華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Tom Traubert's Blues もしくはコペンハーゲンで万鳥足 (1976.Tom Waits)


Tom Traubert's Blues

Tom Traubert's Blues

(Four sheets to the wind in Copenhagen)

英語原詞はこちら


Wasted and wounded, it ain't what the moon did
I got what I paid for now
See you tomorrow, hey Frank, can I borrow
A couple of bucks from you?
To go waltzing Matilda, waltzing Matilda
You'll go waltzing Matilda with me

吐くものがもう
何もなくなっちまって
ボロボロだ。
お月さんのせいにするわけには
行かないよな。
自分のやってきたことの
ツケが回ってきたんだ。
明日また会おうぜ。
なあフランク
2〜3ドル貸してくれないか。
ワルツィング·マチルダをやるんだ。
ワルツィング·マチルダ。
おまえもおれと
ワルツィング·マチルダをやるかい?


I'm an innocent victim of a blinded alley
And I'm tired of all these soldiers here
No one speaks English, and everything's broken
And my Stacys are soaking wet
To go waltzing Matilda, waltzing Matilda
You'll go waltzing Matilda with me

おれは袋小路のおめでたい犠牲者。
そしてここにいる兵隊どもに
うんざりしてる。
英語を話せるやつは誰もいないし
何もかもが壊れてる。
おれのステイシーの靴は水びたしだ。
ワルツィング·マチルダに行きたいのに。
ワルツィング·マチルダ。
おまえもおれと
ワルツィング·マチルダをやるかい?


Now the dogs are barking and the taxi cabs parking
A lot they can do for me
I begged you to stab me, you tore my shirt open
And I'm down on my knees tonight
Old Bushmills I staggered, you buried the dagger
In your silhouette window light
To go waltzing Matilda, waltzing Matilda
You'll go waltzing Matilda with me

犬どもときたら
吠えてるだけだし
並んだタクシーときたら
停まってるだけだ。
おれのために
してくれることのできることは
いっぱいあるんじゃないのかよお。
おれのことを
刺しつらぬいてくれないかって
おれは頼んだんだ。
そしたらお前はおれのシャツを引き裂いて
胸元をむき出しにしてくれたもんで
今夜はこうしてひざまづくことに
なっちまったってわけさ。
オールド·ブッシュミルで
おれはへろへろになってて
お前は窓の灯りに浮かびあがった
自分のシルエットの中に
手にした短剣を溶かしてしまった。
ワルツィング·マチルダに行くために。
ワルツィング·マチルダ。
おまえもおれと
ワルツィング·マチルダをやるかい?


Now I've lost my St. Christopher, now that I've kissed her
And the one-armed bandit knows
And the maverick Chinamen, and the cold-blooded signs
And the girls down by the strip-tease shows go
Waltzing Matilda, waltzing Matilda
You'll go waltzing Matilda with me

聖クリストファーのお守りは
おれにはもうない。
彼女にキスしちまったからな。
1本しかない腕で盗みを働くあの機械。
スロットマシーンのことだ。
そいつが知ってるよ。
それにはぐれ者の中国人の男や
血も涙もない標識の数々
客に触らせるサービスつきの
ストリップ小屋の姉ちゃんたちも
みんなが
ワルツィング·マチルダに出て行く。
ワルツィング·マチルダ。
おまえもおれと
ワルツィング·マチルダをやるかい?


No, I don't want your sympathy, the fugitives say
That the streets aren't for dreaming now
And manslaughter dragnets, and the ghosts that sell memories
They want a piece of the action anyhow
Go waltzing Matilda, waltzing Matilda
You'll go waltzing Matilda with me

同情なんか要らないと
逃亡者たちが言う。
ストリートは今ではもう
夢を見るための場所じゃない。
人殺しの警官どもの包囲網
そして思い出を売りさばく幽霊たち
みんな何らかの行動を求めてるんだ。
何とかして
ワルツィング·マチルダに出るために。
ワルツィング·マチルダ。
おまえもおれと
ワルツィング·マチルダをやるかい?


