華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Mé Qué, Mé Qué もしくはメケメケ 〜追悼シャルル·アズナブール②〜 (1954. Gilbert Bécaud)


Mé Qué, Mé Qué

Mé Qué, Mé Qué

フランス語原詞はこちら


れ ナヴィれ た き
Le navire est à quai
や で た で パキッ
Y a des tas de paquets
で パキ ポゼ しゅら キ…ら
Des paquets posés sur le quai... là
どん ざん ぺてぃ トるキッ
Dans un petit troquet
だん ポゥ マるティニキ
D'un port martiniquais
ゆね ふぃゆ ベラ クろキ ら
Une fille belle à croquer... là

船は港に泊まっている。
積荷がいっぱいだ。
港の上の積荷…その
マルティニークの港の
小さな酒場では
絵のようにかわいい女の子…が


プレウ どん れ ブがァ
Pleure dans les bras
だん ギャるソン ど クレー
D'un garçon de couleur
きゃリル そん ゔぁ
Car il s'en va
え るい ブぎーズ ら ケ
Et lui brise le cœur
エレ どん ざん ホケッ
Elle dans un hoquet
ルイ テンダン そん ティケッ
Lui tendant son ticket
ルイ ディ、シェリ け トゥ ゔぁ め モケ
Lui dit: "chéri que tu vas me manquer"

黒い肌をした青年の腕に
とりすがって泣いている。
彼氏は行ってしまうから。
そして辛い思いをさせるから。
彼女はしゃくりあげながら
彼氏に切符を差し出して
「ダーリンあなたがいなくなったら
どんなにさびしくなるか」
と言うのだった。


め ケ め ケ
Mé qué mé qué
め ケ す ク せ
Mais qu'est ce que c'est
ゆ ニストワーぅ で とぅ れ ジューる
Une histoire de tout les jours
め ケ め ケ
Mé qué mé qué
め ケ す ク せ
Mais qu'est ce que c'est
ぺてと ら ファン どぅ ナムー
Peut-être la fin d'un amour

めけめけぇ?
でもそれが何だっていうんだ。
毎日あるような話じゃないか。
めけめけぇ?
でもそれが何だっていうんだ。
まあ愛の終わりってやつだね。


らシーれヌ ブるスカ
La sirène brusqua
レウ ザデュ でりか
Leurs adieux délicats
め さうだん とぅ せ コンプリカ…あ
Mais soudain tout ce compliqua... ah!
ら プティト マスカ
La petite masqua
あん なんそん そん トらカ
Un instant son tracas
ぷーとん ソン コラゲ モンカ…ら
Pourtant son courage manqua... là

ふたりのせつない別れを
汽笛がせきたてる。
でも突然すべてがめちゃめちゃになって
…ああ。
かわいい女の子は
いったんは気持ちを抑えた。
でもその勇気も崩れて…そして


エル ディー、ジェ ペ
Elle dit: "j'ai peur
イル の ふぁー ぱ パるティ
Il ne faut pas partir
ヴォワ トゥ モン ケ
Vois-tu mon cœur
さん トワ ジェ ゔぁ ムリ
Sans toi je vais mourir"
る ギャるソン エッスプリカ
Le garçon expliqua
きる ファラ え トゥ か
Qu'il fallait en tout cas
きる パるテ え せ ポクァ イ ロンバるカ
Qu'il parte et c'est pourquoi il embarqua

彼女は言う「私は怖いの」
「離れたりしちゃいけないわ
私の心がわからない?
あなたがいないと死んじゃうわ」
彼氏は説得するのだった。
何があろうと行かなきゃならない。
船に乗らせておくれ。


め ケ め ケ
Mé qué mé qué
め ケ す ク せ
Mais qu'est ce que c'est
ゆ ニストワーぅ で とぅ れ ジューる
Une histoire de tout les jours
め ケ め ケ
Mé qué mé qué
め ケ す ク せ
Mais qu'est ce que c'est
ぺてと ら ファン どぅ ナムー
Peut-être la fin d'un amour

めけめけぇ?
でもそれが何だっていうんだ。
毎日あるような話じゃないか。
めけめけぇ?
でもそれが何だっていうんだ。
まあ愛の終わりってやつだね。


り パキ ぞンバるキ
Les paquets embarqués
る ばっとぅ ぞモヮキ
Le bateau remorqué
ロントモン あ キッテ る キ…ら
Lentement à quitté le quai... là
の すぉいや ぱぁ ショケ
Ne soyez pas choqué
なれぱ ヴー モケ
N'allez-pas vous moquer
どぅ せ ケ ジュ ゔぁ エッスプリケ…ら
De ce que je vais expliquer... là

積荷が運び込まれ
船は引き船に引かれ
ゆっくりと港を離れてゆく…と
ショックを受けないでくださいね。
笑ったりしないでくださいね。
私がこれから言うことから…ね。


