華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Lodi もしくはカリフォルニア州サンホアキン郡ローダイ (1969. C.C.R.) ※


Lodi

Lodi

英語原詞はこちら


Just about a year ago,
I set out on the road,
Seekin' my fame and fortune,
lookin' for a pot of gold.
Things got bad, and things got worse,
I guess you will know the tune.
Oh ! Lord, stuck in Lodi again.

一年ぐらい前のこと
おれは旅に出た。
富を求め名声を求め
黄金の壺をさがしてってやつだ。
物事はうまくいかずひどくなるばかり。
あんたにもあの歌が
聞こえてくるんじゃないかな。
ああ神さま
またローダイから
抜け出せなくなっちゃったよ。


Rode in on the Greyhound,
I'll be walkin' out if I go.
I was just passin' through,
must be seven months or more.
Ran out of time and money,
looks like they took my friends.
Oh ! Lord, I'm stuck in Lodi again.

来る時には
グレイハウンドバスに乗ってたけど
出て行く時には
歩くしかないんだろうな。
ただ通り過ぎるだけの
場所だったはずなんだ。
もうきっと7ヶ月と
それ以上になっていると思う。
カネも時間もなくなって
友達まで取られちゃったみたいだ。
ああ神さま
またローダイから
抜け出せなくなっちゃったよ。


The man from the magazine
said I was on my way.
Somewhere I lost connections,
ran out of songs to play.
I came into town, a one night stand, looks like my plans fell through
Oh ! Lord, stuck in Lodi again.

雑誌の中に出てきた人は
夢は必ず叶うなんて言ってたっけ。
どこかの時点でおれは
つながりを使い果たして
歌う歌もなくなってしまった。
街にやってきた時には
一夜限りの予定だったはずなんだ。
思ってたようには
行かなかったみたいだな。
ああ神さま
またローダイから
抜け出せなくなっちゃったよ。


If I only had a dollar,
for ev'ry song I've sung.
And ev'ry time I've had to play
while people sat there drunk.
You know, I'd catch the next train
back to where I live.
Oh ! Lord, I'm stuck in Lodi again.
Oh ! Lord, I'm stuck in Lodi again.

一曲歌うたびごとに
そしてみんなが座って酔っ払ってる
前で歌わされるたびごとに
せめて1ドルずつでも
払ってもらえてたらなあ。
次の列車をつかまえて
昔の街に帰りたいよ。
ああ神さま
またローダイから
抜け出せなくなっちゃったよ。
ああ神さま
またローダイから
抜け出せなくなっちゃったよ。


ローダイの街の入口に立つアーチ

プラウド·メアリー」をやっつけてしまったので、その勢いで同じく長年の課題曲だったこの歌にも、決着をつけておきたいと思う。CCRの歌詞というのはディランの歌みたいにややこしい言葉が使われているわけではないけれど、どこか独特で、難解なのだ。この曲にしても、10代の頃からのお気に入りではあったけど、どういうことを歌っているのかはさっぱり分からなかった。

一番わからなかったのはやっぱり、「Lodiって何やねん」ということだった。こんな言葉は辞書にも載っていない。Lord(神)という言葉に引っかけた造語なのだろうかとか、いろいろコネくり回してみたりしたものだったが、その作品のことを何も分かっていない時に限って、そういう「深読み」がしたくなってしまうものなのだ。本当に「深読み」が必要なのは「単純でわかりやすい作品」なのであって、あえて「分かりにくい言葉」で書かれた作品には、むしろその言葉通りの意味しか含まれていない場合の方が多いのである。

科学の進歩(とはあまり関係ないかもしれないが)は素晴らしいもので、この曲に関しても20年ぶりに調べてみたところ、「Lodi」とは「地名」にすぎなかったことが、アッサリと分かってしまった。それも、実在の地名である。Wikipedia日本語版の「ローダイ」という項目は、人口6万人あまりの外国の小さな街に関する記事としては異様に充実しているのだが、その中では街とこの歌との関係についても、ちゃんと言及されている。

