華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Tennessee Stud もしくはほんの人助け#2. (1959. Jimmy Driftwood)

久しぶりに翻訳リクエストを頂きました。前回の「メケメケ」の記事にコメントを書いてくださった、Ksukeさんという方です。

初めまして。

昨日たまたまnagiさんのこのブログにたどり着きまして、私はニルヴァーナが大好きでトムウェイツも大好きなのですが、その和訳の記事を読んで、本当に作詞者の気持ちで和訳されていると私は感じました。

これから他の記事も順に読んでみたいと思います。

リクエストも受けていらっしゃるということで、もしドク ワトソンを聴いてみて可能なようでしたら和訳をお願いします。

Tennessee studという曲が好きなのですが、これはもしかしたらドクワトソンが原曲じゃないかもしれません。

変なお願いですが検討よろしくお願い致します。

えー…お受け致しましょう。全然知らない方からのリクエストに応じるというのは実はこれが初めてなのですが、好きな歌が何を歌っているのかが長年わからないままでいるというのは、辛いことです。このブログも元はといえばその辛さから始まっていますので、お気持ちは分かります。一肌脱がせて頂きましょう。

ちなみに場合によってはお引き受けいたしかねるケースというのもあるのですが、モッタイをつけても始まりません。引き受けた以上はキッチリ翻訳させて頂きます。ただ、今回の記事を読んで自分もリクエストしてみたいというような気持ちになられた方がいらっしゃったなら、一応上記リンクに目を通した上にして頂ければ幸いです。

さて、リクエストを頂いた「Tennessee stud」という歌について、私は今まで何も知らなかったのでしたが、「ドッグ·ワトスン」という名前には、覚えがありました。昔、中学生だった頃に通いつめていた大阪の阪急東通商店街のLPコーナーという名前のレコード屋(今でもあるのだろうか)の店長さんから、「ものすごい早弾きのギタリストがおるんや」と伝説的な感じでその名を聞かされたことがあったからでした。しかし中学生だった私はその名前をずっと「ドッグ·ワトスン」で覚えており、頭にあったのは昔テレビでやっていた宮崎アニメの「名探偵ホームズ」に出てきた「犬のワトスン」のイメージでした。今回のKsukeさんのリクエストを通じて初めてその人が「Doc Watson」だったことに気づき、犬とは何の関係もなかったことを知ることができた次第です。ただし、Wikipediaによるならやっぱり本人の芸名の由来はホームズの相棒の「ドクター·ワトスン」だったらしいのですけどね。



Wikipediaの英語版にはこの曲についての記事がありまして、それによるならば元々はジミー·ドリフトウッドという人が1959年に出した曲なのだそうです。ドク·ワトスンが「Southbound」というアルバムでこれをカバーしたのが1966年。他にもハンク·ウィリアムスやジョニー·キャッシュなど、多くの人によってカバーされているスタンダードな曲らしいです。

それで歌の内容なのですが、「馬の歌」ですね。


Tennessee Stud

Tennessee Stud

英語原詞はこちら


Along about eighteen twenty-five,
I left Tennessee very much alive.
I never would have got through the Arkansas mud
If I hadn't been a-ridin' on the Tennessee Stud.

1825年ぐらいのこと。
おれは元気にテネシーを旅だった。
もしもおれがあのテネシー·スタッドに
乗っていなかったら
アーカンソーの沼地は
とても越えられなかっただろう。


I had some trouble with my sweetheart's pa,
And one of her brothers was a bad outlaw.
I sent her a letter by my Uncle Bud,
And I rode away on the Tennessee Stud.

おれは恋人の父親とのあいだに
トラブルを抱えていて
さらに恋人のきょうだいの一人は
やくざものだった。
おれはバッドおじさんの力を借りて
彼女に手紙を送り
そしてテネシー·スタッドに
またがって旅に出た。


The Tennessee Stud was long and lean,
The color of the sun, and his eyes were green.
He had the nerve and he had the blood,
And there never was a horse like the Tennessee Stud.

テネシー·スタッドは
大きくてスマートな体つきだった。
太陽の色の毛並みに
緑色の瞳をしていた。
度胸もあって血筋もよかった。
テネシー·スタッドみたいにいい馬は
他のどこにもいなかった。


One day I was riding in a beautiful land
I run smack into an Indian band
They jumped their nags with a whoop and a yell
And away we rode like a bat out of hell.

ある日おれがスタッドに乗って
とある美しい土地を進んでいると
Indianの一団に正面からぶつかった。
Indianは自分たちの老いぼれ馬に
ジャンプをさせて大声で騒いだが
おれたちは
地獄から現れたコウモリみたいに
その場を立ち去った。


I circled their camp for a time or two,
Just to show what a Tennessee horse can do.
The redskin boys couldn't get my blood,
'Cause I was a-riding on the Tennessee Stud.