And you can ask any sailor, and the keys from the jailer
And the old men in wheelchairs know
That Matilda's the defendant, she killed about a hundred
And she follows wherever you may go
Waltzing Matilda, waltzing Matilda
You'll go waltzing Matilda with me

どんな船乗りにでも
牢獄の看守がぶら下げたカギにでもいい。
聞いてみな。
車椅子の老人たちも
みんなが知ってるぜ。
マチルダって女は
人を百人も殺した被告人だって。
そしてそいつはおまえの行くところなら
どんなところにだって
ついて行くことだろう。
ワルツィング·マチルダ
ワルツィング·マチルダ
おまえもおれと
ワルツィング·マチルダをやるかい?


And it's a battered old suitcase to a hotel someplace
And a wound that will never heal
No prima donna, the perfume is on
An old shirt that is stained with blood and whiskey
And goodnight to the street sweepers, the night watchmen, flame keepers
And goodnight, Matilda, too

ホテルかどっかへ
持ち歩いて行くための
古いスーツケースだ。
めちゃくちゃに叩かれてへこんでる。
直ることはもうないだろう。
あいつは
プリマドンナなんかじゃなかった。
血とウイスキーの染み込んだ
あの古いシャツに
匂いはしっかりくっついてる。
おやすみ。
街の掃除屋さんたち。
夜の警備員さんたち。
炎を守り続けてる人たち。
そしてマチルダにも
おやすみ。

=翻訳をめぐって=

Waltzing Matilda」をめぐる冒険の最終章は、トム·ウェイツの最高傑作と言われるこの曲である。私はこの人のCDは長い間ファーストアルバム一枚しか聞いたことがなかったもので、四枚目のアルバム「Small Change」の冒頭に入っているこの歌を初めて聞いた時には、あまりの声の変わりように仰天したものだった。どこが「Small Change (小さな変化)」やねんと声に出して呟いてしまったぐらいだ。高校の音楽の時間に、声はキレイであればいいというものではないということを力説する教師から、浪曲師をこころざす人は焼酎を飲んで潮風に向かって何度も吠えて、自分の声をつぶすところから始めるのだという話を聞かされ、浪曲とは人間にそこまでさせるぐらい魅力的なものなのだろうかとショックを受けて、広沢虎造のCDを聞くために大阪の図書館まで通いつめた経験を私は持っているのだが、アメリカにも同じことをやる人がいようとは、想像したこともなかった。

正直な感想を言えば、ちょっとだけもったいないような気がする。ファーストアルバムばかり聞き続けてきた人間としては、あの声でも充分ザラザラしていて魅力的だったし、呟くような歌い方の「Martha」や「I Hope I Don't Fall In Love With You」が大好きだったのだ。今ぐらいに声がつぶれてしまうと、どんな歌を歌うにも絶叫しなければならなくなってしまうみたいで、YouTubeで最近の動画を見ていると、こちらまで身体に力が入ってきてしまう。もちろん、迫力はスゴいのだけどね。

トム·ウェイツは、ハリー·べラフォンテが世界中のいろいろな歌を歌うというコンセプトで1963年に発表された「Streets I Have Walked」というアルバムを通じて、初めて「ワルツィング·マチルダ」という曲に出会ったのだという。(Apple Musicで私も聞いてみたのだが、日本の「さくらさくら」が入っていたりして、なかなか面白いアルバムだった)。同じ英語圏でも、オーストラリアとは違う文化の中で育った彼氏が、何の予備知識も持たずにあの歌を聞いた時、心に浮かんだのはやはり「ワルツを踊るマチルダという名前の女性」の姿だったはずだと思う。それが「あてもない一人旅」を意味する言葉だという情報は情報としてどこかで仕入れつつも、イメージの中のその女性は彼氏の中でずっとワルツを踊り続けていたに違いない。そしてそれがこの「Tom Traubert's Blues」という歌の中では、具体的な「人格」をともなって我々の前に立ち現れてくるに至る。この歌における「ワルツィング·マチルダ」という言葉は、トム·ウェイツにとって「永遠の旅」のイメージと「永遠の恋人」のイメージとを同時に象徴しているキーワードなのだと考えるのがふさわしいように思う。そしてその二つは両方とも彼氏のことを永遠に魅惑し、かつ彼氏のことを永遠に苦しめ続けるという点において、結局のところ、「ワルツィング·マチルダ」という言葉でしか言い表すことのできない、「同じ何か」なのである。

