華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Sip the Wine もしくはラストワルツ特集 #7 (1977. Rick Danko)

#6 Stagefright#8


…「Drunkard's Basement」管理人のあもさんが作成された同人グッズの缶バッジ、2018.9.1.から1ヶ月限定で発売予定だそうです。

drunkardsbasement.jimdofree.com

  • 録音機器の前でインタビューに答えるロビー。「Who Fo You Love?」の前の場面の続きと思われる。

Robbie: I don't know what it is. Maybe the years connect or it's coincidence, but it seems like that's it. That's what The Last Waltz is. I mean, years on the road. The numbers start to scare you. I couldn't live with years on the road. I don't think I could even discuss it.
ロビー:何なんだろうなって思うよ。年月が関係してるのかもしれないし、単なる偶然なのかもしれないけど、これがそうなんだ。ラスト·ワルツとは何かってことだ。何年もツアーに出てるとな。「numbers」が怖くなってくるんだ。おれにはもう何年もツアーを続けることはできない。それについては議論する気も起こらないよ。(「numbers」の直訳は「数字」であり、観客動員数やレコードの売り上げといった「数字」のことかと思われるが、同時に「numbers」には「仲間」という意味もあり、どう翻訳していいか分からなかった)


Stagefright

Stagefright

詳しい翻訳記事はこちら


Now deep in the heart of a lonely kid
Who suffered so much for what he did
They gave this ploughboy his fortune and fame
Since that day he ain't been the same

いま、孤独な少年は心の奥深くで
自分のやってしまったことに激しく苦しんでいる。
幸運と名声が与えられたあの日から
田舎育ちのこの若者は
昨日と同じではいられなくなってしまった。


See the man with the stage fright
Just standin' up there to give it all his might
And he got caught in the spotlight
But when we get to the end
He wants to start all over again

ステージフライトにとりつかれたあいつを見ろよ。
あそこに立ってるだけでやっとなんだ。
今度はスポットライトにとっ捕まった。
でもおれたちが曲を終える頃には
あいつはまた最初から始めたがるんだぜ。


I've got fire water right on my breath
And the doctor warned me I might catch a death
Said, "You can make it in your disguise
Just never show the fear that's in your eyes"

おれは火消しの水をがぶ飲みした。
医者はおれに死ぬぞって言った。
「うまく隠し通せば快方に向かうだろう。
お前の目の中の恐怖を絶対誰にも見せてはいけない」


See the man with the stage fright
Just standin' up there to give it all his might
He got caught in the spotlight
But when we get to the end
He wants to start all over again

ステージフライトにとりつかれたあいつを見ろよ。
あそこに立ってるだけでやっとなんだ。
今度はスポットライトにとっ捕まった。
でもおれたちが曲を終える頃には
あいつはまた最初から始めたがるんだぜ。


Now if he says that he's afraid
Take him at his word
And for the price that the poor boy has paid
He gets to sing just like a bird, oh, ooh ooh ooh

もしあいつが怖いって言い出したら
言葉通りに受け止めてやることだ。
自分が支払った代価のために
あの貧しい若者は
鳥みたいに歌い出すことになってるんだ。
ほ、ほう、ほ、ほう…


Your brow is sweatin' and your mouth gets dry
Fancy people go driftin' by
The moment of truth is right at hand
Just one more nightmare you can stand

お前の額には汗がにじみ口はカラカラになる。
身なりのいい人々は優雅に行き交っている。
真実の瞬間はまさに目の前だ。
あとひとつの悪夢を耐え忍ぶことさえできれば。


See the man with the stage fright
Just standin' up there to give it all his might
And he got caught in the spotlight
But when we get to the end
He wants to start all over again, hmm hmm
You wanna try it once again, hmm hmm
Please don't make him stop, hmm hmm
Let him take it from the top, hmm hmm
Let him start all over again