おれはIndianのキャンプの周りを
一周か二周回ってやった。
テネシーの馬にはどんなことができるか
見せつけてやるためだ。
redskin boyたちはおれに
血を流させることはできなかった。
なぜっておれは
あのテネシー·スタッドに
乗っていたんだから。


We drifted on down into no man's land,
We crossed that river called the Rio Grande.
I raced my horse with the Spaniard's foal
'Til I got me a skin full of silver and gold.

おれたちはさまよって
誰のものでもない土地に分け入り
リオ·グランデと呼ばれる川を渡った。
スペイン人たちの仔馬と
競走したものだ。
金と銀とでいっぱいの
革袋を手に入れるまで。


Me and a gambler, we couldn't agree,
We got in a fight over Tennessee.
We jerked our guns, and he fell with a thud,
And I got away on the Tennessee Stud.

とあるギャンブラーとおれ
折り合いが悪くて
テネシーのことでケンカになった。
おれたちは銃を抜き
そいつは音を立てて倒れた。
そしておれはテネシー·スタッドに
またがって逃亡した。


I got just as lonesome as a man can be,
Dreamin' of my girl in Tennessee.
The Tennessee Stud's green eyes turned blue
'Cause he was a-dreamin' of a sweetheart, too,

おれは人間の限界までさびしくなり
テネシーのあの娘を夢見た。
テネシー·スタッドの緑の瞳が
ブルーに変わった。
あいつも恋人の夢を
見てたからなんだな。


We loped right back across Arkansas;
I whupped her brother and I whupped her pa.
I found that girl with the golden hair,
And she was a-riding on the Tennessee Mare.

おれたちは軽やかに
アーカンソーを駆け戻り
彼女のやくざもののきょうだいと
その父親をめちゃめちゃにやっつけた。
金色の髪をしたその娘を
おれは見つけた。
そして彼女は
テネシー·メアに乗っていた。


Stirrup to stirrup and side by side,
We crossed the mountains and the valleys wide.
We came to Big Muddy, then we forded the flood
On the Tennessee Mare and the Tennessee Stud.

あぶみとあぶみを寄せ合って
おれたちは並んで走り
山脈や峡谷をいくつも越えた。
ビッグマディ川に行き着いて
あふれる水を歩いて渡った。
テネシー·スタッドと
テネシー·メアにまたがって。


A pretty little baby on the cabin floor,
A little horse colt playing 'round the door,
I love that girl with the golden hair,
And the Tennessee Stud loves the Tennessee Mare.

丸太小屋の床には
可愛い赤ちゃん。
ドアの周りでは
オスの仔馬が遊んでる。
おれは金髪の彼女を愛してる。
そしてテネシー·スタッドも
テネシー·メアを愛してる。

=翻訳をめぐって=

  • 「stud」は「オスの馬/種馬」のこと。「mare」は「メスの馬」のこと。「テネシー·スタッド」と「テネシー·メア」は、要するにテネシー州で生まれ育ったオスの馬とメスの馬ということで、いいと思います。
  • The Tennessee Stud was long and lean」…「lean」は「引き締まった体格をしている」という意味ですが、「long」が「体高が高い」ということを言っているのか「鼻先から尻尾までが長い」ということを言っているのかということは、正直よくわかりませんでした。
  • He had the nerve and he had the blood」…人間であろうと動物であろうと「血筋」で相手を判断しようとするような人間のことを私は基本的に大嫌いなのですが、辞書に載っていた意味通りに翻訳しました。
  • 歌詞に出てくる「Indian」「Redskin boys」という言葉は、アメリカ先住民の人々に対する蔑称です。ひどい歌詞だと思いますが、ここでは原文をそのまま転載しました。
  • リオグランデ川はアメリカとメキシコの国境を流れる川で、そこを「誰のものでもない土地」と呼ぶことはメキシコの人にとっても先住民の人々にとっても許しがたい言い方だと思いますが(実際、アメリカ合州国はこの論理にもとづいて歴史上何度もメキシコの領土に侵攻し、テキサス州をはじめ多くの土地を奪い取っている)、歌詞に書かれている通りに翻訳しました。

…以上、せっかくリクエストを頂いたにも関わらず曲のイメージを悪くするようなことばかり書くことになってしまい恐縮ですが、私が翻訳する以上はこうした形で「曲に対する自分自身の態度」を明らかにしておく他にありません。参考にして頂ければと思います。ではまたいずれ。