それにしても、「ローダイ」が実在する街の名前だったと聞かされてみると、この歌は実在のローダイの住民の皆さんに対してかなり失礼な歌なのではないかと思う。大都会で一旗あげるつもりだった主人公が、通過点にすぎなかったはずのうだつの上がらない田舎町で何となく足止めを食っている間に、アリ地獄のごとくハマり込んで抜け出せなくなってしまった、というのがこの歌の大まかな内容なわけだが、その「うだつの上がらない田舎町」の「実例」として全米に名前を言いふらされてしまったのでは、ローダイの皆さんはたまったものではないのではないだろうか。

しかもジョン·フォガティ自身は、カリフォルニア生まれではあるものの、このローダイという街には一度も行ったことがないまま、ただ「響きがキャッチーだから」という理由だけで、歌詞にすることを決めたのだという。そんな無責任な話があるだろうかと思う。私の地元にも、そりゃ、「歌にしたくなるようなキャッチーな地名」というものは、いくつかあった。私の通っていた高校では、奈良県生駒郡斑鳩町から通学している生徒は自分のことを「イカルミン」、平群町の生徒は「へグリスト」と自称していて、何のヒネりも加えることのできないしょーもない奈良市民だった私は、そんな風にドラクエの呪文みたいに聞こえるかれらの地元名がうらやましくてたまらなかったものだった。しかしだからと言って、歌にされるその内容が「平群から抜け出せなくなっちまった」というものだったとしたら、へグリストたちはやっぱり怒るに違いない。そういう歌を歌っても構わない人がもしいるとしたら、それは生粋のへグリストに限られているはずだと私は思う。

…いつの間に平群の話になってしまったのだ。「ローダイ」の話だ。とにかくそんな風に、ローダイの人たちは「怒って当たり前」だと思うのだけど、Wikipediaを見る限りはそんなに反感を買っている感じでもなく、街のブドウの収穫祭ではこの歌が「テーマソング」として流されたりもしているらしい。どうなんだろうなあ。そういえば吉永小百合が昔「奈良の春日の青芝に/腰を下ろせば鹿のフン」みたいなふざけた歌を歌ってもいるのだけれど、だからといって吉永小百合がキライだという人は地元にはいなかった気がする。その程度の感覚なのかなあ。全然関係のないことを関係させようとしているのかなあ私は。いずれにしても、個人的には、鼻歌であってもこの歌を口ずさむことは、もうやめようと思う。だって、失礼だと思うもの。ローダイの人たちに。

=翻訳をめぐって=

I guess you will know the tune.

「tune」とは「旋律」のこと。昔はこの行の意味が全然わからなかったのだが、つまるところ「♪ Oh Lord, I'm stuck in Lodi again…という歌をあなたも知ることになるでしょう」ということなのだと思う。「フラクタルソング」なのである。

Rode in on the Greyhound,

…ここも、10代の頃に頭を悩ませた歌詞だったな。「グレイハウンド」というのは「犬」かと思っていた。バスの名前だということが今なら調べればすぐに分かるのだけど、ネットのなかった時代にはそんなことも分からなかったのだ。

looks like they took my friends.

直訳は「かれらは友だちを取ってしまったようだ」。ここもよく分からなかったけれど、具体的には一緒に旅していたバンドメンバーがその街で出会った彼女とくっついてバンドから離れてしまった、みたいな意味なのではないかと思う。「友だち」は主人公よりもローダイの街を選んだわけで、その意味では「居心地のいい街」なのだ。フォローになっていないけど。

The man from the magazine
said I was on my way.

…またまた魔法じみた歌詞なのだ。「雑誌の中から現れた男は、私は順調に進んでいると言っていた」。つまるところ、雑誌の中でとあるサクセスストーリーの主人公が、読者に向かって「君は可能性にあふれている」みたいなことを言っていたのを読んで、その気になって旅に出た。みたいな内容なのではないかと思う。知らんのやけど。

www.nicozon.net
上の動画の一曲目の、もりばやしみほさんの「私の畑で」という歌が、何となく、重なりました。ではまたいずれ。


=楽曲データ=
Released: 1969.4.
Key: B♭

Lodi

Lodi

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  • provided courtesy of iTunes