ごぉガるダン と ポる
Regardant au port
そん ベ ラムー が テれ
Son bel amour à terre
プり ど がモる
Pris de remord
イル プルンジャ だん ら メる
Il plongea dans la mer
ディヴァン せ くー リスケ
Devant ce coup risqué
ぱる ラムー プロヴォケ
Par l'amour provoqué
れ げクイン えん げステれん いんてろけ
Les requins en restèrent interloqués

自分の美しい恋人が
波止場の地面に立っているのを見て
後悔の念にとらわれ
彼氏は海に飛び込んだんだ。
愛によって突き動かされた
この命がけの行動に
サメたちさえもたじたじだった。


め ケ め ケ
Mé qué mé qué
め ケ す ク せ
Mais qu'est ce que c'est
ゆ ニストワーぅ で とぅ れ ジューる
Une histoire de tout les jours
め ケ め ケ
Mé qué mé qué
め ケ す ク せ
Mais qu'est ce que c'est
せ ラーろーれ どぅん ぬーゔぉー ジュー
C'est l'aurore d'un nouveau jour
キ え ふぇ ぽー どぅれ トゥジューる
Qui est fait pour durer toujours
キャ ラムー ゔぃぇん ぽ げトろゔぇ ラムー
Car l'amour vient pour retrouver l'amour

めけめけぇ?
でもそれが何だっていうんだ。
毎日あるような話じゃないか。
めけめけぇ?
でもそれが何だっていうんだ。
新しい朝の始まりじゃないか。
これから永遠に続くような朝だ。
だって愛は
恋人のもとに帰ってきたんだから。

=翻訳をめぐって=

10月1日に逝去されたフランスを代表するシャンソン歌手にして作詞家、シャルル·アズナブール氏の作品。「メケメケ」というのは一度聞いたら忘れられない響きを持った言葉で、日本語世界でも無意識のうちにかなり多くの人がその影響を受けているのではないかと思う。上に貼りつけた画像は「魔法陣グルグル」というマンガに出てくる「メケメケ」という名前の想像上の動物たちなのだけど、シャルル·アズナブール氏がいなければあのメケメケたちも生まれることはなかったに違いない。(韓国で放送されたアニメからとられた画像であるらしく、ハングル文字の字幕が入っているが、あれはあれで「メケメケ〜!!」と読む)。他に「クレヨンしんちゃん」にも「ブラックメケメケ団」というのが登場したらしいが、下ネタが苦手なもので見ていなかったのでそれは知らない。

「メケメケ」とは何なのか。Wikipediaによるならば、カリブ海に浮かぶフランス領の島、マルティニークの言葉であるらしく、そこの原住民の人たちがフランス語の「Mais, qu'est-ce que c'est? (メ·ケスクセ=でも、それがどうしたの?)」を「Méqué méqué? (メケメケ?)」と発音しているという話を聞いたアズナブール氏が、面白がって歌にした、という風に書かれている。しかし同じWikipediaによるならば、ヨーロッパ人から「カリブ人」と呼ばれていたマルティニークの先住民の人々は、フランス軍による虐殺によって1658年には「絶滅」させられたと書かれている。ジャマイカの場合と同じく、現在のマルティニークの人口は過去に「奴隷」として強制連行されてきたアフリカ系の人々の子孫が大半を占めており、Wikipediaの記事ではその人たちのことが「原住民」という言葉で呼ばれているのだと思われるが、まるでフランスによる過去の虐殺や奴隷貿易の推進を「なかったこと」にするかのような「歴史の偽造」につながる言い方であり、かつ記事を書いた人間が現在マルティニークで暮らしている人たちのことを心から「どうでもいい」と思っていることが透けて見える言い方でもある。そういうことは「ちゃんと」書かれねばならないと思う。

イギリスによってジャマイカに連行されてきた様々な出自を持つ人々が、世代を重ねる中で「ジャマイカ独自の英語」を発展させてきたように、フランス植民地に生まれ育ってきた人々は「クレオール的」と表現される独自の文化を育んできたが、歴代のフランス政府はこれを敵視し、「クレオール語」を「粗野で崩れた方言」であると見なして「矯正」の対象にする、フランスへの同化政策をとってきた。だが「クレオール語」は「クレオール語」なのであって、「フランス語の方言」としてではなく「それと対等に扱われるべき独自の言語」なのであり、「メケメケ」もまた同様だと思う。だがこの歌の場合、そもそもアズナブール氏が「マルティニークではそういう言い方をするらしい」ということを「聞きかじって」「面白がって」作ったにすぎないという話であり、Wikipediaの情報だけでは本当にマルティニークでは「メケメケ」という言葉が使われているのかどうかということ自体、定かではない。

この歌では主人公の片方の青年が黒人であることを表現するために「couleur (色)」という言葉が使われているが、アメリカにおいて「colored (色つき)」という言葉が白人以外の人々に対するどれだけの蔑みを込めて使われてきたかという歴史を考え合わせれば、フランス語でも事情は同じなのではないかと思う。これはどうしても、マルティニークの人々自身がこの歌をどう思っているのかを知る必要があると思ったが、そこまでは調べられなかった。フランス語を知っている方で何かご存知の方が読んでおられたら、教えてください。