さらにいろいろ調べてみると、トム·ウェイツは1976年、海外ツアーで生まれて初めてアメリカを離れてヨーロッパを旅し、戻ってきてからロサンゼルスで一気にこの歌を書き上げたらしいのだけど、そのヨーロッパの旅の途中、デンマークでマチルダ·ボンドという名前のバイオリン奏者の女性と出会い、かなりいい関係まで行ったということが、実際にあったらしい。ということは後年になってマチルダ·ボンドさん自身が語っていることであり、トム·ウェイツ自身はそれを肯定も否定もしていないのだけれど、否定しないということは、ねえ。実際にあったのである。とはいえそういうことがあったとして、それならこの歌はマチルダ·ボンドさんというその人に「だけ」捧げられた歌だったのかといえば、答えは「イエスでもありノーでもある」ということにしかならないだろうと思う。恋をした人間にとっては、その相手の名前が「世界」と同等の意味を持つ言葉になる。この歌の中で「世界」は「マチルダ」という名前の女性の姿をとり、「他者」として主人公の前に立ち現れている。そのマチルダさんとの関係に、引いては主人公と「世界」との関係が象徴されている。と言うよりも、体現されているのである。

その主人公が「ワルツィング·マチルダ」という言葉を、「重荷を背負った孤独な一人旅」という「本来の意味」で使う時、そのフレーズには「自分の中で世界が揺れている」あるいは「自分の背中で世界を踊らせる」といったような壮大なイメージが、同時に込められることになってくるのではないかと思う。いずれにしても生まれて初めてアメリカを離れ、「世界」を目にしたトム·ウェイツにとって、そこで経験したあらゆる「出会い」の持つ意味が、「ワルツィング·マチルダ」というキーワードを通してひとつにつながった時、生まれたのがこの歌だったのだと考えて、ほぼ間違いはないだろう。



「Tom Traubert's Blues (トム·トラバートのブルース)」というこの曲名は、何を意味しているのだろうか。「Traubert」という言葉は辞書にも載っていないし、名前としてもかなり珍しいものであるらしく、検索してもほぼこの歌に関する情報しか出てこない。トム·ウェイツ自身によるならば、トム·トラバートというのは彼氏が若い頃、ヒッチハイクでアメリカを回っていた時に出会った友人の名前なのだという。その友人はデンバーの出身で、後にささいなことで捕まって刑務所で生涯を終えることになったというのだが、トム·ウェイツという人はステージやインタビューで平気で「作り話」を語ってみせることで有名なので、この話もどこまで信用していいものなのか定かではない。それに事実であったとしても、歌の主人公の名前が自分と同じ「トム」であるということは、明らかに彼氏にとって「意味」を持っていると思う。(そういえば「Martha」という歌の主人公も、「トム·フロスト」という男性だった)

「Traubert」に一番近い響きを持った言葉は、フランス語の「トルバドゥール(Troubadour=中世のヨーロッパを遍歴した吟遊詩人)」なのではないかということが、いくつかのサイトで指摘されていた。ジャック·ケルアックやニール·キャサデイといった1950年代のビート詩人に憧れ続けてオトナになったトム·ウェイツが、文字通り初めて「世界を歌って回る」経験をした時に生まれたのがこの歌だ。自分のことを「吟遊詩人」になぞらえる気持ちは、少なくとも心の片隅ぐらいには、間違いなくあったのではないかと思う。



この歌には「Four sheets to the wind in Copenhagen」というサブタイトルがついており、「コペンハーゲンの風にはためく4枚のシーツ」と邦訳されている。浮かんでくるのは、よく晴れたデンマークの首都の昼下がりに洗濯物が干してあるイメージである。実際、フツーに読めばそういう絵になるのが当たり前だし、英語話者が読んでも大体の人には同じイメージが浮かぶのではないかと思う。ところが調べてみたところ、このサブタイトルに込められた意味は、それとは全然違っていた。

どれくらいポピュラーな言い回しなのかは知らないのだけど、アメリカには「ぐでんぐでんに酔っ払った状態」を形容するのに「Three sheets to the wind」という言い方をする場合が、あるらしいのである。これには、若干の説明を要する。

