華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Ding Dong, Ding Dong もしくは鬼は外福は内 (1974. George Harrison)


Ding Dong, Ding Dong

Ding Dong, Ding Dong

英語原詞はこちら


Ring out the old
Ring in the new
Ring out the old
Ring in the new

鐘の音で古いものを打ち払い
新しいものを招き入れよう。
鐘の音で古いものを打ち払い
新しいものを招き入れよう。


Ring out the false
Ring in the true
Ring out the old
Ring in the new

鐘の音で間違ったことを打ち払い
真実を招き入れよう。
鐘の音で古いものを打ち払い
新しいものを招き入れよう。


Ding-dong, ding-dong
Ding-dong, ding-dong
Ding-dong, ding-dong
Ding-dong, ding-dong

りんごんりんごん
りんごんりんごん
りんごんりんごん
りんごんりんごん


Yesterday, today was tomorrow
And tomorrow, today will be yesterday
So ring out the old
Ring in the new
Ring out the old
Ring in the new

昨日には今日という日は明日で
明日には今日という日が昨日になる。
だから鐘の音で古いものを打ち払い
新しいものを招き入れよう。
鐘の音で古いものを打ち払い
新しいものを招き入れよう。


Ring out the false
Ring in the true
Ring out the old
Ring in the new

鐘の音で間違ったことを打ち払い
真実を招き入れよう。
鐘の音で古いものを打ち払い
新しいものを招き入れよう。


Ding-dong, ding-dong
Ding-dong, ding-dong
Ding-dong, ding-dong
Ding-dong, ding-dong

りんごんりんごん
りんごんりんごん
りんごんりんごん
りんごんりんごん

=翻訳をめぐって=

「ring」は「鐘を鳴らす」であり、「ring out」は「ringすることを通して外に出す」みたいな意味の熟語になる。「ring in」はその逆である。だから冒頭のフレーズを「意訳」するなら

鐘の音で古いものを打ち払い
新しいものを招き入れよう。

みたいな感じになり、翻訳としてはそれで間違いでも何でもないのだが、いかにも説明くさいし、面白くも何ともないし、私は正直、全然気に入っていない。

Ring out the old
Ring in the new

というフレーズの「語感のフィーリング」からするならば、

古いものをジャンして
新しいものをゴンしよう

といった形で「翻訳」した方が、絶対歌っているジョージ自身の気持ちにも近づけるはずだと思うのである。

とはいえ上のような訳し方では全然「翻訳」になっていないこともまた明らかなわけで、何となれば「ジャンする」が「打ち払う」という意味で「ゴンする」が「招き入れる」という意味だということなど、説明されなければ(と言うか、説明されても)「わかる人」なんているわけがないからだ。どうしてもこの訳し方にこだわりたいと思うなら、「これは『打ち払う』と言ってるのだな」「これは『招き入れる』と言ってるのだな」ということが、説明されなくても全ての日本語話者におのずと「伝わる」ような擬音表現を、私自身が自力で「発見」するしかないことになってしまう。「やってやらあ」と思ってしばらくいろいろ頑張ってみたのだが、最終的には

古いものをチェスト関ヶ原

みたいな文字列が頭の中を渦巻き出して収集がつかなくなってしまったので、不本意ながら最初の「意味的に間違いのない訳し方」を試訳に採用せざるをえなかった。こういう翻訳が、結局一番難しいと思う。

日本の小学校のチャイムにも採用されている、曲中の聞き慣れたメロディは、元々はケンブリッジの大学校内にある教会の鐘の音として1793年に作曲され、19世紀以降は「ビッグ·ベン」の愛称で親しまれているロンドンのウエストミンスター寺院の時計台の鐘の音として百数十年にわたり「15分に1回ずつ」鳴らされ続けているフレーズなのだという。正式な曲名は「Westminster Quarters (ウエストミンスターの鐘)」と言うらしい。今ではダウンタウンなんて大嫌いだけど、むかし松本人志がこの曲に「君たち...今こそ...」という「歌詞」をつけて歌っていたのは、無性に面白かった。何しろ「今こそ」の「続き」を「言わない」ということが、やたらと面白かったのだった。ではまたいずれ。



=楽曲データ=
Released: 1974.11.20.
Key: B