華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Maggie M'Gill もしくは タンジールじゃ当たり前 (1970. The Doors)


Maggie M'Gill

Maggie M'Gill

英語原詞はこちら


Miss Maggie M'Gill, she lived on a hill
Her daddy got drunk and left her the will
So she went down, down to Tangie Town
People down there really like to get it on

ミス·マギー·マギル
丘の上に住んでいた。
酔っ払いの父親が
彼女に遺言を残した。
それで彼女は丘の下へ
タンギーの街へと降りて行った。
そこの人々は
めちゃめちゃにやらかすのが大好きなのだ。


Now if you're sad and you're feeling blue
Go out and buy a brand new pair of shoes
And you go down, down to Tangie Town
'Cause people down there really like to get it on
Get it on

もしもあなたが悲しくて
ブルーな気持ちになったなら
表に出て
新しい靴を買うといい。
そしてあなたも行けばいい。
タンギーの街に行けばいい。
そこの人々は
めちゃめちゃにやらかすのが大好きだから。


Illegitimate son of a Rock n' Roll star
Illegitimate son of a Rock n' Roll star
Mom met dad in the back of a Rock n' Roll car

認知されない
ロックンロールスターの息子。
認知されない
ロックンロールスターの息子。
ママはお父さんに
ロックンロール·カーの陰で出会ったんだよ。


Well, I'm an old blues man and I think that you understand
I've been singing the blues ever since the world began

私は年老いたブルースマン。
あなたにも分かってもらえることと思う。
世界が始まった時から
私はブルースを歌ってきたのだよ。


Maggie, Maggie, Maggie M'Gill
Roll on, roll on, Maggie M'Gill

マギー マギー マギー·マギル
生き続けろ。
マギー·マギル。



「モリソンホテル」の最後の曲。4枚目のアルバムまで、ドアーズは最後の曲には必ず「凝りに凝った長い曲」を準備していたものだが、この曲はずいぶんと、アッサリしている。(まだひとつも訳していないのだが、1枚目が「The End」、2枚目が「When The Music Over」、3枚目が「Five To One」、4枚目が「Soft Parade」、そしてジムモリソン生前の最後のアルバムとなる6枚目が「Riders On The Storm」...)。ひとつにはこの頃のドアーズが本当に「疲れきっていたから」ということもあるのだろうが、一方で「このアルバムに関してはこれでいいのだ」という「自信」のようなものも感じられる。事実、ドアーズの全アルバムの中で、「アルバムとしてのまとまり方」はこの「モリソンホテル」が一番なのではないかと、私はずっと昔から感じている。一番最初に聞いたのがこのアルバムだったということの影響が大きいのかもしれないけれど。

今回触れておかなければ触れる機会がなくなってしまうので触れておくならば(←...何か、スキンシップに飢えている人みたいだ)、このアルバムのジャケットに写っている「モリソンホテル」という名前のホテルは、キーボードのレイ·マンザレイクがロサンゼルスの下町をクルマで走っていて偶然見つけた実在のホテルらしい。「これは使うしかない」と思ってメンバー全員とカメラマンで押しかけたのだが、ホテルの主人はかれらを中に入れてくれなかった。(ギターのロビー·クリーガーは「おれたちのことをヒッピーと思ったのだろう」と語っている)。それならということで、ドアーズのメンバーは主人が見ていないスキをついて建物に忍び込み、一瞬の内に写真を撮ってもらって、風のように引きあげたのだという。思い切ったことをしたものだと思う。売れて有名になったら絶対訴訟になるだろうとか、フツー考えると思うのだが、売る気がなかったのだろうか。ともあれ、このジャケットを通して私は初めてドアーズと出会ったわけであり、個人的にも思い入れの深い写真である。今ではもうこのホテルは、残っていないと思うのだけど。

=翻訳をめぐって=

Miss Maggie M'Gill, she lived on a hill

「マギー·マギル」という名前にはどういう意味があるのだろうと思って調べてみたが、「M'Gill」がアイルランド系の名字であるらしいということ以外には、何も分からなかった。「Miss Maggie M'Gill」の頭文字を並べると「MMM」になることに、何か意味がありそうな感じもするが、確かなことは何も言えない。

Her daddy got drunk and left her the will

海外サイトによるならば、ここに出てくる「daddy」は「神」であるという解釈、そしてもうひとつにはジムモリソン自身であるという解釈が、存在するらしい。A面4曲目の「Peace Frog」の原題が「Abortion Stories」だったことについてはその記事で触れたが、この「Maggie M'Gill」でジムモリソンは「生まれてこれなかった自分の子ども」に向かって歌っているのだという話が、かなり広範囲に広がっているのだという。このブログでは、参考意見として掲げるにとどめておく。

she went down, down to Tangie Town

この「タンジーの街」という言葉から多くの人が連想するのは、ジブラルタル海峡の南側に位置するモロッコの港町の「タンジェ(=タンジール)」なのではないかと思う。地理的な特質もあって昔から多文化が共生する国際都市として栄えてきた街で、ウィリアム・バローズ、アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアック、ローリングストーンズ、ジョージ・オーウェル等々、多くの文化人が居住したり別荘を構えたりしてきたとWikipediaにはある。ただし、この歌における「Tangie」はあたかも「悪徳の街」みたいな描かれ方をしているので、もしも実在の街をモデルにしているのだとしたら、そこの人たちに対してずいぶん失礼な話だと思う。

Tangieという言葉をこの綴りで検索すると、「スコットランドの伝説に出てくる海の妖怪の名前」でもあるらしいことが分かった。これはこれで、なかなかにジムモリソン好みのイメージであるとは思う。

↓尾とタテガミが海藻になっている。

People down there really like to get it on

「Get it on」という熟語の意味については、T-REXの同名曲の記事で詳述。

Illegitimate son of a Rock n' Roll star

辞書通りに直訳するなら「ロックンロール·スターの非嫡出子」となる。「非嫡出子」などという言葉は人間を「生まれ」によって差別するためだけに存在しているのだから、一刻も早く無くなってほしいとしか私は思わないし、そういう言葉をわざわざ使ってジムモリソンが何を言おうとしたのかということは、知りたいという気も起こらない。ここには意味だけを掲載した。

I'm an old blues man...

...この部分でジムモリソンは「ロックンロールの精霊」みたいなものになりきっているのかもしれないが、前々回に紹介したようなエピソードを踏まえるなら、本物の「old blues man」に失礼だろうという感想しか湧いてこない。おまえは白人の若造じゃないか。


Sparks Go Go -HeartQuake- 8:40〜タンジール

...最後の最後まで悪態になってしまったのだけど、私にとって思い出深い「モリソンホテル」の全訳企画は今回で終了です。昔スパゴの皆さんが「タンジール」という歌を歌っていて、それがこの歌の歌詞の風景と何となく重なっていたのですが、探してみたら長いライブ動画の中の一曲として、入ってました。うれしかったので貼りつけておきます。

ではまたいずれ。


=楽曲データ=
Released: 1970.2.9.
Key: C

Maggie M'Gill (John Densmore/FredWreck Remix)

Maggie M'Gill (John Densmore/FredWreck Remix)