このフレーズにおける「sheets」は、ベッドの上に敷くシーツではなく、ヨットや帆船を操る時に使われる「帆脚索(ほあしづな)」のことを意味している。何でも、風で走る船の帆には「タック」と呼ばれるロープと「シート」と呼ばれるロープの二本がついており、「シート」は船体に固定されていて、「タック」を引っ張ることで帆の張り具合を調節する、という構造になっているらしい。(ヨットのことなど何も知らない人間が、読めない英文を頼りに聞きかじりを並べているだけなので、間違いがあったら指摘してください)



通常、船というものは、その帆をピンと張ったり、必要のない帆をゆるめたりして針路をコントロールできるようになっているわけだが、通常3枚あるヨットの帆が、「タック」によるコントロールを失って、「シート」で船体につながっているだけの状態になった場合、どういうことが起こるか。帆は全部ユルユルになり、自力で航海できなくなるのである。その状態を「まともに歩けなくなった酔っ払い」の姿になぞらえたのが、「Three sheets to the wind」という慣用句の由来になっているらしい。

トム·ウェイツはそのヨットの帆の数を一枚増やして、「Four sheets to the wind」という言葉をここでは使っている。(私の脳裏には最初、4本マストの巨大な帆船がコントロールを失ってグラグラになっている壮大な光景が浮かんだのだが、大きな船になると1本のマストには通常3枚の帆が張られているので、それだと「12 sheets」と言わねばならないことになる。とはいえ言葉というのは「雰囲気」なので、トム·ウェイツがそういうイメージでこの言葉を思いついた可能性も、ないとまでは言えないと思う)。日本語的に表現するならさしずめ「千鳥足」が「万鳥足」になるようなイメージだろうということで、今回の記事のサブタイトルは「コペンハーゲンで万鳥足」にしてみたわけなのだが、一応付記しておくなら私はそういうことを思いついてさも自分は気の利いたことを言っているみたいに思い込んで日本語版の歌詞カードにそういう言い回しを得意げに書き込んでみせるようなタイプの翻訳家というものが大嫌いである。他人の言葉をあたかも自分の中から生まれてきた言葉であるかのように「盗用」して自己表現のネタに使ってみせるその根性にムカがつくからだ。とはいえそれならそうやって思いついた「万鳥足」という言葉を私自身が使うことについてはどうなのか、ということも当然問題になってくるわけだが、それはまあ、あれだ。私と同じような回路で「万鳥足」という訳語を思いついた別の日本人がハシャぎ回ってそれを自慢したりすることがないように、あくまで後世への戒めとして、恥をしのんで貼りつけておくのである。「万鳥足」という字面からは「Four sheets to the wind in Copenhagen」という言葉から喚起されるどんな「絵」も浮かんできはしないのだから、こんなものは訳語としては上手くも何ともないのだ。当初はストイックな決意と共に始まったこのブログも最近はいろんなところがユルユルになってきているけれど、他人の言葉を翻訳しようとする人間にとって一番大切なことは「訳者が勝手な意味を付け加えないこと」であるはずだという私の信念に、いまだ揺らぎはない。このことは、改めて強調しておきたいと思う。

以下は、各フレーズの解釈をめぐる蛇足である。

Wasted and wounded

「waste」の元々の意味は「無駄にする」「衰弱する」だけど、スラングとしては「酔っ払って吐くものが何もなくなってしまった状態」を形容する際に特に「wasted」が使われるのだという。定義がえらく具体的なので、そのまま使わせてもらった。

hey Frank, can I borrow

フランクというのはトム·ウェイツの歌の中では特別な位置を持った登場人物の名前で、後にトム·ウェイツは彼氏を主人公にした「フランツ三部作」と呼ばれるアルバムを相次いでリリースするのだが、そのフランクが初めて出てくるのが、この歌らしい。ちなみにフランクはトム·ウェイツの父親の名前でもあるという。

I'm an innocent victim of a blinded alley

「innocent」の原義は「無実の」「無邪気な」だが、ここでは「おめでたいやつだおれは」的な感慨を込めて使われているのではないかと思う。「blinded alley」は「視覚障害者」に対する差別表現です。ここでは原文をそのまま転載しました。

