然わからないんだけど、その変幻自在さって、自分のスタイルにヘンなこだわりを持ってる人には、真似のできないコトだと思うんだ。

その音にロビー·クリーガーのギターがカラんで来るわけだけど、こんなカラみ方って、ある?何か、聞いてるこちらのドキドキをそのまま心電図にして見せつけられてるような、そんなフレーズなんだよね。そういえば心電図って左から右に向かって紙が出てくるイメージがあるけど、この心電図は右から左に出てくる感じがする。何でだろ。彼、元々はフラメンコのギタリストなのよね。だからピックは使わずに5本の指を全部使って弾いてるんだけど、それでどうやってこんなにアタックの強い音が出せるのか、いつも不思議になる。

そこにジョン·デンズモアが「だかだかだん!だかだかだん!」で入ってくるわけだから、何が始まるんだろうって思っちゃうじゃない。これってもう完全に「ロックのイントロ」じゃ、ないよね。でも何のイントロだろうって考えてみたら、やっぱり「ロックのイントロ」なんだ。それはこの三人がそれだけロックを分かってたからって言うより、ロックの方がドアーズの顔色を窺ってたからなんじゃないかって感じが、わたしはする。

ただ、このドラマーの人、曲のテンポが破調になってくると必ず「だららった!」で仕切り直そうとするのよね。それはこの人の責任ではなく完全にジムモリソンの責任なんだけど、「だららった!」が出てくる必然性が全くなさそうに思えるこの曲でもやっぱりこの「だららった!」が出てくる。でもその「だららった!」を聞くたびに、わたしは「ああ、やっぱりドアーズの曲だ」ってうれしくなるし、安心する。この「だららった!」、本当に、憎めないんだ。何だか、クックロビン音頭に入る直前に両腕を思い切り左上に振り上げるパタリロの姿をいつも思い出す。

だから結局、わたしにとってドアーズのサウンドのイメージは、パタリロなんだよな。

abcdefghijklmnopqrstuvwxyz.hatenablog.jp
...前回紹介したサラさんのブログのスタイルをペチらせてもらってみたのだけれど、文体だけをマネしてみてもやっぱり私は「音」について語るのがヘタなのだということを、痛感させられるだけの結果に終わってしまった気がする。語るのがヘタって言うよりも、聞くのがヘタなんだろうな。とりあえず夜店だとか心電図だとかパタリロだとかに頼ろうとするのをやめない限り、このブログの将来はおぼつかないだろうということが、今回は自分でも身にしみてよく分かった。今後の糧にしていきたい。

「翻訳をめぐって」は、特になしでいいと思います。

ではまたいずれ。


=楽曲データ=
1970.2.9.
Key: E♭

You Make Me Real

You Make Me Real