華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

The Goonies 'R' Good Enough もしくはグーニーズは可もなく不可もなし (1985. Cyndi Lauper)



前回、コロンブスの話なんかしたもんだから



思い出してしまったのである。






The Goonies 'R' Good Enough

The Goonies 'R' Good Enough

英語原詞はこちら


Here we are hanging on the strains of greed and blues.
Break the chain and we break down

私たちがしがみついているのは
欲望と憂鬱に
緊張させられっぱなしの毎日。
鎖を引きちぎって
ぶちこわしてやりたいと思わない?


Oh
it's not real if you don't feel it.
Unspoken expectations
ideas you used to play with
They're finally taking shape.

感じることのできないことなら
それはほんものじゃないってこと。
言葉にされたことのない希望や
一緒に遊んで大きくなった理想が
今こそ形になろうとしている。


What's good enough for you is good enough for me
It's good enough
it's good enough for me.
Yeah yeah yeah yeah

あなたにとってそれで充分なら
私にとってもそれで充分。
それで充分です。
私にとってはそれで充分。
ややーややーやー!


Now you say you're starting to feel the push and pull
Of what could be and never can.
You mirror me stumbling through
those old fashioned superstitions
I find too hard to break
or maybe you're out of place.

何が待ってるか分からない扉を
押したり引いたりしたい気持ちに
なり始めてるって言うんだね。
あなたって私に似てる。
迷信や古い考え方を
乗り越えて行こうとしてる。
やってみたら大変なことだって分かったし
あなたのやってることも
トンチンカンなことかもしれない。
でも


What's good enough for you is good enough for me
It's good enough
it's good enough for me.
Yeah yeah yeah yeah

あなたにとってそれで充分なら
私にとってもそれで充分。
それで充分です。
私にとってはそれで充分。
ややーややーやー!


What's good enough for you is good enough for me
It's good enough
it's good enough for me.
Yeah yeah yeah yeah

あなたにとってそれで充分なら
私にとってもそれで充分。
それで充分です。
私にとってはそれで充分。
ややーややーやー!



「スーブン·スピルバーグ」って書いてあるよ。80年代だなあ。当時小学生だった私の同級生たちの家には、どこへ行っても極めて高い確率で「グーニーズ」と「さんまの名探偵」のファミコンソフトが置いてあった。「さんまの名探偵」が置いてある頻度は、少なくとも「たけしの挑戦状」が置いてある頻度より、間違いなく高かったと思う。奈良だったからなのかもしれない。

家にファミコンのなかった低学年の頃の私は、いろんな同級生の家に入り浸っては図々しくファミコンをやらせてもらう、情けない毎日を送っていた。それで一番うまくなったのが「グーニーズ」だったのは、多分どこの家に行っても置いてあったからなのだと思う。あのゲームのBGMは本当に何十年たっても、耳の奥にしみついて離れない。

アメリカでもその事情は同様であるらしく、英語版Wikipediaのこの曲に関する記事には、以下のような記述があった。

The song was featured in several iterations of Konami's Goonies video games, most notably The Goonies for the Famicom and The Goonies II for the Nintendo Entertainment System.
この曲はコナミのグーニーズのビデオゲーム、とりわけファミコンの「グーニーズ」と、任天堂エンターテインメントシステムの「グーニーズⅡ」の中で繰り返し使われている。

...「任天堂エンターテインメントシステム」というのは、日本では発売されていなかったアメリカ版のファミコンらしいのだが、初めて知ったのはアメリカでもファミコンのことはファミコンと言うのだけれど、表記が「Famicom」になるという事実である。「ファミコム」なのだ。当たり前の話ではあるのだけれど。

そんな風に付き合いの古いこの曲だったのだが、歌詞を読んでみるとえらく日本語に翻訳しにくい感じのする歌だった。とりわけサビの部分で繰り返されている「good enough」という言葉のニュアンスが、つかみにくい。

「good enough」を直訳すると「充分に良い」となるわけだが、「It's good enough」というのはあんまり「ホメ言葉」になるようなフレーズではないらしい。「まあまあだね」とか「いいんじゃない?」というニュアンスで使われているのが「good enough」であるらしい。英語学習サイトの例文などを読んでみる限り、「いまいちだね」というのとほとんど変わらないような印象なのである。

当初私はこのサビの部分を「今の私たちはこれ以上望めないぐらい幸せ」みたいなニュアンスで聞いていたのだが、どうやらそれは誤解らしい。「ボチボチやって行けたらいいんじゃない?」ぐらいのニュアンスで聞いておくのが、ネイティブの感覚には近いのかもしれない。さらには「こんな生活はもうたくさん!」みたいな意味で聞こえている幅も、排除できないように思われる。とりあえず上のように「充分です」と訳したけれど、私の英語力ではどれが正しくてどれが明らかに間違いなのかということも自分では判断できないので、誰か鮮やかに説明できる方が読んでおられたら、教えてください。

シンディローパーがこの曲を書いた時のタイトルはシンプルに「good enough」で決まっていたのだけれど、映画会社のワーナーブラザーズの強い圧力で「The Goonies 'R' Good Enough」に変更させられた経緯があったらしい。('R' は「are」の省略表現なのだと思われるが、辞書では確認できていない)。「good enough」だけだと「これで充分」とか「これからも頑張ろう」みたいなポジティブなメッセージが伝わってくるけど、「グーニーズはgood enough」と言われると、どうもグーニーズのことをホメている感じには聞こえてこない。「グーニーズは可もなく不可もなし」とか、下手をすると「グーニーズはもうたくさん」みたいに聞こえてしまう余地も、あるのではないかと思う。そこらへんも私はネイティブではないから、よく分からないのだけど。

そういう事情もあってなのかなかってなのか、シンディローパーさん自身はこの曲のことを「憎んで」おり、2003年に至るまでアルバムには一切収録されなかったし、ライブで歌われることもなかったのだという。そんなエピソードは、あんまり知りたくなかった。

ちなみに「グーニーズ」とは、「野暮ったい」という意味の「goony」という言葉と、映画に出てくるオレゴン州アストリア近辺の架空の地名「Goon Docks (ならず者の波止場」を引っかけたグループ名であるらしい。あんまりかっこいいイメージの名前ではないが、映画の中の子どもたちの年齢から考え合わせるなら、なかなかシブいネーミングだと思う。アストリアといえば売れる前のニルヴァーナが活動拠点にしていた街のひとつで、そうした符合には今回調べてみて初めて気がついた。言われてみればグランジな感じがするタイトルだというのは、こじつけすぎだろうか。

ではまたいずれ。


=楽曲データ=
Released: 1985.6.6.
Key: E

The Goonies 'r' Good Enough

The Goonies 'r' Good Enough