華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Out Of The Blue もしくはラストワルツ特集 #4 (1976. The Band)

#3 It Makes No Difference#5

  • 並んで座るザ·バンドの三人。「The Shape I'm In」の前のインタビューの時と同じメンバー。同じ場所。

Robbie: And the week went on and it was a little depressing. And it was especially depressing cos we didn't have any money at all. No dough.
ロビー:その週が終わる頃には、ちょっとばかり落ち込んでた。何に落ち込んでたって、カネが全然ないんだ。現金なし。(←「No dough」は「The Shape I'm In」に出てくるフレーズ)

Rick: At one point, we had no more food money.
リック:その時には、食べ物を買うカネもなくなってた。

Robbie: It got to the point where, coming from Canada, we had these overcoats, big overcoats with pockets and everything, and we had a little routine.
ロビー:事そこに至ってなんだけど、我々はカナダから来てるだろ。みんなオーバーコートを持ってた。ポケットやいろんなものがいっぱいついた、でっかいオーバーコートだ。それで、ちょっとした日課をこなすことになった。

Richard Manuel: We'd go to the shopping centre, all together.
リチャード·マニュエル:みんなでショッピングセンターに行くんだよ。

Rick: But I stayed home, right?
リック:でもおれは行かなかったぞ?な?

Richard: No, you didn't.
リチャード:いいや、おまえもいたね。(笑)

Rick: I got the cigarettes. I turned the cigarette machine upside down and got everybody some cigarettes.
リック:おれがやったのはタバコだよ。タバコの自販機をひっくり返してみんなのためにタバコを分けてやった。(笑)

Richard: Yeah, but that was on the...
リチャード:はは。でもあれは…

Rick: You got me some baloney.
リック:おまえ、おれにボローニャソーセージを持ってきてくれたんだよな。


…ボローニャソーセージ

  • リック、楽しそうにリチャードの肩を抱く。

Richard: We'd go to the supermarket and a couple of people would buy a couple of loaves of bread, cos that was about the cheapest thing you could get. And the rest of us would be crouching the aisles, stuffing baloney.
リチャード:みんなでスーパーマーケットに行ってな。2人ぐらいは食パンの塊を買うんだよ。それが一番安いから。(笑)。それで残りの連中は、売り場でかがみ込んで、ボローニャソーセージを詰め込みまくるんだ。(笑)

Robbie: It'd be time to leave, the guy with the loaves would go to the checkout and we'd say "We'll meet you at the car. You take the bread out."
ロビー:そろそろ行くぞって時間になったら、食パンを持ったやつがレジに行って、みんなで言うんだ。「クルマで待ってるぞ。食パン持ってきてくれよな」。(笑)

Rick: Ya'll come back!
リック:無事に戻って来いよ!(笑)

Robbie: And with these overcoats...
ロビー:オーバーコートをソーセージで一杯にしてな…(笑)


It Makes No Difference

It Makes No Difference

詳しい翻訳記事はこちら


It makes no difference where I turn
I can't get over you and the flame still burns
It makes no difference, night or day
The shadow never seems to fade away

何も変わりはしない。
どこへ行こうと。
きみをあきらめることはできないし
恋の炎は燃え続けている。
何も変わりはしない。
夜になろうと昼になろうと
影はいつまでも消えそうにない。


And the sun don't shine anymore
And the rains fall down on my door

そして太陽は輝かない。
もう二度と。
そして雨が降りそそぐ。
ぼくのドアに。


Now there's no love
As true as the love
That dies untold
But the clouds never hung so low before

告白されないまま死んでしまう愛ほど
真実の愛はないはずだ。
雲がこんなに
重く垂れ下がっていたことなんて
今まで一度もなかったけれど。


It makes no difference how far I go
Like a scar, the hurt will always show
And it makes no difference who I meet
They're just a face in the crowd on a dead-end street

何も変わりはしない。
どれだけ遠くに行っても
生傷みたいに顔をのぞかせる苦しみを
隠すことなんてできない。
何も変わりはしない。
この先だれに会おうと
ぼくの目には行き止まりの大通りの
群衆の中のひとりの顔にしか
見えやしない。


And the sun don't shine anymore
And the rains fall down on my door

そして太陽は輝かない。
もう二度と。
そして雨が降りそそぐ。
ぼくのドアに。


These old love letters
Well, I just can't keep
Just like the gambler says:
"Read 'em and weep"
And the dawn don't rescue me no more

古いラブレターの束。
もうとっておくことはできない。
ポーカーで
ギャンブラーに言われるのとおんなじだ。
「これを見て泣け」って。
夜明けはもう
ぼくを救ってくれない。
もう二度と。


Without your love, I'm nothing at all
Like an empty hall, it's a lonely fall
Since you've gone it's a losing battle
Stampeding cattle, they rattle the walls