And my Stacys are soaking wet

トム·ウェイツが「靴マニア」であることは有名で、その彼氏にとっても特別な思い入れがあるのがステイシー·アダムズ社製の革靴なのだという。Amazonで売っていた下の写真の靴のお値段は120ドルだった。


I begged you to stab me, you tore my shirt open
And I'm down on my knees tonight

ここに出てくる「you」がおそらく「マチルダという女性」の初出である。彼氏は酔っ払って彼女に「おれのことを刺し殺してくれ」とか何とか、泣きわめいた。そしたら彼女は割とマジな感じでいきなり彼氏のシャツの胸元を無言で引き裂いたものだから、主人公は青くなって「待ってくれよ今のは冗談だよ」とか何とか、必死で言い訳をしている。そんな絵が浮かぶ。知らんのやけど。

Old Bushmills I staggered, you buried the dagger
In your silhouette window light
To go waltzing Matilda

オールド·ブッシュミルは、アイルランドのウイスキー。トム·ウェイツにはアイルランドとスコットランドの血が流れている。生まれて初めての異郷の地で目の前に出されたそのウイスキーには、やはり何らかの感慨を覚えたのではないかと思う。

ここに出てくるのがマチルダさんという名前の女性であると仮定するなら、このフレーズからは「短剣を闇の中に捨て、ワルツを踊り始めた彼女のシルエット」も浮かび上がってくる。

Now I've lost my St. Christopher, now that I've kissed her

「聖クリストファー」とはキリスト教世界において、「旅人を守る守護聖人」の名前なのだという。(→Wikipedia)。古来、ヨーロッパ世界を旅する人は、旅の安全を祈ってこの「聖クリストファーのお守り」を肌身離さず持ち歩いていたらしい。調べてみるとこれもやはり、Amazonで35ドルで売られていた。



その「聖クリストファーのお守り」を彼氏はどうして「なくしてしまった」のか。彼女にキスしてしまったからである。「旅する人間」は誰かに恋をした瞬間に「旅する人間」ではなくなってしまうのだという解説が海外サイトには載っていて、それにはなかなか、ウナらされた。

the cold-blooded signs

「血も涙もない標識」と訳したが、「ネオンサイン」の比喩だと思う。

manslaughter dragnets

直訳は「人殺しの包囲網」だが、「人殺しを捕まえるための包囲網」なのか「人殺しによって築かれた包囲網」なのかは、文法的には定かではない。後者で訳したのは、訳した私のシンパシーが「捕まえる側」ではなく「捕まえられる側」に向けられているからであり、そこはトム·ウェイツも同じだったのではないかと思う。

And you can ask any sailor, and the keys from the jailer

…ここの翻訳の後半部分は、あまり自信がない。前半が「どんな水夫にでも聞いてみるとよい」なのは間違いないが、後半は「看守の持っている鍵がほしければ、言ってみるとよい」みたいな意味である可能性もある。とはいえどう訳しても、この部分の歌詞からは「一貫性」が見えてこない。

Matilda's the defendant, she killed about a hundred
And she follows wherever you may go

ここに至って「マチルダという女性」は、完全に「人格を持った存在」として我々の前に姿を現す。海外サイトでは「マチルダ」というのは現代社会に生きる人間について回る「自殺の衝動」の擬人化なのではないかという説も紹介されていたが、私はあんまりそういう風には、思いたくない。マチルダさんは、マチルダさんなのだ。

No prima donna,

この部分を私は最初「違うんだプリマドンナ」と訳したのだが、他サイトでは「プリマドンナなどいない」という形で訳されている。どちらが正しいのだろうと思い言語交換サイトでネイティブの人に確認してみたところ、「ハッキリしたことは言えないが彼女はプリマドンナではなかったと言っているのではないか」という答えが返ってきた。おそらく、どう読んでも文法的には間違いではないのである。ここではネイティブの人の意見を尊重して、最後の訳し方にした。

ではまたいずれ。


=楽曲データ=
Released: 1976.9.
Key: F

Tom Traubert's Blues (Four Sheets To The Wind In Copenhagen)

Tom Traubert's Blues (Four Sheets To The Wind In Copenhagen)