ステージフライトにとりつかれたあいつを見ろよ。
あそこに立ってるだけでやっとなんだ。
今度はスポットライトにとっ捕まった。
でもおれたちが曲を終える頃には
あいつはまた最初から始めたがるんだぜ。
もう一回初めからやりたいんだろう。
あいつを止めないでやってくれ。
初めからやり直させてやれ。
もう一度やらせてやれ

nagi1995.hatenablog.com
この曲についても翻訳済みなのだけど、ものすごく翻訳しにくい歌詞だったもので、歌の心をとらえることができているのかどうか、非常に心もとない。医者の言ってることの内容とか。大体どういうことが歌われているのかということは、もちろん見当がつくのだけれど、細かいディテールの風景が全然見えてこない。そういう歌詞の典型みたいな作品だと思う。

「fire water」という言葉については、辞書に載っている通りに「火を消すための水」と訳したけれど、今にして思えば「度数の高い酒」のことだと解釈した方が自然に思えるかもしれないな。これは上記リンクの記事を書いた時には、思い至らなかったこと。

そんなわけで今回は、取りあげる順番は前後するのだけれど、リック·ダンコのソロアルバムの中から「Sip The Wine」という曲を翻訳しておくことにしたい。映画の後半でスコセッシから「ラストワルツが終わって、今は何してるんだい?」と訊かれたリックが、直接それには答えずに、録音機器から再生してみせる曲である。それならそのシーンの回に翻訳すれば良さそうなものだけど、その回はその回で他にも未翻訳の曲が出てくるもので、リックとのつながりで翻訳しておくなら今回しかないと思ったのだった。

「Sip the Wine」の直訳は「ワインをすすれ/ワインをなめろ」となるのだけれど、「すする」などという日本語はどう考えても歌詞にはなりそうにないし、「なめる」というのも新沼謙治の「嫁に来ないか」という歌で使われているのを除けばおよそ聞いたことのない言い方なので、結局「味わう」という言い方を採用した。しかしそういう表現にしたらしたで、「sip」という言葉の「粗野な魅力」が消えてしまう感もあり、難しいものだと思う。

元々はトレイシー·ネルソンという女性アーティストの歌だったらしいのだけど、リックの声と人柄みたいなものにものすごく良く合っている。とても大好きな曲である。


Sip the Wine

Sip the Wine

英語原詞はこちら


I want to lay down beside you
I want to hold your body close to mine
Like a grape that grows ripe in the sunshine
There comes a time when we must sip the wine

きみのそばで
よこになりたい。
きみのからだを
ぼくのそばに抱きよせたい。
太陽の下でたわわにみのった
ぶどうみたいに。
そろそろワインを味あわなきゃ
いけない季節だよ。


I can tell by lookin that you're not mine girl
I believe everything I told you was true
There's a child here that wants to start livin
And you know that this child will get it's start
from me and you

きみがぼくのものじゃないことは
見ればわかる。
これから生きようとしてる
子どもがひとりここにいる。
そしていいかな。
この子は旅立って行こうとしてるんだ。
きみとぼくから。


Close your eyes and don't you think of nothing
Let your thoughts remain here inside this room
Lay your head beside me on my pillow
And I will share this night with you

目を閉じるんだ。
何も考えちゃいけない。
きみの心は
この部屋の内側にとどめておいてほしい。
ぼくのそばでぼくの枕に
きみの頭を横たえておくれ。
この夜をきみと
わかちあいたいと思うから。


We must sip the wine till it feels alright
We must sip the wine into the night
We must sip the wine together

つらいことが何もなくなるまで
ワインを味あわなくちゃ。
夜の中へ深々と
ワインを味あわなくちゃ。
いっしょに
ワインを味あわなくちゃ。


=楽曲データ=
Rick is credited for lyrics and music to "Sip the Wine" on Rick Danko from 1977. This may not be correct. The song first appeared under the title "I Want To Lay Down Beside You" on Tracy Nelson's 1972 album Tracy Nelson / Mother Earth (Reprise MS-2054,) where it was credited to Tim Drummond who also played bass on Rick Danko.
Key: A

Rick Danko Band / Sip The Wine

Rick Danko Band / Sip The Wine