きみの愛がなければ
ぼくには何もない。
空っぽの大広間とおんなじだ。
ひとりで落ちて行くんだ。
きみが行ってしまってからは
負けいくさとおんなじだ。
家畜の群れの大脱走。
壁が地響きでぐらぐらしている。


And the sun don't shine anymore
And the rains fall down on my door

そして太陽は輝かない。
もう二度と。
そして雨が降りそそぐ。
ぼくのドアに。


Well, I love you so much
That it's all I can do
Just to keep myself from telling you
That I never felt so alone before

大好きなんだよ。
だからぼくにできることは
言わずにがまんすることだけ。
こんなに孤独な気持ちになったのは
生まれて初めてだっていうことを。

nagi1995.hatenablog.com
この曲についても以前に翻訳済みなので、今回は三枚組LPの最後の面に収められていた「The Last Waltz Suite (ラストワルツ組曲)」の中から「Out Of The Blue」という曲を翻訳しておくことにしたい。ロビー·ロバートソンがボーカルをとっている数少ない曲の中のひとつである。

「Out Of The Blue」という熟語には「唐突に」「突然に」という意味がある。「青い空の真ん中からいきなり」というイメージで作られた言葉なのだそうで、日本や中国で言う「青天の霹靂」にかなりちかいニュアンスなのだと思う。

けれどもこの歌における「Out Of The Blue」というフレーズには、「いきなり」という意味も込められているのかもしれないが、同時に明らかに字義通りの「青の中から」さらには「ブルースの中から」「ゆううつの中から」といった意味も含まれていると思う。「blue」は極めて多様な意味とイメージとを備えた単語なのだ。それをどれかひとつの意味しか持たない日本語の中に押し込めるわけには行かないので、今回は久々の「Dig A Pony方式」で、考えられる訳し方のすべてを試訳の中にたくし込んでおいた。

「out of」の基本的な意味は「〜から離れて」なのでそのように訳したが、ネイティブの人たちの耳には「この世界から/この心から/きみへの愛から/青の中から/(この歌は)生まれた」という風に聞こえている余地もあるかもしれない。聞き手の心の中でいくつもの形をまとって広がってゆく「いい詩」になればなるほど、別の言語に置き換えるのは難しくなってくる。

邦題の「ブルースから逃れて」は、いただけないですね。「逃れる」というのは目的意識的な行為だけど、原詞の中にはその「目的意識」を感じさせる言葉が全く使われていない。すべては主人公の意思と無関係に起こっていることで、だから聞く人を切なくさせる力がこの曲にはあるのだと私は思う。

ではまたいずれ。次回に乞うご期待。


Out Of The Blue

Out Of The Blue

英語原詞はこちら


Out of this world, out of this mind
Out of this love for you
Out of this world, out of the blue
Out of this love for you

この世界から離れて
自分の心から離れて
きみへのこの愛から
離れて
この世界から離れて
だしぬけに
青の世界から
ブルースの世界から
ゆううつの世界から

きみへのこの愛から
離れて


Sometimes I don't know you
You're like someone else
But that's all right
I'm a stranger here myself

ときどき
きみのことがわからなくなる。
きみはだれか別の人みたいで
でもそれはそれでいいんだ。
ぼく自身がここでは
よそものだから。


She don't shed a tear
When I walk out that door
She knows, she knows
I'll be coming back for more

ぼくがあのドアから立ち去っても
彼女は涙を流さない。
知ってるんだな。
わかってるんだな。
ぼくがまた帰ってくることを。


Out of this world, out of this mind
Out of this love for you
Out of this world, out of the blue
Out of this love for you

この世界から離れて
自分の心から離れて
きみへのこの愛から
離れて
この世界から離れて
だしぬけに
青の世界から
ブルースの世界から
ゆううつの世界から

きみへのこの愛から
離れて


Well, it's in the cards
It's written in the stars
It's in the wee-wee hours
In some lonely bar

きっとそれは
カードの中にひそんでいる。
きっとそれは
星図の中に書き込まれている。
きっとそれは
どこかのさびしいバーの
夜明け前の時間の中。


She don't stay up all night
And walk the floor
'Cause she knows damn well
I'll be coming back for more

夜通し眠れずに
床の上を歩き回ったりするようなことを
彼女はしない。
憎たらしいぐらい
彼女はわかってるんだ。
ぼくがまた帰ってくることを。


Out of this world, out of this mind
Out of this love for you
Out of this world, out of the blue
Out of this love for you

この世界から離れて
自分の心から離れて
きみへのこの愛から
離れて
この世界から離れて
だしぬけに
青の世界から
ブルースの世界から
ゆううつの世界から

きみへのこの愛から
離れて


For you, you, you
For you, you, you
For you

きみへの。への。への。
きみへの。への。への。
きみへの。


=楽曲データ=
Released: 1978.4.7.
Key: C

The Last Waltz Suite: Out Of The Blue

The Last Waltz Suite: Out Of The Blue