華氏65度の冬

うたを翻訳するということ

Where The Streets Have No Name もしくは はじまりの歌 (1987. U2)


Where The Streets Have No Name

Where The Streets Have No Name

英語原詞はこちら


I want to run
I want to hide
I want to tear down the walls
That hold me inside
I want to reach out
And touch the flame
Where the streets have no name

わたしは走り出したい。
わたしはこの身を隠したい。
わたしをその内側に囲い込んでいる壁を
打ち壊してしまいたい。
わたしは手を伸ばし
燃える炎に触れたい。
通りに名前なんか
ついていない場所で。


I want to feel sunlight on my face
I see the dust cloud disappear
Without a trace
I want to take shelter from the poison rain
Where the streets have no name

わたしは自分の顔に
太陽を感じたい。
砂塵の雲が跡形もなく
消え去ってゆくのが
わたしには見える。
毒の雨から隠れる場所が
わたしはほしい。
通りに名前なんか
ついていない街に。


Where the streets have no name
Where the streets have no name
We're still building
Then burning down love
Burning down love
And when I go there
I go there with you
It's all I can do

通りが名前を持たないところ。
通りが名前を持たないところ。
わたしたちは今でも愛を育んでは
それを燃やし尽くしている。
愛を燃やし尽くしている。
そしてわたしがそこへ行く時は
あなたと一緒に行きたいと思う。
わたしにできることは
それだけだ。


The city's aflood
And our love turns to rust
We're beaten and blown by the wind
Trampled in dust
I'll show you a place
High on a desert plain
Where the streets have no name

街は洪水に呑まれ
わたしたちの愛は残りかすに変わる。
わたしたちは打ちのめされ
風に吹き飛ばされて
粉塵の中で踏みにじられる。
あなたに見せたい場所がある。
砂漠の平原を見おろす高み
通りに名前なんか
ついていないところ。


Where the streets have no name
Where the streets have no name
We're still building
Then burning down love
Burning down love
And when I go there
I go there with you
It's all I can do
Our love turns to rust
We're beaten and blown by the wind
Blown by the wind
Oh, and I see love
See our love turn to rust
We're beaten and blown by the wind
Blown by the wind
Oh, when I go there
I go there with you
It's all I can do

通りが名前を持たないところ。
通りが名前を持たないところ。
わたしたちは今でも愛を育んでは
それを燃やし尽くしている。
愛を燃やし尽くしている。
そしてわたしがそこへ行く時は
あなたと一緒に行きたいと思う。
わたしにできることは
それだけだ。
わたしたちの愛は残りかすに変わる。
わたしたちは打ちのめされ
風に吹き飛ばされる。
風に吹き飛ばされる。
ああわたしには愛が見える。
わたしたちの愛が
さびついてゆくのが見える。
わたしたちは打ちのめされ
風に吹き飛ばされる。
風に吹き飛ばされる。
ああわたしがそこへ行く時は
あなたと一緒に行きたいと思う。
わたしにできることは
それだけだ。

=翻訳をめぐって=

In 1985, Bono visited Ethiopia after performing at Live Aid. Many people assumed this song was about that trip, since the streets there really don't have names, just numbers. The song is actually about Ireland. In Ireland (and Northern Ireland), the many cities are divided: rich/poor, Catholic/Protestant, etc. By knowing which street a person lives on you can tell their religion, wealth and beliefs - it's where the streets have no name.
1985年、ライブ·エイドでのパフォーマンスを終えた後、ボノはエチオピアを訪れた。多くの人はこの歌を、その旅についてのものだと考えた。事実、エチオピアの街の通りには名前がついておらず、ただ番号が振られているだけだからである。実際にはこの歌は、アイルランドのことを歌っている。アイルランド(および北アイルランド)においては、多くの街が分断されている。貧富の差や、カトリックとプロテスタントの違い等々によって。その人がどの通りに住んでいるかで、その宗教や収入や思想信条までが分かってしまう。「通りが名前を持たないところ」なのである。
-英語圏の歌詞読解サイト「Songfacts」より-

Bono wrote these lyrics whilst doing aid work in Ethiopia, which inspired him to think about the divisions in society. The environment he experienced in Ethiopia directly contrasted that of Belfast, Northern Ireland, which the song is based on. Unlike Belfast, the streets Bono saw in Ethiopia did not have names, making the people more equal. This stanza argues for a world like this, one in which the walls that divide us all socially are torn down and we live as equals.
ボノはこの歌詞を、エチオピアでの援助活動の中で書きあげた。その活動は彼にとって、社会における分断について考えさせられるきっかけとなったものだった。彼がエチオピアで経験した環境は、この歌のベースとなっている北アイルランドのベルファストと直接に対照をなしていた。ベルファストと違って、ボノがエチオピアで見た通りには名前がついておらず、そのことが人々をより平等な存在にしていた。この歌の最初の歌詞は、われわれすべてを社会的に分断する壁を打ち破り、平等に生きることのできるような世界を求めるものとして、歌われている。
-同じく歌詞読解サイト「Genius」より-

“The guy in the song recognizes this contrast and thinks about a world where there aren’t such divisions, a place where the streets have no name. To me, that’s the way a great rock ‘n’ roll concert should be: a place where everyone comes together… Maybe that’s the dream of all art: to break down the barriers and the divisions between people and touch upon the things that matter the most to us all.”
- Bono, in interview with the Chicago Sun-Times, 1987

「この歌に出てくる男は、そうした非対称性を認識し、そうした違いの存在しない世界について思いを巡らせている。通りが名前を持たない場所、だ。僕に関して言うなら、偉大なロックのコンサートというものはそうした場所でなければならないと考えている。みんながやって来て、ひとつになれる場所...あらゆるアートにとっての夢は、そういうことなんじゃないかな。人々の間に横たわる壁やバリアを壊して、何よりも重要な問題に直接触れてゆくことができるように」。
-「シカゴ·サン·タイムズ」紙でのインタビューにおける、1987年のボノのコメント-

  • I see the dust cloud disappear...「dust cloud」の訳語は「砂塵の雲」「粉塵の雲」だが、天文学の用語としては「暗黒星雲」を表す言葉としても使われているとのこと。
  • We're still building then burning down love...「burn down」は「それ以上燃えなくなるまで燃やし尽くす」という意味なので、この歌の中で「築かれた (built)」愛は、おそらくこの後「消えてしまう」のである。景気のいい希望にあふれた歌詞だというイメージで聞いていたが、実際はむしろ絶望的と言うか、少なくともデスペラートな感じで歌われているのがこのフレーズなのだと思う。
  • our love turns to rust...「rust」は金属の表面に生じる「さび」を意味する単語で、それが転じて「燃えかす」「夢のあと」みたいな意味でも使われる。といった趣旨のことが確かユニコーンの解散後に発売された「The very rust of Unicorn」というCDの帯に印刷されていたのだけど、現在ネットで使える英和辞典にそうした訳語は全然載っていない。とまれ、この歌に出てくる「rust」という言葉は、試訳の中ではそうした文脈でさまざまに「意訳」させてもらっている。


Where The Streets Have No Name (1987. LA.)

ではまたいずれ。


=楽曲データ=
1987.3.9.
Key: D