それはそれとして、「メケメケ」というのはいったん耳に入ってくるとすごく「日本語的な響き」を持った言葉だと思う。それが「でもそれがどうしたの?」という意味だと言われても、なぜかスッとは腑に落ちない。むしろ「気力が萎えたさまを表現する擬態語」であるように思えてしまう。それも「メケメケになる」という風に自動詞的には使えても、「メケメケにしてやるぜ」という風に他動詞的に使おうとするとなぜか「不自然な印象」が生まれてくるようにも思える。まるで「昔からあった日本語」みたいである。不思議なものだ。あるいは、「めげる」という言葉が先に存在していることから連想が働いてしまうのだろうか。しかし「めげめげ」と「メケメケ」だと、受けるイメージはやっぱり全然違う。

こういう「言葉がどこからやってくるのか」という疑問は、頭で考えても絶対答えは出ないのだけど、昔から私を捉えて離さないテーマである。ある意味で「人間はなぜ生まれてなぜ生きているのか」というテーマと等しいような問いなのだけど、それを「説明」しようと思ったらまずは「言葉はどこから生まれてくるのか」ということが「説明」できなければならないはずなのだ。「説明」は「言葉」でしかできないものだからである。

…「もの」でいいのだろうか。しかし「こと」と言うとそれはそれで何か違和感がある。

…何でこんな話になってしまったのだ。


メケ·メケ(Doctor Kesseler)

私がこの歌を初めて知ったのはスネークマン·ショーのファーストアルバムに収録されていたバージョンを通じてだったのだけど、歌い手として名前がクレジットされている「ドクター·ケセラー」という人はフォーク·クルセイダーズに在籍していた加藤和彦氏の変名だったのだということを、今回調べて初めて知った。それまでに聞いたこともないような曲だったものでずっと心に残っていたのだが、歌詞の中に黒人に対するあからさまな蔑称が含まれており、そのことがずっと引っかかっていた。

この日本語詞を作詞したのは丸山明宏を名乗っていた時代の美輪明宏氏だったそうで、下のサイトではそれが「口語体による日本語歌詞」の黎明期におけるどれだけ革新的な作品だったかということが力説されているのだが、それはそれで認めるとして、歌詞の中に使われている人種差別的な言葉について一言も批判がなされていないのは、やはり気になる。こと差別が問題である限り、「その時代では当たり前だった」とか「仕方なかった」とかいう話には絶対ならないはずなのである。差別される当事者にとって「それが当たり前だった時代」「苦痛でなかった時代」などというものは、一瞬もなかった。だからその人たちの闘いによって時代はここまで「変わって」きたのだ。それを無化するような言説がはびこり続ける限り、差別は現代に至っても依然存在し続けているのである。などと持って回った言い方をするより、そもそもこうした記事そのものが差別なのだ、と私は思う。書く人は、考えてほしい。
www.tapthepop.net
西欧の言語で書かれた歌に対する私のふりがなのつけ方は、けっこう独特なのだけど、基本的には日本語だと漢字で書かれることの多い言葉、すなわち名詞と動詞にカタカナを使い、他にはひらがなを使うというスタイルをとっている。けれどもLとRの音を区別するためにRの音にだけひらがなを使うとかいったこともしているので、つまるところは恣意的である。基本的には「私自身が歌えるようになるため」に便宜的につけているものでしかないので、何でもいいと言えば、何でもいいのだ。外国語の発音を習得するのに日本語の文字に頼るのは邪道だという意見もあるし、それはそれですごくモットモな話なのだけど、ひらがなの力というものをナメてはいけないのである。スペイン語やイタリア語は比較的「ローマ字で書かれた通りの発音」で通用するのだが、フランス語やゲール語は「書かれた通りに読まない」ケースがほとんどなので、専門的に勉強したことのない私のような人間は、ふりがなに頼らなければとても歌えるようになれない。

今回ふりがなをつけてみて改めて思ったけれど、フランス語の「R」の発音というのは本当に独特で、「らりるれろ」とはほぼ聞こえない。うがいをするような感じの「がぎぐげご」、さらには「ざじずぜぞ」と聞こえる場合もある。そういうのをひとつひとつ「発見」できる面白さもあるから、ふりがなをつける作業というのは私個人にとって重要なのだ。

…何だか、全然まとまりのない記事になってしまった。

ではまたいずれ。


メケ·メケ(チャラン・ポ・ランタン)


=楽曲データ=
Released: 1954.
Key: C

スネークマンショー (急いで口で吸え!)

スネークマンショー (急いで口で吸え!)

  • アーティスト: スネークマンショー,Dr.ケスラー,クラウス・ノミ,ユー・アンド・ミー・オルガスムス・オーケストラ,YMO,シーナ&ザ・ロケッツ,ザ・ロカッツ,伊武雅刀とTHE SPOILとお友だち,サンディー,THE CRAP HEADS
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
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