華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Queen Jane Approximately もしくはザッとおおよそクイーン·ジェーン (1965. Bob Dylan)

誰かのことをキライになりたくなかったら
自分のことをキライになるしか
あれへんくなってもーたよーな時
会いに来たってくれへんか。
クイーン·ジェーン。

敵の許せなさにむかつくより
味方の不甲斐なさの方がイラついて
しゃーなくなってもーたよーな時
会いに来たってくれへんか。
クイーン·ジェーン。

ずっとキレイに見えてたもんが
しょーもないニセモノでしかなかったことに気づけたのんはええとして
それに代わるホンモノが
見つかるわけでもない時あるいは
これがホンモノやねんと
頭では分かったあんねんけどさりとて
それが一向に魅力的に
見えてくるでもない時
会いに来たってくれへんか。
クイーン·ジェーン。

誰かの言葉が
その内容やなしに
体言止めが腹立つとかそういう理由で
気になってしゃーなくなって
せやけどそれしきのことでキレるには
こちらの側に真面目さと道義性が
余りにも欠けていてなおかつ
人の出したったアメを
そいつはじっくりなめるんやなしに
片っ端からバリバリ音立てて噛み砕いてて
こっちはそれを黙って聞いてるしか
あれへんよーな時
会いに来たってくれへんか。
クイーン·ジェーン。

会いに来たってくれへんか。
クイーン·ジェーン。

うっとり目をして安心してたボクは
デイドリーム·ビリーバーそんで
彼女はクイーン·ジェーン。

(1996年作)


Queen Jane Approximately

Queen Jane Approximately

英語原詞はこちら


When your mother sends back all your invitations
And your father to your sister he explains
That you're tired of yourself and all of your creations
Won't you come see me, Queen Jane ?
Won't you come see me, Queen Jane ?

あんたの母親があんたの招待状を
全部送り返してしまい
そしてあんたの父親が
あんたは自分自身と
自分が作ったあらゆるものに
うんざりしているということを
あんたの妹に向かって
説明したりしだしたら
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。


Now when all of the flower ladies want back what they have lent you
And the smell of their roses does not remain
And all of your children start to resent you
Won't you come see me, Queen Jane ?
Won't you come see me, Queen Jane ?

そして花の貴婦人たちが
あんたに貸したものを返してほしがり
彼女らのバラの花々が
その香りをとどめず
さらにあんたの子どもたちが
みんなあんたのことをいやがりだしたら
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。


Now when all the clowns that you have commissioned
Have died in battle or in vain
And you're sick of all this repetition
Won't you come see me, Queen Jane ?
Won't you come see me, Queen Jane ?

そしてあんたの任命した道化師たちが
戦死や犬死にでみんな死んでしまい
そうしたことの繰り返しに
うんざりするようになったなら
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。


When all of your advisers heave their plastic
At your feet to convince you of your pain
Trying to prove that your conclusions should be more drastic
Won't you come see me, Queen Jane ?
Won't you come see me, Queen Jane ?

あんたの相談相手がみんな
あんたの結論はもっと
根源的であるべきだということを
証明しようとして
あんたにあんた自身の痛みを
納得させるため
自分たちのクレジットカードを
あんたの足元に
投げ捨てたりとかしだしたら
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。


Now when all of the bandits that you turned your other cheek to
All lay down their bandanas and complain
And you want somebody you don't have to speak to
Won't you come see me, Queen Jane ?
Won't you come see me, Queen Jane ?

あんたがもう片方の頬を差し出した
すべての盗賊たちが
自分らのバンダナを捨てて
不平不満をのべたて
そしてあんたは
話しかけたりしなくても済むような
誰かがほしくなる
そんな時には
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。
わたしに会いに来るといい。
クイーン·ジェーン。

=翻訳をめぐって=

  • 「Queen Jane Approximately」の「Approximately」は「およそ/大体」とかいった意味で、「ザッとおおよそクイーン·ジェーン」みたいなのがこの歌のタイトルの語感になるのだと思う。相変わらずと言うか何と言うか、Jesterなタイトルである。
  • 「Won't you come see me?」というフレーズを片桐ユズルさんは「会いに来てくれないか」と訳しているのだが、文例をあたって調べてみると「Won't you 〜」というのは結構「高圧的な言い方」であるらしく、「Won't you sing?」というフレーズは「歌いたまえ」と訳されていたりする。(ていねいな言い方がしたい時には「Would you 〜」と言わねばならないらしい)。だとしたら「私に会いに来るといい」みたいな訳し方をした方が、ニュアンス的には「正確」なのではないかと思う。つまりこの曲においてディランは、自分が「会いたい」と言っているわけではなく、相手に対して「私に会いたいだろう?」と言っていることになる。(その上で彼自身が「会いたい」と思ってるのかどうかは巧みに伏せられているから何とも言いようがないのだけれど、それにつけてもイヤらしい男である)。
  • 「When all of your advisers heave their plastic」というフレーズ、「plastic」という言葉には「クレジットカード」という意味もあるらしいので上ではそう訳したが、確証はない。片桐さん訳ではそのまま「プラスチック」と訳されている。
  • それにつけても片桐ユズルさんが訳詞に使う「あんた」という二人称が、これほどピッタリとハマっている歌は他にないと思う。なのでその「あんた」に関しては、片桐さん訳を踏襲させて頂いた。



=楽曲データ=
Recorded: 1965.8.2.
Released: 1965.8.30.
Key: C